いよいよ12月、一気に寒くなり皆さんいかがお過ごしでしょうか。
私は実家からの要請で、車2台をスタッドレスタイヤに履き替えてました。
久々にやって、めっちゃ背中張って痛いです…。
さて、今回は頭空っぽで作った短編になります。
ゆるーく楽しんでいただければ幸いです。
それではどうぞ。
数値なんて知るかッ!
私はスーパードライをかっ込むぜッ!!!
その1.青と大会
「11」
「ん~、13!」
「じゃあ、16」
「よし、21!」
「コヨーテ!」
ある日の喫茶リコリコ。
毎度恒例のボードゲーム大会にて、常連たちの楽しげな声が響く。
今回はカードを額につけ、その場の合計値を予想し、順番に予想していくゲームのようだ。
「よし、じゃあ合計のチェックだ」
トビアの号令で、額のカードをちゃぶ台に並べる面々。今残っているのはこの5人だ。
「さーて、今度こそ勝っちゃう、ぞ、お……」
コヨーテを宣言した千束。言葉がどんどん尻すぼみに小さくなっていく。
眼前に広がる数字は、10,2,4,15,そして、MAX→0のカード。
合計16。見事、コヨーテ失敗だ。
「だぁああ~!またかよ~!」
頭を抱え大げさにのけぞる千束。
ほかのプレイヤーには横にカードがおいてあり、人形が描かれている。。
その数がプレイヤーの残機を差すので、カードがそもそもない彼女はこのターンで脱落となった。
「はぁ~。やっぱトビア混ざると、この手のゲームは一気にバランス崩れるわね~」
「なんの、強敵に挑まなくては楽しくないでしょう」
「…皆さん、あとどれくらい残機残ってます…?」
「「「………」」」
「やめて?化け物見る目でぼくの事見るの、本当にやめて⁉」
つまりは、こういうことである。
なにも、トビアは特殊なことをしたわけではない。
とにかくそれっぽい表情をしただけである。今回では初めに回ってきたのでともかく、自分の番になるとそれはとにかく意味深な表情をするのだ。
わざとらしいすっとぼけ方をしたと思ったら、次のターンには神妙な表情。時折「おっ」なんて声を出しては場の空気を不安にさせる。かと思えば、その次には表情を読ませないポーカーフェイス。周りはたまったものではない。
「だいたいトビア、顔うまく使いすぎでしょ~」
千束が口をすぼめながら文句を言う。トビアの心理攻撃の被害に一番遭っていたのは彼女だ。
彼がそんな行動をするたびにいちいち反応して、周りを疑心暗鬼にさせる。そしてそれを見て、千束自身も不安になるという悪循環が出来上がる。
「ま、所詮はハッタリだよハッタリ。その位でいいんだ」
じっとりした視線を周りから向けられてもトビアはどこ吹く風だ。
◆
「………」
そんな彼らとはテーブルを別にして突っ伏している顔が一つ。
たきなだ。
何を隠そう、真っ先にトビアの餌食になっていたのは彼女だ。
トビアの表情を勝手に解釈し、コヨーテを宣言。1敗。
今度は騙されるかと気合を入れ、周りの空気にのまれ疑心暗鬼になり、またもや宣言。2敗目。
最後はトビアにコヨーテを宣言され、見事に的中。トビアの前の順番だったため3敗目。
ぐうの音も出ないほどの完敗だ。
たかがゲームと言えど、流石に凹む。
「なんで、なんで一勝もできずに…」
「元気出せー、たきなー」
横でクルミが慰めとも煽りともとれるトーンで突っついてくる。
たきなが本当の意味でリコリコの一員となったあの日。
初めてボドゲ大会に参加し、それから何度かの大会を経て自信をつけた。
そしてこの日、初めてトビアに挑んだのはいいものの、いいようにやられた結果、ここで不貞腐れている。
「大体なんですか、あの勘の鋭さ…」
「まー、そこでやられるよな。トビアの奴、周りをひっかきまわしておいて、ここぞというときにぶっこんでくるからな」
“猫みたいなやつだ。”クルミもそうぼやく。
「それでも、あいつ負けるときは負けるからあんまり気にするなよ。人生系の奴とか」
「今日のラインナップに無いじゃないですか、それ…」
クルミと一切目を合わせないたきな。いよいよ面倒くさくなってきたなと思ったその矢先、もっと面倒なのがやってきた。
「たきな…悔しいと思わないの…?あの海賊少年に吠え面掻かせたいと思わないの?」
「千束…」
たきなが顔を上げると、先ほどトビアに完敗した千束が仁王立ちでこちらを見ていた。
ちなみにクルミはなんだか面倒な雰囲気を察して、そそくさとトビア達の方へ避難していった。
「私たちは一人づつトビアに負けた…。手も足も出せず、完敗だった…」
「……」
拳を握り演説を始める千束に、黙って見つめるたきな。
「だが!しかし!私たちが組めば、一矢報いることも不可能じゃないのではないかあ⁉」
「私たちで…」
「そう!1人じゃだめなら2人で挑む!これもお試しだよ!どこまでトビアに通用するか!」
「どこまで…!」
千束が気炎を上げるたびに、同調するかのように立ちあがってゆくたきな。
クルミはバカを見る目で2人を見つめる。
「さあ!やってみないか、たきな君!」
「やります!2人でトビアを倒しましょう!」
「堂々とチーミング宣言すんな」
クルミのツッコミは届かず。
なお、今やってるゲームではチーミングも何もできるはずもなく。
揃ってテーブルに顔を伏せるバカ2人が居たそうな。
◆
「そもそも、トビアってどんなのが苦手なんですか…」
「あ、アクションゲームが結構苦手そうだったなー」
「なんか意外ですね…」
「思った動きができなくてイライラするって言ってた」
「コントロールが下手なのでしょうか?」
「いや、逆に上手すぎてゲームの方がついてけてない。前にコントローラーのスティック、親指でねじ切ってたし」
「斜め上過ぎません…?」
その2.赤と朝食
トビアの朝は早い。
朝の5時には目を覚まし、軽く顔を洗ってジャージに着替えたのち、ランニング。梅雨も空け、日差しが暑く感じる。
たっぷり1時間は走り、6時30分ごろに帰宅。
いつもの仕掛けを起こしたのちに、シャワーを浴び、予め用意していた部屋着に着替え朝食を作る。
「今日はリコリコ午後からだし、少し豪勢にしようかな?」
そう言って卵を割り、牛乳とチーズを加えよく混ぜる。スクランブルエッグを作るつもりだ。
「トビアー、コーヒー濃い目の方がいーいー?」
「うん、濃い目でお願いー」
フライパンをあまり熱し過ぎないように気を付け、作った卵液を注ぐ。
目指すは半熟だ。
「付け合わせはベーコン?ウインナー?」
「じゃあ、ウインナーにしておこう」
用意されていた皿にレタスとミニトマトと一緒に盛り付ける。
セットしていたトースターから、勢いよく4枚の食パンが出てくる。
別のフライパンで火を通していたウインナーも出来上がり、準備完了。
最後にコーヒーを淹れ、テーブルにセッティング。
両手を合わせて
「「いただきます」」
「……いや、いつからいた⁉」
「…6時くらいから?」
「結構怖いんだけど⁉」
なぜか一緒にいた千束と一緒に。
◆
「来るなら来るって言ってよ…。ていうかどうやって入ってきたんだ?」
「あ、先生から合鍵もらったんだー」
「ミカさん⁉」
朝からトビアが元気にツッコむ。
“そういえば割と前に、朝からいた時もあった…”と頭を押さえている。
それに対してにっこにこの笑顔を見せる千束。なんだか満足げだ。
「それで、何かあった?」
朝食を終え、一息ついてトビアから一言。
「ん、いや、最近こういうことしてなかったな~と思ってさ。軽くドッキリしてみた!」
元気いっぱいな千束の回答。対して彼は少し疲れているようだ。
「ああ、うん。なんだろ、そんな気はしてた…」
「まあまあ、美少女からのコーヒーサービスですよー?」
ポッドから2杯目を淹れ、トビアに渡す。
「……まあ、いっか。朝ごはんも手伝ってもらっちゃったし」
「あ、スクランブルエッグめっちゃおいしかった!あれ、お店に出せない?モーニングとかさ!」
「そういえば、たきなとクルミが来てから、こういうことも少なくなってきたしね?寂しかった?」
トビアが微笑みながら、そんなことを言う。
「え、や、まー、ね?だって最近、前みたいに2人きりってことも、少なくなってきたしぃ…」
どこかしどろもどろな千束。どうにも図星を突かれたようだ。
「偶にはいいかもね…何さ、その顔」
「やー、うん。考えてみたら、結構恥ずかしいことしてたなー?みたいな?」
「今更…?」
顔を赤くしながら照れ笑う千束に、呆れるトビア。
「まったく…。ありがとう、千束」
「トビア?」
不意に、優しげな顔をするトビア。
何かと首をかしげる。
「……。いや、今日はこのまま午後までここに居る?」
「うん!ちゃんと映画持って来たぜっ!」
「時間的に2本だけね?」
“あれ、また呆れた顔になった。”
まあいいかと千束がBDをプレイヤーにセットする。
今回のチョイスは、アメリカの某警察学校を舞台にしたコメディー映画だ。
隣に座るトビアの顔を見る。
「…ぷ。ふふふっ…」
先ほどの疲れはどこへやら、とてもすっきりした笑顔だった。
◆
「そういえばさー、たきな、スカルハートに憧れてるみたいだよ?」
「うっ」
「あれ~、トビア知ってたんだ~?言ってあげないの~?」
「いや、その、タイミングが、さ?」
「ほ~ん?やに消極的じゃない?」
「…自分で言うのも違うじゃんか…。恥ずかしいし…」
「…私が伝えてあげよっか?」
「いやっ、それも止めて⁉まさかあの時の子とは思ってもなくて…!」
「トビア、その話詳しく」
「…え⁉」
「詳しく」
おまけ
・いつかのDAその4
「大体真似するなら、そっちじゃなくてスカルハート本人をだな…」
「ですが、私は見たことないですし…。フキさんは何か知ってますか?」
「………」
マントを敵に投げ、視界をふさいだ後にマウントを取り殴りつける姿。
ゼロ距離で非殺傷弾を顎に打ち込む姿。
敵の頭を掴み、アスファルトの上に擦り付けながら走る姿。
「………」
「フキさん?」
(確実に悪影響を与えるっ⁉)
以下筆者メモ
その1.
・コヨーテ→4人以上でやるとめっちゃ盛り上がる。(主観)
・勝ち方→トビア君のやり方は、私の友人のやり方から。ちなみにその友人は最終的にパロスペシャルを食らってたので、あまり真似するのはお勧めしません。
・しょせんはハッタリ→???「世の中、それぐらいでちょうど良いのじゃ!」
・いじけるたきな→3連敗決められてどんより。やっぱり一勝ぐらいはしたいよね?
・突っつくクルミ→ちびっこがそういうことするの、なんか和むよね。
・人生系→流石にああいう運ゲーはNTでも無理。
・バカ2人→流石にズルして迄は挑む気概はなかった模様。書いてて思ったけど、コヨーテのチーミングってなんだろ?(他人事)
・スティックねじ切り→P〇3でやりました。マヨナ〇アリーナです(実体験)
その2.
・早朝ランニング→たまに短距離走の速さで走ってく人何なんだろ…
・スクランブルエッグ→クッ〇パッド見ながら作った思い出の料理。意外とうまくいくからバカにできない。
・どこでも千束→現実にやられると怖いやつ。報・連・相は絶対。
・映画→ポ〇アカ観ながら飲むバドワイザーはおいしいぞぉ。
おまけ
・頭を掴み→Brack Sunより。とてもじゃないがヒーローの戦い方じゃ無くてびっくりした。…まあ、ブラックさんの場合は、なんかすすき野みたいな所だからまだマイルド…?
・悪影響→トビアのせいでその気遣いもおじゃん。
今回も、ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。
……
あの、お気に入りいつの間にか100件超えてるんですケド…。
う、嬉しいんですよ?
まさか私の拙作が、こんなにも大勢の人に読んでもらい、お気に入りにしてもらい、評価される。本当に夢のような状況です。
でも、やっぱり謎にプレッシャーがががが……。
あ、それはそうと次回の投稿も未定となっております。
それでは皆さん、またお会いする日まで。
感想・評価、お待ちしております。