最終更新日より約八ヶ月、本当にお待たせしました。
皆さんの望んだ内容ではないでしょうが、面白く読んでいただけたら幸いです。
ボリック暗殺から三ヶ月が経ち、帝国の各地で不満を持っていた民達が、安寧道の武装蜂起と連動するように蜂起した。
更にそれに合わせて、三方を囲んでいる異民族たちも帝国に進行して来たため、帝国軍はもちろんのこと、武装親衛隊や帝国近衛軍までもが、反乱分子や異民族を殲滅するために動き出した。
文武官が仕事に追われている真下、珍しくオネスト大臣がムソウのいる保安本部の爆破騒ぎで修繕されたばかりの執務室に訪れていた。
「さすがムソウ殿ですな、反乱軍とつながりのある傭兵や暗殺者狩りを終わらせるだけでなく、西と南の異民族を押さえつけるとは。あとは、望むとすれば帝国内から追い出していただけると嬉しいのですがなぁ」
「それは皆、武装親衛隊の成果であり、私の成果ではない。賞賛の言葉は、我が兵にこそ向けるべきだ。そして帝国内から異民族を追い出すには、我が武装親衛隊だけでは兵力が足りぬ」
「そうですかな?ムソウ殿の武装親衛隊なら可能だと思いますが?」
流石のオネストとて、ムソウの絶対領域である保安本部、それも執務室内で食べながら喋ると言う品性の欠片もない愚行は犯さなかったが、神経を逆なでするような表情を浮かべている。
「確かに不可能とは言わぬが、そうなると反乱軍鎮圧に向ける兵力を軍のほうに任せるが構わんか?」
「ええ、よろしいですとも。無欠開城など帝国の領主として相応しくない者たちの粛清も行わなければなりませんからな」
内と外両方に向けている武装親衛隊の攻撃を外のみに向けた場合、簡単にとムソウは言わないが帝国領から完全に排除することは可能だ。
そもそも反乱軍の最終目的地が帝都である以上、異民族を排除次第攻め込めば帝都防衛につく軍と挟撃することが可能だ。
「ああ、そうだムソウ殿。一つお願いがありまして、強制収容所の中から幾人か罪人が欲しいのです。譲ってはくれませんか?」
「藪から棒に、それで理由は何だ?内容によっては考慮せんこともないぞ」
「実力を見たい者達がいるのですが、手ごろな罪人が手元にありませんでして。それでムソウ殿が管理されている強制収容所に
「その実力を見たい者達の実力を試す際に、私も同席してもかまわんか?」
ムソウが自身が同席しても良いかと訊いた瞬間、大臣の目が鋭くなった。
見た目では典型的な腐敗しきった貴族そのものと言って過言ではない大臣だが、その実力は幼い皇帝を権力闘争や帝位継承を勝ち抜かせた切れ者だ。
だからと言って、中身が腐っていないとイコールではなく、その実態は無駄に頭が切れるだけの見た目以上に腐敗しきっている外道だ。
「ええ、かまいませんとも。ただ、今の情勢下でムソウ殿もお疲れの様子。私としても、これ以上ムソウ殿に心労を掛けるのは心が痛んでしまいますからなぁ。このような細事にムソウ殿が直接来られなくてもいいと思いますが?」
大臣は、心にもないことを無駄に蓄えている髭をなでながら言い放った。
ムソウもそのことを見抜いているが、あえて口にするような愚かなことはしない。
見られては困るものが、あるのは今の大臣の態度ではっきりとした。
そして保護拘禁している反社会分子という名の罪人をこのタイミングで求めたのも、シュラが背後で絡んでいることをムソウは見抜いた。
大方報告にあった、シュラが連れてきた人材の実力を図るのが目的なのだろう。
しかしあの程度の奴に、わざわざオネスト自身が出張るとは、それだけ価値があるのか、それとも別の目的があるのか。
ムソウとしては、自身が不在の間に大臣がシュラへ何かしらの権限を与えるとばかり考えていたが、その権限もしくは権力を渡していないこと自体が意外であった。
むろんムソウとて何も考えていなかったわけではない。
大臣が動けばすぐに知らせが来るように常に大臣の周りには国内諜報を司るAmt Ⅲ ⅢAの者に監視を行わせていたし、牽制となる情報を幾らか握っていた。
そのため、手札を切らずに済んだと思うべきかムソウは珍しいことに少しばかり悩まされた。
「そうか、大臣の心遣い痛み入る。ならば、使った後の処理はそちらで行ってもらうが問題はないな」
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「ええ、始めからそのつもりですぞ」
大臣はムソウがあっさりと引き下がったことに違和感を感じながらも、あえて虎の尾ならぬ黄金の獣の尾を踏むようなまねはしなかった。
これが、ただの文武官ならば気がかりであると感じた瞬間に、適当な罪をでっち上げて裁く大臣だが、相手がムソウとなるとそうもいかない。
不安定な情勢の元、ムソウと明確に敵対すれば大臣を見限る者が出てくるとも限らない。
そして見限り自身の派閥からムソウに近しい派閥に入閥されでもしたならば、危うい均衡で成り立っている宮中勢力のバランスが崩壊してしまう。
大臣は内心は兎も角として、表面上は同じ帝国に仕える忠臣として仲良くやっていきましょうといった表情をすることで場の空気を濁すことにした。
「ならばいい、強制収容所にはこちらから連絡を入れておく。必要になったら取りに行くがいい」
「お手間を取らせましたな」
大臣はそれだけを言うとムソウの執務室を出て行き、その姿が見えなくなるのを確認した、ムソウは高級感を一目で感じ取ることができる革張りの椅子に体を預けた。
それと同時に、扉を三度ノックされた。
「入れ」
居住まいを改めず、ムソウはノックをした者に入室の許可を出した。一人の保安本部隊員が入ってきた。
「失礼致します。大臣の息子シュラが帝都へと連れてきた人物とその経歴をお持ちいたしました」
「あの小僧のことだ、各国でも指折りの危険人物を引き連れてきているであろう」
「はっ、すべての人材に犯罪歴があります」
「資料をもらおう」
ムソウは隊員から資料を受け取ると、ほんとに読んでいるのかと疑いたくなる勢いでパラパラと資料に目を通した。
切裂き魔に、西の国の魔女裁判で有罪になった者、人体実験に海賊、シリアルキラー。
そのうち4名が帝具持ち。
ムソウの計画に支障をきたすほどの者たちではないが、余計な仕事を増やされることを想像するのは難しくない。
「なるほど、ハインリヒにゲシュタポを使いこの者たちへの監視体制の強化及び常時排除可能の装備を装備させるように伝えろ」
「はっ!!」
おおよそ大臣が次に動く手が見えてきたムソウは、先んじて手を打つことにした。
監視下に置く者の中で5人中4人は帝国内で今現在は犯罪を起こしていない。
1名はすでに中央部のジョヨウで子供の大量虐殺を行っているため、常時監視下に置いていた。
そのため、シュラが連れてきた者たち全員の情報を早く正確に手に入れることができていたのだ。
「さて、大臣とシュラがどのように動くか少し待つとするか。ブドーのことも気になるからな……」
反乱軍の動向は各地に潜ませている諜報員から寄せられる情報で知っているムソウは、ある程度の情報をわざと大臣やブドーなどに流している。
むろん意味もなく情報を流しているわけではなく、反乱軍という分かりやすい光を見せることで、その裏で動いている計画の目くらましに利用している。
光が強ければ強いほど闇は深く不落なるものだが、光が強すぎるがゆえに闇に気づくことができず、気づいた時が1000年もの続いた帝国の最後の時である。
そのことに気づくのがいつになるか楽しみだ、ムソウは内心自身の計画に気づき潰そうと動く強敵が現れることを期待している。
そうでなければ、あまりにも……
Side オネスト
「やれやれ、反乱だ進行だと最近はめんどくさいですなぁ…ストレスで退場が増えてしまいますよ」
「ギャハハ喰い過ぎだぜ親父」
「土産がうまいですからね」
笑いに品性がないと思いながらも、それを口にはせず肉にかぶりつく。
「可愛い子には旅をさせよと言いますから、帝国の外に出しましたが、なかなか立派になって帰ってきましたね。嬉しい限りですよシュラ」
「いろいろ巡ってきたぜぇ、世界各地をよ。で、思ったけどやっぱりこの帝国は相当の先進国だわ。南方諸島とか北野凍土とか田舎すぎたぜ。鉄砲とかねーし」
「この帝国に次ぐ文明というとやはり西の王国が一番でしたか?」
「ああ、錬金術とか独自の文化があって面白かったぜ。心残りは、東方未開の地と言われた島国に行けなかったことかな」
「東海の果ては未知の領域ですから仕方ありません」
「でもよぉ、旅の宿題として出されてた”使えそうな人材集め”はきっちりこなしてきたぜ親父」
「ほほう、それではさっそく見てみましょうか。なかなか手ごわい相手をわざわざムソウからいただいてきましたから」
オネストは、シュラが自身の期待を裏切らない人材を集めて来ていると信頼し、集めてきた者たちを試すためにムソウから帝都警備隊では手に余る罪人を得てきた。
「てことは親父、認めてくれたら帝都で自由にできる権限とエスデスの姉ちゃん見たいな組織を作らせてくれよ」
「はぁ、まあいいでしょう。ですがあまりおいたをしないで下さいよ。いくら私でも今はムソウと正面からぶつかりたくないですから。特に調子に乗っている良識派を潰し終わるまでは」
ゾッとする様な笑みを浮かべている
「さて、練兵場に行きますよシュラ。あなたが連れてきた人材がどれほど使えるか私に見せていただきますよ」
「ああ、全員実力者ぞろいだ。期待していろよ親父」
大臣は持てるだけ食べ物を持つと、立ち上がり練兵場へと向かい、シュラは待たせている仲間たちの元へと向かった。
――練兵場
雪が降る中、ローマのコロッセオに似た構造の中央には、20人を超える者たちが剣や槍、斧など各々が得意とする武器を持ち固まっている。
それを見下ろすような観客席とはまた違う、一段と高い位置から大臣とシュラは見下ろしていた。
「よぉ、オマエら!!このままだと処刑させられちまうらしいぜ!!そこでどうだ、俺とゲームしてみねえか?俺が勝てばお前らは全員死刑、お前らが勝てば無罪放免、とてもシンプルなゲームだ!!」
手すりに足を乗せ、体を乗り出しながらシュラは声を張り上げると、ガコッ音を響かせると杭のように打ち付けられた門が上がり、そこから背の高い者低い者、太った者様々な者たちが練兵場内に入ってきた。
「おいおい、まさかたった5人で俺たちを殺す気でいるのか」
「笑いさえ出てこないレベルだぜ!!」
「ねえ、殺していい殺していいよね、もう殺すね、殺そう!!」
大臣がムソウより譲り受けた、保護拘禁という名目の反社会分子たちは5人殺すだけで無罪放免で釈放されると分かると殺気立ち始めた。
例えこの場から逃げられたとしても、すぐに保安本部に拘束されることを想像できていない時点で、知能のレベルがわかる。
大臣は、なんて品がなく頭が悪い連中なんでしょうねぇ、と思いながら肉にかぶりついていた。
「シュラ、さっさと始めさせたらどうです。こんな寒いところに居ては、温かい食べ物が覚めてしまうでしょう」
「分かってるぜ、親父」
大臣に催促されたシュラは、改めて声を張り上げた。
「お前ら、さらに追加だ。お前らが俺が用意した5人を殺し切れば賞金をくれてやるぜ!!殺した奴は1人につき100万でどうだ!!」
「金か、金をくれるのか!!」
「全く死刑囚は、どれもこれも気楽で単純ですねぇ。私も反乱軍や異民族を殲滅しないとストレスで、食欲がなくなりますよ」
「親父はいつも食ってるから、たまには減らす程度でちょうどいいんだぜ」
「言うようになりましたねぇ、シュラ。反抗的な子供には、親の愛として少しお仕置きが必要ですかな」
「はっ、この程度反抗どころか、気にもしていないくせに」
シュラが鼻で笑いながら言ったとおり、大臣は気にせず練兵場内を見下ろした。
次の更新がいつになるか、未定ではございますがお待ちいただけたら幸いでございます。
誤字脱字に関しては、教えていただけたら幸いです。