働くハイエルフ様   作:柔らかいもち

7 / 8
 レティシアの天敵を考えていたんですが、アルフィアも魔法を無効化されるだけで二次被害を起こしながら逃げ続ければ勝てるし、ジャガーノートも反射は一瞬だから数でゴリ押しできるし、ベートも耐えきれない。敵いないかなー、と思ってたらいました。ヴェルフです。

 今回も時間は飛びます。15巻まで飛びます。


息子の婚活アドバイザー

 ベルは自分の義母を尊敬して――はいないが深い感謝はしている。

 

 祖父と二人きりで暮らしていた家に唐突に現れたレティシア。彼女はベルが想像していたより遥かに美しいエルフであったが、それ以上に破天荒で傍若無人だった。

 

 母親の役割はこれ以上ないくらい果たしていた。やっていいことや悪いことを褒めて叱って覚えさせ、毎日美味しいご飯の用意と入浴の手伝いと早寝早起きを心がけさせ、しっかりと愛情を注いで育ててくれたことをベルはちゃんと理解していた。

 

 しかし、感謝はしても尊敬はできなかった。悪いことは平気でするし、夜中にベルに内緒で身体に悪いからと禁止していた物を食べてたし、怒ったら口より先に『魔法』を出していた。ベルも子守唄で眠らなければ砂精霊(サンドマン)で無理矢理眠らされたし、祖父や村人がレティシアにちょっかいをかけたことで家や村どころか、近隣の森林や山脈まで何度も滅びそうになった。どれだけ恐ろしい目に遭っても夜這いや覗きをやめず、『おやすみのキッスおくれ』と言って死精霊(バンシー)との接吻をさせられそうになった祖父はある意味尊敬した。

 

 オラリオに来ても変わらず世話をしてくれたのでベルも普通に接していたのだが……それが間違いだったのかもしれない。

 

「ベル、今日から私はお前の婚活アドバイザーだ」

 

 ギルドからの強制任務(ミッション)で初の『遠征』を行った【ヘスティア・ファミリア】が本拠(ホーム)で団欒している最中に呼び鈴も鳴らさずに防犯対策の鎖を焼き切って扉を開け、リビングに置いてあった一番いい椅子に堂々と腰かけたギルド職員の制服姿のレティシアを前にして、ベルは付き合い方を考えなければならないと心の底から思った。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

「……今すぐギルドに就職させてほしい?」

「正確にはアドバイザーって肩書がほしいんだ。ギルド職員じゃないともらえないから」

「……そのためだけにギルドに入るのか? 多くの人間が努力を積み重ねても一握りの者しか選ばれないここに」

「うん」

 

 存在を知っている者は片手で足りるはずの隠し通路を使い、自分に会いに来たハイエルフの要望に肉と皮を失った『愚者(フェルズ)』は内臓も神経もないのに痛みを訴えだした頭と腹部を押さえた。

 

 ギルドは実力主義で誠実でなければならない。レティシアの能力はギルド職員に求められる水準を余裕で満たしているが、コネや賄賂で入ることは迷宮都市を管理する機関の信頼を一気に失いかねないためできない。欲望に忠実なギルド長でさえ理解してやっていないことを、ギルドの真の主であるフェルズができるはずもなかった。

 

 正しい手続きと長い研修を経てギルドに入ってほしい。だが、フェルズには即座に断れない事情があった。

 

「おいおい、まさか断るつもりか? 【ロキ・ファミリア】を蹴散らして『異端児(ゼノス)』をダンジョンに生きて帰してやった恩をもう忘れたのか? 『のうくちゅ』して怪人(クリーチャー)から絞り出した『都市の破壊者(エニュオ)』の計画は覚えてないのか? スッカスカの骨だから記憶力もないのか?」

 

 肩を組みながらフェルズの顎を叩いてカタカタと音を立てているレティシアの言う通り、フェルズは彼女の力を借りた。長年の調査からレティシアが『異端児(ゼノス)』を殺さない性格をしている可能性に賭けて、ベルを通じて依頼を出した。

 

 こうしてフェルズがしっかりと生きていることからわかるだろうが、賭けに勝った。しかし、フェルズはレティシアの力を借りたことを激しく後悔した。

 

 レティシアは強かった。勇者の勘も賢者の知恵も神の策略も、精霊を統べる王の力には敵わなかった。

 

第一級冒険者を昏倒させるほどの衝撃を生む疾走を続けながら『魔法』を乱射する。それだけで【ロキ・ファミリア】はまるでゴミのように吹き飛ばされ、奇襲で統率者と見なされていたフェルズだけでも仕留めようとしたガレスも、フェルズの護衛として貸されていた『オラオラ』『ウラウラ』『ドラドラ』としか喋らない筋肉ムキムキの精霊――レティシア自身見覚えのない――によって可哀想なくらいボコボコにされた。敵であるフェルズも同情したくらいだ。

 

 途中で【ヘルメス・ファミリア】がベルを『英雄』に戻すために嵌めようとしてきたが、

 

雷精霊(トニトルス)の電気で記憶消去か、花精霊(ドライアド)の花粉で薬漬けか、闇精霊(シェイド)の洗脳で闇落ちか……好きな方法で廃人になるといい』

 

 というセリフにあっさり引いた。レティシアに面白くて便利な存在と認識されていたのか、アスフィを奴隷(パシリ)にするという条件で見逃されたというのが正しいが。『飛翔靴(ダッシュ)』でパン買ってこいと言われた【万能者(ペルセウス)】は全てを諦めたような擦り切れた笑みを浮かべていた。

 

 ――フェルズがレティシアを頼ったことを後悔するのはここからだった。

 

 脅して吐かせた正しい道を進むことで『人造迷宮(クノッソス)』に入り、『鍵』を使って順調にダンジョンまで戻っていたフェルズ達だったが、自分達と同じように侵入していた集団――『人造迷宮(クノッソス)』攻略を目指すリヴェリアが率いる【ロキ・ファミリア】とぶつかった。

 

 対面する前に自分達以外の怪しい集団を感知したリヴェリアは、ここにいるのは自分達の敵以外ありえないという考えから壁越しに『魔法』を撃った。その『魔法』は先頭を走っていたフェルズとレティシアに直撃する。

 

 規格外の『魔法衣』と『加護』を持つレティシアにとって『魔法』による攻撃は屁に等しい。けれど、魔法円(マジックサークル)内の敵味方を判断できる『魔法』だったのに攻撃された……つまり、敵と見なされたとレティシアが認識したことが【ロキ・ファミリア】最大の不幸だろう。

 

 何故ならここまでレティシアはこれまでの【ロキ・ファミリア】の攻撃を全て『異端児(ゼノス)』に向けられたものとして対処しており、彼等を敵として見ていなかったのだから。敵と認定した相手には良心も躊躇もなくなるのがレティシアだ。

 

『小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする準備はOK?』

 

 エルフを引き連れてフェルズ達の前に険しい表情で立ちはだかったリヴェリアの顔色がレティシアのセリフで真っ青になると同時に蹂躙は始まった。

 

 敵になった【ロキ・ファミリア】をレティシアは徹底的に壊した。『暗黒期』で【フレイヤ・ファミリア】を追い詰めた『不正(アパテー)』が『精霊兵』を作り出した方法を使い、道中で現れた『赤髪の怪人(クリーチャー)』と『仮面の怪人(クリーチャー)』を操り人形にして【ロキ・ファミリア】にけしかけたのだ。更に倒された者を雷精霊(トニトルス)闇精霊(シェイド)で無理矢理動かし、同士討ちまで行わせた。発狂して襲い掛かってきた者は手を氷漬けにして砕くか、足を焼いて炭化させた。

 

誇りと矜持を踏みにじられた年若いエルフの少女達は心身ともに打ちのめされた。特に【千の妖精(サウザンド・エルフ)】は『仮面の怪人(クリーチャー)』の正体を知ってしまったからか心を完全に破壊され、時折思い出したかのように友の名を呼びながら頬を濡らす人形となった。

 

私が悪かった、何でもするからやめてくれ、やるなら私からやれ……そう叫んでいたリヴェリアは妹を止めることも諌めることもできない己の無力に打ちひしがれて慟哭を散らした。「五月蠅い」とレティシアに蹴り飛ばされて意識を失っても涙は止まることなく流れていた。

 

 正体を隠すことなく暴れ回ったことで【ロキ・ファミリア】はレティシアが仲間に手を出した犯人だと気付いている。それでも自分達を返り討ちにした圧倒的な暴力、脳と筋肉で動く生物なら支配する外法、操り人形になった怪人(クリーチャー)達や仲間を見せつけられては耐えて泣き寝入るしかなかった。何名かは感情のままに襲い掛かったが返り討ちにされた。民衆も同様だ。

 

 ギルドも【フレイヤ・ファミリア】ではなくレティシア個人に厳罰を下そうとするも、支配下に置いた怪人(クリーチャー)から強制的に提供された情報の価値を無視するわけにもいかず、街の被害額を請求することが精いっぱいだった。

 

 閑話休題。

 

 とどのつまり、ギルドに入れたら何をしでかすかわからないし、断ればどんな酷い目にあわされるかもわからない。どちらを選んでも恐怖しかないレティシアの要求はフェルズの手に余りまくるのだ。それでもフェルズは八百年で鍛えられまくった意地で何が目的なのかを探る。

 

「婚活のためだな。私じゃなくて別の連中の」

 

 そして一瞬で聞かなければよかったと後悔した。

 

「……婚活とギルドに入ること、この二つにどんな因果関係があるんだ?」

「ほら、ついカッとなって【ロキ・ファミリア】を潰しただろう? 有象無象は心底どうでもいいんだけど、リヴェリアは家族だからさ。幸せになってほしいんだ」

「……」

 

 もしもフェルズに眼球があれば露骨に胡散臭いものを見る目になっていただろう。今までの行いを顧みて他人の幸福を願う言葉が彼女の口から出て信じる者はどれだけいるだろうか。

 

「リヴェリアもいい歳だからな。最近、更年期障害を発症したのかずっとすすり泣いているんだよ……だから私の知る限り一番の男を紹介するんだ。金、力、器、全てが最上級だ。奴の『屈服させがいのあるエルフ(すきなじょせいのタイプ)』も一致している」

「……」

「リヴェリアがいなくなれば道化の派閥は目障りだ。ただ殺すだけならちょっと『ピルルルル』ってすれば終わるが、どうせなら人生の墓場に送ってやった方がいいだろう? そんなわけで私は婚活アドバイザーになりたい」

「……」

「ギルドに入ればギルドの権力を盾にゴリ押しできる。【ロキ・ファミリア】は毎晩のように死精霊(バンシー)の泣き声と喘ぎ声が聞こえて精神的に限界まで追い詰められているらしい。子供でも通用しないこんな雑な餌にも飛びついてしまうほどにな。結婚すれば戦いから離れたくなって都市外に逃げ出すさ」

 

 やっぱり幸せにする気なんてないだろコイツ。

 

(黙ってないでさっさと決めろ。『賢者』の骨を畑の肥料にしてほしいのか?)

(コイツッ……直接脳内に……!?)

 

 レティシアの要望はどうなったのか。また、フェルズがどれだけ骨を折ることになるのかは……言うまでもない。

 

 そして『祈祷の間』にいたウラノスはずっと空気だった。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

「立ってないで座れよ。私が許す」

 

 あれ、ここって自分達の家だよね? そんな疑問が【ヘスティア・ファミリア】一行の頭に浮かぶが、我が物顔で振舞うハイエルフの雰囲気に呑まれて何も言えず、全員大人しく椅子に座る。

 

 レティシアのことを知らない者はここにいない。『異端児(ゼノス)』の騒動でベルとの関係や所属している派閥も知っているし、我が道を行く唯我独尊な性格も『異端児(ゼノス)』の護衛として姿を隠していたヴェルフと命の存在を忘れて二人を【ロキ・ファミリア】とまとめて気絶させられたことで思い知っている。だからこそギルドの制服を着ている理由がわからないのだ。

 

 そんなわけで【ヘスティア・ファミリア】のご意見番であるヴェルフやリリが口を開こうとするも、それをレティシアは手を挙げて制する。

 

「お前達が聞きたいことは大体わかる。疑問を解消したいならこれを見るといい」

 

 レティシアが机の上に放り出したのは様々な情報誌だった。そこには次のようなことが書かれていた。

 

『冒険者は金も容姿もいい者が沢山いるのに何故既婚者が圧倒的に少ないのか? その謎に迫る!』

『衝撃! 有名な冒険者カップルが破局! 原因は「私と仕事(ダンジョン)、どっちが大事なのよ!」「ダンジョン」と即答したことか?』

『ダンジョン関係のことしか言わなくなった貴方はダンジョン中毒末期。ダンジョン中毒者の未婚率はバベル並の高さ説の検証結果』

 

 ほとんどの視線が団長に突き刺さった。仲間達に注目されたダンジョン中毒末期の白兎は、特に強い主神とサポーターとメイドの視線に冷や汗を流す。

 

「これを見ればわかるだろう? 私が何を心配しているのか」

 

 全員が無言で頷く。各々に想い人がいるので危機感は皆が持っているが、団長の恋の行方が特に不安なのは当事者以外の共通認識だった。

 

「無論、私の腕も疑っているだろう。だからこそ尋ねよう。【ロキ・ファミリア】で空前の寿退団ラッシュが発生していることは知っているか?」

「はい。特に【九魔姫(ナイン・ヘル)】……リヴェリア様が都市の外へ嫁がれたことは大きな話題になっていましたから」

 

 情報を集めているリリの言う通り、『強くて綺麗で可愛い女の子ばっかりだけど、全然彼氏ができないよねープークスクス』と馬鹿にされるほど行き遅れの巣窟だったはずの【ロキ・ファミリア】は、今やハンカチを振りながら眷属(こども)を見送るロキの姿を目にしない日がないほどにカップルと夫婦が誕生していた。

 

 そして驚くべきなのは大半が都市外に移住していることだ。オラリオはLv.3になれば一時的ならともかく、永久的に離れるなら外に出る許可を出さない。そのことも話題を呼んでいた。

 

 リリのわかりやすい説明に頷きつつ、レティシアは偉そうにふんぞり返った。

 

「これは全て私の手腕によるものだ。故郷で獣同士の恋を応援する狩人(キューピッド)の異名を持っていた私にかかればこの程度、造作もない。リヴェリアなんかもう妊娠したって手紙も届いたくらいだ……というか送り出したエルフは全員妊娠したっぽいんだけどな。やはりエルフはあの男の所にまとめて紹介して正解だった」

「いやおかしいだろっ! 認めるのも腹が立つけど、ロキが選んだエルフの女の子達はアマゾネス君達みたいに貞操観念ガバガバなわけがない! こんなんじゃ叡智の種族じゃなくてエッチの種族だろ! 怪しい薬や魔法を使ったんじゃないだろうな!?」

「実はそんなに怒ってないだろう貴様」

 

 憤慨するヘスティアの意見も鼻で笑って斬り捨てる。

 

「お前はエルフという種族をわかってない。人類の中で一番スケベェな種族はエルフもといエロフと言っても過言じゃないんだ。結婚させたエルフはセックスで頭の中がいっぱいになったのか、手足捥いだり鬱になるまで追い詰めた私に感謝の手紙を送ってきたんだぞ? そのくらい性欲の強い種族なんだ。永遠の聖女と語られているセルディアだってアルバートと浮気してるさ、聖女と呼ばれる女は性女と相場が決まってるからな」

「嘘を言ってない……だと!?」

「いや、嘘を言ってないならこの女はとんでもない事実を言ってることになりますよ、ヘスティア様」

 

 わなわなと震える処女神にツッコミを入れるヴェルフ。ベルは自分が諦めてしまった男の浪漫であるハーレムを築いた男や実現させたレティシアの話を聞きたいのか、うずうずしながら目を輝かせていた。とても現金な反応である。

 

 ベルと同じように成就する可能性が低い恋心を抱く命がふと思いついた疑問をぶつける。

 

「それだけの方の恋路を手伝えるのに、レティシア殿に浮いた話が出ないのは何故でしょうか?」

 

 ピシッ! と空気が凍り付く音が響いた。質問した命も周囲からのお前それ聞くのか? という眼差しに自分が誰に何を尋ねたのかに思い至ったのか硬直する。

 

こんな行き遅れに片足ツッコんでも「私に釣り合う男がいないのが悪い」とか平気で口にしそうな女に恋人ができるわけない。おまけにフレイヤの眷属である。何が逆鱗になるかわからないフレイヤの所有物に手を出せる『漢』はいないだろう。

 

 誰が解決するんだこの冷えた空気。ベル、『魔法(ファイアボルト)』だ。嫌だよ、ヴェルフが『魔剣』使ってよ。聖火と護り火を司ってる神の本拠(ホーム)なのによく空気が冷えますね、仕事してくださいヘスティア様。僕に死ねと?

 

 無言で責任を押し付け合う【ヘスティア・ファミリア】。派閥崩壊の危機を救ったのはまさかのレティシアであった。

 

「言っておくが私は恋人いるからな? 恋愛のABCも経験済みだ。というか恋愛経験のない輩が他人の恋路を手伝えるわけがないだろう?」

「ふぁ!?」

 

 ベルが変な声を漏らした。ついでに脳が破壊されたような音も響く。

 

「自分で言うのもなんだが凄くイケメンな神でな。病弱な友人の世話をしている時に出会って一目惚れした。私が惚れたにも関わらず自己犠牲満載な計画を友人に持ちかけようとしてたから、連日連夜搾り取る爛れた性活を一週間も続けてヒィヒィ言わせて取り消させて恋人になった。『ベッドの上の暴君、これぞ裸の王様!』とかつまんねーギャグをほざいた時には感度三○○○倍の媚薬で服上死寸前まで追い詰めたが」

 

 元々政略結婚の道具にされる予定だったレティシア。男の下半身を漲らせる手管など腐るほど覚えさせられている。だからこそエルフはアマゾネス以上の淫乱種族と思ったのだが。レティシア自身もムラムラしたら喰いに行っている。

 

「そ、そういえば、どうしてベル様に縁談を持ってこられたのですか?」

「私が孫を抱きたいからと、さっきの話で出た友人にベルの子供を見せてやりたいからだが? 友人――アルはベルの叔母だからな」

『はぁ!?』

 

 ショックを受けて呆けているベルのために話題を変えようとしたのだろう。しかし春姫の頑張りも空しく、更なる爆弾が放り込まれた。

 

「……言ってなかったか?」

「初めて聞いたよ! どういうことだ、ベル君に血の繋がった家族は育ての親だった祖父しかいないんじゃなかったのか!?」

「あー……アルは私の介護がなければ数年前には死んでいたはずだったし、あのジジイもすぐに別れが訪れると知っていたから教えなかったんだろう。今も私が複数の大精霊に維持させている結界内の清浄な土地で暮らさないとまともな生活ができないし」

「……その人……僕の叔母さんってどんな人なの?」

「大が付く暴君で不器用な妹想いの女だよ。私がお前の活躍を話に行く度に嬉しそうに笑いながら血を吐いてた。一番血を吐いたのはベルが世界最速兎(レコードホルダー)になった時かな? 一緒に住んでる食いしん坊の大男と仲良く吐血した」

 

 レティシアはベルの叔母について常人なら一生寝たきりで過ごす病を抱えながら十六歳の時点でLv.7に到達していたことや、『海の覇者(リヴァイアサン)』にトドメを刺したことなどを隠して全て話した。

 

 一言一句聞き逃さなかったベルはしばらくの間俯いていた。誰もが彼の鼻をすする音や頬を濡らす水滴に気付かないふりをした。

 

 落ち着いたベルとしっかり目を合わせてレティシアは口を開く。

 

「とにかく、だ。私も八十代後半だし、ヒューマンから見れば孫がいてもおかしくない年齢だろう。アルの奴もいつくたばるかわからないし、アイツを大叔母にしてやろうぜ。お前の子供を見せたら笑顔で昇天するさ」

「う……でも、まだ子供なんて早いというか……」

「ハイエルフ基準なら私は子供の内にお前を育てたことになる。というかお前は冒険者だろ。『未知』を恐れずに『冒険』をしてこい」

「冒険者はそういう意味じゃないからね!?」

「そんなこと言ってる暇があるのか? お前が惚れた女の派閥がどんな状況なのかわかってるだろう? このままだと搔っ攫われるぞ」

「うっ……うぅ……」

 

 うじうじと悩むベル。そんな義理の息子の背中を全力で押してやるのは義母の役目だ。

 

「好きな女を望め、ベル。合法ロリの小人族(パルゥム)だろうが、絶壁や経産婦じゃないのが疑わしいアマゾネスだろうが、属性てんこ盛りの狐人(ルナール)だろうが、面倒臭い性格の女神だろうが、声だけで考えると一番恋人になりそうなハーフエルフだろうが、電波系予知夢ヒューマンだろうが、喋る美少女モンスターだろうが、酒場のチョロいエルフだろうが……高嶺の花の冒険者だろうがな。お前なら幸せにできる。お前を育てた私が保証する」

 

 自信に満ちた笑みを浮かべるレティシア。

 

 この日、ベルは初めてレティシアを尊敬した。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 結論から言うと……レティシアが突き飛ばした先は奈落の底だった。

 

 ベルはアイズにフラれた。フラれる際に『ベルは嫌いじゃないけど……レティシアさんと身内になるのは嫌、かな』と言われたそうだ。思いっきりレティシアが元凶だった。『禁断の技(テヘペロ)』をしたが許されず、レティシアは初めてベルにぶん殴られた。

 

 その後、アイズはリヴェリアと同じ男に嫁ぎ、子供にも恵まれて幸せな家庭を築いたらしい。ベルは【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】を失った上に引きこもりになった。

 

 とりあえずレティシアはアイズを寝取った男を呼び出し、ベルが引きこもった部屋を『セックスしないと出られない部屋』に改造させた。そして春姫とアイシャを叩き込んだ。男を立ち直らせるには女の肌が一番である。

 

 肌がつやつやした二人が出てきたら今度はエイナだ。「レティシア様っていつもそうですよね! 私やベル君のことなんだと思ってるんですか!?」とごちゃごちゃうるさかったが無視して蹴り入れた。励ますならエイナが適任なのだ。

 

 その後は血涙を流す処女神(ヘスティア)を取り押さえてベルに懸想している女を片っ端から呼び込んだ。そうするとあら不思議、ベルは立ち直ってハーレムを満喫しながら幸せな日々を過ごしましたとさ。

 

 めでたしめでたし。

 




 レティシアが調子に乗ってるからベル君は本命にフラれるどころか寝取られました。ヘスティアは処女神だからダメだろうと部屋に入れてもらえませんでした。

 七年前の大抗争、アルフィア、ザルド、エレボスが生きているかどうかは皆様の想像にお任せします。矛盾とか知りません。

 これ以上伸ばしてもクオリティが下がっていくだけなのでこれで終わりにします。もしかしたらレティシアのステイタスやその後の話を1話だけ投稿するかもです。
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