珍しく推敲はしたけど構成がガバいかもしれない。話の区切り的な意味で。ノープロット進行の悪いところ出とる……
……うおおおおお明日以降の俺なんとかしてくれええええええ!!!
「――ただいま~。って、あらいっくん、もう帰ってきてたのね」
「おかえりなさい。友達迎えに行ってまっすぐ案内してきただけだったんで」
「お母さんおかえり~」
リビングでふたりちゃんと一緒にアニメを見ていると、買い物に行っていた後藤ママと後藤パパが帰ってきた。
俺はソファから立ち上がり、後藤ママから買い物袋を受け取って後藤パパと一緒に台所へ向かう。
「いっくん、ひとりの友達本当に来てるのかい?」
「お父さんまだ疑ってるんですか」
「いやだって……ねぇ?」
わかるけど。後藤パパの言わんとすることはよくわかるけど、虹夏先輩も喜多さんもちゃんと実在してるんだよ。あと今日はいないがリョウ先輩も。
「ま、あとで見に行けばいいですよ。今は後藤の部屋にいるんで」
「それもそうだね……ところでひとりたちは何してるんだろう? やっぱり音楽の方向性の違いとかで侃々諤々の意見のぶつけ合いを――」
「してないですよ。これから初ライブなのにもう方向性が違ってるとかバンド組んだの失敗すぎるでしょ……今日は一応、バンドTシャツのデザインの案出しをしてる感じです。今度のライブ、統一感出したいらしくって」
女子高生バンドなら制服でもいい気がしたけど、まぁ半分ずつ高校違うしな。あと約一名頑なに制服着ようとしないやつもいるし。
「いやぁ、父さんも昔は作ったなぁ、バンドTシャツ。あーでもないこーでもないとか言いながらロゴとか考えてさ~」
「みんな通る道なんすね。ライブで着たりとかしたんですか?」
「もちろん! 物販とかで売り出したりもしたよ。まぁそんなに売れなかったけどね」
そんなに、ってことは売れたには売れたのか。
うん、売れてるだけすごいと思うけどな。グッズを買いたい、って思うだけのファンがいた証拠なのだから。
後藤パパが昔バンドをやっていた、というのはしょっちゅう聞かされている。中年に片足突っ込んだおっさんは昔の自慢話が多いのだ。悲しいね。
残念ながらメジャーデビューにまでは至らなかったそうだが、それでもインディーズとしてはそこそこの人気を得て、ローカルテレビのCMでオリジナル曲が採用されたことまであるというのだから自慢としては上等な部類だとは思うけど……いや、こんな言い草じゃあ俺は何様なんだって話だな。
とにかく、後藤パパはれっきとしたバンドマンだった、というわけである。後藤がギターを始めたのは嬉しくて仕方なかったらしいし、今度の初ライブもとても楽しみにしているようだ。
……ちなみにだが、後藤が今使っているギターも一応後藤パパの持ち物だ。
あのギター、なんか五十万円くらいするらしいんだよな。つまり後藤は五十万円を背負ってほぼ毎日動き回ってるってことになる。
後藤の移動先は家、学校、スターリーと極めて限られているわけだが、それでも移動距離や手段、時間を考えるとものすごく恐ろしいことをしていると思う。正直、俺はかなりひやひやしながら後藤がギターを持ち歩くのを見ているのだ。
変なところで図太いことに定評のある後藤だが、これはその最たる例かもしれない。いやホントこえぇよな……。
「――お父さん? キリのいいところでひとりちゃんのお友達にご挨拶に行きましょ?」
「あぁうん、今行くよ。いっくん、紹介よろしくね」
「えぇ、いいですよ。じゃあ行きましょうか」
とりあえず冷蔵庫に入れないといけなさそうなものは仕舞い終えたので、俺はふたりちゃんとジミヘンも含めた後藤一家を後藤の部屋まで連れて行った。
「おーい、ちょっとよろしいかー?」
「――此崎くん? どうぞー?」
声をかけてから襖を開けると、虹夏先輩と喜多さん、そしてどろどろに溶けた推定後藤がちゃぶ台を囲んでいた。
「ほらねおかーさん! ほんとにいるでしょ!」
「あらあら」
「……あ、後藤さんのご両親、ですよね! こんにちは!」
「すみません、お邪魔してます~」
喜多さんと虹夏先輩が順番に愛想よく挨拶をする。
それからすぐにふたりちゃんが部屋の中に入っていって「こっちがにじかちゃんで、こっちがきたちゃんだよ!」と俺の代わりに紹介してくれた。溶けている後藤を避けて。
「虹夏先輩、Tシャツのデザインどうっすか?」
「え、えーっと……ぼっちちゃんが途中で溶けちゃったからまだ喜多ちゃんのしか見れてないけど……」
「此崎くん! これ、私のデザイン案! どうかしら?」
「お、おぉ……」
――ショッキングピンク! 星! スローガン! 優勝! ……体育祭のクラスTシャツかな? 『皆で掴め勝利の華を』っていったい何と戦うんだよ。ここにも敵を見誤ってそうな奴いるじゃねぇか。
「……まだまだ時間かかりそうですね」
「うん……」
「えっ」
なんで喜多さん驚いてるんですかね。普通にボツだよ。
……あと、後藤が溶けている理由もよくわかった。
おそらく体育祭という陰キャを晒し者にして抹殺する死の祭典(※
肉体は魂の形に引っ張られるらしいからね。後藤お前、無〇転変の術式の使い手だったのか……?
まぁ後藤の融解も喜多さんのデザインセンスが意外に残念なのもとりあえず置いておこう。これは虹夏先輩の担当すべき案件だ。俺は知らん。
「ところでお二人、話は変わりますけど、今日昼飯はどうするつもりでした?」
「へ? あー、みんなでどこか食べに行こうかなって思ってたけど」
やっぱりそうか、と俺が思うのと同時に、背後で後藤パパが「おや、そうだったのかい?」と言った。
「いやね、ひとりのお友達が来るって聞いてたから買い出しに行っててね。せっかくなら手料理振る舞ったり、出前取ったりしようかと思ってたんだけど……迷惑だったかな?」
「いえ、迷惑だなんて! むしろご馳走になっちゃっていいんですか?」
「遠慮することないぞ喜多さん。お父さんもお母さんも結構張り切ってたから、遠慮なく甘えてくれた方がいいって。ですよね?」
「えぇ、そうね。お二人が嫌じゃなければ、是非ご馳走したいわ」
「ってことなんで……どうしました?」
後藤パパと後藤ママに話を振って再び虹夏先輩と喜多さんに目を向けると、ぽかんとした顔で俺のことを見つめていた。
「……あの?」
「……へっ!? あ、いやいや、えっと……そ、それじゃあお言葉に甘えちゃおう、かな?」
「うん、是非是非! よーし、それじゃあいっくん、お手伝いよろしくね!」
「了解です。じゃ、できたら呼ぶんで、三人でごゆっくり」
「う、うん……あ、ありがとー……」
……いや何?
♪ ♪ ♪
「――ちょっとちょっとぼっちちゃん! 溶けてる場合じゃないよ!」
「……はうあっ!?」
――激しく肩を揺すられて、私の意識は現実に舞い戻る。
私は恐ろしい夢を見ていた。
陰キャを晒し者にして抹殺する死の祭典――体育祭の悪夢だ。
喜多さんが考え出したバンドTシャツ……『友情! 努力! 勝利!』がコンセプトらしいそのデザインにトラウマを刺激された私は、もはや人間の形を保つことができなくなったのだった。まぁ、よくあることだけど。
で、気が付けば虹夏ちゃんと喜多さんの顔が至近距離にあった。
良い匂いがした。
どうしてこんなことになっているのかは、意識が飛んでいたのでまったくわからなかった。
「ち、か、顔ちかっ……あっあの、何、なんでしょう……!?」
「後藤さん! やっぱり後藤さんと此崎くんって、そうなのね!?」
そうなのねってどうなのね!? 喜多さん、何をそんなに興奮して……!?
私は救いを求めて虹夏ちゃんに顔を向ける――が、虹夏ちゃんもまた神妙な顔でうんうんと頷きながら言う。
「うん、あたしも認識を改めざるを得ないよ……喜多ちゃんに『幻想抱き過ぎ』みたいなこと言ったけど、これはさぁ……」
「げっ幻想……?」
「後藤さんったらとぼけちゃって! 此崎くん、やっぱり家族公認なのね!? そう、そうよね! 考えてみれば当たり前だわ! だって、長年連れ添っている二人だもの! そんな普通の高校生同士みたいな浮ついた関係じゃないのは当然のことだったわーっ!」
「ひぃぃ……!」
こ、怖い! 喜多さんが怖い! なんかすごい変なこと言ってる! あともう本当に顔が近い! 怖い!
「喜多ちゃん、どうどう……いや、でもねぼっちちゃん、やっぱり今一度はっきりさせておいてほしいな。性別の違いこそあれど――ううん、むしろ性別が違うからこそだよ! 同じ幼馴染を持つ者として言わせてもらうけど、此崎くんとぼっちちゃんの関係はおかしい! というか此崎くんとぼっちちゃんの家族との距離感がおかしいよ! なんでナチュラルにお父さんお母さんとか呼んでるの!? さっきの会話とかもう完全に父と息子のそれだったじゃん!!」
「えっあっ、あっえっ? あっあっあっ」
――いやさっきの会話って何!? 此崎くんとお父さん、どんな会話してたの……!? 虹夏ちゃんもちょっとテンションおかしい……!
……うぅ、でも、なんとなく話の流れはわかってきた……かも。
私は迫りくる虹夏ちゃんと喜多さんにいつの間にやら壁際まで追い詰められていたが、なんとか声を絞り出す。
「あ、あの……う、うちの家族と此崎くんの関係が変なのは……確かにそうかも、と思います。でもそれは──」
──あれ待てよ? 私が此崎くんの家のこと、あれこれ喋っちゃっていいのかな? いやたぶん此崎くん今は本当になんにも気にしていないと思うんだけど……でも、虹夏ちゃんや喜多さんが此崎くんに変な気を遣わせることになっちゃったら……そういうの、此崎くんは一番嫌がりそうじゃん……!
……あっでもそしたらどうやってこの場を丸く収めればいいんだろうもしかして詰んでる? 虹夏ちゃんはまだしも喜多さんに言ってた
「──アウアウアアウアウアウアウアウアウアウアウアウア」
「あー、まずいよ喜多ちゃん。ぼっちちゃんバグっちゃった。たぶんこれ以上追い詰めたら今度こそ畳の染みになっちゃう」
「うっ、それは困りますね……くぅ! まだ後藤さんの口から確かなこと何も聞けてないのに……!」
虹夏ちゃんと喜多さんが何かを言っているのは聞こえたが、私の脳みそは既に致命的なエラーを起こしていた。まぁ、よくあることだけど。
──そして、ふと気が付けば私は虹夏ちゃんや喜多さんと一緒にリビングでお昼ご飯を目の前にしていたッ! ……時間が……消し飛んだ……ッ!?
「お、やっと目の焦点が合ったな」
「……ハッ!? こ、此崎くん……ッ!」
「一応言っておくとお前はスタンド攻撃を受けてはいない。受けていたとしてもたぶん自分のスタンドに攻撃されたんだろう」
……うん? 何の話だろう? 何かの漫画かな?
「……伝わってねぇわ。五部貸してなかったか……? いや、まぁいいわ。ほいこれ唐揚げ。揚げたてだよ」
「わ~! 此崎くんありがとう! 後藤さんのお父さんもありがとうございます~!」
「奥のがにんにく醤油で手前が塩こうじだからね。レモンと七味はお好みでどうぞー」
「ありがとうございます! おいしそう!」
テーブルの真ん中にどんと置かれる大盛りの唐揚げ。醤油とにんにくの香ばしい香りにますます意識がはっきりしてきた。
テーブルの上には宅配ピザやフライドポテト、手作りと思しきサラダなどなどが並べられている。紙皿や大きなペットボトルも相まって、まるで……というかパーティそのものだ。
「──んーっ! 唐揚げおいしーっ! ……いやぁ、それにしても此崎くんってばあざといなぁ〜」
「あざとい? 何がっすか」
「またまたとぼけちゃって! エプロン姿で手料理なんて完璧にギャップ狙ってるでしょ! かーっ! あざといっ! あざといよ此崎くんっ!」
「は、はぁ……」
「うふふ、いっくんエプロン似合うわよねぇ? 虹夏ちゃんも喜多ちゃんも、家庭的な男の子って素敵だと思わない?」
「思います~!」
……此崎くん、戸惑ってるなぁ……虹夏ちゃんも喜多さんも相変わらずテンションがおかしいよ。お母さんもニコニコしながら乗っちゃってるし。
自分の家のはずなのになんとなく居心地の悪さを感じながら、私も唐揚げに手を伸ばす……あ、塩のやつおいしい。
バンド始めてから夜ご飯もお弁当作ってもらってたから、揚げたての唐揚げ久しぶりだなぁ。此崎くんがエプロン着てるのも久しぶりな気がする。
「ねぇ後藤さん? さっきから気になってたんだけど、いっくんっていうの此崎くんの下の名前から来てるのよね?」
「へ? あっ、そっそうです、けど……?」
きっ喜多さん、なんで私に聞くんだろう……と、思いつつちらっと此崎君の顔を見てみたら、まさしく「なんで喜多さん後藤に聞くんだよ」って顔をしていた。私の疑問が変なわけじゃないみたいでちょっと安心――。
「――じゃあ、どうして後藤さんは此崎くんのこと名字で呼んでるのかしら? というか、此崎くんが後藤さんのこと名字で呼んでるのもおかしくない?」
――と、思ったらこれだよ! 喜多さんの切り込み方がエグすぎる……!
「あっあっ、きっ喜多さん、それは……!」
「――あのねきたちゃん! おねーちゃんもいっくんもね、名前で呼ぶのはずかしいんだって! おかーさんがししゅんきなんだよって言ってた!」
「ガッ」
「グッ」
――ふ、ふたりぃぃぃぃぃ! それ暴露されるの余計に恥ずかしいやつだからああああああああ! あとお母さんも五歳児に変なこと教えないでええええええええ!!
「ふーん……!」
「ほうほう……!」
「……は、はっはっはっ、ふたりちゃんってば冗談きついなー! 俺がそんなこっぱずかしい理由で後藤を後藤呼びしてるわけないだろー? もっとこう、深遠博大で複雑怪奇な事情があってだな……」
「ダウト!!」
「ダウト!!」
「だうと!!」
「わんわんっ!」
……此崎くん、耳赤い。ついこの間同じような話したけど、あの時もあからさまに誤魔化してたし……わ、私は違うけどね? 元はと言えば此崎くんが先に名字で呼んできたんだし、いっくんって呼ぶのも此崎くんがやめろって言うからやめただけなんだけどね?
「そうねぇ、二人とも昔は『ひとりちゃん』、『いっくん』って呼び合ってたのよ? なのに、中学校に入る前くらいだったかしら? 急に名字で呼ぶようになっちゃったんだもの」
「へぇ~……!」
「ほうほうほう……! ――ねぇ、ぼっちちゃん?」
「ヒッ!? あっあっ、なっなんでしょう……!?」
「此崎くんのこと『いっくん』って呼んであげたら?」
「エッ」
「そうよ後藤さん! せっかくの機会なんだから!」
「アッ」
な、何がせっかくの機会なの? 罰ゲーム? Tシャツデザイン考えないといけないのに二回も意識を失っていた罰?
私は両側に座る虹夏ちゃんと喜多さんからの圧から逃げることができず、縦に細長くなるしかない。どうしよう、このままじゃ私縦の糸になっちゃう! 横の糸は誰……?
「後藤さん!」
「ぼっちちゃん!」
「ひとりちゃん、久々に呼んであげたらいっくんもきっと喜ぶわよ?」
「……い、いやいや全然喜ばないっすよ! おい、おい負けるな後藤! 気をしっかり持て! こんな羞恥プレイの強要に屈するな! 今は頑張りどころじゃないぞ!! いやマジで!」
「…………」
――でも。
あんまり嫌がる此崎くんを見て、私は、ちょっとだけもやもやした。
お父さんやお母さん、それに、ふたりが呼んでても全然気にしてないのに。
いや、家族だけならまだしも、あのお姉さんに呼ばれてる時なんてすっごく嬉しそうに、楽しそうにしてたのに……此崎くんの方だって、お姉さんのこと『きくりちゃん』なんて呼んじゃってさ。
私の中にあるこの感情。名前を付けてしまいたくはないけれど――。
「――い、いっくん。なんで、私だけ……ダメ、なの?」
こうして言葉に込めてしまうのは例外、ということにしておこう。
「――きゃーっ! 言ったわ! よく言ったわ後藤さん!」
「ぼっちちゃん偉い! 偉いよ! どうだ此崎くん参ったかー! これがぼっちちゃんの本気なんだぞ!」
「あらあら、青春ねぇ~」
「……おとーさん、おねーちゃんがいっくんのこといっくんって呼んだだけなのに、なんできたちゃんたちよろこんでるの?」
「はっはっは、なんでだろうなぁ。いずれふたりにもわかるよ、きっと……ところでいっくん、微動だにしなくなったけどだいじょ――うわっ!」
「え? ……えっ!? こ、此崎くん立ったまま泡吹いて白目むいてるわ!?」
「し、刺激が強すぎたんだ! いや幼馴染にあだ名呼ばれただけでこれは失礼すぎると思うけど! ホントにこの男はさぁっ!」
【朗報】後藤、此崎を初(?)キル。
一話以来のKDA表作ろうかと思ったけどめんどくさいからやめた。通算のキルデスどうなってんだろうね。ぼっちちゃんが死にまくってるのは間違いないけど。