結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM 作:朔月新
「勝つのが目的ではないとはいえ悔しいな」
あの後、山伏しずくが伊代島杏に勝利した以外は3敗して終わった。
「乃木若葉に関してはしょうがないよ。なんたって初代勇者なんだから」
「しょうがない? しょうがなくない。勝てなかったのは、私にどこか慢心があったからだ」
樹の発言に対して、実際に戦った芽吹は大声をあげた。
「こういった時に雀がいれば芽吹さんを落ち着かせれますのに」
「加賀城はそういう役割の時、かなり輝く」
「加賀城って御方は、そんなに凄い人だったんですか」
「凄いと言えば凄い」
「ちょっといいか?」
その時、兜甲児が彼女達があつまっている部屋に来訪してきた。
「兜さん。どうしたんですか?」
「顔見せと、ちょいとした休憩だ」
「休憩なら、何処でもできるじゃないですか?」
「そうでもないのさ」
兜甲児はそう言いながら、どこか乾いた笑いを浮かべた。
「そういえば、私達と若葉さん達の模擬戦をさせたのは、若葉さん達に万が一があっても変わりがいると安心させるつもりですか?」
「それは要素の1つに過ぎない。模擬戦をさせる事で君達5人の性格と実力を把握する方が今回の本命だ」
「私達が信頼しきれなかった。と、言っているようなものよ。それ」
「300年後の未来から来たと言われて、素直に信じられる方が問題だけどね」
「それはたしかに……」
「ただ、模擬戦を見ていて、本当に未来から来たのかはともかく、君達自身については俺は信頼する事にした」
それは、この世界において彼女達がはっきりとした味方を得たという事である。
「それじゃあな」
そう言って兜甲児は部屋を出て行った。
一方、若葉達の方はと言うと
「なぁ、杏……」
「うん、タマっち先輩」
その視線の先には明らかに機嫌が悪そうな若葉がいた。
「若葉、大丈夫か……」
「大丈夫だ。問題ない」
全然大丈夫じゃないな。と、土居球子は思った。彼女ら防人の存在が、自分達が何処かで失敗すると思っていると言われたようなものだと、若葉は考えているに違いない。何より、上里ひなたがこの事を知っていたのが多分、一番の問題だ。
「あらあら。若葉ちゃん、お冠みたいですね」
そんな中、ひなたがこちらの共同スペースに戻って来た。
「ひなた。あいつらはいったい何なんだ」
そう若葉に聞かれると、普段のおどけた雰囲気はなくなり真剣な眼差しで返した。
「まだ詳しくは話せません」
「だ、だが」
「確かに勇者の力というのは大きいです。ですが、万が一に備えるというのも組織としては重要なのです」
「……それはそうだな」
組織として見るならば勇者が5人。日本全国で見ても8人というのは少数にもほどがある。ならば、勇者候補と呼べる存在を見出して育成を考えるのは何も間違っていない。
「すまないひなた。自室に戻らせていただく」
理解と感情は別と言わんばかりに、若葉はそう言って部屋を出て行った。
「おこりんぼ若葉ちゃんも可愛いですね」
「なぁ、ひなた。あの対応でよかったのか?」
「問題ありません。たしかに防人の存在をあなた達に開示するかどうかはこちらでも意見が分かれました」
未来から来た人間など、信頼しきれるはずがない。勇者に引き合わせるのはデメリットのが強いとひなた自身は思っていた。
「ですが防人達はあなたの代わりではなく、いずれ共に戦いたいと言っておりました」
特に犬吠埼姉妹。彼女達には防人の一員と誤認させたが彼女達は防人ではなく元勇者だという。今は勇者に変身できないみたいだが、彼女達が復帰したら力になりたいとは言ってくれていた。
(向こう側も話せない事が多そうですが、完全な過去ではなく似ているけど違う平行世界ならば、自分達の持つ情報の正しさを証明できないので、おいそれとは言えませんよね)
それでも、できる限りの情報を出してくれたのは、私達が彼女達にとってこの世界における兜甲児博士のような伝説の存在だからだろう。
(彼女達に失望されないように頑張りませんと。あと、若葉ちゃんを慰める言葉も)
ひなたの心の中で強く誓ったのであった。
タイトルは上里ひなたの誕生花から
5戦も考える文才がないので残り4戦はカットで