働くハイエルフ様   作:柔らかいもち

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 一度完成したデータが吹き飛んで最初から書き直すことになりました。雑なところが見受けられるかもしれません。ごめんなさい。

 そして時系列が一気に飛びます。アポロン、イシュタルはすっ飛ばします。

 料理は適当にやれば大変なことになります。作者が幼い頃にクッキーを作った時、一度目は非常に美味なクッキーではない何かができましたが、二度目は普通の材料しか使ってないはずなのに、緑や青のクッキーができました。

 もう働くってタイトルが仕事しなくなって来た。それでもいい方はお読みください。


派閥の料理人

「さぁ、料理の時間だ」

 

 狭いながらも器具や設備は充実した調理場で、白い厨房服と白いコック帽を身に纏う真っ白なハイエルフ――レティシアが調理を開始した。

 

「ふっ!」

 

 気合の息を吐くと同時にまな板の上の食材を次々と宙に放り投げて長年愛用している包丁を振るう。虚空に銀線が走る度に人参、じゃが芋、玉葱といった様々な食材の皮が剥かれ、均等な大きさに切り分けられてフライパンの中へ落ちていった。

 

「はっ!」

 

 全ての食材を切り終えると包丁の代わりに熱されていたフライパンを振るう。荒々しく派手に振るわれているというのに食材は一つとして零れることなく、宙を華麗に舞ってはフライパンに戻っていく。

 

「はぁっ!」

 

 更に主神の寝室からちょろまかしてきたブランデーを下から上に振る。優雅な弧を描いたブランデーがフライパンに注ぎ込まれると業火が立ち上り、たちまち食材の香ばしい香りが調理場に立ち込めていく。

 

「――完成だ」

 

 一つまみの調味料をスタイリッシュに振りかけられて皿に盛りつけられた料理。その味は口にした侍女の表情が一瞬で恍惚に彩られ、服を脱ぎ捨てて下着姿になっていく光景を見ればわかるだろう。美味な料理特有の後光もさしている。

 

 ヤバい薬をキメたかのような侍女の行動を欠片も気にせず、レティシアはふりふりのレースがふんだんに使われたメイド服を着こなしているフレイヤに目を向ける。

 

 ――見せてみろ、貴様の腕を。

 ――ええ、わかってるわ。

 

 視線だけで互いの意思を交換しながらフレイヤが血に濡れた包丁を手に厨房に立つ。……気のせいでなければフレイヤが持っている包丁は夜になると笑いながら徘徊するアンティークドールの物なのだが。夜に動いていたところをオッタルとアレンに見つかり、圧倒的な筋肉と俊足でボコボコにされた挙句に壁尻とケツ穴をキメられ、より一層呪いの人形らしくなった。今では夜にならなくても例の二人が近付くだけでしくしくと泣き出すようになってしまった憐れな人形の得物を、本拠(ホーム)に好奇心で解き放ったエルフが見間違えるはずがない。

 

「んっ」

 

 フレイヤがまな板の上に並んでいた食材をまな板をひっくり返すことで空中にぶちまけ、包丁を一閃させる。……食材の大半は包丁に掠ることなく床に落ち、残りはあらぬ方向に弾き飛ばされるか包丁にめり込んで装飾品になってしまった。もちろんフライパンには入らない。

 

 当然の結果である。レティシアだって風精霊(シルフ)の風で皮を剥き、正確に切断し、フライパンに落ちる軌道を調整しているのだ。一般人以下の能力のフレイヤに真似できるはずがない。技術だけでできるとしたらとある酒場の女将くらいだろう。

 

「えぃっ」

 

 諦めてまな板の上で切った食材をフライパンに入れると、フレイヤはブランデーを一気に注ぎながらフライパンを振るった。……レティシアよりも遥かに激しい炎が生まれ、火だるまになった食材があちらこちらに吹っ飛んでいく。厨房に燃え移った炎はレティシアが鎮火し、フライパンの業火はフレイヤが慣れた手つきで消火する。

 

 当たり前の話だ。無駄に格好付けて酒を使っても危ないだけである。レティシアだって火精霊(サラマンダー)に火力を調整してもらえなければあんな真似はしない。というかこの料理に本来酒は必要ない。

 

「――完成よ」

 

 差し出された料理はどう形容しても調味料に埋められた数個の炭である。その味は恐る恐る口にした侍女が口を押さえてひっくり返り、床をしばらくのたうち回ってからピクリとも動かなくなったのを見れば想像できるだろう。髑髏の形の煙も漂っている。

 

 わかりきっていた未来だ。今回用意した調味料はレティシアでなければ使いこなせない配合の物だ。料理ができないフレイヤの正解はメイド服を着ていることを利用して「美味しくなーれ! もえもえきゅんっ♡」をするべきだったのだ。そうすればフレイヤ大好きな侍女は笑顔で食べて笑顔で昇天しただろう。

 

 それにフレイヤは無駄な動きが多かった。料理に無駄なパフォーマンスを挟めば味は落ちる。レティシアのは無駄のない無駄な動きであるため、味に大した影響はない。

 

 厨房から運び出されていく新たな犠牲となった侍女を尻目に、レティシアは口を開いた。

 

「馬鹿みたいな行動が多過ぎて料理以前の問題だ。よって今日も不合格」

 

 フレイヤは久しぶりに理不尽というものを体験した。

 

 そもそも何故フレイヤがレティシアに料理の指導を受けているのか。話は数日前に遡る。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

「フレイヤが料理を上手にできるようにするぞ」

 

 都市最強の【フレイヤ・ファミリア】の本拠(ホーム)、『戦いの野(フォールクヴァング)』。日も登っていない早朝から叩き起こされ、集められた『円卓の間』でハイエルフの縛り術で拘束された主神を見せつけられて殺気立つ幹部陣を前に、『【フレイヤ・ファミリア】の潤滑油』を自称するレティシアは格好付けて扉を蹴り開けようとして痛めた足を庇いながら宣言した。

 

 ――本来、レティシアは【フレイヤ・ファミリア】に殺されてもおかしくない。しかし彼女が眷属になったことで治療や食事、事務処理を一挙に引き受けていた『満たす煤者達(アンドフリームニル)』の労働環境が大幅に改善されたことで、食う寝る戦うで一日を消費してしまうう○こ生産機達はおいそれと手出しできなくなった。事実、レティシアが漁に出かけた一ヶ月の間、幹部まで書類の山と戦っていた。

 

 別にレティシアは【フレイヤ・ファミリア】を脅威と思っていない。幹部を含めた全ての団員がやってこようと真正面からなら返り討ちにできる。だが戦闘の心得はほとんどないため、暗殺や奇襲をされると防衛本能でオラリオごと滅ぼすことになってしまう。よって、ベルを殺すことを避けるために派閥にとって自分が利益のある存在だと示したわけである。

 

 そんな感じで殺気立つ以外に何もできない幹部達を鼻で笑いつつ話を進める。

 

「既に知っていると思うが、そこの女神は私の子に惚れている。ベタ惚れと言っても過言ではない」

「待ちなさい。私は惚れられることはあってもその逆はないわ」

「見ての通り、ベルが絡むとベタなツンデレ(ポンコツ)になる程度にはぞっこんだ。別に恥じる必要はないぞ? 私の子は優良物件だからな。女性冒険者の間で流行ってる順位(ランキング)でも上位に入っている。お姉ちゃんと呼ばれたいとかなんとか」

 

 ぷくっと頬を膨らませるフレイヤに何名か「くっ」と胸を押さえて悶え、残りは敬愛する主の関心を攫う兎に舌を弾く。

 

「そこで本題だ。私は基本的にベルが選ぶなら文句は言わないが、もしフレイヤを選んだら全力で反対する。何故か? 料理が下手だからだ」

 

 姑みたいなこと言い出したぞこのアマ。アルフリッグは女神を侮辱したハイエルフに拳を固めた。

 

「容姿だの性格だの財力だの。そういったものは求めない……いや異性であることは絶対だが。ただ一つ、料理の腕だけは譲れない」

 

 面倒な姑だぞこのアマ。ドヴァリンは呆れを含んだため息を吐いた。

 

「私の持論だが、いい食事はいい人間を育てる……無能で高慢な貴族を見ていると揺らぎそうな持論だけどな。オッタルはミアの豪快な料理を毎日食ってでかくなったし、私の素晴らしい料理を食べたベルは素晴らしい成長をしたし、フレイヤの失敗料理を食べた孤児院のガキはマセガキに育っている。これだけで食事の重要性がわかるだろう?」

 

 うるせえ姑だなこのアマ。ベーリングは他者を貶して自画自賛に勤しむハイエルフに眉をひそめた。

 

「それに私は孫を抱きたい。ベルには子供を一人は作らせる予定だから、フレイヤと結婚でもしたら子供の味覚が破壊されること間違いなしだろう。不味い飯を食べて暴君や不良になってほしくないから、料理が下手な限りフレイヤをとことん邪魔するぞ」

 

 老害の姑だなこのアマ。グレールは超越存在(デウスデア)と人類では子供を作れないことを知っているのか疑わしいハイエルフに馬鹿を見る目を向けた。

 

「そこで本題だ。フレイヤ、もし貴様が私の求めるレベルの料理を作れるようになればとびっきりのプレゼントをやろう。都市の外に私の知る限りでは世界一の天才がいる。ソイツは馬鹿と天才を紙一重で生きている変態でな……見た目さえ整っていればモンスターにも欲情するあまり、スリルを求めて本来なら子を成せない種族同士でも子作りできる薬を開発していた。それを取り寄せてやろう……ついでに純粋極まりないベルでも一線を越えられずにはいられない状況も整えてやろう」

「「「「とんでもない姑だなこのアマ!」」」」

 

 遂に我慢できなくなってツッコんでしまったガリバー兄弟。直後に爆炎、氷塊、迅雷、閃光の『魔法』が彼等に襲い掛かり、ガリバー兄弟は使い古された玩具のように床に転がった。

 

 誰も心配の声を上げない。仲間意識が薄いという理由もあるが、もう慣れてしまったのだ。薄情な連中に非難の眼差しを浴びせながらレティシアは話を進める。

 

「ただし! もし見込みがなければベルが貴様を好く可能性を消し飛ばしてやる。あの子のタイプは清純な街娘だからなぁ……この前娼館に行った時に見た『女体盛り』でもやらせれば脈はなくなるぞ」

 

 ヘディンが凄まじい形相をレティシアに向けた。極寒と灼熱を往復する眼差しが何処に行ってるんだお前と告げている。

 

 レティシアが娼館に行ったのは好奇心が半分、精霊との契約が半分である。彼女と契約している精霊は基本的に無償で力を貸してくれるのだが、我の強い何柱かの『大精霊』は見返りを要求してくる。その内の一柱、雷精霊(トニトルス)が求めたのは『男が性的に興奮するもの』である。

 

 淫乱女神が主神の派閥に入団したら適当に連中の情事を覗き見すればいいだろうと高をくくっていたのだが、『何が悲しくて美人が自分以外の野郎に組み敷かれているのを見ないといけないんじゃい』と雷精霊(トニトルス)が面倒なことを言い出した。仕方なく自分が相手をしようとフレイヤの誘いに乗ってみれば、『ふぉおおー! キマシタワー!』と興奮した雷精霊(トニトルス)が力を漏らすようになった。流石のフレイヤも伝説の戦闘種族みたいな髪型になってしまうほどの電気を纏う女には萎えてしまい、レティシアは二度と閨に誘われなくなった。

 

「期限は私の『女体盛り』が極まるまで。具体的には『女体盛り』を試食した奴の服が美味さで弾け飛ぶまでだな。あっ、『女体盛り』の実験台にはアーニャになってもらう予定だからアレン、お前が『女体盛り』の試食係な」

 

 瞳孔が開ききったアレンが襲い掛かるも、王族への不敬を許さないヘグニに防がれる。そのまま二人は全力の殺し合いに移行した。

 

 バッキンバッキン剣と槍をぶつけ合う闘猫と妖精を尻目に、レティシアは厳めしい面で黙りこくって気配を消していた団長の肩を叩く。

 

「フレイヤの料理の試食はお前な」

 

 侍女に押し付けよう。強面の下でオッタルは生贄を差し出すことを決意した。鉄の胃袋と高評価の『耐異常』を持つ彼でもフレイヤの手料理は御免被るのだ。食中毒で女神の護衛の任を外れるのは避けたかった。

 

 後日、据わった目をした侍女達に目の前で食事に毒を盛られたが、オッタルは甘んじて受け入れた。

 

 

 

(よし、不自然だったがなんとかなった。馬鹿ばっかりで助かったぞ)

 

 散々語っていたレティシア。フレイヤに料理の特訓をさせるのは彼女のためでもベルのためでもなく、自分のためである。

 

 つい先日まで漁に出ていたレティシア。その間は『豊饒の女主人』を無断でサボっていたのでミアの雷が落ちること間違いなしであり、そのままサボり続ければいいものを悲しきかな。オラリオのバイト生活で社畜根性が染み付いてしまったハイエルフはノコノコと酒場に出勤したのだ。

 

 当然どちゃくそ怒られた。全身の細胞が絶叫するような恐怖と絶望を与え、レティシアをマジ泣きさせた上にちびらせた姉の従者ほどではないものの、ミアもレティシアが逆らえない者の枠に入った。

 

 許してもらうためにレティシアは漁の報酬の海の幸と野菜を渡した。野菜はレティシアを処刑しに来た里の者どもを土に還した大地で『大聖樹』の灰と『アルヴの清水』を使って育てた特別製だ。祟られそうだけど美味しいことは間違いなかったため、そういったことを気にしないドワーフに渡す品として丁度良かった。

 

 ……まぁ食べ物だけでは許されず、当分奴隷労働に甘んじるかフレイヤの料理の腕前を使い物になるまで向上させるかの二択を迫られ、後者を選んだのだが。

 

(私のために犠牲になれフレイヤァ……!)

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 料理の特訓は苛烈を極めた。

 

「いいか、厨房で私のことはシェフと呼べ。私の指導を受けることは金銀財宝を積み上げても滅多に叶わないことだ。幸運を噛み締めながら私の教えを身に付けろ」

「……わかったわ、シェフ」

「貴様が着るのはメイド服だ。形から入ってこれから私の下僕(メイド)になって特訓することを心から理解しろ」

「ひょっとして貴方、料理が絡むとあほになるの?」

「口答えするな!」

 

「……何かしら、その恰好は?」

「見てわからないのか? バニーガールだ」

「厨房にどうしてバニーガールの格好でいるのかを聞いているのよ。貴方を兎として捌けばいいの?」

「後でカジノでバイトがあるからに決まってるだろう。それとこの格好の私を兎として捌くなら、貴様は常に雌豚だから屠畜場送りになるぞ……いや、この間貴様の名前を勝手に使って募集をかけていた職場の方が相応しいか? 確か『のーぱんしゃぶしゃぶ』とか――」

「ヘルン、今から言う場所をアレン達に潰させてきなさい」

 

「貴様、私の指示を聞いていたのか?」

「……聞いていたわ」

「なら何故輪切りするように伝えたキュウリが皮で繋がって連続旗のようになっている?」

「なったものは仕方ないじゃない。そもそもあまり包丁も使わないし、キュウリも扱わないのよ」

「チッ……キュウリなんぞ下の口でしょっちゅう咥えてるだろ」

「死にたいのかしら?」

 

「イシュタルがベルを狙っているみたいなの。偵察に行ってくれる?」

「イシュタルもいい目をしてるな。丁寧に作り上げた料理(こども)を美味しく頂いてもらうことは料理人(ははおや)として冥利に尽きる」

「貴方やっぱりあほになってるでしょう」

 

「何かしら、これは」

「全知のくせになめこを知らんのか」

「キノコのナメコは知っているわ。でも『んふんふ』と鳴く人面キノコのなめこは知らない」

「そうか……まぁいい、絞めろ。今日の料理はそれの出汁を使う。絞めてないと熱湯に入れた時に暴れるわ断末魔が五月蠅いわで面倒だぞ」

「私のこと馬鹿にしてる? 流石にキノコに絞めるなんて言葉を使わないことはわかるわよ」

 

「ベルがイシュタルにレイプされたって本当か!?」

「……まだイシュタルが線を越えたとしか言ってないのだけど」

「ベル―! 私は強姦魔の義母になるなんて嫌だぞ! 恋愛婚しか認めないからな!」

 

 使えなくなった調理器具は数知れず、数多の侍女が犠牲となり、血を見ない日はなかった……料理の特訓で血を見ないって何だ。

 

 だがしかし。遂に地獄のような日々に終わりが訪れる。

 

「……合格だ」

 

 もう何人目かわからない侍女に毒見をさせた後で食べたレティシアの口から出た言葉に、胸の前で手を組んで祈っていたフレイヤはほっと息を吐いた。

 

 引き受けたことを後悔するほどフレイヤは料理のセンスがなかった。この圧倒的マイナススタートからミアの求める基準までフレイヤを鍛えるのにレティシアは血を吐くような日々を過ごした。というかフレイヤが作った有害物質をミアに出して強烈なボディブローを喰らい、本当に血反吐を吐いた。

 

 やっと解放される――肩から力を抜いて気を緩めるレティシアの背後に忍び寄る影があった。もちろんフレイヤである。彼女の手には魔法封じの『呪詛(カース)』が込められた枷があった。

 

 フレイヤは怒っていた。それはもう怒っていた。己のプライドが何度傷つけられたかわからないし、女神の状態で『娘』の顔が出てしまうほど追い詰められたりもした。先に料理が上手くなったもう一人の『娘』は不自然にならないようにするためにベルの相手をしており、自分が苦しんでいる間に甘酸っぱい思いをしていると知って嫉妬を超えて殺意が湧きそうになった。

 

 これは復讐じゃない。美の神であるフレイヤは復讐の女神なんていう哀れな者に堕ちない。これはお礼だ。自分の苦手な料理を克服させてくれたお礼に、レティシアの苦手な近接戦を克服させるのだ。

 

 そう自分に言い聞かせながら忍び寄るフレイヤ。手が届くまであと一歩という距離まで近付いたその時、

 

「ヘグニの人見知りは重症だ」

 

 唐突なレティシアの発言。急に何を、と思ったフレイヤの疑問に答えるかのようにレティシアの独白は続いた。

 

「だからフレイヤの特訓が終われば、次は私の近接戦能力か貴様の惰弱な精神を無理矢理にでも鍛えさせられると伝えたんだ……そしたら奴はどうしたと思う?」

 

 最後まで耳を貸さずフレイヤは扉を開く――そこには誰もいなかった。レティシアが逃げられないように待機しているよう幹部達に命令していたにも関わらず。出し抜かれたことを悟ってか俯くフレイヤの顔を覗き込みながら、レティシアは笑った。

 

「嫌々だったが私の駒になったぞ。今頃オッタル達を足止めしているだろう。私が契約した闇精霊(シェイド)、ダークネスシャドウナイトメアクリムゾンブラックソードの『加護』も異常なくらいヘグニと相性が良かったからひょっとしたら倒しているかもな、はっはっは!」

 

 高笑いしながらレティシアは去っていった。『庭』で繰り広げられている死闘を避けるためか、階段を駆け上がる音が聞こえる。上の階の窓から脱出するつもりだろう。精霊の力で水の上を走れる彼女が空は飛べないとは考えにくい。

 

 フレイヤは震えていた。煽られた屈辱からではなく――作戦が上手くいったことでこみ上げてきた笑いをこらえるために。

 

「きっと貴方は自分の体質に気付いていないでしょう……調子に乗るほど不幸が訪れるなんて、貴方はとても面白い星の下に生まれたのね。普段はギャンブルで負けることで不幸を帳消しにしていたけれど、今回はどうなるのかしら?」

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 夜の空を飛んでいたレティシア。適当な場所に下りて遊びに行こうと考えながら目に付いた路地裏を目指していた彼女は、着地点にとある事情でカエル座りで落ち込んでいた狼人(ウェアウルフ)がいることに気付かず高度を落とす。

 

 ――グシャアッ! と何かが潰れる音が響いた。

 

 




 お願い、死なないでベート。あんたが今ここで倒れたら、レナちゃんやリーネの想いはどうなっちゃうの? タマはまだ残ってる。ここを耐えれば、ヴァレッタをボコれるんだから!

 次回、「ベート死す」。デュエルスタンバイ!

 次回予告は嘘です。玉(タマ)と命(タマ)、どちらが潰れたのかは皆さんの想像にお任せします。

 伝説のさすらいエルフの料理人:無駄に食材が宙を舞い、その料理を食べた者は服が弾け飛ぶかアブノーマルな幻覚が見えることで有名になった。半分は精霊による自作自演だが、残りは勝手に発生したのでおばけがいるんじゃないかと怯えて姿を消した。包丁には《内臓さんこんにちは》という名前をつけている。

 二年前くらいから二次創作を書きたいなー、って思ってた作品があったんですが、全然思い付かなかったんです。でもつい最近思いついたので近いうちに投稿したいと思います。
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