なんのこっちゃと思うあなた、どうぞ今からでもそこまで遅くないのでぜひご一読を!
まさか、あんなん出すとは…!
さて、今回はお茶濁しの短編集です。
ほんの少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
それではどうぞ。
WBCの日本快進撃にビールが止まらない……!
その1.夏の風物詩と成長
「お、重い…。千束、トビア、いい加減、これが何なのか、教えて、欲しいんですけど…」
「んー?それはねー、これから行くところの手土産だよー?丸くて、赤―い実がたっぷり詰まってるー…」
「…なるほど、首ですね」
「どこへの土産⁉」
照りつける様な日差しに、蝉の声。
千束たち3人は、各々手荷物をもって移動していた。
向かう場所は、いつもの保育園。
「冗談ですよ。私だって冗談の一つや二つは言えるんです」
ふふん、と言わんばかりのドヤ顔を見せるたきな。
「や、やるじゃん…。言うようになったな、こやつ…」
「冗談に聞こえなかったのは、ぼくだけ…?」
そんなたきなに引きつった顔を見せる千束とトビア。
今回は保育園からの依頼で、子供用プールの掃除を頼まれていた。
子供用と言えど、ビニールプールのようなちゃちなものではなく、浅いながらもしっかりと作られたもので、きちんと掃除をする必要がある。
「もう、すっかり夏ですものね…。夏の風物詩、というやつですか」
「あのさ、そう言いながらお土産抱えてなでるのやめて…?さっきの冗談のせいで恐ろしいものに見えてくるから…!」
「冗談です」
「なんで楽しそうなの…?」
どうやら千束たちを振り回せるのが楽しいのか、かわいらしく微笑みながらそんなことを言って来る。
「ホントに変わったなぁ…」
思わず、しみじみ。
まだ1年にも満たない付き合いではあるが、随分と彼女は笑うようになった。
梅雨入りの少し前まで悩んでいたあの物憂げな顔が嘘のようだ。
「あなたたちに揉まれましたからね」
いたずらっぽく言うたきな。
「私だって、成長するんです!」
夏の日差しに照らされた彼女は、とても眩しい笑顔をしていた。
「まあ、これが何なのかはわかりましたが、トビアが持っているのは何ですか?」
たきなが巾着袋に入れた大きなスイカを抱えながら、トビアに聞く。
彼の肩には大きな保冷バッグが掛かっており、これで釣り竿でも持っていればそのまま海にでも行ってしまいそうな大掛かりな荷物だ。
「これはスイカを切った奴とパイナップルとミカンの缶詰、それに2ℓサイダーを何本か。フルーツポンチでも作ろうかと思ってね」
そう言うトビアは、大荷物にもかかわらず少しの疲れもにじませない。
「大体、保育園に包丁とかある訳ないし、スイカは見せる用と先生たちへのお土産になりそうだからさ。こっちはこっちで子供にお土産」
「なるほど、結構考えてますね…」
保育園側の事情も考慮し、子供を思いやるトビアに感心するたきな。
一方で、隣の千束が何やらしまったと言わんばかりの表情だ。
「…そうじゃん!どうやって食べればいいんだ⁉うわチョイスミスったー‼」
「…こっちは何も考えてなかったんですね…」
ジトっとした視線を向けるたきな。
「たきな、そういうことは思っても言わない。自分が一番分かってるんだから」
トビアがどうどうとなだめる。
「追い打ちやめて!掃除で挽回するからぁ~!」
千束の叫び声が夏空に溶けていった。
◆
「そういえば、お祭りのときとかも保育園で行ったりするんですか?」
「流石に夜は危ないから、昼間の出店とかだね」
「みんなで法被着たりとかもするよー」
「なるほど。それでふんどし締めて太鼓とか叩くんですね?」
「たきな~、流石に引っかからないよ~。今時そんなのしないよ?からかいすぎ~」
「えっ」
「「えっ?」」
「「「………えっ?」」」
・その2.海賊とサシ飲み
「珍しいですね、ミカさんが飲みに誘うなんて」
「まあな。お前の外見もあるから、外の店でというわけにもいかないが…」
とっくに閉店時間を過ぎた喫茶リコリコ。
そのカウンターにミカとトビアの2人が並んで座る。
その手元には、グラスとウイスキーの瓶。
「とりあえず、乾杯」
「乾杯」
グラスを鳴らし、一口。
酒が飲める年齢になってから8年近く経つが、のどを焼く感覚はまだ少し慣れない。
「それにしても、なんで誘ってくれたんですか?」
「まあ、そんなに深い理由はないさ。…今日は質問攻めで大変そうだったからな。その慰労だな」
「ああ…、うん、お気遣いありがとうございます…」
思わず疲れた声が出る。
今日は、事情を今まで知らなかったたきなとクルミに対しての質問会があった。
あの夜の時に軽い説明はしていたものの、今回はもっと踏み込んだもの。
クロスボーン・ガンダムの説明に加え、宇宙世紀のこと。
おまけに、興味を持った千束が途中参加し、いかに自分が海賊に参加したのか、そう言った自分語りもさせられたため、トビアの精神はゴリゴリ削られていった。
「流石に恥ずかしいって…」
「付き合いの長い私たちも聞いたことなかったんだ。それぐらいは仕方ないさ」
ぐったりとしながら一杯煽るトビアに、ニヒルな笑みを浮かべるミカ。
どこか対照的な2人だ。
「それにしても、クルミのガンダムに対しての食いつきはすごかったな」
「あ~、まさか武装構成から装甲材まで聞いてくるなんて…。この時代に無いんだから聞いてもしょうがないだろうに…」
ちなみに、クロスボーンの過剰なまでの接近戦を意識した武装構成に“これはスポーツ用の機体か何かか?”とはクルミの感想。
「それでも、ドクロのレリーフは意外と高評価でしたね…」
「そういう遊び心は大切だ、だったか?」
ウモンじいさん辺りとは趣味が合いそうだ。
「それに、宇宙世紀自体にツッコミが集中してたっけ…」
「それはそうだろう。人口の半分が犠牲になってるのに、なんでああも紛争と戦争を繰り返してるんだ…」
“このシャアという人、いったい何がしたかったんですか…”とはたきなの感想。
地味に腐敗を続ける地球連邦にも、“なんで戦争起こされたか分かってるんですか、この政府”と辛口評価が下されていたが。
「あと、木星戦役の話をした辺りから、千束とたきなの目つきが鋭くなってましたね」
「あ、ああ、うん。…そう、だな」
“やっぱり彼女たちも戦士なんだな”と思い返すトビア。
自分が元々は木星との交換留学のために訪れた、ただの学生であったこと。
木星帝国の恐ろしい計画を目の当たりにして、殺されそうになったこと。
そこから宇宙海賊に助けられ、木星と戦う彼らの活動に参加することになったこと。
木星圏の過酷な環境と、そこに生きる人々の苦しみを垣間見たこと。
恩師だと思っていた人と戦い、分かり合えないまま、助けられたこと。
そして、この戦いの全ては、ただの人間が起こしたものだったということ。
話す内容が多くて、ところどころとっ散らかりながらもなんとか伝えた、自分の物語。
わりかし恥ずかしかったのだが、まるで冒険譚だと喜んでくれたのが少しうれしかった。
ただ、千束とたきなの目つきが時折険しくなるときがあった。
たしか、彼女の話をした辺りだ。
ベルナデット・ブリエット。
木星帝国を率いる総統の娘で、父の暴走を止めようと一人海賊に参加した少女。
そして、トビアにとって大切な、戦う理由の一つ。
「ペズ・バタラやX3の話をしたときは、結構目を輝かせてたのになぁ」
「ん、んん!…まあ、あいつらもいろいろあるのさ…」
ふと、同じ戦いに関する事柄を語った時と違った反応をしていたことを思い出し、首を傾げる。
特にクロスボーン・ガンダムの3番機、X3に初めて乗り込んだ時の話なんて一番食いつきが良かった。
“主人公じゃん!かっくい~!”という千束の称賛ともからかいともつかない感想が、なんともこそばゆかった。
“伊藤さんにネタ提供しなければ…!”と言われて必死に止めたが。
「……トビア、聞いておきたいことがある」
「ミカさん?」
不意に、ミカが真剣な表情でトビアに向き合う。
「どうしても、元の世界に戻りたいか?」
「?え、ええ」
「…最後の、この時代に来る直前の戦いを聞いて思ったことがある」
「はあ、どのことですか?」
「コロニーレーザーを破壊したあたりだ」
「………」
「お前は、そこから脱出する際に気が付いたらここに居た、と言ったな」
「……はい」
「それは正確ではないな?」
「………」
正直、この人は気づくだろうなとは思っていた。
トビアが最後に参加した作戦“鋼鉄の7人”
約6億km離れた木星から地球をコロニーレーザーによって直接攻撃する”神の雷”作戦の阻止を目的とした、少数精鋭の特殊作戦チーム。
数多の犠牲を払い、新しい総統とレーザー本体の撃破を成し遂げ、そこから逃げる途中、気が付いたらこの時代に来ていた。
我ながら随分と都合よく語ったものだ。
トビアはグラスを手に、話し始める。
「…爆発を繰り返すコロニーの中、クロスボーン・ガンダムはもう限界を迎えていました…」
「………」
「指一本も動かせない中、同じく限界を迎えていた…仲間の機体に助けられました」
「………」
「その機体にX1の手を掴まれて、勢いよく投げられて、……それとほぼ同時にレーザー本体が大爆発を起こしました」
「…その仲間は…」
「……はい、巻き込まれていきました…」
「……お前は、どうだったんだ…?」
ミカが、静かに問いかける。
もう予想がついたのだろう、目線は手元のグラスに戻っている。
「……爆発の光が、目を焼いていく感覚はありました…」
「…トビア、もし戻ったら、お前は…!」
「ミカさん」
言って、向き合う。
「それでもおれは、帰りたいんだ」
「トビア…」
「またな、って約束したんだ。だから、何が何でも帰らくちゃ」
「……」
ミカは悲しそうに目を伏せる。
果たして、自分は今笑えているだろうか。
そんなことを思い、トビアも目線を手元に戻す。
グラスの氷が解ける音がいやに大きく聞こえる。
男2人、カウンターから動かず。
喫茶リコリコの夜は更けていく。
◆
「X1の正式名称って、クロスボーン・ガンダムじゃないですか。クロスボーンはあの背中のスラスターの事だとして、ガンダム?と思いまして」
「ああ、確かにそうなるよね…。うーん…」
「トビア?そんなに悩むことが?」
「まさか、あの名前に何か意味が…!なんか顔もカッコいいし!」
「確かにあのデザインはかなり趣味的だよなぁ…!」
「いや、何というか、…正直、売れる名前と顔、としか答えようが…」
「「「え?」」」
以下、いつもの
その1.→スピンオフより
・冗談→真顔で言うもんだから2人ともビックリ。
・ドヤ顔たきな→かわいい。
・スイカなでなで→なんでか思いついちゃった画。元ネタ何だっけと思ってたら、そらおとでした。
・フルーツポンチ→缶詰のシロップも入れて、中身をくりぬいたスイカに入れるとなかなかの迫力。
・ふんどし→感想欄のネタその2。そう言えばちっちゃい頃、親戚のおじさんに赤ふん買ってあげるなんていわれたことあったなぁ。(どセクハラ)
その2.→ぶっちゃけ説明回。回想の回想という訳の分からない構成に…。
・ウイスキー→洋画だとやたらバーで飲んでるイメージ。向こうの人にとって、バドワイザーすらジュース扱いだとか。
・質問会→まあ、バレちゃったし仕方ないね。
・XBガンダムの武装→すごい速度ですっ飛んできて、シールドごとぶった切る。結構怖い画だとおもうの。
・ドクロのレリーフ→実は額にこれがない状態のXBガンダムが描かれてるシーンがあったりします。
・宇宙世紀→結構短いスパンで終末戦争を繰り返す魔境。
・シャア→誰よりも坊やだった人(個人の感想)それでも宇宙世紀全体で見ても1・2を争うエースだったのは間違いない。
・地球連邦→実はクロスボーンでもあまり良く描かれてなかったりする政府。
・木星戦役→無印版クロスボーンのこと。全6巻で読みやすいので、まだの方は是非!(ダイマ)
・ベルナデット→実は拙作で名前出すのは初めてだったり。
・X3→立体化するたびに、あまり口元を再現してもらえない不憫な主人公機。(メタビルはしっかり再現してた)戦闘回数が4・5回ぐらいしかないからかな?(VSエレゴレラ、死の旋風、連邦基地、ノーティラス、ディビニダド)
・神の雷作戦→ミノドラ無ければ打つ手なしだった辺り、かなりどうしようもなかったトンデモ作戦。
・仲間の機体→アンヘル・ディオナ。人の顔のようなフェイスパーツが特徴だが、実質バタラなコマーシャル機体。何だったらビームシールドすら装備してない。
・戻ったら…→正直、原作でもその後の展開がなければ死んだものだと思いかねない、そんなワンシーンでした。
・何が何でも…→「トビア・アロナクスは行けなくても…」
・ガンダム→宇宙世紀の住民、結構そんなこと思ってるヒトも多そうだな、という妄想。
そう言えば、私以外にもリコリコとガンダムをクロスオーバーさせる命知らずが増えてきて、嬉しい限りです。
ていうか、私よりも面白いんですケド…。
悔しい…!でも一緒に頑張ろうな!の気持ちでいっぱいです。
さて次回の投稿ですが、例によって未定です。
7話相当になるかな…あんま変えるとこないんだよなぁ、あの話…。
それでは皆さん、またお会いする日まで。
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