うおおおおお推敲なしだくらええええええ!!!(誤字報告ありがとう)
ところでもしかしてもしかすると来週のぼざろアニメ新ED? 順番的に大天使ニジカエル歌う? みんなしぬ?
翌、日曜日。
正午過ぎに下北沢駅へと到着すると、改札から少し離れた柱の傍に見慣れた人影が三つ。
俺は後藤に声をかけ、準備をさせてから再び歩き出した。
「あ、ぼっちちゃん此崎くんおは──ってなになになに!?」
「おー」
「後藤さん!? どうして突然往来で土下座を!?」
後藤は、俺と並んで三人――虹夏先輩とリョウ先輩、喜多さんのところまで近付くと、挨拶もせずにその場で膝を突き始め、綺麗なフォームでの土下座を完成させたのだった。
それを見た虹夏先輩と喜多さんが露骨に狼狽えて、リョウ先輩だけは感心したような声を上げる。概ね想定通りの反応である。
さて。
「――説明しよう! 後藤は前回のバンドミーティングから一週間以上経過したにもかかわらずいまだに歌詞を書けていないことに多大な罪悪感を覚えていたっ! コミュ障特有の自意識過剰であるっ! したがって今日下北に呼び出されたのもこれを糾弾するための会だと思い込んでいるのだっ!」
「……えっ?」
俺がノリと勢いで後藤の奇行の解説をすると、他ならぬ後藤が顔を上げて信じられないものを見るような目を向けてきた。
「――のだっ! じゃないよ此崎くん! そんなんじゃないって絶対わかってるのになんでぼっちちゃんに言ってあげないわけ!?」
「後藤がせっかくこんなフリップ用意してたから、止めるの悪いかと思って……」
「顔っ!! 絶対思ってないでしょ!!!」
フリップというのは、後藤が紐を通して首から下げている『私は約束通りに歌詞をかき上げられませんでした』と書かれたブツである。昨日、下北への集合を言い渡されてから後藤が半泣きで作っていた一品だ。
「ホントに此崎くんは……もー、ぼっちちゃんもさ、あたしたちそんな外道なことしないからね? そう簡単にできるものじゃないっていうのはちゃんとわかってるから」
「は、はい……えっと、じゃああの、今日集まったのは……?」
後藤が立ち上がりながら、そして若干俺を睨みながら虹夏先輩に尋ねる。
「うん、この前のときは思い付かなかったんだけど、アー写を撮ろうと思って」
「あーしゃ?」
「アーティスト写真のことよ此崎くん。宣材写真ってこと」
「あー」
なるほど、そりゃあお手軽にバンドらしさ演出できそうだ。
「よく考えてみたら、今あるアー写にはぼっちちゃん映ってないしね」
「……今ある?」
「この前のライブ出るために撮ったから」
と、後藤の疑問にリョウ先輩が答え、「ほらこれ」とスマホを横に向けて見せてくれた。
「……いじめか?」
「いや、喜多ちゃん逃げちゃったから仕方なく……」
「ごごごごめんなさいっ!」
どこぞのシャッターの前で元気いっぱいにピースしている虹夏先輩とアンニュイな表情でカメラから目線を逸らしているリョウ先輩……ここまでは全然いいのだが、喜多さんが卒アルの撮影欠席したやつみたいに写真左上で晒しものにされているので一気に台無しになっている。
「……これ右上に後藤も配置したらバランス良くないですか?」
「此崎くん、本気で言ってる?」
まぁまぁ本気である。すげぇおもしろいと思う……けど、虹夏先輩のジト目が怖いので冗談だということにしておいた。
「あっあの、そ、外で撮るんですか……? 屋内とか……」
「スタジオとかはお金かかるからムリ」
後藤が縮こまりながら提案するも、虹夏先輩にばっさりと切り捨てられてしまった。
まぁ当然と言えば当然だ。まだ最初のバイト代も入ってないし、約二名今月分の小遣いを使い果たしている人たちがいる。ちらっと俺が視線を送ると、その約二名はスッと目を逸らした。
「金欠バンドのアー写と言えば屋外だからね。森とか海とか自然の多い場所も定番だけど、下北発祥のバンドだしせっかくだからこの周辺でロケーションを探すよ! 候補は階段! 公園! あとはよさげな壁! ってことで、さっそくいってみよー! おー!」
「おー!」
「お、おー……」
「後藤もっと気合入れてけぇ!」
「お、お~っ!」
よし。喜多さんには敵わないがマシになったな。
というわけで、そういうことになった。
♪ ♪ ♪
なんだかんだ、下北を練り歩くのは初めてのことだった。
いつもは駅からスターリーにまっすぐ向かってしまうし、スターリーを出るのも遅いので俺と後藤はとてもじゃないが遊んでいられない。というか、遊んでたら間違いなく補導されるだろう。
駅前の商店街をきょろきょろしながら進みつつ、裏路地に入ってみたり落書きだらけのシャッター通りを見てみたり。
虹夏先輩が言っていた階段や公園、あとはコインパーキングのフェンス越しなんかで実際に何枚か撮ってみる。ちなみにカメラマンは俺だ。
「SNS大臣、いかがでしょう」
「うん、写真の撮り方は悪くないと思うわよ」
「はっ、ありがとうございます!」
みんないまいち納得がいっていないようだが、俺の撮影がヘタクソというわけではないらしい。
まぁ虹夏先輩が持ってきたジンバル使ってるし画角には気を付けてるし、どうせ後から加工でなんとかなるんだろう。
……と、それからも俺たちはしばらく歩き回ったが「ここだ!」という撮影ポイントはなかなか見つからず、適当に見つけた自販機の前で小休止を挟むことにした。
「今日、楽器もってくればよかったわね」
「あっ……たっ確かに。楽器持ってた方がさらにかっこよくなりそう、ですけど……」
「君たちはね?」
「えっ」
喜多さんがふと言った一言に後藤が同調したが、意外にも虹夏先輩がそれに待ったをかけた。
「ギターとベースはそりゃいいよ? 絵になるもん。でもドラムが手に持てるのはスティックだけ。ほら、想像してごらん? 君たちがそれぞれ愛機を抱えている間で木の棒二本持ってるあたしのことを」
「……おいしいポジションじゃないっすか? ――いたっ、痛い痛い! んなこと言っといて持ってきてんじゃないすかドラムスティック!!」
適当に口を挟んだら虹夏先輩に背後を取られ、二刀流の木の棒でリズムを刻まれまくった。的確に肩甲骨を狙ってきやがるこのドラマー……!
「――あっ」
「どした?」
「あ、あそこの壁……」
一息ついて再開したロケーション探しの旅だったが、歩き出してすぐにふと後藤が立ち止まった。
後藤が指差した先には植物に覆われかけたコンクリの建物があった。壁にはカラフルな落書きがあって雰囲気は十分、しかし太陽の向きがいまいちで、壁側が陰になってしまっている。
「お前好みだろうけど、ちょっと暗いな」
「じゃ、じゃああの、駐車場の方、回ってみれば……」
「んー、一応見てみるか……ってあれ、三人いねぇ」
先輩たちと喜多さん、俺たちが立ち止まったことに気が付かず先に行ってしまったらしい。後藤の声が小さいから……。
「後で合流すりゃいいか。向こうが気が付けばロインしてくるだろ」
「う、うん」
ナチュラルに存在感が薄い後藤はともかく、カメラマンの俺がいなくなったことには遠からず気が付くだろう。
そんなわけで、俺と後藤の二人だけで日当たりの良さそうな駐車場側に回ってみる。
すると、こちらの壁には一面に大きな木の絵が描かれており、ちょうど木の葉の部分を覆うようにツタが伸びていた。これは落書き……なのだろうか? いや、建物の二階だか三階だかのあたりまでしっかり書き込まれているし、素人ができるレベルじゃないだろう。もともとこういうデザインなのだろうな。
「壁の色も明るめだし、悪くないな」
「う、うん、ちょっと太陽まぶしいけど……」
「ちょっとチェックするか。後藤、壁の前立ってみ」
「え、わ、私だけで撮るの?」
「壁だけ撮ってもしゃーないだろ。試しだから、ほれ」
すっげぇ嫌そうな顔をする後藤だったが、背中を押すとしぶしぶ動き出して壁の前に立った。
手を前で組んで猫背で目線をこっちに向けない……被写体として2点くらいだが、まぁ試し撮りと言った手前文句は付けるまい。
「……葉っぱの部分までちゃんと入りそうだな。いいんじゃないか?」
「い、いい、かも……私の写真映り以外」
「それは知らん」
まぁ確かに後藤の写真映りは控えめに言ってもゴミだ。姿勢が悪いから人間としてのシルエットが悪い。あとジャージ姿なのがアレすぎる。
「とりあえずあの三人呼び戻……ってちょうどロイン来たわ」
カメラアプリを閉じてロインを開けば、『迷子の迷子の此崎くんどこですか~?』と虹夏先輩が完全におちょくってきていた。
迷子じゃないです、後藤がいいとこ見つけたんでさっきの駐車場のとこまで戻って来てください、と返信するとオーケー的なスタンプが送られてくる。
「――あ、いたいた! もーっ! 急にいなくなるからびっくりしたじゃん!」
「すいません、いやでもパーティほぼ半減してるんだからもうちょい早く気づいてくださいよ」
「私は気付いてた」
「それ、気づいた時点で言わなかったらむしろポイントマイナスだと思うんですが?」
リョウ先輩は今日も絶好調だな。
「……で、どうです? そこの壁。後藤が見つけたんですが」
「私は良いと思うわ! 木の感じもかわいいし……後藤さん、お手柄ね!」
「えへ、えへへ、そ、そんなことないですけどぉ~……」
喜多さんが後藤を褒めてふにゃふにゃにしている傍らで、俺は虹夏先輩とリョウ先輩につい先ほどの試し撮り写真を見せる。これなら四人で映ってもよさそう、あと後藤の写真映りがひどいと正直な感想を頂戴した。無言で頷いておいた。
「よし、じゃあここで何枚か撮ってみよっか! 此崎くん、よろしくね!」
「うっす」
割と全員ここが気に入ったようなので、これまでよりもちょっと気合を入れてスマホを構える。
そして、とりあえず一枚パシャリ。
「……どうっすか?」
「うーん……やっぱりメンバーのキャラは出てるけど、バンド感が出てないよね。もっとバンドっぽさを感じる要素が欲しいなぁ」
「だったらバンドマンのお手本たる私の表情を真似してみて」
「リョウのその自信はいったいどこから湧いてくるの?」
バンドマンのお手本ね……いやまぁこの中では一番アウトローな感じあるけど。
ともかく物は試し、ということでまた一枚パシャリ。
「シンプルに人相が悪いな……」
「人相の悪いリョウ先輩もかっこいい! 此崎くん、あとで写真送ってね!」
「それはいいけど……どうします? これで行きます?」
「行くわけあるかっ! 此崎くん自分の役職覚えてる!?」
俺の、役職……?
「……あぁ、俺マネージャーか」
「ガチで忘れてる反応じゃんっ!」
だってガチで忘れてたから……。
俺が結束バンドでやってることなんて後藤のキルとリスポーンくらいじゃないか?
『†破壊†と†再生†を司る者(後藤の)』とかみたいな役職に今から変えられないかしら。結構うまくやれる自信あるんすけど。
……まぁともかく、虹夏様はわたくしめにしっかりマネジメントをしろと仰せになっているのであろう。
「……んー、俺は割とどれも良い気がするんですけどね。どれも……どれでも?」
「こら本音」
「いててっ」
虹夏先輩に耳を引っ張られた。いやでも、ちょっとこう……飽きてきたなって……。
ただ、どれも良い、というのも決して嘘ではないのだ。
個人的には階段の下から煽りで撮った一枚や、しゃがんだ四人をフェンス越しに撮った一枚なんかは普通に良いと思う。バンドらしさ……それも〝結束バンドらしさ〟が出ているかと言われれば、まぁ確かに微妙ではあるのだが。
「それにしても喜多ちゃん、どの写真でもかわいいね~。さすがはSNS大臣、写真慣れしてるよね」
「自撮りとか結構アップしてんの?」
「してるわよ? ほら」
「ギッ!?!??!?」
後藤がビターンッ! と突然地面にぶっ倒れて、劇毒でも盛られたかのようにもがき苦しみ始めた。俺はカメラを構えた。
「ご、後藤さん!? どうしたの急に!? 死なないで!」
「喜多さん……
「アッバババッババッバッバババババッババッバババ」
「ぼっちちゃん顔やぁばいって」
虹夏先輩はだいぶ慣れてきたらしいな。こんな人間離れしたバイブレーションを見せてるのにほとんど動じていない。
しかしこれ、スマホのカメラで捉えきれてるのだろうか。スマホで撮れる動画ってfpsいくつだ? 俺一瞬も逃したくねぇよ後藤の死に様……。
「私は……私は下北沢のツチノコです……」
「後藤さんが変なこと言ってるわ!」
「いつもこんなんだよ」
「虹夏先輩、わかってきましたね」
「此崎、今日一の笑顔出たね」
そりゃ笑顔にもなるともさ、リョウ先輩。こんなにも心が満たされているんだから。
俺が下北沢のツチノコがアスファルトの上で蠢く貴重な映像を収めることに必死になっていると、虹夏先輩が「そうだ」と手を叩いた。
「いっそのことぼっちちゃんもイソスタ始めてみたら? バンド活動していくなら個人のSNSもあった方がいいと思うし」
オイオイオイ。死ぬわ
「──ほう、後藤にSNSを始めさせるときましたか……たいしたものですね。後藤ひとりという生物は陰キャコミュ障のくせに承認欲求は人一倍強く、そんな哀しい生き物がSNSなんてものを始めればどうなってしまうことか」
「此崎くん急に早口になって気持ち悪いわ……」
「ギッ!?!??!?」
「うわ此崎くんまで死んだ!? なんで!?」
女子に言われる「気持ち悪い」は世の男子全員に共通の防御不可かつ感度3000倍弱点である。
そしてそれが陽キャの中の陽キャ、人の悪口陰口なんて絶対に言わなそうな喜多さんの口から放たれたのだ。死なざるを得ない。
「俺は……俺は下北沢のモンゴリアン・デスワームです……」
「……どゆこと?」
「確か、ものすごく大きなミミズ。気持ち悪いって言われたからじゃない?」
リョウ先輩、的確な解説ありがとう。
これでもう、思い残すことはないです。
〜fin〜
♪ ♪ ♪
「――はぁ、二人ともやっと生き返った。アー写撮影再開するよ? いーい?」
「あっはい」
「あっはい」
二名のUMA……俺と後藤が復活を果たし、虹夏先輩の号令で再びアー写撮影がスタートした。
撮影場所としてはやっぱり全員ここが気に入ったらしいが、肝心(?)のポーズがいまいち決まり切らない。立ったり座ったり組体操してみたり、あとはアングルをいろいろ変えてみたりもしたが「これだ!」という一枚はなかなか撮れず。
「もっと元気アピールしたい感じなんですかね、結局」
「んー、そうかも? なんだろう……躍動感がある絵がいいんじゃないかって気がするよね」
「躍動感……あっ、じゃあジャンプなんてどうですか?」
「ジャンプ?」
「はい! 動きありますし、みんなの素の感じが出そうじゃないですか?」
「なるほど、確かにそれいいかも! 喜多ちゃんてんさーい!」
「有識者が言っていた……オープニングでジャンプするアニメは神アニメだと……」
「リョウ先輩何言ってんすか?」
いったい何の話だね。我々結束バンドとはなんにも関係ないだろう。そうさなんにも関係ない……なんにも……。
「ま、とにかくやってみますか。準備おなしゃーす」
壁の前で横一列になって手を繋ぐ四人。
俺は全員が跳んでもきちんと画角に収まるように、今までよりも少し離れた位置まで移動する。
「カウントダウンでシャッター切るぞー。はい3、2、1――」
――と、それぞれが地面を蹴って宙に浮いた瞬間を俺はばっちり切り取った。ブレたりしないか不安だったが意外と綺麗に映るもんだ。
……しかし、だ。
「――あっ、ちょっとちょっとぼっちちゃんパンツ……!」
「此崎くん見ちゃダメよ!!」
「……フッ」
「嘘でしょこの男鼻で笑った!?」
「あっすみません無価値なもの映して……消してください……」
「後藤さんもそんな反応!? 後藤さんの乙女心が死んでるわ……!?」
いまさらパンツくらいなんだというのだ。こんな防虫剤の香りがするような生き物の下着姿に何を感じろと言うのか。(再放送)
「で、どうします? これで行きます?」
「また言ってる! 行くわけないでしょ!? メンバーのパンツ見えてるアー写なんてあり得ないからね!?」
「よし、じゃあ撮り直しましょう」
「本当に徹頭徹尾動じないわこの人……!」
虹夏先輩と喜多さんからの非難がましい視線を無視し、俺は少し立ち位置を調整した。
そして、先ほど同様カウントダウンをし、ベストなタイミングでシャッターを切ることに成功した。
「……うん! いいんじゃない? バンド感と青春っぽさある!」
「此崎くん、写真ちょうだいね!」
「他のと一緒にグループに上げとくよ」
ふぅ、と俺は息を吐いて、壁のところまで歩いて寄りかかる。やっと撮影が終わったと思ったら急に疲れてきた。
スマホをすいすいと操作して結束バンドのロイングループに今日撮った写真をあらかたアップロードしていく。一日でこんな枚数の写真撮ったの初めてだ。
ちらりと視線を上げると、虹夏先輩と喜多さんと後藤の三人で何やら盛り上がっている。いや、後藤はその場の流れに飲まれてるだけっぽいが……それでも、その輪の中に混ざろうとしないリョウ先輩よりは不自然じゃなかった。
「……リョウ先輩、どうしたんです?」
「……なんで?」
「や、なんか元気なさそうというか」
思い返すと今日一日、リョウ先輩はずっとテンションが低かった気がする。
いや、そりゃあリョウ先輩は元々ダウナー系だ。ただ、それを踏まえても、いつもよりさらに物静かというか、虹夏先輩たちの会話を外から見てることが多かったような。
リョウ先輩は何も答えないまま、俺のことをじっと見つめてきた。
こうして真正面から見ていると、あらためてリョウ先輩がとんでもない美人であることを痛感する。
なんだかドギマギしてきた――と、思った直後。
「……此崎」
「……なん、ですか?」
「お願いがある」
リョウ先輩は、神妙な口調で俺にそう言ってきた。
うおー! みんな評価とか感想とかお気に入りとかここすきとかありがとー!
赤バーマックス評価者数570↑の調整平均9.00はさ……マジで嬉しいよ……嬉しいからギターの練習がんばるね……