結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM   作:朔月新

46 / 57
乃木若葉の章ー22「希望が叶う」

 

「杏起きてるか」

 

 球子は千景の下に行く前に杏に一目会いに来た。

 

「まだ眠っているのか。それでもいい、聞いてほしい」

 

 聞こえているのか聞こえていないのか。球子は自分の胸の内をさらけ出すように言う。

 

「今、千景が厄介なことになっているらしいんだ。今のタマに何が出来るかわからない。救えないかもって知れないっていうのが怖いんだ」

 

 球子は、自分の身体を震わせる。それほどまでにあの件は球子のトラウマになっていた。

 

「でも、タマはそれ以上に千景がいなくなるかもしれないって方が怖くなったんだ。薄情だろ。タマは杏の事を一番っていつも言っているのに」

 

 そう言いながら球子は乾いた声が自然と出た。

 

「それでも、タマの励まそうといろんな人がきてくれた。タマに助けを求めてくれる人もいた。今のタマじゃ、どうにもできないかもしれない。それでも……」

「そんなことないですよ」

 

 突然の声に球子は眼を見開いた。

 

「杏。目を覚ましたのか!?」

「はい。ついさっき、薄情だろ辺りくらいですけどね」

 

 そう言いながら、杏は体を重そうに持ち上げた。

 

「ごめん杏。タマが守り切れなかったばかりに」

「そんな事ありませんよ。タマっち先輩はちゃんと私を守り切れましたよ。だから私はこうして生きているんじゃないんですか!」

 

 そう言って杏が球子に優しく微笑みかけると、球子の体の震えは不思議と消えていった。 

 

「……タマも現金な奴だな。杏に言われるだけで嘘みたいに……」

「そういうものですよ。私達は人間なんです。悩んで苦しんで立ち止まって、それでも些細な事でまた前に踏み出せる。失敗しない人間なんていないんですから」

「杏」

「私からは何も聞きません。ただ、タマっち先輩なら大丈夫です。何故なら、私のタマっち先輩ですから」

 

 そう臆面もなく言い放つ杏に球子は毒気を抜かれた。

 

「ありがとう杏。行ってくる」

 

 そう言って、球子は病院を飛び出すのであった。

 

 

 

 

 

「来たわね」

 

 若葉達が千景のいる場所に到着すると千景はそういった。

 

「千景。何をするつもりだ。いや、そもそもその3体のグレートマジンガーはなんだ!?」

「何をするって、この量産型グレートマジンガーでバーテックスに対抗する為よ」

「グレートマジンガーの量産型?」

 

 そんなモノがあるのならばイチナナ式は無用の長物になっているはずと考えていると、その答えを千景自身の口から聞かされた。

 

「あなた達もあの話は聞いているでしょう? アレと同じよ。平行世界。ドクターヘルは隣接次元とか言ってた世界で製造された代物よ。スクランブルダッシュこそオミットされているが、それ以外の性能は本物のグレートマジンガーに勝るとも劣らない力を有しているわ」

「平行世界……だと?」

「若葉。そこは驚くところではナッシングよ。別ルートだと思うけど園子さん達もそうなのだし」

 

 歌野にそう言われると確かにと納得するのであった。

 

「そうね。この世界は今、隣接次元との壁が薄くなっている。逆に言うと、渡ろうと思えば逃げれるはずよ」

「何が言いたい千景?」

「ねぇ、この世界から逃げてバーテックスのいない世界へ行かない?」

 

 その提案は予想外の物であった。

 

「この世界を見捨てるというのか!?」

「そもそも、私達では力不足だっていうのは痛感したはずよ。それでバーテックスの脅威から人々を救うにはこの世界から逃げるのが1番のはずよ」

 

 その言葉に対して何か言いかえそうとして若葉は何か言いかえそうとして、思いつかずとっさの言葉を口にした。

 

「それでも!」

「それでも何? 人々をバーテックスの脅威から救うのが勇者の使命のはずよ。勝てないと思ったなら別の道を模索するのは当然の選択肢よ」

「そうだね。それに関しては何も間違ってないよ」

「園子?」

 

 千景の意見に園子が肯定するとは思ってなかった若葉は狼狽した。

 

「でも、逃げるなんて選択肢は私達はとりたくない。この世界に来たのは偶然だけど」

「それは、あなた達が自分の世界を守れたからでしょ?」

「もう1度やってと言われてもできないくらいの偶然の積み重ねだけどね」

「どちらにしても、これはこの世界の問題よ」

 

 そういって、千景は若葉の方に向いて鎌を向ける。

 

「私と本気で戦いなさい」

「どういうつもりだ千景」

「私の今の発言をそのまま受け入れられるあなた達ではないって事は百も承知よ。だけど、この世界の人達で結論をつけないといけないわ」

 

 その言い回しに一部は違和感を覚えるが、目下の若葉は気づいた様子もない。

 

「わかった」

「若葉さんほんとうによろしいのですか?」

「ひなた。大丈夫だ。確かに、どんな結論になるにしても、私達で結論をつけなければならない」

 

 そう言って若葉も勇者に変身する。勇者同士の戦いが今、きっておろされようとしていた。

 




サブタイトルは伊代島杏の誕生花の花言葉
とりあえず、杏復帰&メインシナリオ進行
郡千景の目的は一体何なのか!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。