一回間違えて投稿しちゃった……サブタイと前書き後書きないだけで内容は変わってないけど。
それにしてもなんとか一日で書き上がりましたわ。
あと、アニメ8話が楽しみというか怖いというか……持つのか俺の情緒……? たぶん今度こそニジカエルのED来るぞ……?
土曜日。
梅雨時にもかかわらず、その日は朝から雲一つない快晴だった。オーディションはどうせ地下のライブハウスでやるのだから関係ないと思う一方、お天道様にお膳立てをしてもらっているような気もしてくる。
結束バンドのオーディション開始は午前中からの予定になっている。
今回ライブオーディションをするのは結束バンドだけで、他の外部のバンドはすべてデモCDでの審査をするらしい。というか、わざわざライブオーディションをやるのが特殊なパターンなのだとか。
「そう言えば店長、俺もオーディション見ていいですか?」
「あ? いやお前、逆にどっか行く気だったのか?」
「や、そうじゃないですけど。オーディションって部外者ダメそうじゃないっすか」
「お前結束バンドのマネージャーだろうが。あとスターリーの従業員だし。どこが部外者なんだよ」
「……確かに!」
「ふふ、此崎くんも実は結構緊張してますね?」
PAさん、そういうこと言われるとホントにドキドキしてきちゃうからやめてくんねぇかな……。
――さて。
今現在、結束バンドのメンバーたちはスタジオで最後のリハーサルをしている。いや、一応最終チェックってくらいの方が言い方としては正しいだろうか。
家が近い先輩方と喜多さんはもとより、俺と後藤も今日は朝早くからスターリーで過ごしていた。
店長もなんだかんだ言いつつ早いうちからスターリーを開けてくれて、結束バンドはかれこれ二時間くらいスタジオに籠っている。これはやはり身内だからこその贔屓。店長はやはりツンツンだがデレデレでもあるのだ。
俺も時折スタジオの様子を見に行ったりしているが、ここまで来て俺が口を挟む余地はない。四人だけで集中してもらった方が良いと判断し、店長やPAさんのステージセッティングを手伝うことにしたのだった。
……ただ、セッティングを終えてから既に一時間以上経っており、なんならもう正午になりそうだ。店長とPAさんと雑談しているのは退屈じゃないし、俺が迂闊に「オーディションやらないんですか?」なんて言ったら「じゃあやるか」ってなっちゃいそうだし……いやでも時間決めずにだらだらやってるのもよくないのかも?
「……うーん。さすがにそろそろ……声かけてきます?」
「ん? あー……まぁ、そうだな。いや、万全の準備が整うまで待ってやってもいいんだけどな……?」
あ、店長さんがそういうスタンスなんですね……これダメだ、このツンデレ女の裁量に任せてたら日が暮れるやつだ。デレのタイミングがおかしいんだよ……。
「それじゃあ……セッティング含めて三十分後、って感じで伝えてきていいですかね」
「お、おう……」
「いいと思いますよ~。店長に任せてたら一生始まりませんしねぇ?」
「ぐっ、うるさいっ」
……ということで、俺はスタジオに向かってガラス窓から中を覗く。
四人とも演奏に集中しているようで、手を振ってみても俺に気が付かない。この調子じゃノックしても無駄だろう。
仕方がないのでなんとなくキリがよさそうなタイミングを見計らい、俺は重たい防音扉を押し開けた。
「わ、此崎くん! びっくりした~」
「すいません。そろそろオーディション始めるそうです。今から三十分後にスタートするので、ステージのセッティング含めて準備お願いします」
「えっ、あっ! もうこんな時間!? もうお昼過ぎちゃうじゃん!」
「もしかして待っててくれた?」
「まぁ店長が言い出さなかったんで……」
「あ、あ、あと三十分……」
「後藤さん大丈夫よ! まだもう少し練習できるわ!」
本当にいよいよということで、四人の表情がまた一段と引き締まって見えた。
緊張は当然あるだろうが……これだけ長いこと直前リハができたのだから、手指や喉は十分に温まっているはずだ。
「それじゃ、あと少しですが頑張って。俺も、審査するわけじゃないですけど、店長たちと一緒に観ることになってますから」
「うん! ありがとう此崎くん! 応援よろしくね!」
「ええ、もちろん」
四人とそれぞれ目を合わせ、俺は頷いた。
……いやまぁ、約一名は目が合ったのホントに一瞬だったけど、でも、昨日までのような迷いのある目はしてなかったので良しとしよう。
オーディションの本番が、いよいよ始まる――。
♪ ♪ ♪
「け、結束バンドです! よろしくお願いしますっ!」
虹夏先輩が元気良く、しかし固い声で挨拶をする。
四人はそれぞれ楽器やマイク等々の機材のセットを終え、舞台の上で煌々とライトに照らされていた。
あくまでオーディションだが、これは結束バンドが四人揃ってから初めてのステージだ。
観客は俺、店長、PAさんの三人と身内も身内だが、だからってお気楽な雰囲気は一切ない。全員が真剣だった。
「……じゃあ、『ギターと孤独と蒼い
少し間をおいてから虹夏先輩がそう宣言すると、前に立っている喜多さん、後藤、リョウ先輩が振り返り、四人で頷き合う。
喜多さんの表情はあきらかに強張っていた。虹夏先輩も肩に力が入っているように見える。あのリョウ先輩でさえ、どことなく固い雰囲気を身に纏っていた。
「…………」
だからこそ、その中でやけにいつも通りな後藤は、異様な存在感を放っていた。
前は向いていない。いつものように少し俯いていて、姿勢が悪い。
でも、変に力んでいたり、震えていたりもしていない。
瞳が暗く光っていた。
俺は、知っている。
これは――かっこいい時の後藤だ。
――ハイハットが四つの音を刻んだ直後、結束バンドの作り出す音の波が一斉に押し寄せてきた。
その瞬間、彼女たちは大丈夫だと確信した。
虹夏先輩は少し力んで見えるが、刻まれるリズムに狂いはない。一番大きな音でその存在を主張し、縁の下を力強く支えていた。
リョウ先輩には余裕がある。いつものような気だるげな雰囲気が前に出てきて、しかしドラムとギターの音を繋ぐ堅実な役目を十全にこなしている。
喜多さんは手元にしか目が行っていないながらも、初心者には決して易しくない曲のスピード感に食らいついていた。右手も左手も動きはぎこちないが、最低限の役割を果たしている。
そして、後藤が奏でるギターの音色は、やはり今まで結束バンドで披露していたものとは一線を画していた。
後藤が顔上げて、虹夏先輩たちに合わせられるようになったわけではない。
おそらく、無理に合わせるのをやめたのだ。
今、後藤ひとりは後藤ひとりのまま、後藤ひとりのギターを弾いていた。
旋律が際立つ。音の粒たちがどれも鋭い。
バンド全体として完全に息が合っているわけではない。後藤はやはり、ほんの少し走りがちだ。
でも、それでも――みんなの顔色を窺って、気を取られて、自分の手元すら覚束なくなっているよりはずっと良いものだった。
「――なんだよ、やればできるじゃねぇか」
俺は、いつの間にか上がっていた口角を隠すために、片手で顔半分を覆いながら呟く。
――そうしてイントロの終わり際、リズムギターとリードギターが取り残されたところで、リョウ先輩がさりげなく喜多さんへボーカルの入りを指示した。
同時に喜多さんが普段とは違う低く落ち着いた声で詩を紡ぎ始め、ギターたちが持っていたバトンをドラムとベースが受け取る。
身体の芯に響いてくる重低音が陰気なフレーズと合わさって、暗雲が空を埋めていくような、あるいは自分自身が夜に向かっていくような感覚に襲われる。
後藤が作り上げてきた歌詞は、結局のところ暗いものだった。
後藤が抱えている満たされない気持ちや鬱憤と、それらをギターにぶつける日々――そういうものが目一杯に詰め込まれていた。
後藤はバカだが、でも、もしもバカじゃなくたって……いや、そもそも人間には、自分の内側にあるものを全部言葉にするなんてできっこない。
喜多さんが羅列するこの歌だって、後藤の中のほんの一部でしかないはず。
だから――。
――足りない 足りない 誰にも気づかれない
――殴り書きみたいな 音 出せない状態で叫んだよ
――『ありのまま』 なんて 誰に見せるんだ
――馬鹿なわたしは歌うだけ
――ぶちまけちゃおうか 星に
そうだ、ぶちまければいいんだ。お前はずっとそうしてきたはずだ。
これまでは、ギターに。
これからは、ギターで。
そうするだけで、後藤ひとりが何を目指すのかは伝わるはずだ。
後藤ひとりが何者であるかは、伝わるはずなんだ。
♪ ♪ ♪
「――合格ッ!!!」
「いやなんでお前が言うんだよ」
「だって合格でしょ!?」
「いいから座れ」
「……はい」
音が止んで、四人がステージの上で頭を下げた直後、俺は椅子から立ち上がって思いっきり叫んでしまった。
が、店長に冷たい目で見られてしょげる。なんでこの人平然としてられるの? あの一匹段ボールアーマーのやつ混ざってたバンドがこんな成長してるのよ? 人の心とかないんか?
「……ま、いいんじゃない? お前たちがどういうバンドかは、とりあえずわかったよ」
「つまり合格ですか?」
「此崎お前ちょっと黙ってろ」
「はい……」
店長に睨まれて口を閉じる。PAさんにクスクスと笑われてしまう。
でも、店長の言い方的にかなりの好感触だ。
ステージ上の四人も疲れを滲ませながら表情を明るくしていた。
「――ただし」
……のに、店長は厳しい目付きで告げる。
「ドラム、肩に力入れすぎ。ギター二人は手元見過ぎ。ベースは自分の世界入り過ぎ」
ダメ出しであった。ざくっと、すばっと、ばっさりと。
……んもぉーっ! うちのバンドの子たち凹んじゃったじゃーん!!! どうしてくれんのさぁ!!
俺がぐぎぎと歯噛みしながら店長を睨んでいると、虹夏先輩が小さい声で返事をする。
「……アドバイス、ありがとうございました……」
「……あ? 何そのリアクション?」
「え、だって……」
「いやだから、お前らがどういうバンドかはわかったってば。ここ喜ぶところだから」
「……たぶん合格ってことだと思いますよー?」
「だからそう言ってんだろ。合格だよ、合格」
「――おいこのツンデレお姉ちゃんめっ! わかりにくすぎるんだよぉ!」
「此崎てめぇ舐めた口利くなっ!」
「ぐぎゃっ!?」
「こ、此崎くーんっ!?」
PAさん越しに店長から半分くらい水が入ったペットボトルを投げつけられ、俺は椅子ごとぶっ倒れた。クソいてぇ……。
……が、このくらいの痛みは、まぁ甘んじて受け入れよう。
店長もツンツンだったが、ライブの出演を認めてくれたわけだし。
スターリーの床に大の字になって転がった俺は、首だけ動かして光を浴びる四人の姿を見る。
後藤に飛びついて喜びをあらわにする喜多さんと、戸惑いながらもぎこちない笑顔を浮かべる後藤。二人の様子を眺めていると、俺にまで達成感が湧いてくるようだった。
……ただ一方、虹夏先輩はリョウ先輩の方に近寄って何やらこそこそと話をしていて、しばらく後藤と喜多さんに見つめていたかと思うと、俺の方にも二人揃って視線を向けてきた。
暗い表情を浮かべていたわけではないが、なんとなく神妙な雰囲気だ。
いったいどうしたんだ――と思った次の瞬間、事件は起こった。
「っ! 喜多さんすみませ――」
「後藤さん? ご、後藤さぁーん!?」
「うわぁ……」
後藤ダムが盛大に放流を始めたのである。ステージの脇で。
あんまり文字として書き起こしたくないようなガチ嘔吐の音がスピーカーの真裏から聞こえてくる。なんか声だけでもらいそうになってくるな……うぷ。
――と、まぁそんな最悪の幕切れではあったが、とにかく結束バンドは見事ライブに出演する権利を勝ち取った。
身内の箱ではあるが、きちんと実力を認められた上での第一歩だ。その意味はとても大きなものだろう。
「……なぁ此崎」
「ん、なんすか?」
後藤の内側にあったもの(物理)を処理すべくバケツに水を注いでいると、カウンター越しに店長から話しかけられる。ちなみに後藤本人は喜多さんに付き添ってもらってトイレに口をすすぎに行っている。
「ぼっちちゃんさ、ホントはかなり上手いだろ、ギター」
「そうですね。あれ、店長には言ってませんでしたっけ?」
「……ってことは、虹夏たちはもう知ってるのか?」
「一応。……ただ、今日まで一度もあのレベルですら弾けてなかったんで、半信半疑だったかもしれないです。人と合わせるのがダメで、とも言った覚えはあるんですが」
「
「もっと難しそうな曲でもスラスラ弾きますよ。今日やった曲も、もっと仕上がるんじゃないかと」
「……そうか」
店長は腕を組んで考え込むような仕草をする。
「……ぼっちちゃんが実力を発揮できないのは、チームプレイの経験不足だろうな」
「というか、そもそもコミュ障なのが致命的かと。人の目見れないし」
「それも経験で補える。ただ……自信は付けてった方がいいな。これから人前で弾くようになれば少しずつ改善していくだろうが――」
「――あっ、こ、此崎くん」
「おう後藤。大丈夫か?」
店長との話の途中だったが、トイレから戻ったらしい後藤が俺のところにやって来た。
後藤の顔色はそこまで悪くなさそうなので、まぁさっき虹夏先輩が言ってたように身体がびっくりしただけだったのだろう。人騒がせなやつである。
「ぼっちちゃん」
「へっ? あっひゃい!?」
それからふと、店長が後藤に話しかける。
後藤にすればいきなりのことで……いや、たぶんいきなりじゃなくても同じだったと思うが、完全にビビり散らかしていた。俺のことをチラチラ見て来られても困る。
「……あ、あの……?」
「お前のこと」
「は」
「ちゃんと、見てるからな」
「…………」
……あー、おもしれぇー。
後藤、これもう完璧に目ぇ付けられたと思って絶望しとりますわ。顔がとろけ始めとりますわ。
で、店長。たぶん「お前の実力はわかってる、見守っててやるからな」みたいなニュアンスで言ったんだろうけど、今回もしっかり言葉足らずですわ。
いや、言葉が足りてても元から店長のビジュアルとか雰囲気に対してビビってる後藤のことだから誤解は待ったなしだったような気がする。
すぐ傍で見ていた俺は両者の誤解を解くこともできたが、もちろんそんなつまらないことはしない。
ただ、ニコニコと笑顔を浮かべて、めくるめく勘違い塗れの未来に思いを馳せた。
♪ ♪ ♪
はてさて。
「店長。ライブ参加の手続きとか、どうしたらいいですか?」
「ん? あぁ……じゃあとりあえずチケット渡すから。お前らのノルマ分のな。一枚千五百円、全部で二十枚。さばけなかった分が負担になる……ってのはわかってるな? 本当は書類作ってもらったりとか打ち合わせしたりとかあるんだが、まぁその辺はまた今度でいいよ」
「了解です」
二十枚か。チケット売るくらいなら俺も平等に協力するとして、一人頭四枚……正直大した枚数じゃないと思うが、まぁね、うちのバンドには例のアレがいるからね。
店長からチケットを受け取った俺は、喜多さん主導の元ステージの上で仲良く写真を撮っている四人に近付き、話しかける。
「おーい。店長からチケット貰いましたよ、二十枚」
「あ、此崎くんありがと! 二十枚かぁ……此崎くんどうする?」
「均等に行きましょう。別にそんな負担でもないですし」
「おっけー! じゃあ、一人四枚がノルマね!」
「四枚ですか……そうなると、逆にクラスの友達には声かけない方がいいかしら? 四枚じゃ足りないし……」
「当日チケットもあるから平気。遠慮せずいっぱい呼べばそれだけ儲かる」
「あ、それもそうですよね! 私、学校中で宣伝しますね!」
「喜多さん、学校中はやめとけ……」
喜多さんが本気出したらスターリーパンクしかねないから……たぶん……。
「……で、後藤?」
「な、何?」
「お前、なんでそんな余裕な顔してるわけ?」
「え……な、何が?」
「チケット四枚。当てがあるのか? じいちゃんばあちゃん呼ぶつもりか?」
「ううん、お父さんとお母さんと、ふたりとジミヘンでちょうど四枚……」
嘘でしょ、こいつ五歳児と犬にライブのチケット売ろうとしてる……?
「後藤」
「うん」
「現実を見ろ。犬はライブハウスに入れない。たぶん、五歳児もだ」
「……私ってどうしたらいいですか?」
「知らん」
後藤は膝から崩れ落ちた。
これは……三千円分は自腹かな……。
鬼門のライブシーン、一応形にはなったわね……アニメの何十万分の一かでも伝わってればいいなって。まぁちょっとライブの内容自体も変わってるけど。
毎度ながら評価感想お気に入りここすき等々ありがとー!
推敲なしで特攻してるから誤字報告も助かる~!
ライブシーンに気を取られ過ぎて次回の構想がぼんやりとすらできてねぇ! でも例の女は出したい!
あと仕事が忙しい! ので今度こそ二日くらい空く!