結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM 作:朔月新
「三ノ輪、東郷。ちょっといいか」
ある日、兜シローより2人は呼び出しを受けた。
「はい、なんでしょうか?」
「話は場所を移ってからだ」
その言葉に同意して2人はついていき、少し離れた個室で3人で話をする事になった。
「話って何ですか?」
「いくつかあるが、まずは白鳥達にも先に話した事だけど、しばらく俺達は諏訪から離れる事になった」
突然の話ではあるが意外でもなかった。彼は統合軍に所属している軍属の人間だ。軍の命令で転属されること自体は予測できる範疇だった。
「ですが何故私達にお話を? 私達は現在、庇護下の身であって個別に話してもらえるような立場とは思えないのですが」
「それはだな。勘という奴かな」
兜シローはそう言いつつもちゃんとした理由を後から付け加えた。
「兄貴や鉄也さんと一緒にいたんだ。何というか歴戦のオーラというか、山場を乗り越えた人間の雰囲気っていうのが何となくわかるんだ。三ノ輪、東郷。君達2人がそう言った戦いを乗り越えた人物だっていうのは最初から何となく感じていた」
実際、私達は文字通り身を削ってあの戦いを生き残って来た。実際、最初の時には警戒心のが強かったし、その時の雰囲気で把握したのだろう。
「それに三ノ輪も東郷も偽名なんだろ? 東郷美森なのに三ノ輪の渾名が『わっしー』の時点で隠すつもりもないみたいだが」
「バレちゃってたかぁ。 あはははは……」
本人としては、かつての名前である鷲尾須美も今の名前である東郷美森もどちらも本名であると思っているのだが。
「そのっちの『わっしー』は幼名時代の名前から来ている渾名なので今の本名は東郷美森ですのでご心配なく」
「幼名って、また珍しい文化が残っているんだな……。でも、了解した」
「それで、偽名に気づいた事をわざわざ言うために呼び出したんですか?」
「単刀直入に聞くが、お前達は白鳥歌野をどうしたい?」
兜シローは真っすぐな目をして聞いて来た。
「悪意がないだろうとは思っている。さっきも言った通り兄貴や鉄也さんと一緒に激戦を生き残ったんだ。ただ、ここから離れる以上、君達が白鳥歌野の敵か味方かをはっきりさせたい。それだけの話だ」
「ここで私達が嘘をつくとは思ってないんだね」
「さぁ、どうだろうな」
肯定か否定か。それを知るのは本人のみといったところか。
「うたのんの味方。とまでは言えないかな。でも友達だとは思っている」
「こちらにもいろいろな事情がありまして今は味方と断言はできません。でも、白鳥歌野さんの友達であるとは断言できます」
本当は勇者の力を使ってでも、過去を変えてでも助けたい。でも、本当に助けていいのかどうか。過去を変えていいのか。そのはざまで悩んでいる2人は、自分から味方だと断言する事が出来なかった。手を差し伸べられないのに仲間だと、味方だという資格が自分達には存在しないと2人の心の中の共通認識として存在していたからだ。
「味方ではないけど友達。か」
その言葉に対して兜シローはしばらく黙り込む。それはそうだ。自分達で言っててこれほどまでに怪しい言い回しはないだろう。
「もう大丈夫だ」
終わったと2人の心の中で聞こえた気がした。しかし、兜シローから言われた言葉は想像とは違ったものだった
「これからも白鳥歌野をよろしくな」
「それって……」
何も言わずに兜シローは部屋を退室していった。
そして、それから数日もたたないうちに、避けられない未来が諏訪に襲い掛かって来た。
タイトルは東郷美森の誕生花シバザクラの花言葉
兜シローの諏訪からの一時離脱話。次話はあの話についに突入します。