(意訳:仕事忙しすぎワロタンバリンシャンシャンカスタネットタンタンプップクプーシャンシャンブーチリリリリリンwwwwwwww)
狭い密室の中で、四人の音に耳を傾ける。
ドラム、ベース、リードギター、それからバッキングギター兼ボーカル。
演奏全体のクオリティは、一月前、二月前と比べてますます上がっていた。個々人の演奏技術の向上はもちろん、四人で合わせた時の安定感が増してきているおかげだろう。
……今までなら、それだけで満足していたと思うが。
「──はーいおつかれ〜。じゃあ気になるとこあった人ー」
「ん。郁代、ボーカルの入り迷ったでしょ。ちょっと弱かった」
「うっ、すみません。ギターミスして、ついそっちに気を取られちゃいまして……」
「あっ喜多さん、あそこはリードが目立つパートなので多少ミスっても大丈夫……だと思います……」
「だな。あ、あとリョウ先輩、後半段々マイペースになっていってる感じありましたよ。虹夏先輩の方が突っ込み気味だったのはあるんですけど、それは逆に良かったというか」
「あ、ホント? みんなごめん」
「ううん。たぶん此崎の言う通り。私が気を付ける」
「うん……んー、あとは〜……ぼっちちゃんあれだね、ギターソロのとこ遠慮しなくていいよ! また無理にあたしとリョウに合わせようとしてる感じがしたっていうか」
「あっはい、わっわかりました……」
「……とりあえず改善点はこんなもんすかね? や、そもそも本番直前にやってもしょうがない気はしますけど」
「私はいいと思うわ。なんだったかしら、あの、スポーツ選手とかがいつも通りの動きをするみたいな……」
「ルーティーン?」
「そうそれ!」
うーむ、合ってるような合ってないような……。
……と、まぁとにかくこんな具合で、お互い遠慮のない反省会的なものをおこなうのが最近の恒例になっているのである。
ともすればケンカの種になりかねないが、そこは全員が同じ方向を向いて同じゴールを目指しているおかげか、あるいは四人のそもそもの性格もあってか、今のところ不和に繋がりそうな雰囲気はまったくない。
ただ、ライブ直前にやるにはいくらなんでも余計な気がするけど……ま、それは今日のライブでのパフォーマンスを見て判断すればいいか。
「まぁいいや……えーっと、そんじゃ俺、そろそろフロアの方行って準備しとく、んで。……最後、ひとついいですか?」
「ん? なになに?」
「本気の一歩目。期待してます」
ニヤリと笑いながら俺が言うと、四人とも一瞬ぽかんとして、それから俺と同じような笑みを浮かべた。
♪ ♪ ♪
「――あ、此崎くん! ちょっと来て! こっちこっち!」
「お、1号さん2号さんこんちわ~……っと?」
「…………」
フロアに顔を出すと、毎度の如くファン1号さんとファン2号さんがいた……のはいいのだが、今日はいつもと違って、見覚えのない謎の三人目が一緒にいた。
マフラーに顔を埋めた、茶髪でメガネの女の子。
……ファン3号さんかな? なんて思って目を合わせようとするが、思いっきり顔を逸らされる。
……いや、というか……。
「えーっと……」
「此崎くんこの子ね、結束バンドの新しいファンの子なんだよ! つっきーちゃんって言うんだ〜!」
「知り合いから結束バンドのこと聞いて、居ても立っても居られなくなって来てくれたんだって! SNSでの宣伝効果出てるじゃん! 口コミ広まるようになってるんだもん!」
知り合いってそれ俺だな……まぁなんだ、この茶髪メガネのつっきーちゃん、ヨヨヨちゃんだよね。そんなに必死に顔逸らしたってわかるって。
それにしても、髪型変えて服装変えてメガネかけたくらいでバレないと思われてるのがまぁまぁ心外。そんな程度で俺がヨヨヨちゃんのことわからなくなると思ってるのだろうか……。
……まぁ、とは言え。
ここで俺の知り合いだとバラしても特に良いことはないというか、むしろなんだか不都合な予感すらする。なので、ここはヨヨヨちゃんの嘘……演技? とにかく、この話の流れに乗っかっておくことにした。
「……いやぁ〜、ホント宣伝頑張った甲斐がありましたねぇ! つっきーちゃん、今後とも結束バンドをよろしくな! ……って、あ、自己紹介遅れてごめん。俺、結束バンドのマネージャーやってる此崎衣久ね。つっきーちゃん、よろしく!」
「へっ!? あっうん、あっはい。えと、つ、つつつ、つっきー、です……よろしく……」
「……ちょっと此崎くん? 初対面の女の子にいきなり距離感近くない? まったく、此崎くんってばいつもそうやって……」
「つっきーちゃん、此崎くんのかわいい顔に騙されちゃダメだよ! 此崎くんってそこら中で女の子の知り合い作ってくる悪い人だからね~」
「1号さん? 2号さん?」
普通に愛想よく挨拶しただけなんですけど? 1号さんと2号さんの俺への評価、マジやばくね? ウケる。いやウケないが。
――と、1号さんと2号さん、そしてつっきーちゃんことヨヨヨちゃんとそんな愉快なやり取りをしていた俺だったが、ライブの開演時間を迎える頃には一人でフロアの後方を陣取っていた。
スマホをジンバルにセットして、カメラレンズをステージに向ける。
お客さんはだいたい4、50人くらいで、フロアの前の方に集まっていた。お客さんたちの後頭部でステージ遮られないように、しかしきちんと観客がいることはわかるような画角にするため、立ち位置やズームを微調整する。
「……うし、こんなもんかな」
今日、俺がフロアにいるのは、今までのように呑気に結束バンドのライブを観賞するためではない――オーチューブにアップする用の動画を撮影するためなのだ。
この前ぽやみさんとのあれこれを経て未確認ライオットへの参加を決めたときにアップした動画は、店長さんがこっそり撮っていたものを流用したものだった。
件の動画は11月の文化祭リベンジライブ映像だったので盛り上がりっぷりは申し分なかったのだが、演奏のクオリティがいまいちな上、やけに後藤ばかりクローズアップされていて結束バンドのPRのためにはこれじゃちょっと……という感じだった。実際、トゥイッターやイソスタで宣伝してもいまいち再生回数が伸びなかったし
……まぁそもそも店長さんが盗撮してた動画ってことは、後藤ばっかり撮っていたのもつまりはそういうことだからしょうがないんだけどな。
「此崎」
「あっ店長さんお疲れ様ですなんでもないです」
「は?」
「あっすいませんマジでなんでもないです」
店長さんにすんごいジト目で睨まれたが、口笛を吹いて誤魔化した。そして「口笛上手いなお前……」との一言を頂いた。本当に誤魔化せちゃったぁ……。
「お前それ、ライブ中ずっと構えてる気か? 腕疲れるだろ」
「あぁはい、あいや、一曲ごとに区切ろうとは思ってるんですが……きついですかね?」
「たぶんな」
うーん、どうせ買うなら三脚が先だったか……いや大した値段じゃないだろうし三脚も買うか。結束バンド用の貯金、まだ全然使ってないし。
「ま、とりあえず今日はどうしようもないんで頑張ります」
「ん。……それにしてもお前、また新しい女引っかけたのか」
「その言い方やめてもらえます?」
それってもしかしなくてもつっきーちゃんのことですよね? 見てたんかい。
「お前、ついひと月前にも虹夏たちにしばかれてただろうが」
「いやぁ……」
その原因になった人がつっきーちゃん……って言うのは微妙に語弊があるような気がするけど、まぁ同一人物なんですよね。少なくとも「新しい女引っ掛けた」なんてのは二重の意味で違うんですよ。マジで違うんですよ。
「……ねぇ、ところで店長さん?」
「なんだ?」
「もう腕疲れてきました……」
「知るかバカ」
早くライブ始まってくれ……。
……なんて、そんな俺の願いが届いたというわけでもなく、普通に開演の時間がやってきて、ライブハウスの照明が落とされた。
♪ ♪ ♪
結論から言うと、結束バンドのライブパフォーマンスは格段に良くなっていた。後方腕組みドヤ顔ができるくらいには。いやカメラ構えてたから腕組みできなかったけど。
スタジオでの演奏を聴いているだけでもみんなのレベルアップを感じているつもりだったが、ライブ本番でのパフォーマンスを目の当たりにすることで格段にその程度を実感した。つもりはつもりでしかなかったんだな、と思うくらいに。
もっとも、当たり前だがプロでも通用するような腕前になった、なんてことはない。
具体的に何が足りないのかと言われると難しいのだが、とにかく順当にステップアップをしているだけだということはわかるのだ。
……だからねヨヨヨちゃん、わざわざロインで『まぁまぁね』って送ってきてくれなくてもいいんですよ?
1号さんと2号さんの間に挟まってこそこそスマホ操作したんだろうけど、そこまでしてもらわなくてもこれで満足してちゃしょうがないってのはわかってるのだ。
なので、ヨヨヨちゃんのそんなロインにも特段怒ったり凹んだりはしない。だいたいヨヨヨ語における『まぁまぁね』を日本語に翻訳すると『ふーん、まぁ私たちほどじゃないけど? 思ってたよりはやるじゃない?』という意味になるので怒る理由がないのである。
……で、それからの話だが。
「――あ、みんなお疲れ様ー! 今日のライブ、今までで一番よかったよ~!」
「みんなどんどん上手くなってるね! すごいよ!」
「1号さん! 2号さん! ありがとうございます~!」
「……でねでね! ジカちゃん、この子! 結束バンドの新しいファンの子なんだよ! つっきーちゃんって言うの!」
「えっ! 新しいファン!? すごい、嬉しい!!」
「…………」
つっきーちゃん、結束バンドに紹介されちゃったねぇ……すごい必死に目ぇ逸らしてるねぇ……。
ライブが終わり、これまた毎度の如く最後まで残っていた1号さんと2号さんが、裏から出てきた虹夏先輩たちとつっきーちゃんを嬉々として引き合わせたのである。そらそうなるわな。
そして俺は、それを少し離れたところから、にこやかに微笑みながら眺めていた。
「……此崎くんがすごく良い笑顔でこっち見てるんだけど、あれは……?」
「あっあああれはっ! わわわ、私を陥れる時に見せる慈愛に満ちた表情……! こここ此崎くんいったい何を企んで……!?」
後藤がなんか言ってる。
が、しかし。
「後藤」
「ひぃっ!? なっ何!?」
「別にお前じゃないから」
「……えっ」
と、一言後藤に告げてから、俺は虹夏先輩に距離を詰められて戸惑うヨヨヨちゃん……じゃなかった、つっきーちゃんに目を向ける。
つっきーちゃんはというと、虹夏先輩と1号さん2号さんの三人に物販ブースへと連れられて行き、結束バンドのバンドグッズである結束バンドの形をしたリストバンド……という名の結束バンドが500円という暴利で売られているのを目の当たりにし、戦慄した表情を浮かべていたのだった。
「つっきーちゃん、せっかくだから私がミニアルバム買ってプレゼントしてあげるよ! みんなのサイン付きの!」
「あー、サイン……そう言えば、文化祭の時に考えとくって言ったような言ってないような」
「いや、確かに言いましたよ虹夏先輩。ちょっとニュアンスは違いましたけど」
うちのクラスメイトたちがろくにライブも見てないくせにサイン要求してきて、それを虹夏先輩が「ライブ見にきてくれたら考える」と言ったのだ。
文化祭のドタバタで有耶無耶になった……かと思いきや実は色紙が全部真っ白なことがバレて問い詰められてたりする。その後は確か……文化祭1日目に現れた結束バンドの四人と行動を共にしていた謎の黒髪ロング丸メガネクラシカルメイド服姿の美少女の氏名年齢連絡先や写真等々を強請られて……その先の記憶がないなーフシギダナー。
「此崎くん? 大丈夫?」
「あっはい大丈夫に決まってますわよ」
「……つ、疲れてる?」
疲れてるか疲れてないかで言ったらクソ疲れてるけど大丈夫に決まっているのだ。
「いや、それより虹夏先輩、結局サイン考えてあるんですか?」
「うーん、結局あれから書くようなタイミング無かったし何にも考えてないけど……リョウは? リョウもあの時一緒にいたじゃん」
「特に考えてない。名前なら書ける」
「うんうん、さすがのリョウ先輩でも自分の名前くらい書けますよね……ってこれ前も言ったな。ま、この際名前だけでもいいんじゃないですかね」
「あっこっ此崎くん、わっ私実はサイン考えてあるんだけど……」
「おん? そんなの知ってるが」
後藤、結束バンドで初めて歌詞考えてるときに現実逃避でサイン作ってたからな。リョウ先輩も知ってるだろ。
「…………」
「…………」
「……あっえっ? そっそれだけ?」
「は? 何が?」
「や……なっなんでもないです……」
「まぁなんでもいいけど……とりあえず名前だけでもいいからサイン書きましょうよ。ほら、せっかくの新しいファンなんですしサービスしなくちゃ」
つっきーちゃんが「いらないんですけど」という念を込めた視線を送ってくるが、黙殺することにした。いや確かにつっきーちゃんがヨヨヨちゃんならいらないだろうけどさ、つっきーちゃんはつっきーちゃんなんだから貰っといたほうがいいでしょ。いろんな意味で。
1号さんがお金を出すとか何とか言っていたが目の前で聞いてしまった以上スルーもできないので、つっきーちゃん用のミニアルバムは無料でプレゼントすることにしつつ、結束バンドの四人にサインを書いてもらう。
ちなみに虹夏先輩は『にじかっ!』とまぁ可愛らしいけどサインとしてはどうなんだろうって感じで、喜多さんは即興のわりにはそれっぽい感じ、後藤はやっぱり見覚えのあるだいぶ書きづらそうな感じのサインであった。そしてリョウ先輩だけは『山田』とマジで洒落っ気ない字体で署名していた。あれはサインじゃなくて署名だ。英語とか日本語とかそういう問題でなく。
「つっきーちゃんよかったね! 世界初だよ! 結束バンドのサイン入りグッズ!」
「は、はは……あ、ありがとう……」
「というか私も欲しいな〜! ねぇみんな、私たちの分も書いてくれないかな?」
「あっはいももももちろんです!」
「そこは率先して引き受けるのねひとりちゃん……」
と、つっきーちゃんにだいぶ癖の強いサイン入りミニアルバムが無事手渡されたのだが、すると今度は1号さんと2号さんがサイン入りグッズを欲しがり始めた。今まで散々ライブ来てもらってグッズ買ってもらってたのにサインとかはしてなかったんだな、などと俺も今更気が付いてちょっと驚いた。
しかし、そうなると自然の成り行きで結束バンド四人と1号さん2号さんばかりで盛り上がる(厳密に言うと約二名溶け込めていない。内一名が高まる姦しさに耐えきれず溶けそうではある)形となってしまい、しかしそれを好機と見たらしいつっきーちゃんはそそくさと俺のそばに近寄ってきたのだった。
「――ちょっと! 私こんなつもりじゃなかったんですけど!? こっそり観てこっそり帰るだけのはずだったのに……!」
「いやー、1号さんと2号さんに捕まっちゃった時点でそれは……ねぇ?」
みんなに背を向けて二人でこそこそと話をする。もうつっきーちゃん設定はスルーしていい感じかな。いい感じだな。
「だいたいねぇ、あんた楽しそうに見守ってないでもっと早い段階で助け船出しなさいよ! ……くっ、とにかく私もう帰るから! これ以上いたら絶対バレるわ……!」
「えー、もう帰っちゃうんですか? もう少しいた方がもっとおもしろ……いやなんかこうもっと良いことあるでしょうに」
「今完全におもしろいって言いかけたわよね?」
んっんー?
……いやまぁね、バレたら俺にとっても面倒なことになるのは間違いないし、早いうちに帰ってもらうのが安パイか。今日のライブの話はまた夜にでもロインですればいいし。
「せっかく顔合わせたのにあんまり話せなくて残念ですけど、そういうことなら今日のところはこれで」
「っ、え、えぇ、そうね残念……じゃなくて、後はそっちで上手く――」
「──ううぇえぇぇぇえい!! みんらぁ元気してるぅ〜〜〜!? きくりお姉さん登場ぉ〜〜〜えへぇえへぇえへへへ……って、あれぇ? いっくんどうして大槻ちゃんと一緒にいるのぉ? もしかしてまたカラオケデートしてたのぉ!? って、あっここライブハウスだった! じゃあ違うか! えへ。あっそうだいっくん今度お姉さんともカラオケ行こうねぇ~! えへへへへへ〜……!」
──しかし、突如出没したきくりちゃんの手によって、俺たちの思惑はすべて無残に破壊される。
「……此崎くん?」
「どういうことか説明してくれるわよね?」
「お、おおつき……ヨヨ……?」
「あー。どうりで見覚えが」
そして俺は、ヨヨヨちゃんが白目剥いてておもしろいなぁと思った。
無論、現実逃避である。
きくりちゃんどうして全部言っちゃうの……と恨みがましく視線を送ったところで、今日もばっちり仕上がっているきくりちゃんは「あへー?」と首を傾げるばかり。うん、あれだね、生きててえらいね。(諦め)
諦めた俺は切なく笑うだけだったが、白目を剥いていたヨヨヨちゃんは違う方向に舵を切った。
「――そうです私が大槻ヨヨコです!!」
そう、思い切って結束バンドを相手に自ら名乗ったのである。
「……よ、ヨヨヨちゃん……」
「……いいのよ、ここまで来たら仕方ないわ」
「いやそうじゃなくてなんかそれ変なおじさんみたいな自己紹介で――ぐふぅっ!?」
ヨヨヨちゃんのやけくそ自己紹介を茶化した俺は結構な勢いでヨヨヨちゃんにビンタされて吹っ飛んだ。そのまま床の上で頬を抑えてしなだれるように座り込んだけどきくりちゃん以外誰一人として心配してくれなかった。
悲しみに暮れる俺を差し置いて、話は進んでいく。
つっきーちゃん改め大槻ヨヨコ、もといヨヨヨちゃんを前にして、結束バンドの四人はというと目を見開くのだった。
「……あなたが、あの――」
「……ふんっ、どうやら私のことは知っているようね」
「――あの、ヨヨヨちゃんさん……!!」
「ヨヨヨちゃんさん!? 何その変な呼び方!?」
「此崎くんと新宿でショッピングしたり二人きりでカラオケに二回も行ったりしてる、あの……!」
「ちょっと待って!? 知ってるのそれ!? というか私それで知られてるの!?」
「あと、シデロスのギタボ」
「本当にそっちがついでなの!? しかもすごい雑ッ!!!」
「ヨ……ヨヨ……ヨ……」
「後藤ひとり!! あんたはなんでそんなに死にそうな声で鳴いて……鳴……あれ……なんか急に静かに……?」
「あ、ひとりちゃんまた死んじゃったんだ」
「死んだの!? いや
「つっきーちゃん、ひとりちゃんはよく死んじゃうんだよ~」
「よく死ぬの!? 複数回死ぬの!?」
「このやり取りちょっと飽きた」
「こんなやり取りを飽きるほどやってるの!?」
やってますとも。うちの鉄板ネタですからね。
1号さんと2号さんもご覧の通りとっくの昔にこちら側である……が、リョウ先輩の飽きたって意見もちょっとわかってしまった。でもこれ伝統芸だから……受け継いでいかなくちゃだから……。
一応こう、おこがましいとは思うもののライバル同士のファーストコンタクト的な瞬間だったはずなんだけど、どこからどう見ても結束バンドが一方的に洗礼浴びせてるだけになってるわこれ。ヨヨヨちゃんかわいそう。
「えーっと、ぼっちちゃんのことは置いといて……ヨヨヨちゃんさん、じゃなくって、大槻さんはどうしてここに?」
「そうだよぉ~大槻ちゃ~ん! もしかして結束バンドが前座に出るの、あんまり納得できてない感じぃ~?」
しかしまぁさすがにそこは虹夏先輩が軌道修正してヨヨヨちゃんに尋ね、きくりちゃんがそれに乗っかるようにさらに質問する。
ヨヨヨちゃんは後藤の死体に気を取られつつ、床で胡坐をかいてみんなを見上げていた俺をちらりと一瞥し、それから言葉を選ぶように答えた。
「……正直、シクハックの前座としても、私たちシデロスと対バンするにも結束バンドは実力不足だと思ってましたから。ただ……今日のライブ、思ってたよりは……よかったわ」
「えっ、本当ですか!」
「っ、か、勘違いしないで! あくまで思ってたよりだから! 実力不足って評価には変わりないわよ!」
「あぅ……」
意外と好意的なヨヨヨちゃんの発言に喜色を浮かべた虹夏先輩だったが、続くツンツンセリフにすぐさま消沈してしまった。
……うーむ。今の、全然真に受ける必要なかったのにな。
「虹夏先輩、今のは典型的なツンデレセリフで店長さんのアレとまったく同じアレなのであんまり気にする必要な――ぎゃんっ!?」
「あーあーいっくん、先輩のツンデレいじったらそりゃ痛い目に――あっがいっ!?」
俺ときくりちゃんは揃って後頭部を引っぱたかれた。いつのまに背後に……。
「――とにかくっ!」
「あっうん」
ヨヨヨちゃんが気を取り直すように大きい声を上げたことで、虹夏先輩と喜多さん、リョウ先輩、あとは1号さんたちの注目が再び彼女に集まる。後藤? 後藤なら俺の隣で死んでるよ。
「結束バンド! あんたたちがそこそこやるのはわかったわ! でも、あんたたちがまだひよっこであることには変わりないわ! 軽い気持ちでフォルトに来て私と姐さんのライブを台無しにするのだけは許さないわよ! いいわね!?」
と、ヨヨヨちゃんはそう言った後、俺をひと睨みしてからさっさとスターリーを出て行ってしまった。
「……え~っとぉ~……とりあえずあれだね、みんな頑張って!!」
そして、きくりちゃんからそんなありがたい激励があって、俺たちは……お互いの顔を見合わせて、ハハハと乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
なお、ちなみにその夜。
ヨヨヨちゃんから褒めるところはきちんと褒め、指摘する点は容赦なく指摘してくれているめちゃくちゃ長文のライブの感想が俺のロインに送られてきた。
ので。
俺はそれを丸々スクショして、ヨヨヨ語における一見厳しいけどその実優しさに溢れる表現のニュアンスなどの補足も欠かすことなく、結束バンドのロイングループできっちりと共有しておいた。
やったねヨヨヨちゃん! 結束バンド内での株価がうなぎ上りだよ!
久々に謝辞っておきます。
お気に入り評価感想ここすき誤字報告等々ありがとうございます。
感想やここすきは相変わらず盛況ですが、お気に入りや評価はだいぶ落ち着いてきましたねぇ。なんだかんだ長らく1位だった総合評価が抜かれちゃったのもあるかなぁと。
でもね、三次創作の怪文書が今350件超ある(ダイレクトマーケティング)しなんかもうなんでもいいかなという気持ちにもなってるんですよね。ハメにあるぼざろ原作の件数より多いの怖い。
とは言え「はいはい負け惜しみ乙w」とか言われたらキレます。
ともあれ更新スピードがだいぶアレになってきてますが、お付き合いいただける方は今後ともよろしくお願いします。