なぁ……ぼざろアニメあと1話で終わるなんて……嘘だよな……?
「――うん、うんうん、あー、そりゃそうだよな。うん了解。いやいいって。チケットの返金はなしだけどな。うん、とりあえず連絡くれてさんきゅー、そんじゃ――……はぁ」
カウンターに突っ伏す。萎える。
「此崎、今のは?」
「俺がチケット売ったクラスの奴っす。わざわざ電話くれたんですけど、ちょっと家遠いから来れないってことらしくて……これで俺の四枚分は見事に全滅です」
「……そうか」
はぁ、と俺と店長のため息が重なった。
思わず顔を見合わせて、もう一度お互いに大きなため息を吐いてしまった。
結束バンドの記念すべき初ライブの当日は、台風直撃という生憎すぎる天候であった。マジでクソだ。
何が一番むかつくって、昨日の昼くらいまでは関東の手前で太平洋側に逸れていく進路予想だったのに、それからなんだかじわじわ日本列島に幅寄せし始めて、昨日の夜には急ハンドルを切って日本縦断旅行を始めやがったのだ。
しかもちんたらちんたら進みやがるからライブが始まる今日の夕方頃にちょうど東京を通過していくときた。
総合すると、今年の台風8号はカスでバカでアホということである。お巡りさんこの台風です。
「――お、おはようございますー……」
十秒に一回、店長と交互にため息を吐きながらうだうだしていると、いつもより早めにPAさんが出勤してきた。黒い服なのでわかりづらいが結構濡れてるっぽい……というか、なんか……怯えてる? いやなんで?
「PAさん、おはざっす。どうかしました?」
「此崎くん、おはようございます……いえ、あの飾りつけ……今日はお化け屋敷でもやることになったんですか……?」
「飾りつけ? ……あぁ、あれは昨日ぼっちちゃんたちが作ってったてるてる坊主だよ」
「そ、そうでしたか……雨で顔がにじんでて大変なことになってましたよ」
「マジっすか。え、今日の台風それのせい?」
なんで雨で滲むんだよ……水性のペン使ったっけ?
俺が腕を組んで真剣に思い返していると、PAさんのクスクスと笑う声が聞こえた。
「……なんすか」
「いえいえ、此崎くんがあんまり真面目な顔してるからおもしろくなっちゃいまして」
「失敬な、俺はいつでも真面目な顔してますよ」
「真面目な顔してない奴の常套句じゃねぇか」
それはそう。
……あーあ、今からでもてるてる坊主作りなおしたら晴れねぇかなぁ。
「……此崎、そんなに落ち込むな。バンド続けてりゃこんなこといくらでもある。いちいち凹んでる場合じゃない、これもあいつらが乗り越えなきゃいけない試練なんだよ」
「店長……」
……机に突っ伏しながら涙声で言われても説得力ねぇです。
「店長、ハンカチ使います?」
「あっちいってよ……」
「店長、後藤のおもしろ写真いります?」
「……あとでロインで送って」
店長、ちょっと声が元気になった。よかったわ。
♪ ♪ ♪
それからしばらくして、結束バンドの四人がスタジオの方から出てきた。
話を聞いたところ、虹夏先輩と喜多さんがチケットを買ってもらった友達は俺と同じく全滅。リョウ先輩はチケット適当に売っ払ったから相手の連絡先がわからず当然ライブに来てくれるかは不明……いや、望みはかなり薄いだろう。
後藤の分はというと、非常に残念なことに後藤パパと後藤ママは来れないのが確定している。本当はふたりちゃんをお祖母ちゃんの家に預けてこっちに来る予定だったのだが、台風で移動自体が難しくなってしまったために断念せざるを得なかったのだ。
残る後藤の二枚分……路上ライブで買ってくれた浴衣の女性二人組だが、こちらもやはり厳しいだろう。後藤のギターに結構な感銘を受けている様子だったけれど、さすがにこの天気で来てくれるほどかというと……ねぇ?
……あぁ、でもそうだ。
あと一人、ノルマチケットは売ってないけど来てくれるって言ってた人いるわ。
いやしかし……あの人、晴れの日でもちゃんと来てくれるかわからないぞ――なんて思った直後のことだった。
「――ふぁ~すごい雨ぇ~! あ、ぼっちちゃん、いっくん、来たよ~!」
「あ、お姉さ――」
「――うおおおおお! きた! きくりちゃんきた! これで勝つる!!」
きくりちゃんしか勝たん! やはりきくりちゃん、きくりちゃんはすべてを解決する……!
「……え、おまえぼっちちゃんと……此崎? と、知り合いなのか?」
「え? うんそうだよ~一緒に路上ライブした仲だもんねぇ~いぇ~ぃ!」
階段の手すりに寄りかかって「ぶいぶい!」とピースするきくりちゃん。
それにしても店長と気安い感じ、っていうか絶対初対面じゃなさそうだけど、はて。
「お、お姉さん、店長さんと知り合い……なんですか?」
「大学の時の後輩。顔合わせんのは久々だけど――」
「んねぇ~せんぱぁ~い今日のライブ打ち上げするんだよねぇ~? 居酒屋もう決めたの~? 私いい場所知ってますよ~でへっ、でへへぇ~」
「酒臭っ! お前また一段とメンドくさい奴になったなっ!」
……ふぅ、今日もきくりちゃんは絶好調だな! 完全に濡れ鼠だからあれで肩組まれてる店長には同情するけどな!
「――此崎くん、集合」
「イエスマム!」
――ハッ、気が付いたら虹夏先輩の前で正座してた。えっ、なんだこれ……?
「此崎くん、いったいどういうことかな?」
「はっ、な、何がでしょうか……」
「あのお姉ちゃんの後輩さん……きくりさんって言うのかな? 路上ライブをした仲って言うと、此崎くんが居酒屋で一緒に楽しい時間を過ごした人ってことだよね」
「そ、その通りでございます……」
あれ、これ説教の流れだよな。
いったいどうして――。
「――いったいどうして、っていう顔をしてるね」
「っ!」
そうだ、虹夏先輩は思考が読めるんだった……まずい……。
「何がまずいの? 此崎くん。言ってみて?」
「っ、お、お許しくださいませ虹夏様! どうか! どうかお慈悲を!」
「いやそういうのいいから」
「あっはい」
お慈悲はあった。いや逆に無慈悲かもしれんけど。
ちなみに虹夏先輩以外はどんな様子かと言えば、喜多さんは腕を組んでしかめ面、後藤はおろおろ右往左往、リョウ先輩はスマホを構えていた。山田、後で覚えとけよ。
「此崎くん?」
「はい申し訳ございません!」
「よろしい。……あたし、びっくりしちゃったな。随分仲良くなってたんだね?
「は、はい……」
「どうかと思うよ、あたしは。こないだぼっちちゃんに〝いっくん〟って呼ばれた時は泡拭いて気絶したのに、つい先週知り合った女性には気安く呼ばせてるなんてさぁ」
「……うん?」
後藤に……〝いっくん〟って呼ばれた?
「いや、後藤が〝いっくん〟って呼んだって……何の話ですか?」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「……えっ」
虹夏先輩、喜多さん、後藤の順に目を丸くして、置いてけぼりになったリョウ先輩が珍しく空気を読んで合わせるように声を漏らした。
「……そんな、此崎くん……」
「此崎くん、あなた、記憶が……!」
……なんだかよくわからんけど虹夏先輩と喜多さんの目が一気に哀れみに満ちたそれになった。
顰蹙を買ってるよりはマシな気がするが、何のことかわからなすぎて怖い。
後藤が俺を昔のあだ名で呼ぶなんて、そんなバカなことがあるわけ……。
「……伊地知先輩、後藤さんのこれ、此崎くんに見せてみたらどうでしょう? ショックで記憶が戻ったり……」
「いやいやダメだよ喜多ちゃん、これは此崎くんには刺激的すぎるって。これからライブなのにまた五時間も六時間もあの状態になられちゃったらさ……」
「虹夏先輩? 喜多さん?」
いったいなんなんですか? 怖いんですけど? 怖いんですけど?
俺は一縷の望みをかけて後藤に視線を向けたが……後藤はなぜかジト目で俺のことを睨んでいた。
即座に形勢不利と判断した俺は後藤からも目を逸らし、最後のオアシスであるリョウ先輩に顔を向ける。
「此崎……」
「リョウ先輩……」
「……やっぱり私もぼっちの家遊びに行けばよかった」
「……そうですか」
疎外感に耐えかねたらしい。
この人、こういうとこあるよなぁ……。
……はてさて、そんな茶番がありつつも、スターリーは開場の時間を迎えてしまう。
そして、時間を迎えてしまったのに全然お客さんが入ってこない。これが何よりも残酷な現実だった。
ただ、きくりちゃん以外にも救いはあった。
なんとなんと、後藤からノルマチケットを買ってくれたあの浴衣の女性二人が駆けつけてくれたのだ。
自分たちは後藤のファンだから、と、おしゃれな私服を大雨に濡らすこともいとわずにスターリーへとやってきてくれたのだ。
これを受けた後藤のやる気はキモい感じにみなぎっていた。ぐふふぐふふと汚泥が鍋で煮えるような音を喉の奥から出しながら、変なオーラを放ち始めたのである。
そのあまりのキモさにファン1号さんと2号さんが帰りそうになっていたが、あれを味わえるようになってこそのファンだ、と俺が教示することで二人はなんとか踏みとどまってくれた。まぁドン引きの対象が俺に変わっただけだけどね。
……ともあれ、その後も一応ぽつぽつとお客さんはやってきて、今日は結束バンド仮マネージャー以前にバイトとしてスターリーにいる俺はドリンクの仕事をやっていたのだが、正直今までで一番やりがいがなかった。客入り的な意味で。
ほぼ身内のきくりちゃんを除けばフロアにはたったの10人しかおらず、喜多さん加入前のマンゴー仮面降臨ライブはおろか、下手すりゃこの前の路上ライブよりもお客が少ない。
今日のライブ、一応結束バンドの他にも三つのバンドが演者として参加するのにこれである。……一応、きくりちゃん含めて三人も結束バンド目当ての客がいるだけマシなんだろうな。
「此崎。もうドリンクいいぞ。客来たらやってくれりゃいい」
「うっす……今日、マジでヤバいっすね」
「二桁入っただけマシだよ」
「そーだよいっくん、私の初ライブなんかお客さん二人とかだったもんね~」
ふ、二人……確かにそれに比べたら上等も上等だな……。
まぁ……それでもどうしたって凹みはするが、最悪には程遠いってわけだ。別に結束バンドが悪いわけじゃないし、もちろん他のバンドが悪いわけでもない。全部台風のクソバカアホドジ間抜けのせいだ。
「――ねー、一番目の結束バンドって知ってるー?」
「んー?」
……おやおや? 何やらフロアの後ろの方に陣取ってるお嬢さん方が聞き馴染みのあるバンドについてお話していますね? 小粋なバンド名が今を生きるティーンのハートに刺さっちゃったかな? ん?
「結束バンド……知らなーい」
「だよねー。観とくのたるいっていうか、名前寒くない?」
「それ」
「…………」
ぐぎぎ、ぐぎぎぎぎ……!
「――やぁ、そこのお嬢さんたち?」
「……はい? なんですか?」
「どうやら結束バンドをご存じないようだからね、ちょっとご紹介を、なんて思いましてね? 結束バンドはうちのライブハウス一押しの、新進気鋭の女子高生バンドなんだよ。ほら、俺が着てるこれ、結束バンドのTシャツ。イかすでしょ? 結束バンドは今回が初めてのライブでね、メンバーは四人なんだけど――」
「――いや興味ないんで。ってかまずアンタが誰だよ」
「……きも」
「…………」
俺は涙をこらえながら店長ときくりちゃんのところに戻った。
「此崎、そりゃお前が悪い」
「うっ、うっうっ、だからってあんな……あんな冷たい目で吐き捨てるみたいに『……きも』はないじゃん……あれホントに一番キモがってる時のやつじゃん……」
「おーおーいっくんヨシヨシ、泣かないの泣かないの」
「きくりちゃーん……」
「……お前らの距離感なんなんだよ……」
店長に引かれつつもきくりちゃんに頭を撫でられて心の傷を癒していたら、ふと、ステージの方から強烈な視線を感じた。
目を向けてみれば……ステージの袖から、結束バンドの四人が顔をのぞかせていた。
「……なんかあの人たち顔怖いんですけど。特に虹夏先輩と喜多さん」
「え~? 何がぁ~?」
「きくりちゃん、とりあえず頭撫でるのやめてもらっていいですか?」
もう手遅れな気がするけど、傷口は小さい方がいいと思う。いやよくわかんないけど。よくわかんないけどね?
……それにしてもあの四人、もしかしてあのお嬢さん方の会話も聞いてたか? もう袖の奥の方に引っ込んじまっているが……声が届いたかどうか。客入りが客入りだからライブハウス内は結構静かだし、聞こえていてもおかしくはない。
お嬢さんたちを責めはすまい。
キモいと言われたのはめちゃくちゃ傷付いたけど、自分の目当てのバンド以外に興味がないなんてのは当たり前だし。
だって、他ならぬ俺自身がそうだ。
結束バンドの他にやるバンドのこと、正直に言って眼中にない。期待をするとかしないとか以前の問題なのだ。
仕方がない。
だから、結束バンドは、音で
……
「もう、始まりますよね」
「ああ。ここまで来たら見守るしかない。腹括れよ、此崎」
「……うっす」
見守るしかない。
信じるしかない。
わかってる、わかってますとも。
♪ ♪ ♪
――四人を背後から照らすステージのライトが、ふわりと優しげに光量を増した。
「……っはじめまして! 結束バンドです! 本日はお足元の悪い中お越しいただき、誠にありがとうございます!」
「あ、あっははー、 喜多ちゃんロックバンドなのに礼儀正しすぎィー……」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
――イヤァァァァァァアアアアアアアアアアアア誰か助けてぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!
うちのバンドのMCクソ滑ってる!!! MCクソ滑ってるよォ!!! 足元が悪いのはお前らのMCだよおおおおおおおおお!!!!!
ダメだっ! 共感性羞恥がエグすぎるぅ! 動悸と息切れしてきたよマジで! ああもう例のお嬢さん方スマホ弄っちゃってるもん! 最前列に陣取ってくれてる後藤のファン1号さん2号さんの愛想笑いが微かに聞こえてくるもん!
俺が思わず両手で顔を覆っていると、隣に立っている店長に肘で小突かれた。
……目を逸らすな、ってことか。そりゃそうだわ。いやごめん、みんなマジごめん。
「……え、ええと! じゃあ、さっそく一曲目いきますっ! 聞いてください、私たちのオリジナル曲で、『ギターと孤独と蒼い惑星』ですっ」
――そして、いつものように虹夏先輩がハイハットで刻んだ音から演奏が始まる。
……が、これまた……ダメだ、全員の息がまったく合っていない。
いつも練習を見ていた。だから、手に取るようにわかる。
虹夏先輩のドラムには、端的に言ってキレがなかった。
その原因はわかりきっている。
あきらかに腕だけでスティックを振ってしまっているからリズムを作ることができず、そのせいで何より自分自身が曲にノレていないのだ。
リョウ先輩は、ある意味もっとまずいかもしれない。
普段なら、虹夏先輩がリズムを作れていなくてもリョウ先輩がそれに気が付いてすぐに促す。
しかし、今のリョウ先輩は虹夏先輩の音を全然聞いていない。調子が悪い時のリョウ先輩の悪いところが出ている。自分の世界に閉じこもろうとしている。
そうやってリズム隊が崩れてしまえば、残るギター二人にできることなんてたかが知れている。
それに、そもそも喜多さんは最近の練習ではあり得ないくらいにギターをミスっていて、そっちに意識を取られてボーカルまで疎かになっている。
彼女の歌声は、本当はもっと格好良くて力強い。
なのに今は、喜多さんの良いところが全部死んでしまっていた。
後藤はというと、下ばかりを見て、プレイがすっかり縮こまっている。
いつもの調子じゃない三人に後から合わせようとして遅れて、しかも結局合わせきれていない。
顔色を窺っている。音色を窺っている。
これじゃあ、オーディションの前のあいつに逆戻りだ。
前を見ろ。前を見ろよ。
邪魔臭い前髪で光を遮ってもいいから、とにかく前を見ろよ。
俺は唇を噛んで四人を見守り続けたが──俺が見たかった彼女たちの姿はついぞ見ることのできないまま、一曲目が終わってしまった。
「やっぱ全然パッとしないわ」
「早く来るんじゃなかったね」
横の方からそんなセリフが聞こえて、ちらりと目を向ける。
すると、例のお嬢さん方もこちらを見ていて、「何か文句ある?」とでも言いたげな目をしていた。
――あぁ、悔しい。悔しいな。
俺の知っている結束バンドは、こんなもんじゃない。
俺の知っている結束バンドなら、彼女たちの心を打つことだってできるはずのに
でも今、できていない。
それがすべてだ。
彼女たちにとっては、それがすべてなんだ。
「いっくん」
そこでふと、声を掛けられる。
振り向けば、店長さんを挟んだ向こうで、きくりちゃんが俺を覗き込むように身体を傾けていた。
「私たちは大人だからさ、見守ってあげなきゃいけないけど――」
きくりちゃんがとろんとした瞼をゆっくりと持ち上げて、俺を見つめながら言う。
「――いっくんはね、いいと思うよ? やりたいようにやっちゃいなよ」
「…………」
無責任な言葉。きくりちゃんらしい言葉に思えた。
店長は、聞いていただろうに止めようとしない。
――だったら、俺だって遠慮はしない。
一歩前に、歩み出る。
「──敵は、いないぞっ!!!」
突然大声を上げた俺に、客たちの冷ややかな視線が注がれる。
視界の端でそれらを捉えたが、俺は一切気にしなかった。
ただ一心に、ステージの上の彼女たちを見つめ続けた。
それから、ようやく前を見た彼女たちと、ようやく目が合う。
虹夏先輩と。
リョウ先輩と。
喜多さんと。
最後に、後藤と。
――なぁ、来いよ、後藤。
お前、ヒーローなんだろ。
戦うべき敵はいなくても、ヒーローなら。
ヒーローなら、この場にいる全員を味方にするくらい、やって見せろよ。
――ヒーローなら、今ッ!
「――来いよッ!」
「──ッ!」
♪ ♪ ♪
そうして現れた〝ギターヒーロー〟は、澱んだ空気を容易く切り裂いた。
ヒーローは、後光を背負いながら鉄を
全員が、ヒーローに釘付けにさせられる。
逃げ場はない。
受け止めるしかない。
受け止めたなら――無関心でいられるはずがない。
だから、あとは――。
「――付いていけばいい。ヒーローは、そこにいるぞ」
虹夏先輩もリョウ先輩も、知っている。
喜多さんだって、薄々気が付いている。
大丈夫、今はヒーローに付いていけばいい。
大丈夫、今日はヒーローが導いてくれる。
大丈夫、後藤ひとりはやればできるのだから。
ヒーロー見参、ヒーロー見参、ヒーロー見参。