海賊少年を百合の間に挟んでみる実験   作:愛犬家

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タイヤ交換で疲れたので初投稿です。

いよいよ12月、一気に寒くなり皆さんいかがお過ごしでしょうか。
私は実家からの要請で、車2台をスタッドレスタイヤに履き替えてました。

久々にやって、めっちゃ背中張って痛いです…。

さて、今回は頭空っぽで作った短編になります。
ゆるーく楽しんでいただければ幸いです。

それではどうぞ。



数値なんて知るかッ!
私はスーパードライをかっ込むぜッ!!!


#13海賊と一緒③

その1.青と大会

 

「11」

「ん~、13!」

「じゃあ、16」

「よし、21!」

「コヨーテ!」

 

ある日の喫茶リコリコ。

毎度恒例のボードゲーム大会にて、常連たちの楽しげな声が響く。

今回はカードを額につけ、その場の合計値を予想し、順番に予想していくゲームのようだ。

 

「よし、じゃあ合計のチェックだ」

トビアの号令で、額のカードをちゃぶ台に並べる面々。今残っているのはこの5人だ。

 

「さーて、今度こそ勝っちゃう、ぞ、お……」

コヨーテを宣言した千束。言葉がどんどん尻すぼみに小さくなっていく。

眼前に広がる数字は、10,2,4,15,そして、MAX→0のカード。

合計16。見事、コヨーテ失敗だ。

 

「だぁああ~!またかよ~!」

頭を抱え大げさにのけぞる千束。

ほかのプレイヤーには横にカードがおいてあり、人形が描かれている。。

その数がプレイヤーの残機を差すので、カードがそもそもない彼女はこのターンで脱落となった。

 

「はぁ~。やっぱトビア混ざると、この手のゲームは一気にバランス崩れるわね~」

「なんの、強敵に挑まなくては楽しくないでしょう」

「…皆さん、あとどれくらい残機残ってます…?」

「「「………」」」

「やめて?化け物見る目でぼくの事見るの、本当にやめて⁉」

つまりは、こういうことである。

 

なにも、トビアは特殊なことをしたわけではない。

とにかくそれっぽい表情をしただけである。今回では初めに回ってきたのでともかく、自分の番になるとそれはとにかく意味深な表情をするのだ。

わざとらしいすっとぼけ方をしたと思ったら、次のターンには神妙な表情。時折「おっ」なんて声を出しては場の空気を不安にさせる。かと思えば、その次には表情を読ませないポーカーフェイス。周りはたまったものではない。

 

「だいたいトビア、顔うまく使いすぎでしょ~」

千束が口をすぼめながら文句を言う。トビアの心理攻撃の被害に一番遭っていたのは彼女だ。

彼がそんな行動をするたびにいちいち反応して、周りを疑心暗鬼にさせる。そしてそれを見て、千束自身も不安になるという悪循環が出来上がる。

 

「ま、所詮はハッタリだよハッタリ。その位でいいんだ」

じっとりした視線を周りから向けられてもトビアはどこ吹く風だ。

 

 

「………」

そんな彼らとはテーブルを別にして突っ伏している顔が一つ。

たきなだ。

何を隠そう、真っ先にトビアの餌食になっていたのは彼女だ。

 

トビアの表情を勝手に解釈し、コヨーテを宣言。1敗。

今度は騙されるかと気合を入れ、周りの空気にのまれ疑心暗鬼になり、またもや宣言。2敗目。

最後はトビアにコヨーテを宣言され、見事に的中。トビアの前の順番だったため3敗目。

ぐうの音も出ないほどの完敗だ。

たかがゲームと言えど、流石に凹む。

 

「なんで、なんで一勝もできずに…」

「元気出せー、たきなー」

横でクルミが慰めとも煽りともとれるトーンで突っついてくる。

 

たきなが本当の意味でリコリコの一員となったあの日。

初めてボドゲ大会に参加し、それから何度かの大会を経て自信をつけた。

そしてこの日、初めてトビアに挑んだのはいいものの、いいようにやられた結果、ここで不貞腐れている。

 

「大体なんですか、あの勘の鋭さ…」

「まー、そこでやられるよな。トビアの奴、周りをひっかきまわしておいて、ここぞというときにぶっこんでくるからな」

“猫みたいなやつだ。”クルミもそうぼやく。

 

「それでも、あいつ負けるときは負けるからあんまり気にするなよ。人生系の奴とか」

「今日のラインナップに無いじゃないですか、それ…」

クルミと一切目を合わせないたきな。いよいよ面倒くさくなってきたなと思ったその矢先、もっと面倒なのがやってきた。

「たきな…悔しいと思わないの…?あの海賊少年に吠え面掻かせたいと思わないの?」

「千束…」

たきなが顔を上げると、先ほどトビアに完敗した千束が仁王立ちでこちらを見ていた。

ちなみにクルミはなんだか面倒な雰囲気を察して、そそくさとトビア達の方へ避難していった。

 

「私たちは一人づつトビアに負けた…。手も足も出せず、完敗だった…」

「……」

拳を握り演説を始める千束に、黙って見つめるたきな。

「だが!しかし!私たちが組めば、一矢報いることも不可能じゃないのではないかあ⁉」

「私たちで…」

「そう!1人じゃだめなら2人で挑む!これもお試しだよ!どこまでトビアに通用するか!」

「どこまで…!」

千束が気炎を上げるたびに、同調するかのように立ちあがってゆくたきな。

クルミはバカを見る目で2人を見つめる。

 

「さあ!やってみないか、たきな君!」

「やります!2人でトビアを倒しましょう!」

「堂々とチーミング宣言すんな」

クルミのツッコミは届かず。

 

なお、今やってるゲームではチーミングも何もできるはずもなく。

 

揃ってテーブルに顔を伏せるバカ2人が居たそうな。

 

「そもそも、トビアってどんなのが苦手なんですか…」

「あ、アクションゲームが結構苦手そうだったなー」

「なんか意外ですね…」

「思った動きができなくてイライラするって言ってた」

「コントロールが下手なのでしょうか?」

「いや、逆に上手すぎてゲームの方がついてけてない。前にコントローラーのスティック、親指でねじ切ってたし」

「斜め上過ぎません…?」

 

 

その2.赤と朝食

 

トビアの朝は早い。

朝の5時には目を覚まし、軽く顔を洗ってジャージに着替えたのち、ランニング。梅雨も空け、日差しが暑く感じる。

たっぷり1時間は走り、6時30分ごろに帰宅。

いつもの仕掛けを起こしたのちに、シャワーを浴び、予め用意していた部屋着に着替え朝食を作る。

 

「今日はリコリコ午後からだし、少し豪勢にしようかな?」

そう言って卵を割り、牛乳とチーズを加えよく混ぜる。スクランブルエッグを作るつもりだ。

「トビアー、コーヒー濃い目の方がいーいー?」

「うん、濃い目でお願いー」

フライパンをあまり熱し過ぎないように気を付け、作った卵液を注ぐ。

目指すは半熟だ。

「付け合わせはベーコン?ウインナー?」

「じゃあ、ウインナーにしておこう」

用意されていた皿にレタスとミニトマトと一緒に盛り付ける。

セットしていたトースターから、勢いよく4枚の食パンが出てくる。

別のフライパンで火を通していたウインナーも出来上がり、準備完了。

 

最後にコーヒーを淹れ、テーブルにセッティング。

両手を合わせて

「「いただきます」」

 

「……いや、いつからいた⁉」

「…6時くらいから?」

「結構怖いんだけど⁉」

 

なぜか一緒にいた千束と一緒に。

 

「来るなら来るって言ってよ…。ていうかどうやって入ってきたんだ?」

「あ、先生から合鍵もらったんだー」

「ミカさん⁉」

朝からトビアが元気にツッコむ。

“そういえば割と前に、朝からいた時もあった…”と頭を押さえている。

それに対してにっこにこの笑顔を見せる千束。なんだか満足げだ。

 

「それで、何かあった?」

朝食を終え、一息ついてトビアから一言。

「ん、いや、最近こういうことしてなかったな~と思ってさ。軽くドッキリしてみた!」

元気いっぱいな千束の回答。対して彼は少し疲れているようだ。

「ああ、うん。なんだろ、そんな気はしてた…」

「まあまあ、美少女からのコーヒーサービスですよー?」

ポッドから2杯目を淹れ、トビアに渡す。

「……まあ、いっか。朝ごはんも手伝ってもらっちゃったし」

「あ、スクランブルエッグめっちゃおいしかった!あれ、お店に出せない?モーニングとかさ!」

 

「そういえば、たきなとクルミが来てから、こういうことも少なくなってきたしね?寂しかった?」

トビアが微笑みながら、そんなことを言う。

「え、や、まー、ね?だって最近、前みたいに2人きりってことも、少なくなってきたしぃ…」

どこかしどろもどろな千束。どうにも図星を突かれたようだ。

「偶にはいいかもね…何さ、その顔」

「やー、うん。考えてみたら、結構恥ずかしいことしてたなー?みたいな?」

「今更…?」

顔を赤くしながら照れ笑う千束に、呆れるトビア。

 

「まったく…。ありがとう、千束」

「トビア?」

不意に、優しげな顔をするトビア。

何かと首をかしげる。

「……。いや、今日はこのまま午後までここに居る?」

「うん!ちゃんと映画持って来たぜっ!」

「時間的に2本だけね?」

“あれ、また呆れた顔になった。”

まあいいかと千束がBDをプレイヤーにセットする。

今回のチョイスは、アメリカの某警察学校を舞台にしたコメディー映画だ。

 

隣に座るトビアの顔を見る。

「…ぷ。ふふふっ…」

先ほどの疲れはどこへやら、とてもすっきりした笑顔だった。

 

「そういえばさー、たきな、スカルハートに憧れてるみたいだよ?」

「うっ」

「あれ~、トビア知ってたんだ~?言ってあげないの~?」

「いや、その、タイミングが、さ?」

「ほ~ん?やに消極的じゃない?」

「…自分で言うのも違うじゃんか…。恥ずかしいし…」

「…私が伝えてあげよっか?」

「いやっ、それも止めて⁉まさかあの時の子とは思ってもなくて…!」

「トビア、その話詳しく」

「…え⁉」

「詳しく」

 

 

 

おまけ

・いつかのDAその4

「大体真似するなら、そっちじゃなくてスカルハート本人をだな…」

「ですが、私は見たことないですし…。フキさんは何か知ってますか?」

「………」

マントを敵に投げ、視界をふさいだ後にマウントを取り殴りつける姿。

ゼロ距離で非殺傷弾を顎に打ち込む姿。

敵の頭を掴み、アスファルトの上に擦り付けながら走る姿。

「………」

「フキさん?」

(確実に悪影響を与えるっ⁉)

 




以下筆者メモ

その1.
・コヨーテ→4人以上でやるとめっちゃ盛り上がる。(主観)
・勝ち方→トビア君のやり方は、私の友人のやり方から。ちなみにその友人は最終的にパロスペシャルを食らってたので、あまり真似するのはお勧めしません。
・しょせんはハッタリ→???「世の中、それぐらいでちょうど良いのじゃ!」
・いじけるたきな→3連敗決められてどんより。やっぱり一勝ぐらいはしたいよね?
・突っつくクルミ→ちびっこがそういうことするの、なんか和むよね。
・人生系→流石にああいう運ゲーはNTでも無理。
・バカ2人→流石にズルして迄は挑む気概はなかった模様。書いてて思ったけど、コヨーテのチーミングってなんだろ?(他人事)
・スティックねじ切り→P〇3でやりました。マヨナ〇アリーナです(実体験)

その2.
・早朝ランニング→たまに短距離走の速さで走ってく人何なんだろ…
・スクランブルエッグ→クッ〇パッド見ながら作った思い出の料理。意外とうまくいくからバカにできない。
・どこでも千束→現実にやられると怖いやつ。報・連・相は絶対。
・映画→ポ〇アカ観ながら飲むバドワイザーはおいしいぞぉ。

おまけ
・頭を掴み→Brack Sunより。とてもじゃないがヒーローの戦い方じゃ無くてびっくりした。…まあ、ブラックさんの場合は、なんかすすき野みたいな所だからまだマイルド…?
・悪影響→トビアのせいでその気遣いもおじゃん。

今回も、ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。

……
あの、お気に入りいつの間にか100件超えてるんですケド…。
う、嬉しいんですよ?
まさか私の拙作が、こんなにも大勢の人に読んでもらい、お気に入りにしてもらい、評価される。本当に夢のような状況です。

でも、やっぱり謎にプレッシャーがががが……。


あ、それはそうと次回の投稿も未定となっております。

それでは皆さん、またお会いする日まで。

感想・評価、お待ちしております。

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