更新してない間もランキングに乗り続けていたことに驚きを隠せずここまで人気があると、逆にプレッシャーになって逃げていいかなと思ってしまったり::
10月31日一部編集
11月22日一部編集
20150102 誤字修正
――テンスイ村
異民族と交易をし、その利益を革命軍に渡していた。
その罪により、重税を課せられながらも村一丸となり、いつの日か皆で優しい未来を掴み獲ろうと日々を楽しく過ごしていた、そんな村は地獄と化していた。
少し前までが幻想であったかのように屍の山が築き上げられ、流れ出した血は河となった。
この地獄を作り上げたのは、帝国の抱える闇の一つである、暗殺部隊。
そしてもう一つが、移動虐殺部隊として悪名高い、アインザッツグルッペン。
特にアインザッツグルッペンの名を知らない帝国軍人の中には、存在しないと言ってもいいだろう。
帝国において、虐殺や殲滅をする部隊であり、その対象は危険分子である可能性、敵性分子であり敵性分子を匿った村、街が対象だ。
つまり帝国民が対象だ。
アインザッツグルッペンが動くのは、ムソウが必要だと判断した時つまり、敵性分子と断定された存在か危険分子に成りえる者が居る時だ。
そして過去、アインザッツグルッペンが襲った村、街の生き残りは零だ。
そのアインザッツグルッペンの手によって老若男女区別なく、村人たちは次々と撃ち殺されて行き、大臣の用意した帝国軍暗殺部隊によって、切り殺されて行った。
殺され方は違えど、村人たちは悲鳴を上げ、逃げ惑う。
しかし誰も容赦なく殺し続ける。
「お願いだ、助けてくれ!!」
「子供だけは、子供だけは助けてくれ!!」
「来月出産なの、お願い助けて!!」
「年寄りを少しはいたわらんか!!」
「見逃してくれたら私を好きにしていいから。ね、お願い!!」
「こいつをやるから、助けてくれ」
「私を見捨てないで」
「まって、僕を置いて行かないで」
「あなたまって!!」
「離れろ!!俺だけ助かればいいんだよ!!」
「私達友達でしょ!!」
「パパ、ママおいてかないで」
青年が、母親が、妊婦が、老人が、若い美女が、子供が、泣き叫ぶ赤子が、誰もかれもが懇願し、悲嘆し、怒号を上げ、助けを求めた。
だが、無情にも頭を撃ち抜かれ、身体を穿たれ、一刀両断され死んでいく。
今の帝国の中でも、このテンスイ村が最も命の価値が安い場所となっていた。
そんなテンスイ村を小高い丘から見下ろしている者達がいた。
鳴り響く銃声。
離れていながらも聞こえる、怒号や悲鳴。
村に充満する硝煙の香りがこちらまで漂ってくる。
築かれていく屍の山。
それを満足そうに見下ろしており、今作戦を命令実行させた張本人であるムソウと周囲を警戒しながらも今起きている惨劇を記録している護衛係と記録係三百人の保安部員。
「後どれ程で終わる」
「村の人口も考えると後五分ほどで」
近くにいた、アインザッツグルッペン指揮官に訊くと直ぐに答えた。
「その位か、暗殺部隊も意外と使えるものだな」
村の人口に対して、アインザッツグルッペン、暗殺部隊で掛かれば、時間はそれほど掛からず殲滅できるだけの能力がある。
ムソウが直接指揮していないとはいえ、ムソウが視察している中で遊びが出来るほどアインザッツグルッペンは、怖いもの知らずと言う訳ではない。
むしろその逆で、アインザッツグルッペンが最もムソウの恐ろしさを知っている部隊だろう。
言葉一つで簡単に虐殺を命じる、それは権力者の特権と言ってもいいだろう。
だが、その権力を持っている者達は、誰一人として虐殺の現場に居合わせることはない。
恐いからだ。
虐殺を命じられた者は、命乞いをする者達を、愛し合っている者達を、親子を、時として自分の生まれ故郷でさえ自身の私情を殺し、虐殺しなければならない。
軍人である以上命令は絶対であり、本人が望む望まないにしろ殺さなければならない。
そんな殺し続けてきた者達が、いつ精神の限界が訪れ、壊れてしまい命令した本人にその牙を剥くか分からない。
過去に一度、精神の限界が訪れ命令した者に牙を剥いた、という事実があるのならばなおのことだその現場に居合わせたくないと誰もが考えるものだ。
少し前の話になるが、大臣の命令で虐殺をしていた部隊長がいた。
その者は虐殺を何度もやっている内に趣味と化してしまい、遂には適当な村を見繕うと自身の権力で部下に命令し虐殺をやらせた。
何度も何度も何度も何度も、数えることが馬鹿らしくなるほどの数を、命じられたがために、虐殺しなければならなかった側は、ついに精神的限界が訪れてしまい部隊員たちは虐殺するために与えられた矛を部隊長向け、殺し解放された部隊員たちの矛先は次に帝都へと向けられた。
一人二人ならば、部隊長になるだけの武力、知力を持っているので対処できただろう。
しかし矛を向けて来たのが、部隊員全員となると話は変わってくる。
四百人からなる部隊の反乱に対しその場で対処できる者は、エスデスやブドーと言った将軍、大将軍級やムソウと言った、ほんの一握りの例外位だろう。
しかし彼らは運がなかった。
偶然にも部隊長の趣味で虐殺していた村がムソウの通り道だったのだから。
アインザッツグルッペンを直接の指揮下に置き、西の異民族と内通し、異民族の侵攻の為に用意してある西の砦を滅ぼすためにアインザッツグルッペン約千名を引き連れていたのだ。
「報告します。この先の村で帝国軍の部隊が村を虐殺した形跡有、その部隊は部隊長を殺し反乱。こちらへと向かって来ております!!」
西の砦以外の西部方面では、反乱の可能性、劣等種である異民族との繋がりは確認されていないため、ムソウへ報告も上がっていない。
さらにムソウが通る道での反乱の兆候、虐殺する必要のある村や街はなく、大臣が虐殺を命じている部隊はここ最近存在していない。
つまり、この虐殺は部隊長、またはそれ以上権限を持つ地方役人の独断となりえる。
ここ最近、西方面で異常に虐殺が立て続けに起きている、という報告自体は存在していたため、諜報部に探らせていたが、その部隊が原因の可能性も十分考えられる。
諜報部からの報告がまだな以上決めつけは良くないが、十分に粛清対象だ。
そう結論づけた後のムソウの行動は迅速を極めた。
「分かった。お前たちは砦における殲滅戦が任務だ。これは任務外であり不測の事態だ。ならば不測の事態に対処するのは上に立つ私の仕事だ」
ムソウは、部下にそう言うと馬から降り、己の帝具を顕現させた。
黄金に輝く槍。
見惚れる様な造形美。
常人ならば見ただけで魂が蒸発する不滅の黄金。
しかしこの場に常人など存在しない。
誰もがムソウから聖痕を刻まれ、黄金の獣が鬣の一本となっているのだから。
顕現した帝具、聖約運命ロンギヌスの捻じれるように作られている持ち手を持つと、軽く振りかぶり溜める動作を見せることなく投擲した。
ロンギヌスは空間を捩じるかのように破壊を撒き散ら、黄金の軌跡を描きながら進み、こちらへと向かってくる部隊の中心に着弾した。
直後、巨大隕石でも落ちたかと思わせる衝撃が爆音に続き、ゼロコンマにも満たない僅かな間と共に、木々をなぎ倒す爆風と灼熱が襲いかかり何もかもを破壊しつくした。
まるで破壊がこの世の全てであると思わせるかのように。
殲滅、今までアインザッツグルッペンが手掛けてきた作戦もそうだが、桁が違いすぎるとこの場に居合わせた誰もが感じた。
投擲されたはずのロンギヌスはいつの間にかムソウの手元へと戻って来ており、ロンギヌスが着弾した場所は巨大なクレーターが出来上がっていた。
死体は一切残る事無く蒸発してしまった。
個の持ち得る力ではない。
帝具、そのカテゴリーに入るだけで済まされる破壊規模ではない。
それを一個人で、やってのけたのだ。
「何を立ち止まっている。障害物は払った、直ぐに進軍だ」
「はっ!!」
今までは誰もが、ムソウの持つ有無も言わずに跪きたくなるカリスマ性、皇帝を傀儡とし、思うがままに権力を振りかざす大臣に対抗できる神算鬼謀、武力で幅を利かせる警備隊を抑制する保安部の指揮、そして何よりも帝国軍全体を凌ぐ勢いのムソウの個人私兵である武装親衛隊。
その一つ一つが誰もが羨み欲すものであり、それを一手に持っているムソウは誰から見ても憧れであり、嫉む対象である。
そんなムソウが、軽く投擲するだけで巨大隕石の落下衝撃に等しい力を持っているなど悪夢に等しい。
いや、いっそのこと悪夢であってほしかっただろう。
このことが切っ掛けの要因の一つではあるが、ムソウは更に畏怖の象徴となった。
ついでに言うと、巨大なクレーター跡地は今では湖となっていたりする。
「報告します。テンスイ村殲滅完了しました」
テンスイ村を虐殺と言う名の粛清をしていた一人が報告しに来た。
「概ね予定通りか。暗殺部隊の遊びが多いのは目に余るが、今回の目的はこれだけではない。撤収準備だ、直ぐにここを発つ全員に伝えておけ」
「はっ!!」
報告しに来た隊員は、ムソウからの命令を聞くと部隊員全員に伝えるべく村へと駆けて行った。
今回の殲滅戦は、二つの目的がある。
一つは文字通り、劣等民族との交易をした村の殲滅。
もう一つが、元大臣チョウリの保護だ。
偶然を装い上手く合流し帝都へと向かえば、帝都へとチョウリを消したいと思っている大臣が刺客を送ってくるはずだ。
その刺客を一人でも捕縛できれば十分大臣の牽制になる。
襲ってこなくても良識派が増え、大臣の牽制にもなるどちらに転んでもムソウが損をすることはない。
「撤収準備整いました!!」
流石にムソウがいると全ての行動に無駄がなくなる様で、直ぐに撤収準備が出来た。
「暗殺部隊の方はどうなさいますか?」
「捨て置け、元々奴らの指揮系統は別だ」
暗殺部隊の方は、あくまでも大臣の方に指揮系統が在り、合同作戦と銘打ちながら指揮権はムソウに与えられなかった。
それ以前に暗殺部隊と言いながらもほぼ大臣の私兵に近いため、手駒を水面下で敵対しているムソウに指揮権を与えるはずがなかった。
今回はあくまでも視察であって、アインザッツグルッペンの指揮権は、通常通り部隊長に持たせておりムソウは持ってはいない。
ならば、何故命令が出来るかというと、アインザッツグルッペンそのものが、保安部員で構成されたムソウの私兵であるからだ。
少し前までは、形式上とはいえアインザッツグルッペンは保安部からの臨時動員とはいえ軍の一つの部隊であった。
しかしその任務の特殊性、機密性から軍では扱いの難しさも相嵌り、好んで使う様な者はいなかった。
臨時動員とはいえ軍の部隊でありながら、使うのがムソウだけであったと言うこともあり、いつの間にか軍の臨時動員と言う形で保安部から人数を軍が借り受けたはずの部隊であった、にもかかわらずそのまま保安部の方へと部隊名を持ったまま帰属したのだ。
「では撤収する!!」
ムソウの号令とともにアインザッツグルッペンは帝都へと向かい歩み出した。
帝都近郊――
「この村もまたひどいな……民あっての国だと言うのに」
牛車の中から村の様子を見て、毛根が死滅した頭を光らせながら老人は嘆息した。
「そんな民を憂い、毒蛇の巣である帝都へと戻る父は立派だと思います」
父と言っている以上老人の子供であろう、少女は父を褒め称えた。
この二人こそ元大臣チョウリとその娘スピアだ。
「命欲しさに全てをムソウ殿に任せ、隠居している場合ではないな……国が亡ぶ。こうなってはワシもあの大臣ととことん戦うぞ!!」
「父上の身は私が守ります、ですからご安心ください!!」
チョウリは優秀すぎる元同僚であるムソウに一抹の罪悪感を感じていた。
そんな父を思ってか、スピアは父を勇気付けようとした。
「良い子に育ったのう。勇ましすぎて嫁の貰い手がないのが玉に傷だが……」
「そ、それは今関係ないでしょう!!」
チョウリは優しい娘に感動しつつも結婚適齢期だと言うのに未だ嫁に貰われない娘に苦笑いしてしまい、スピアもそのことは気にしているのか、顔を赤らめブツブツと落ち込むと言う中々器用なことをした。
そんな時だった、牛車の前に立ちはだかる三人の人影があり、壮年の男性、巨体に斧のような物を担いでいる男、男か女か見分けのつきづらい子供、今まで襲ってきた盗賊の中でも異質であった。
「また盗賊か!?治安の乱れにも程がある!!」
ムソウの担当する場所や、保安部の管轄内では盗賊行為は一切起きていない。
正確には盗賊となり得る芽さえも摘んでいると言うのが正しい。
敵性分子や危険分子となり得る存在は、芽の段階で確りと処理しているからこそ、ムソウの目の届く範囲では盗賊が生まれることはないのだ。
ならば、他の場所から流れて来るのでは?と言う疑問も生まれて来るだろう。
だが、そんなことは起きえない。
保安部が見回っている範囲内でそのようなことが起きれば、すぐさま討伐隊が組まれ最後の一人まで殺し尽くすのだ。
そんな奴らが守っている所に好き好んで襲おうなどと考えるほど、盗賊どもも馬鹿ではない。
「今までと同じように蹴散らす!!油断するな!!」
牛車から降りたスピアは愛槍を構えながら、護衛を激高した。
「行くぞっ!!」
スピアが言うと護衛全員が賊へと襲い掛かった。
巨体の男は背中の巨大な斧へと手を伸ばすと、襲い掛かる護衛を横へ一閃、全てを薙ぎ払った。
辛うじて防御が間に合ったスピアは愛槍を真っ二つにされ、腹部を斬られただけで致命傷は避けることが出来た。
「へぇ……お姉ちゃんやるねぇ。ダイダラの攻撃で死なないなんて」
子供がスピアにそう言うと、懐からナイフを取り出した。
「でも、これから起こることを考えると死んどいたほうが楽だったかもね」
恍惚とした表情でありながら、背筋が凍りそうにスピアはなった。
巨体な男は護衛を全て倒し終わると、牛車を縦に一千真っ二つに裂き、中にいる標的を強制的に出した。
「お、お前は帝国の将兵!!」
「はい、貴方の政治手腕は尊敬しておりました」
「な、ならばなぜ私を狙う!!!」
チョウリは襲い掛かって来た賊を知っていた。
今の大臣に頑なに賄賂を送らなかったために更迭された将軍だ。
大臣の派閥に属さない穏健派と言ってもいい方だった。
それが、今では大臣の尖兵めいたことをしていると知ってはショックも人一倍だろう。
「主の命令は」
そう言い、チョウリの首を刎ねようとした時だった。
ダダダダダッンっと連続して轟雷のように腹の底から痺れるような銃声が響き渡った。
チョウリは反射的に頭を抱え地面に伏した。
「ニャウ、ダイダラ」
「ボクは大丈夫だよ」
「ああ、俺もだ」
壮年の男は仲間二人の無事を確認すると、銃撃のあった方を見た。
そこには、三段構えで銃を構えるアインザッツグルッペンの姿があり、今のが警告である事を察するのは難しくなかった。
一目で保安部の人間だと分かるのには理由があり、保安部は軍部とは違った黒服と言われる専用の制服が在り、誰もが一目で保安部員であると分かるようになっている。
だからこそ、帝都内でも保安部員は良く目立ち、帝都警備隊をも取り締まることが出来るのだ。
逆に言うと一目で保安部が不正をしている事が分かるため、保安部の不正は本来の罰則以上の刑になるのだ。
そんなもの達で構成されており、なおかつ纏う雰囲気が通常の部隊や保安部のそれとはかけ離れている。
それが、いくら帝国最強の攻撃力を誇るエスデス軍や帝国守護の要である近衛部隊と比べて尚異質であった。
あれ程”死”を濃密に感じられるのは、アインザッツグルッペンだけだ。
多くの戦場に出たエスデス軍でさえ、エスデス個人ならいざ知らず、部隊規模で考えるのならば見劣りしてしまうものを感じてしまう。
「仕方ない、引くぞ」
「おいおい、良いのか?まだ標的殺せてねぇぞ」
「そうだよ。ボクもまだ」
「お前たち良く見て見ろ、あれはアインザッツグルッペンだ。アインザッツグルッペンがいると言うことは、事前情報通りであるならば視察に向っているあの獣もまたいると言うことだ」
「「!!」」
二人は、男が何を言いたいのか瞬時に理解した。
自分たちの主を簡単にあしらうことの出来る化け物相手に勝てる、そう思うほど自惚れるほど三人とも馬鹿ではない。
「分かったよ」
「しかたねぇか」
「撤収するぞ」
チョウリを襲った三人は急ぎ逃げ去った。
「大丈夫か、チョウリ殿」
「ムソウ殿、すまぬな助けてもらって」
護衛は全滅し、斬られてしまったチョウリの娘は現在保安部の者に応急手当てを受けている。
腹部を斬られたとはいえ、致命傷は受けていなかったため大事には至らずチョウリはホッとしていた。
「チョウリ殿、襲ってきた賊はどのような者達でした」
「っ!!、一人は帝国の将兵だ。残り二人は知らぬが、巨体な男で巨大な斧を持っていたな。もう一人は少年とも少女とも取れる風貌の子供じゃった」
それだけの情報でムソウは犯人を確信とまでは行かずとも、可能性があるもの達に心当たりがあった。
三獣士、エスデスの部下でありエスデス軍の中核を担う存在だ。
穏健派の連続殺害もエスデスが帰って来てから起き始まった。
つまり、大臣がエスデスを嗾けたと言うことになる。
あの女は、自身の欲求さえ満たせれば例えそれが、愛すべきムソウの敵対者である大臣の命でも聞き入れてしまう。
ある意味一番危ない女だ。
「チョウリ殿、道中また何があるか分かりませんから私たちとご一緒にどうですか?娘殿も負傷しておられるようですし」
「すまぬ、なにからなにまで面倒を掛けて」
「いえ」
ムソウは、見惚れる様な笑みを浮かべながらも、内心大臣の政敵を増やせ動きを抑制できるなと計算していた。