「日付が変わるとどうなる?」
「知らんのか」
「我らがきくりちゃんのスピンオフ漫画がCOMIC FUZZで連載スタートする」
「ねぇ此崎くん」
「はい」
カラオケボックスに転がるは無残な後藤の変死体。
そのすぐ隣、俺は固い床の上で正座を強いられていた。
「私、『まさか』って言ったわよね」
「はい」
「それに対して此崎くんも『まさか』って言ったわよね」
「はい」
「じゃあ、これはなんなのかしら?」
「…………」
「……嘘を吐いた、ということよね?」
「いいえ、嘘は吐いてません」
「それ、ちゃんと私の目を見て言ってもらえるかしら?」
「…………」
俯いたまま尋問に答えていた俺の顔を、喜多さんがキタキタハイライト抹消済みの大きな瞳で覗き込んでくる。
そうしてしばらくじーっと見つめられたが、俺は恐怖ですぐに目を合わせていられなくなり、ついぞ二の句が継げなかった。
「……そう、言えないのね」
「い、いやあの……」
「じゃあ、お奉行様に連絡するわ」
「いやちょっと待っ……ま、待ってください喜多さん、いえ喜多殿!」
「もしもしお奉行様?」
『はいこちらお奉行』
「なんでノータイムで伝わってるのよ伊地知虹夏!?」
ヨヨヨちゃんの冷静で的確でしかし勢いを失っていないツッコミが光ってるね。光ってないで俺を助けて。
俺の哀しみに満ちた視線はヨヨヨちゃんに届かず、彼女の視線は喜多さんが机の上に置いたスマホへと注がれている。
かわいい手帳型のケースをスタンドに横置きされたスマホは画面が少し上向きで床に座っていると見づらいが、そこにロインのビデオ通話によってお奉行様の御尊顔が映し出されていることはわかった。
『貴様は喜多ちゃんを相手に嘘を吐いて大槻さんと逢引をしたそうだ! この二枚舌の大嘘つきめ! もはや同情の余地もなし!』
「き、貴様呼ばわり……い、いえお奉行様! 滅相もない! 俺は嘘など吐いておりませぬ! し、真実を告げなかったのは、こ、この口が勝手に……」
『口が悪いと申すか!! ならばその口を切り落とす!! ついでに打ち首獄門!!! 引っ立てい!』
「マジですか?」
ついでに打ち首とかこのリモートお裁きヤバくない?
あとつい先月もおんなじような裁判して死刑宣告されてるんだけど俺ってそんなに罪深いですか? 罪深いですか。そうですか。
「……まぁいいやそれで」
「よくないでしょ!? 全然よくないでしょ!? あんた自分の命を何だと思ってるのよ!!!」
「一生懸命ツッコミ入れてくれてえらいねヨヨヨちゃん」
「さすがヨヨヨちゃんさんですね!」
『あ、大槻さんこの前MVのこととかアドバイスしてくれてありがとねー』
「あんたたちずっと何言ってるの!? ずーっと何言ってるの!?」
そんなことは俺にだってわからない。考えちゃダメ、考えちゃあいけない……感じるしかないんだよヨヨヨちゃん……。
「ま、ひとまずお奉行様お疲れさまでした。話ややこしくなるんでこの辺で」
『あ、うん。今度あらためて事情聴取はするから此崎くん覚悟しといてね~』
ばいばーい、とお奉行様が手を振るとすぐに通話が切れた。事情聴取までに弁護士立てとこっと。
「……さて、そんじゃとりあえず四人でカラオケするかぁ!」
「そうね! 此崎くんへの刑の執行は後日でいいし、せっかくだから大槻さんの歌も聞きたいわ!」
「ちょっと待って!? この流れでさらっと合流するの!? 本当に!?」
「ああ! そしてトップバッターは後藤だぜ!」
「――オギャッ!?」
♪ ♪ ♪
「――あっどんぐりころころ、どんぐりこあっ違どんぶりこ……! おっお池にはまってあっ大変、どっどどどじょうが出てきてこんにちは、――ぼっちちゃん!? あっ違うぼっちゃん一緒に遊びましょう……!」
「キャッキャッ!」
「此崎くんがキャッキャッって喜んでるわ! ほら見てください大槻さん! かわいいですよ!」
「えっ、えぇまぁ……じゃないわよ!? なにこれ幼稚園のお遊戯会!?」
はい、後藤ひとりさんで『転がるどんぐり、君にどじょうが降る』でした。いや嘘どじょうさんは降ってないわ。どんぐりに降られてる側だわ。冤罪だわ。
……ともあれ俺の目論見通り、後藤の渾身のナンバーのおかげでしっかりと場は温まった。異論は認めませんでしてよヨヨヨちゃん。
ナイス後藤とサムズアップを送ってやると後藤はすぐに「あっそっそれほどでもうへへえへうへへへへ」とでろでろの笑顔を披露するのだった。こいつ褒めてもらえればなんでもいいんだよね。
ちなみにもちろんここまでの一部始終はスマホで動画撮影済みである。コレクションが潤うのはもちろん、店長さんがこれにどんな値段を付けるか見物だ。
「はいじゃあ次歌う人ー」
「せっかくですのでヨヨヨちゃんさんどうぞ!」
「いや……どんぐりころころの後に歌わされるのは罰ゲームじゃない?」
「でも俺、ヨヨヨちゃんならできるって信じてますよ!」
「……しょ、しょうがないわね!!!」
よし、どっちのぼっちもちょろいもんだ。めざせぼっちマスター。鍛えた技で勝ちまくりだぜ。
「で、何歌ってくれるんですか?」
「ま、せっかくだし? 私のバンドの曲でも? 歌ってあげようかしら?」
「え、シデロスの曲カラオケ入ってるんですか!? すごい!!」
喜多さんがそう言って目を輝かせると、ヨヨヨちゃんはふふんっと胸を張って得意げである。褒め上手な喜多さんとヨヨヨちゃんの相性ってもしかしたらいいのかもしれない。
ちなみにシデロスの曲がカラオケに入ってるのは、ヨヨヨちゃんが身内や知り合いに頼みまくってリクエストを送ってもらったかららしい。メジャーな曲じゃなくてもある程度の数のリクエストがあれば配信してもらえるのだとか。
たぶん秀華高でうちのクラスを中心に呼びかければ結束バンドの曲を入れるのはそう難しくないと思うが……今んとこやる意味はそんなにないかな。いずれ宣伝の一環でやってもいいかもってくらい。
と、そんなことは置いといて、喜多さんの陽の気に宛てられたことによりヨヨヨちゃんがいつにも増して自信満々に歌い始める。
ただでさえ上手いのに歌声に一層磨きがかかってんだよね。陽キャブーストすごい。
……が、しかし、そんなヨヨヨちゃんの歌に誰より微妙な顔をしていたのが喜多さんである。
俺は思わず後藤に目を向けると、後藤もまた少し困ったようにこちらを見ていた。
いや何、まさか喜多さんがヨヨヨちゃんの歌に不満を感じているわけではないだろう。
たぶん……自分の歌に違和感を抱いていた喜多さんは、ヨヨヨちゃんの歌を目の前で聞いたことで、明確な
「──ふぅ、まぁこんなものね。さ、次はどっち歌うの? 順番でしょ」
「……わ、私歌います!」
ヨヨヨちゃんがシデロスの曲をバッチリ歌い切ると、今度は喜多さんがマイクを握った。
そして、喜多さんは毎度高得点を叩き出している歌を選び、俺やヨヨヨちゃん、後藤の顔色を窺うように視線を彷徨わせてから歌い出した。
喜多さんの歌は、やっぱり上手い。
上手いが、やっぱりヨヨヨちゃんより
しかも、今回に限って言えば、喜多さんの歌には明らかに迷いがあった。音程を外しているわけではないのでカラオケの採点にはあまり影響しないと思うが、漠然とした自信のなさがにじみ出ているように感じてしまう。
ついつい難しい顔をしてしまう俺、憮然とした表情のヨヨヨちゃん、そしてじんわり溶けつつある後藤。夏場のアイスかな?
いや、なにゆえ後藤がちょっと溶けちゃってるかって、俺とヨヨヨちゃんがあまりにも微妙な空気を作ってしまっているからだろう。
まぁ後藤のことは別に構わないとして、喜多さんには本当に申し訳ない。が、こうも自信なさげに歌われると下手に盛り上げようとした方がかえって目も当てられない雰囲気になりそうでな……。
「――あなたたち、今日は遊びに来たわけじゃないみたいね」
やがて、喜多さんの歌が終わると同時にヨヨヨちゃんが口を開く。
すると、喜多さんは目を丸くしたあと、食い気味に「じっ実はそうなんです……!」とヨヨヨちゃんに迫った。
……いきなりパーソナルスペースに侵入されて焦ってるヨヨヨちゃんは印象的だったが、俺はそれ以上に喜多さんの隣で「そうなの!?」みたいな顔してる後藤が気になった。もしかしてこいつ、喜多さんから何にも事情聞かされないで連行されてきたのか……?
「ヨヨヨちゃんさん、私たちの新曲のMVって……」
「まぁ、見たわよ。此崎に教えてもらったわ」
「あ、ありがとうございます。それで私、そのMVをずっと聞き返してるうちに自分の歌に違和感出てきちゃって、自信なくなっちゃって……でも、何がダメかもよくわからなくて」
「……えーっと、まぁ、俺も一応相談は受けてまして。とりあえず練習してみれば、なんて無責任なこと言っちゃったんですが……」
俯いてしまった喜多さんに俺も少し言葉を付け加えると、ヨヨヨちゃんにじとっと睨まれてしまった。
これはどう考えてもあれだ、無責任とか言うくらいならさっさと私に相談しなさいよって視線だ。
「……ま、とりあえずもう少しお腹から声出してみたら? 自信なくてもそれだけで多少良い感じに聞こえたりするわよ」
はぁ、とヨヨヨちゃんはこれ見よがしにため息を吐き、ソファにもたれて腕を組んで、遠くを見やるようにしてさらに続ける。
「あと、いくらカラオケで上手くたって、結局レコーディングもライブも別物よ。それを全部カラオケ感覚で歌ってたら変なのは当然。バンドのボーカルはフロントマン、中心で、顔なんだから。音程があってればそれでいいってわけじゃないわ」
「…………」
「……はっきり言うけど、今のあなたには結束バンドのボーカルである必然性は感じられないわね。少し歌える程度じゃ――」
「――あっあの!!!」
「おいなんだ後藤うるせぇな!」
「あっすっすいません!!!」
ヨヨヨちゃんがまだ喋ってる途中でしょうが!
と、しかし。
「――でっでも!」
後藤は、珍しく俺に反抗して、そのまま言葉を続けた。
「よ、お、大槻さんの言ってること、たっ正しいのかもしれないけど……でっでも、けっ結束バンドのボーカルが、喜多さんじゃなくていいなんてこと、そっそんなことはない……です!」
「ひとりちゃん……」
立ち上がった後藤が強い口調でそう言い切ると、喜多さんが顔を上げて後藤のことを見つめる。
そして、喜多さんもまた立ち上がり、後藤の手を取って「私、頑張るから!」と一際明るい表情を浮かべたのであった。
「……いやだからヨヨヨちゃんまだ喋ってる途中だったのよ」
「もういいわよ此崎……具体的なアドバイスは後でまとめてロインで送るから、あんたの方で上手くやっといて……」
♪ ♪ ♪
――そして、俺と後藤は喜多さんと共に後藤家へとやってきていた!
「後藤ォ! 状況解説ォ!」
「あっはい! カラオケ終わって帰り道! 私たち揃って駅まで歩き! ヨヨヨさんグッバイまたいつか、喜多さんグッバイまた来週! でもどうした喜多さん電車逆だぜ? 喜多さん私んちお泊りなぜ? オゥイェア……」
「なんでラップ風なの? あと誰向けの解説?」
解説が誰向けかはわからんけど後藤のクソカスラップは俺得である。
しかし状況の解説としてはゴミカスすぎて何も伝わらないと思うので補足すると、あれからがっつりカラオケ楽しむ雰囲気でもなくなってしまった俺たちは程々のところで退店、お開きということに相成ってしまった。
そして駅までの道中、確か喜多さんがヨヨヨちゃんに改めてお礼を言って、それに対しておそらく気まずくなったのであろうヨヨヨちゃんがこんなことを言い出したのだ。
『――私、昔から人に合わせるのが苦手で、中学の頃はクラスで浮いてて。曲作りを始めたときは、そういうことへの不満とか苛立ちとかを歌詞に込めてたの。そういう曲ってすごく気持ちを乗せて歌えたわ』
だからあなたも技術的なことだけじゃなくて、自分たちの曲がどんなものなのかとか、もう少し内面的なところにも目を向けてみたら――と。
ヨヨヨちゃんはそれだけ言い残してあっさりと去って行ってしまったのだが、喜多さんはこれに甚く感銘を受けたらしく、俺と後藤の帰りの電車、すなわち喜多さんの家とは逆方向の電車に一緒に乗り込んできたかと思うと、後藤が作った歌詞への理解を深めたいから今週末はお泊りさせてほしい、なんて言ってきたわけである。
後藤は、隔意はもちろんないものの、それはそれとして天敵である太陽の化身が唯一の楽園たる己の家にやってくるという事実を前にしてその顔を絶望に染め上げ、救いを求めるように俺へ視線を送ってきた。
が、しかしそんなめちゃくちゃ失礼な視線を俺はもちろん黙殺した。決して喜多さんを説得するのが面倒なわけではない。
ともあれ既に後藤んちの目の前。
あとはもうチャイムを鳴らして玄関に一歩足を踏み入れれば後藤家包囲網によって喜多さんのお泊りが確定する(事前連絡済み、大歓迎の模様である)わけだが……。
「……で、あの……こ、此崎くん?」
「……何?」
なんか、ここに来て何故か喜多さんがもじもじし始めた。そして何故か、後藤ではなく俺の顔色を窺っているように見える。
いったいなんじゃと思ったが、続けられた言葉ですぐに納得がいった。
「その、普通にここまで付いてきてるけど、此崎くんもひとりちゃんのおうちに泊まるのかしら……?」
「あー」
そういうことだ。
「……いやまぁ、普段通りなら、泊まる。家に帰るなんてふたりちゃんにお許しいただけないからな」
「そ、そうなの」
「まぁでも、喜多さんが泊まるならふたりちゃんも納得してくれる……かもしれない可能性はなきにしもあらずだ」
「ものすごく可能性が低そうなのはよくわかったわ」
いやそんなに低いわけでは……でもな……わかんないな……。
まぁなんだ、最大限配慮したいとは思ってる。
普通の女子高生が恋人でも何でもない男子と一つ屋根の下で寝食を共にするなんてのは非常にハードルの高いことであると俺は重々理解しているのだ。俺は、重々理解しているのだ。
「……ま、とりあえずいつまでも家の前いないで入ろうぜ。たぶん後藤一家が玄関でクラッカー用意して待ち構えてるし」
「え、く、クラッカー? 今日急にお邪魔するのになんでそんな準備が……」
「夏休みに一回遊びに来ただろ? あの時以来常備してる」
「どういうことなの!?」
そりゃあもちろんこういう状況に備えてのことだろう。後藤パパと後藤ママが非常に嬉しそう&楽しそうにしてたので俺は余計な口を挟まなかった。実際役に立つときが来てるしな。
……というわけで、ようやく俺たちは後藤家へと突撃するためにとりあえずチャイムを鳴らした。
すると0.2秒くらいで応答があって、すぐさま玄関の鍵が開く音が聞こえた。
カスラッパーは喜多る……じゃなくて来る地獄(失礼)にぷるぷると震えるばかりでマッサージ器の代わりくらいにしかならなそうなので、代わりに俺がドアを開ける。
「「「――喜多ちゃん、いらっしゃーい!!!」」」
「わんわんっ!」
そして、案の定後藤家総出、クラッカーの炸裂音とともにお出迎えされた。ジミヘンもよう吠えとる。
小声で「ホントにクラッカーだわ……」と一瞬呟かれたのが聞こえたが、しかしそこは一見常識人でお馴染みの喜多さん。すぐに気を取り直すと愛嬌たっぷりのキタキタスマイルで「急にお邪魔してすみません」と言ってぺこりを頭を下げるのであった。
「いいのよ気にしないで~。自分の家だと思ってくつろいでいってね~」
「くぅ~、一度ならず二度までもひとりの友達がうちに遊びに来るなんて……! やっぱりひとりに友達ができたのは夢じゃなかったんだ……!」
「喜多ちゃんいっしょにあそぼ~!!」
「ふたりちゃん久しぶりね~! うん、またあとで一緒に遊びましょうね!」
「そうよふたり、先にお夕飯食べなくっちゃ。とりあえず三人とも手ぇ洗ってきてね〜」
「はいはい。あ、喜多さんこっちな」
「大丈夫よ此崎くん、なんとなく覚えてるわ。……それにしてもこの匂い、もしかして唐揚げですか?」
「あ、そうそう。この前美味しいって言ってもらえたからね! まぁ代わり映えしなくて申し訳ないとも思ったんだけど」
「そんな! この前とってもおいしかったので嬉しいです~!」
「そうかい? そう言ってもらえるとこっちも嬉しいなぁ」
……洗面所に案内しようとした俺だったが、なんかもうホントに喜多さんはほっといても大丈夫そうな感じかもしれない。
後藤家の超歓迎ムードを一身に浴びる喜多さんの陽の気は増すばかりで、自分の
「……後藤、勝負はこれからだぞ。気をしっかり持てよ!」
「えっあっうん……えっ此崎くん急に何……?」
「此崎くんじゃない、俺のことはコーチと呼べ」
「えっうん、こ、コーチ……」
……かくして始まった喜多さん強化合宿、あるいは後藤の対陽キャ耐久試験。
とりあえず夕飯はつつがなく済んだ。
俺と喜多さんは普通に食べたが、後藤はカラオケで沈黙を誤魔化すために俺とヨヨヨちゃんが頼んでいた料理を一人で大量に貪り食っていたために全然箸が進んでいなかったのだが、まぁそれはいいだろう。
それからしばらくリビングでまったりした後、お風呂が沸いたので入浴タイムに差し掛かる。
ここはとりあえず喜多さんに配慮して、俺は少なくとも一度自分の家に戻って済ませることに。
ついでにふたりちゃんに今日は俺のお泊りはなしでよろしいでしょうかと丁重にお伺いを立てたが「ダメ! いっくんと喜多ちゃんといっしょに寝るもん!」と即刻却下を食らった。
……いやマジで俺と喜多さんとふたりちゃんで寝るのはさすがに論外として、しかし俺が自分の家に帰るのは許してもらえそうになく、そこは喜多さんも「ま、まぁ大丈夫……バンドは第2の家族……わ、私も覚悟を決めるわ!」と謎の覚悟を決めていたので俺も宿泊することになったのだった。
で、俺が自分の家でシャワーを浴びて、だいたい一時間くらいは間をおいてから後藤家に帰ると。
「……いやなんで喜多さん寝てんの?」
「あっコーチ、えっと、ひとまずいつも通り過ごしてみてほしいって言われてギターの練習とか宅録とかしてたら……ね、寝ちゃって……」
「あぁ……まぁお前の日常生活って傍から見てるとクソつまんねぇからな……」
「……へへっ」
後藤が自嘲するように乾いた笑いを零すが、全然フォローする気にはなれない。だって俺もふたりちゃん抜きで後藤の部屋にずっといるとだいたい気が付いたら寝てるし……。
「じゃ、とりあえず今日のところは試合終了ということで」
「うん……」
「後藤、喜多さんのことよろしく。俺ふたりちゃんと寝るわ」
「……うん……」
そんな具合で、喜多さん強化合宿兼後藤の対陽キャ耐久試験の初日は終了したのであった。
後藤の戦いは、まだ始まったばかりだ!
……あ、ちなみにその後、俺はふたりちゃんとジミヘンと一緒に入った布団の中でヨヨヨちゃんにロインを送ったんだぜ。
今日のお礼と、中途半端になっちゃったカラオケデートまた今度行こうって連絡しておいたんだぜ。
あとついでに喜多さんと一緒に後藤んちに泊まってて、今
既読無視されたんだぜ。
ヨヨヨちゃんはベッドの上で気絶したらしい。かわいそう……また今度カラオケデートするから許して♡