結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM   作:朔月新

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白鳥歌野の章ー1「懐かしい思い出」

 

 8月31日。その日、突如として香川、長野、北海道、沖縄の4か所で謎の発光が目撃されたとされる。光が収まると、そこには見慣れない少女達がいたとも……。

 

 

 

 

「ここは……」

 

 乃木園子が目を覚ますと、そこは知らない天井だった。

 

「そのっち!」

「わっしー……」

「目を覚ましたら突然、自宅じゃない場所にいて。そして隣にはそのっちがいて。すぐに寝ているだけだと分かってはいたけど……」

 

 涙顔の親友の顔を横目に、園子はここまでの記憶を思い出していた。勇者部で白鳥歌野の事を、安芸先生に今後の事を話して、自宅に帰ってそのまま就寝していたはずだ。だからこそ、何故こんな場所にいるのかが分からない。

 

「目を覚ましたようね」

 

 そういって、ショートカットでラフな姿をした少女が入って来た。その後ろには、軍服を来た青年もいた。

 

「御迷惑をおかけしてすいません」

「ノープロブレムよ。私としてもアンビリーバボーな登場だったんだから」

 

 英語交じりの変な日本語に東郷美森は少し不快な気分になるが、自分の現状もまともに把握できていない以上、ここで指摘するべきではないと思った。

 

「とりあえず。ここは何処であなた達は誰ですか? さっきの発言からして私達の方が突然現れたと推察できますが」

「それもそうね。アイアム白鳥歌野。ここ、諏訪の地で勇者をやらせてもらっているわ」

「「え、うそ……」」

 

 その名前を聞いただけで自分達が過去に来たのだと推測するには十分すぎる名前ではあった。そして、大赦の者が自分達にリスクをとってまで騙る理由が思いつかない。そもそも大赦の者が白鳥歌野を騙るとして、こんな英語交じりの変な日本語使う訳が絶対にない。逆に本物なんだろうなと思った。

 

「まぁ、何も知らない人からしたら勇者なんて正気をシンキングするでしょうけど」

「その英語交じりの日本語の方がよっぽど正気を疑う内容だと思いますけど……」

「言われてるぞ」

「シローさん。余計なことは言わなくていいです」

 

 軍服を着た青年の名前はシローというみたいだ。

 

「ああ、俺は兜シロー。統合軍三番隊隊長を任されている」

「統合軍。自衛隊とはまた違った組織という認識でよろしいのでしょうか?」

「ドクターヘルをはじめとして、この世界は何度も世界規模の危機に苛まれてきたからな。それに対処できるようにするための組織と思ってほしい」

「今は3年くらい前から現れだしたバーテックスという存在によって平和が脅かされているけど、統合軍のおかげで大事には至ってないわ」

「バーテックスには通常の兵器は効かないはずでは?」

「バーテックスの存在は知っていたか。確かに通常の自衛隊の兵器は効かなかった。ただ、日本が誇るスーパーロボット。マジンガーZにも使用されていた光子力エネルギー。それを用いた武装であれば、そいつらに対抗する事が出来た」

「そして、バーテックスが出現すると同時期に、私を始めとして各地に神器を力を貸し与えられてバーテックスに対抗できる人達が現れたの。それを私達は勇者と呼称しているの」

「バーテックスの出現と勇者の覚醒がほぼ同時期なのを顧みるに、勇者が本命で俺達に抵抗されるのはあちらさんの想定外といったところだろうが」

 

 自分達の元居た世界ではバーテックスが出現して3年目には諏訪と四国以外は全滅していたはずだ。そういう意味では園子たちの時代より明らかに恵まれていると言えた。

 

「なんにせよ。バーテックスの現れた範囲に対して、被害が最小限で食い止められたのは俺達統合軍のおかげでもあるってことさ」

「そうですね。四国にいる乃木若葉さん達。後は北海道と奈良と沖縄にも勇者に覚醒した者がいると聞いておられます」

「ああ、奈良の勇者は今は四国の勇者と合流して、共同に作業に当たる事になったらしい」

「いいなぁ。私も乃木さんに直接会いたいな」

「勇者でなければ対処できない事態がこのまま起きなければ年末年始に全国の勇者を集合させての親睦会を兼ねた催しを予定しているからそれまで待ちなよ」

「あ、あの……」

「あ、すまないすまない。そちらの事を無視してしまっていたな。話せる範囲でいいから、そちらの事も教えてくれないか?」

 

 東郷は、なんだかはぐらかされた気もしなくもないが、確かに自己紹介しない事には始まらない。

 

「はい。私は東郷美森、中学2年。隣にいるそのっちを含めて四国で勇者部というものに所属しておりました」

「私は三ノ輪園子だよー。東郷美森ことわっしーからそのっちと呼ばれているんだー。よろしくねー」

 

 園子は万が一を考えてとっさに偽名を名乗る事にした。先程の会話からしても白鳥歌野は先祖である乃木若葉と定期連絡をしている模様だ。光子力エネルギーなんてものは神世紀には存在すらしていないし、乃木家にあった資料と顧みてもここは直接の過去ではなく平行世界の過去だと思った方がまだ納得できる。ならば、余計な情報と混乱を与えるかもしれない乃木の苗字は出さない方がいいはずだ。

 

「園子だから、そのっちなのね? あだ名で呼び合うなんてあなた達は私とみーちゃんと同じくらいにスペシャルなフレンドなのね」

「みーちゃんが誰なのかは知りませんがそうですね。私とそのっちと、後もう1人。3人でズッ友。決して変わることない親友ですね」

「そうだねぇ」

 

 そういって、もう1人の親友。三ノ輪銀の事を思い出す。

 

「そういえば、私達が変な登場をしたと言っていましたが、どんなふうに変だったんですか?」

「それはもうアンビリーバボーだったわ。急に諏訪大社の近くがライトアップしたと思ったら、その光がロストすると2人は意識ない状態で倒れていたんだもの」

「たしかにそれは、私達の方から見ても不思議だねぇ」

「そうなると、もしかしたら私達の知らない世界や時代なのかもしれません。今は西暦何年ですか?」

 

 白鳥歌野が生きていた時代は神世紀ではなく西暦ではあり、彼女が勇者をしていた時期は2015年から2018年の3年間だったはずだ。ならば今必要なのは今が何年目かということだ。だが、彼女から放たれた言葉は、その前提を覆すのに十分な一言だった。

 

「今は西暦2022年よ」

「……なるほど。ありがとうございます」

 

 つまり、ただの平行世界ではなく、開戦の時期が何らかの理由で遅れた平行世界だと、園子は脳内で修正を入れた。

 

「だけどそいつらにも有効だったのが、日本が誇るスーパーロボット。マジンガーZにも使用されていた光子力エネルギーというわけだ。それを用いた武装であれば、そいつらに対抗する事が出来た」

「そして、バーテックスが出現すると同時期に、私を始めとして各地に神器を力を貸し与えられてバーテックスに対抗できる人達が現れたの。それを私達は勇者と呼称しているの」

「バーテックスの出現と連動している以上、勇者が本命で俺達に抵抗されるのはあちらさんの想定外といったところだろうが」

 

 そう言いながらも兜シローと名乗った青年は少し自慢げな表情を見せていた。

 

「その、バーテックスと呼ばれる存在によって壊滅的な被害を受けた場所はあったりするんでしょうか?」

「そうだな。被害がゼロって場所はないが、それでも47都道府県ちゃんと守り切れている。俺達統合軍は、そのために日本全国に派遣されているのだからな」

 

 自分達の元居た世界ではバーテックスが出現して3年目には諏訪と四国以外は全滅していたはずだ。生命反応自体は北方の大地と南方の孤島にもあったらしいが。そういう意味では園子たちの時代より明らかに恵まれていると言えた。

 

「まぁ、ユー達も巻き込まれた側みたいだし、今日はこの部屋で2人でのんびりとリラックスといいわ」

「何かあったら、そこにあるボタン押せば誰か駆けつけるからな。それじゃあな」

 

 そういって2人は園子達を部屋に残して出ていった。

 

 

 

 

「あの2人を見て、シローさんはどう思いました?」

 

 歌野は待機室に入ったあとで、シローに確認を込めて聞いた。

 

「何か隠し事をしているのは違いない。だが、悪意があっての秘密ではないと感じた」

「そうですか」

「出自不明に関してはリサさんという前例もある。それに彼女達はまだ子供だ。できるだけ彼女達の意志を尊重してあげないとな」

 

 彼女達が特別な存在なのだろう事はわかっている。だからこそ、その特別が来るまでの間は普通に過ごせるようにしたい。それは人間としても軍人としてもそうすべきだというのがシローの考えであった。

 

「本当を言うなら、勇者達に戦わせるのも嫌ではあるんだ。彼女達にはああいったが、イチナナ式では複数機いてようやく小型バーテックス1体を倒せる程度だ」

 

 それは彼女達の前では言わなかった事実。故に単機で複数のバーテックスを倒せる勇者に協力を仰がなければいけない軍人としては恥ずべき状況だ。

 

「現在稼働中の機体で、単機でバーテックスを倒せる兵器はゲッタードラゴンとグレートマジンガーくらいだ」

「マジンガーZは無理なんですか?」

「一応はいつでも動かせるようにメンテナンスはされている。しかし兄貴は今、四国の勇者達に会いに行ってて動かす人間の方がいないからな」

「いざとなったらシローさんが乗られましたら……」

「それはダメだ。統合軍に所属している俺が乗ったらマジンガーZは軍の所有物にされちまう。兄貴自身が選ぶならともかく、俺の手でマジンガーをそうしたくはない」

 

 シローにとってマジンガーZは他の人以上に身近で、そして他の人以上に特別な存在だ。

 

「一応、兄貴の古馴染に頼んで次善策を用意してもらってはいる。それが本当に役立つ日が来るのかは分からないけどな」

 

 それは、次善策と言うにはあまりにも希望的観測が入ったものである。こちらができる準備だけでは完成しない代物なのだから……。




歌野の章。タイトルは歌野の好物である蕎麦の花言葉
そして、乃木若葉の章に出ていないメンバーがどうなっているかって話でもあります
乃木若葉の章がメイン軸であり、歌野の章は外伝の立ち位置ですね
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