転がるふたりぼっち   作:240128 虚無って書けません!

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舞台真下では、星歌と廣井が見守るように演奏が始まるのを待っていた。そこから少し離れたところに、後藤家の家族一団が、またさらに離れたところにファン1号と2号が目を輝かせていた。山田家と喜多家の家族がいないのは、おそらく、単に本人たちが文化祭ライブのことを教えていないだけだろう。

 

郁代が手を叩きながら、場を盛り上げる。つられるみたいに体育館に集った聴衆たちは胸の前で手を叩き出して、場内に一体感が生まれた。上々の滑り出しだった。

そして始まる曲は、「忘れてやらない」。

 

 

 

教室にいて、どうやったって周囲となじむことができなかったな。そんなときいつも机にうつ伏せになって、少しだけ首を横に傾げて、窓の向こうに広がる空を見上げたっけ。

 

ひとりはそんな感慨に耽りながらギターの弦をはじき始めた。

 

こんなにいい天気なのに太陽は雲の中に引きこもっていて、ずるいなって思った。お天道様は見ているよなんて言うけれど、私のことをちゃんと見てくれてるような気はしなかった。ずるいずるいって思う一方で私みたいなヤツに相応しいのはそんなものかなとも思う。

誰かが私のことを見ていてくれたらって、それでも期待してしまうのはなんでだろう?

 

虹夏の正確なドラムが、ガタゴトと周期的に鳴らす電車のジョイント音のように頭の中に響いた。

 

通学中、小田急線に乗っているとき通り過ぎる準急列車を車窓越しに眺めた。満員電車の中から、通り過ぎていく満員電車を見つめると変な感じがした。それからため息さえも押しつぶされてしまいそうな車内の圧縮率に、私自身加わっていることが恐ろしくも、申し訳なかった。

電車がすれ違い終わった後、車窓からは青空が広がっていた。そして漂う白い雲。電車っていう直方体の輪郭に、たくさんの人たちと一緒にかたどられた私は、輪郭さえ曖昧に青空にもくもくと広がっている雲の自由さがうらやましかった。

 

郁代が「作者の気持ちを答えなさい」と歌い上げる。

 

正解はかくあれと大人は言うけれど、そういう正解がどうしても私には正解だと思えなかった。私が陰キャのせいなのかな?きっとそう。じゃあ、誰かがいつだって気にかけてくれるような人たちだったらそんなふうにも思わないのかな?実はみんなもそう思ってるの?……わからない。

ただ、思う。電車の中よりも青空に浮かぶ雲のようにあれたらな、なんて。叶いっこないけど。でも同じ形の雲なんて二度と存在しないことも知っているんだ。

 

リョウのベースリフが、“私たち”のありのままの形を取り戻した。

 

ありふれた青春なんてもの、空っぽの教室の中でぽつんと何かを待っていたような私には過ぎたものなのかもしれない。

ただ、虹夏ちゃんに、リョウ先輩に、喜多さん。校庭から聞こえるざわめきとは真逆の方向かもしれない。けれど手を引っ張ってくれる人たちがいて、その人たちと同じ歩幅、同じ場所を進むことができるから。

そして応援してくれてるお父さん、お母さん、もうひとりの私、ふたり。店長さんに、お姉さん、私のファンたち!

 

あの頃、教室で求めていたものとは別のものかもしれない。でも私はこんな日常を。孤独だったあの頃を笑い飛ばせるような、そんな日常を生きている。

少しだけカッコつけたけれど、、それは紛れもない私の真実だと思う。

 

いい意味でも悪い意味でも、私はみんなと一緒にはなれなかったし、これから先結束バンドっていうバンドがどうなるのかもわからないにしても、みんなとは違う道を行くわけで。

バンドとしての活動拠点がスターリーだけど、結束バンドの1人としての私のはじまりがどこからかって言えば、誰もいない教室であり、階段下にある埃の被ったスペースでもある。

 

「絶対忘れてやらないよ いつか死ぬまで何回だって」

 

だから、喜多さんの声を借りて、数多くの生徒たちの前で宣戦布告する。

 

「こんなこともあったって 笑ってやんのさ」

 

 

黄色のサイリウムが揺れ動く舞台下に、一気呵成の怒濤を送り込んだ結束バンドの4人はこうして1曲目を終えた。

 

わずかな不協和音の種を携えながら。




とにかく書いて出す!(平均文字数の減少)
音楽系の描写は未経験だとキツイのでなるべく書かないでも済むような方法で逃れないと一向に書けませんね
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