この度仕事のストレスと逃げ込んだ先のアルコールに頭をやられ、
なぜか二次創作をかいてみようとなった愛犬家と申します。
正真正銘の初投稿なので、菩薩のような広い心で読んでもらえると非常に助かります!
それではどうぞ
1.
自機の右腕が鋼鉄を貫く音がした。
後方へと流れていったその異形のモビルスーツは、轟音を立て爆発した。
先ほどまで自分に向けられていた怨嗟に満ちた悲痛な叫びは、もう聞こえない。
コロニー・レーザー内部のミラーが爆発を繰り返す中、動きを止めた相棒に背を預け、トビア・アロナクスはどこか他人事のように思った。
UC136年、かつて地球への侵攻を目論み宇宙海賊によって撃退された木星帝国は新たな総統を迎え、地球に対しコロニー・レーザー「シンヴァツ」による木星圏から超長距離攻撃を地球にしかける「
実行2週間前に何とか逃げ延びた前総統の後妻にして、新総統達の姉であるエウロペ・ドゥガチによりこの計画を知らされたトビア達「宇宙海賊クロスボーン・バンガード残党」は、紆余曲折を経てたった7人による特殊攻撃チーム「鋼鉄の7人」を結成、帝国の野望を阻止すべく作戦に臨む。
バーンズ、ギリ、ドレック…数多の仲間の犠牲の果て、新総統達による妨害を乗り越え、地球への直接攻撃の阻止、そして今、トビアは機体も気力も限界を迎えてなお、「シンヴァツ」本体の破壊に新総統「光のカリスト」の撃破を成し遂げていた。
長年一緒に戦い続けた相棒…クロスボーン・ガンダムX1はもう動きそうにない。もともと左腕部と左足を失っており、機動力の要を担う交差した骨のような背部スラスターも4本の内3本がだめになってしまっている。身を守るためのフルクロスも武装も全て失われていた。
「シンヴァツ」内部が爆発を繰り返しながら激しく光りだす。もう、ここも限界が近づいている。脱出は絶望的だった。
トビアが自分の生存をあきらめかけたその時、振りぬかれたまま動かなくなったX1の腕をつかむ者がいた。
「だめだ!エウロペさん!脱出して!」
それは、「鋼鉄の7人」の内の一人、エウロペの駆るアンヘル・ディオナの手であった。
「クロスボーン・ガンダムは…もう動か…ないっ、2機は…無理だっ!手を…離してっ」
トビアは必死に呼びかける。わずかでも
「ありがとう、…トビア、でも、でも…私ももう…無理みたいだ…から。」
限界を迎えていたのはエウロペも同じだった。
脇腹からの出血を抑え、息も荒くなっている。
光のカリストによりコックピットに攻撃を受け、負傷していたのだ。
(だから)
「ああああ?エウロペさん⁉」
最後の力を振り絞り、エウロペはガンダムの腕を引き上げ振り回す。
ちょうど自分の機体の影になる位置に重なった瞬間を狙って、X1をコロニー・レーザーの外に向かって投げる。
「――――――!―――――――!」
爆発がより一層激しくなる。
(約束が、ある)
トビアの声は、もう届かなかった。
エウロペのディオナが爆発に飲み込まれ、光の中に消えていった。
「エウロペさあああん!あああああ!」
クロスボーン・ガンダムも光に飲み込まれる。
鉄が焼ける音の中、トビアの視界は徐々にまばゆい光で満たされていく。
そして何も見えなくなったところで、トビアは意識を手放した。
2.
けたたましい警告音が鳴り響く。
どうにも計器が異常を示しているようだ。
まだ頭がぼうっとする中、トビアは意識を覚醒させた。
すぐさま機体のダメージチェック、めまいを覚えながらも現状の確認に努める。
しかし異常はすぐ見つかった。
「どこにもダメージを…受けていない?フルクロスも、腕も何ともない⁉」
それどころか、先の戦いで破壊されたはずのムラマサ・ブラスターとピーコック・スマッシャーといった武装もまるで新品かのように装備しており、あれだけの激しい戦闘を経たというのに、まるで先ほどまで補給していたかのように推進剤も満タンだ。
「それに、この景色…コロニー?それに…雲?」
先ほどまで自分たちが戦っていたのは、地球から遠く5億9千万kmも離れた木星圏の宇宙だ。周辺には木星のコロニーがあるとはいえ、戦闘区域からは遠い。
なのに、今X1はまだ薄暗い空と分厚い雲の合間にて、雲に向かって落ち続けている。
「落ち続けている…?重力が…ある⁉これじゃまるで、地球じゃないか⁉」
さらに言うと、直径がたかだか6km程しかないコロニーに、ここまで分厚い雲ができることがおかしい。様々な宇宙線から住民を守り、頑丈さを保たせるために外壁が分厚くスペースを取られていることを考えると、居住ブロックである内壁にこんな大きな雲が生まれることがまずありえない。そして何より、雲が生まれる場所はコロニー内壁の中心部。本来雲に向かうためには飛び続けなければならない場所だ。
さらにトビアを混乱させる事態が起こる。
雲の下が少しずつ赤らんできたのだ。
採光のためのミラーとそれを届けるための窓が見当たらず、ディスプレイも存在しない。
なのに、作戦決行の前、「彼女」とほんのひと時だけ過ごしたグレートキャニオンで見た、あの時と変わらぬ太陽が昇ってきている。
もう、ここまできたら認めるしかない。
「ぼくはいま、地球に、いる」
とにかく、今自分がどこにいるか情報が欲しかった。
あの後、シンヴァツはどうなったのか?仲間たちは?どうして自分だけが?
なぜかX1のナビゲーションシステムも正常な座標を示さず、役に立たない。
いったい、自分はどこに落ちて行くのだろう?「彼女」の下に、戻れるのだろうか?
ぐるぐると色んな疑問が浮かんで、もはや頭はショート寸前だった。
スラスターも問題なく動くようなので、一度X1の姿勢を整えると、このまま落ちてみることにする。
いざとなれば、X1の推力で無理やり飛べばよい。そう割り切り、急降下にならないよう降りていく。
雲を抜けると、眼下に広がるのは600mは超える巨大な塔に、高層ビルの森だった。
まさかの光景に、トビアはうめく。
「できれば、連邦軍が近くに無いような場所に降りたかったなぁ…」
UC136年当時、地球環境の再生を掲げていた地球連邦政府は昔ほどではないにしろ、宇宙への移民政策を推し進めていた。現在では地球に残るのは移民待ちの住民と政府高官等の特権階級、それから一部の違法在留者ぐらいなもので、ここまで発展している街というのは連邦関係ぐらいである。
「こちとらお尋ね者の宇宙海賊だもんな~。ガンダムなんて見たら、すぐに連邦軍が出てくるだろうし…」
そこまで言って気づく。あまりにも静かだ。フル装備の未確認機が街の上空に出てきたというのに、何の対応もない。
「MSの一機も出てこない…?警告すら、来なかった?いったい何が?」
そのとき、視界の端に捉えていた塔から激しい爆発が起こった。
「!どこから!」
咄嗟に周りを見渡すも、MSからの攻撃は認められない。どうやら塔自体に仕掛けられていた爆発物によるもののようだ。
「MSを介さない攻撃?そんなことより、なんで軍が出てこない⁉」
次第に爆発が激しくなっていく。このままでは、あの塔は中間部から折れて、その残骸が街に降り注ぐ。被害がどれほど大きいものになるか考えたくもなかった。
少しずつ傾き始めた塔にいそいで向かおうとしたトビアだったが、唐突に頭の中に声が響いた。
『まだ、死にたくない…!だって、したいこと、まだ何もできていない…!誰のことも、助けられていないっ…!』
考える必要もなかった。トビアは声がした方向———塔の展望台デッキと思われる箇所へとX1を飛ばす。
「待ってろよ!すぐに助ける!」
その声の主に対して、力強く答える。
「まだまだもうひと踏ん張りだ!頼むぞ、X1!」
夜明けが近づく街の空で、ガンダムのグリーンのデュアルアイが一際強く輝いた。
3.
ついさっきまで、いたるところで聞こえていた乾いた音に怒声は、もうどこにもない。
代わりに下から轟音が響く。そのたびに、今いる場所の揺れがひどくなり、すこしづつ傾いていく。
ここから逃げるための階段とエレベーターは、先ほど使えなくなった。
展望台の外が見える位置に座り込みながら、錦木千束はどこか他人事のように思った。
「Direct Attack」、通称DAと呼称される組織がある。超高性能AIを擁し、犯罪の兆候を事前に察知し、対象者を速やかに暗殺することにより未然に防ぐための超法規的組織。その活動内容から世間はおろか、日本政府でも一部の人間のみが知るにとどまる秘密組織である。
その実働部隊に「リコリス」と呼ばれる少女たちが存在した。彼女たちは皆孤児であり、衣食住を保証される代わりに、幼い頃から殺しのための技術を学ばされる。射撃、体術、戦術、尾行、語学etc、そうして暗殺者として育てられたリコリスたちは、日本の治安を陰ながら守るため、鉄火場へと送り出されるのだ。
今回の電波塔の任務は、そんな彼女が初めて受ける実践任務であった。
千束は任務にあたり、自身の武装に一つオーダーを出していた。非殺傷弾、相手を殺すのではなく、気絶に留める生かすための弾丸だ。彼女は自分の命を救ってくれたアラン機関の「救世主」に憧れ、人を救うために戦いたいと願った。自身の戦技教官であるミカ謹製のその弾丸は、望みを叶えるのに必要なものだったのだ。
電波塔を占拠したテロリスト達をたった一人で鎮圧する。いくらバックアップが控えているとはいえ、無謀極まるその任務を千束は見事成し遂げて見せた。もちろん、死傷者は0人だ。
だが、いくら彼女が強かろうとまだ8歳にも届かない女の子であり、体力は限界を迎えていた。倒した敵もいない場所を探し、展望台へとたどり着いた後、気が抜けたのか座り込んでしまった。
いまだ夜は明けず、それでも徐々に空が赤らんできたその光景に見とれていた。
それがいけなかったのだろう、突如下層から轟音が鳴り響いた。
いそいで窓に近づき状況を確認すると、下層から黒い煙が昇っていた。おそらくテロリスト達が爆弾を仕掛けていたのだろう、踵を返し階段に戻ろうとすると今度は階段から轟音が響き、煙が立つ。退路が断たれ、その場で止まってしまう。
〈千束!どうした、いまの音は⁉〉
耳につけたインカムから、司令室にいるミカの声が響く。
「階段がやられた…、もう、脱出できそうにないかも…」
普段の自分のものと思えない、か細く呆けたかのような声が出る。
〈いいか、よく聞いてくれ!今から救助を出す!なんとか身の安全を図るんだ!どこか〉
「ごめん、もう傾き始めてる!ちょっと難しいかも…?」
おもわずミカの声を遮ってしまった。それでも、緩やかに傾き始めた展望台に安全な場所などないのは明白であり、今は少しでも落ちないよう中心部に向かって走っている。
〈千束…!〉
「ありがとう、先生。大丈夫、まだ何とか頑張れる…!」
また爆発が起きる。その揺れによってバランスを崩し、インカムが耳から外れ、窓側へと転がってしまう。
「あっ…!」
唯一他者からの声を伝えてくれるものがなくなり、千束は止まってしまう。
すこし前まで“自分の好きなアクション映画みたいだ”と無理にでも奮い立たせていたのに、途端に動けなくなってしまう。
その場で座り込み、救世主からもらったデトニクス・コンバットマスターを両手で握りしめる。
「私、ここまでなのかな」
ぽつりとこぼす。
涙がぽろぽろ落ちていく。
「したいこと、まだいっぱいあるのにな」
一度こぼしてしまえば止まらない。
目を思いっきりつぶり、絞り出すように叫ぶ。
「まだ、死にたくない…!だって、したいこと、まだ何もできていない…!誰のことも、助けられていないっ…!」
『待ってろよ!すぐに助ける!』
突然、力強い声が頭に響いた。
はじけるように顔を上げ、窓の外を見据える。
徐々に太陽が昇ってきていて、朝焼けが少しまぶしい。
「え…、何、あれ…⁉」
千束の目には、信じられないものが映っていた。
それは、ドクロをあしらったレリーフが胸と額にそれぞれ掲げられていて。
それは、背中に大きな骨を背負っていて。
それは、ジャケットのような、マントのような黒い装甲を纏っていて。
それは、金色に輝く2本の角が生えていて。
それは、鋭く前を見据えながらも、優し気なグリーンの眼をした、
————鋼鉄の巨人だった。
4.
「見えた!」
トビアは先ほどの声の主を見つけ、一直線にX1を奔らせる。
見たところ、真っ赤な制服を着た、まだ小学校に通い始めたかのような、小さなかわいらしい女の子だ。
そんな女の子が、持つにはふさわしくない、大きな銃を握っている。
(少年兵⁉)
いやな想像が頭をよぎるも、すぐに切り替え展望台へと機体を突っ込ませる。
まずは彼女の安全確保だ。
◆
「え⁉ちょ、ちょ、ちょちょちょちょおおいいぃいい⁉」
千束は混乱と恐怖の渦に叩き込まれていた。
ただでさえあり得ない声が聞こえ、ありえない存在が現れたというのに、それがまっすぐこちらに突っ込んでくるのだ。おまけに右手を伸ばして向かってきていることから、あの巨人の目的は明らかだった。
(でも、さっきの声…)
それでもなぜか、不思議と不安はなかった。
さっき響いた声は、力強くも暖かった。
絶望に押しつぶされ、動けなくなってしまった自分に向けた、”助ける”という声。
まだ少年なのだろう、若く利発そうな声だった。
そこまで考えている間に、巨人はその身を突っ込ませ、こちらに大きな右手を差し伸べていた。
驚きのあまり固まっていると、胸の巨大なドクロレリーフが上下に開き、中からSFめいた黒い宇宙服のようなものを着た少年が出てきて、こちらへ駆け寄ってきた。
「大丈夫か⁉どこかケガしているのか⁉立てる⁉」
どこまでも自分の身を案じる言葉に、先ほどの声の主が目の前の少年だということが分かって、また涙があふれる。
「だい、じょうぶ。…大丈夫」
なんとか答えを返し、涙をぬぐいながら少年の差し伸べた手をとる。
「いきなり怪しい奴だと思うかもだけど、とにかく今はぼくと一緒に!」
少年はそのまま開いたドクロ——巨人のコックピットへと千束を連れていき、自分の膝の上に座らせるとすぐさま電波塔から離れ始めた。
少し上昇したところで、千束は改めて少年の姿を確認する。
瞳の色はブラウンで、意志の強そうな眼をしている。
髪の毛は、ヘルメットに隠れてよくわからないが、たぶん金色に近い色合いといったところか。
顔だちは整っており、おそらく日本人ではないことがわかる。
だが、何よりも目を惹くのは、鼻の上に一本通る傷だ。その傷のせいで、優しげな少年が一転、とてもワイルドに感じる。まるで少年漫画の主人公のようだ。
そして、ヘルメットの上部にとても気になるエンブレムがある。
ハートにドクロを足したものに、交差したサーベル。
この巨人といい、このエンブレムといい、まるでこの少年は、
「海賊?」
声に出して、”しまった”と思うも、少年がこちらを見る。
何か言われるかもしれないと少し身構えると、少年は少し照れ臭そうにはにかみ、
「ばれちゃった?」
とウインクをよこした。
思わず目をそらしてしまう。顔が熱くなって、まともに顔が見られない。なんだかとてもはずかしい…!
「へ⁉あ、う、うん!なんかドクロいっぱいだし、このロボットもマントつけてるし、おにーさん真っ黒だし、あ、で、でもカッコイイっていうか、優しそうっていうか、え、えと!」
何とか答えようとして、しどろもどろになってしまう。
「あははは、褒めてくれてありがとう!おれもコイツも嬉しいよ」
そう言って、少年は手元のコンソールを指で小突いておどけてみせた。
その姿がまた様になっていて、また目をそらしてしまって、恥ずかしくって…
————その時、眼下の電波塔が大きく傾きだした。
先ほどまで自分が戦っていた場所、日本の繁栄の象徴。
それが今、真ん中あたりから折れようとしている。
このままだと、塔が街に落ちる。あの大きな破片で、どれだけの人が危ない目にあってしまうのだろうか。
そこまで考えて、咄嗟に少年の顔を見上げてしまう。
「あ!あ…」
だが、言葉を発する前にブレーキがかかった。今自分は何を言おうとした?
いくら少年とこのロボットでも、できることは限られる。
ましてや、あの電波塔は半分でも300mは優に超える。
ただでさえ今、自分を助けて一杯一杯なのだ、これ以上は…。
そう俯いていると、少年が声をかける。
「ねえ、一つ確認したいんだけど…」
その言葉に千束が顔をあげると、少年は続けてこう聞いてきた。
「君はジェットコースターとか、平気なタイプ?」
ここまで書いといて主人公二人とも名乗らず!
しかもバカ長くなったせいで分割!
なんでみんなあんなに面白いもの、すっきりまとめられるの⁉
分割分は近いうちに投稿します。
それが終われば、次のお話は感想・評価・自分のモチベ次第になります。