うぉっち・ざ・ぼっち!   作:鯖ジャム

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ばーんばーんばんがいへーん。難産じゃった。

ちなみにこれは私の中では性転換やTSには当たらないと思ってます。後藤が勝手に夢見てるだけだしね。


#EX5 後藤ひとりは夢を見る その3

 

「……あれ、もしかしてこれって夢?」

「何言ってんの()()()。寝言は寝て言いな?」

「……う、うん、そうだよね……此崎……く、ん?」

「いや何その呼び方」

 

 見慣れた我が家のリビング。

 なんてことない普通の休日。

 

 キッチンで洗い物をしているお母さんに、ソファでくつろいでいるお父さん。

 和室の方ではふたりとジミヘンがドタバタと走り回ってる音が聞こえてきて、ダイニングテーブルには一人でのんびり朝ご飯を食べている……此崎、衣久……()()()

 

 そう、()()()()()だ。

 私の、幼稚園以前からの幼馴染。

 

 性別、女性。

 

 ……女性。

 

「……ね、ねぇ、くーちゃん?」

「何?」

「くーちゃんって……女の子だったっけ?」

「喧嘩売ってる?」

「ううう売ってない……!」

 

 くーちゃんにすごい怖い顔で睨まれた。いや考えてみたらめちゃくちゃ失礼なこと言ってるな私……親しき仲にもなんとやら、だよね。

 

「女子力ゴミカスのあんたにだけは絶対言われたくないわそれ。とりあえず顔洗って寝癖直してきたら?」

 

 ……し、親しき仲にも……。

 

「てか早く準備しないと間に合わないよ。サボる気?」

「……え? なっ何が……」

「練習。バイト」

「……あっ」

 

 完全に忘れてた……忘れてた?

 なんだか違和感があるけど、うん、くーちゃんがそういうならそうなんだろうな……。

 

 

     ♪ ♪ ♪

 

 

「――おはようございまーす」

「おっおはようございます……」

「あ、()()()()()ぼっちちゃんおはよー!」

 

 あ、虹夏ちゃんがくーちゃんのこと『くーちゃん』って呼んでる……そうなるんだ……そうなるって何?

 

 ……と、まぁともかく私の第二のマイホームことスターリー到着である。

 

 フロアにいたのは虹夏ちゃんだけで、リョウ先輩や喜多ちゃん、それにだいたいいつもいる店長さんの姿もない。

 

「虹夏先輩、店長さんいないんですか?」

 

 そんな私の気付きを察した……わけではないかもしれないが、しかし代わりにくーちゃんが虹夏ちゃんにそう尋ねた。

 

「お姉ちゃんはまだ寝てるー。昨日遅くまで仕事してたみたいで」

「そうですか。……そう言えば店長さんって朝弱そうですよね」

「お、くーちゃん正解! めっちゃ弱いよ!」

「めっちゃ弱いんだ……PAさんと同じだ」

「…………」

「……ぼっちちゃんどしたの? なんかすっごい見られてるんだけど」

「なんか朝から変で……いやまぁひとりがおかしいのはいつものことなんですが」 

「まぁねー」

 

 ……くーちゃんと、虹夏ちゃんが喋ってるの……すごい変に感じる……私はもちろんいつも変だろうけど二人が会話してる光景もやっぱり変だよ……!

 

「……あっあの!」

 

 私は意を決して声を上げる。

 この違和感を解消したい、どうしても……!

 

「何、どうしたの」

「あっえっと、その――」

「――おはようございまーす!」

「おはー」

「あ、喜多ちゃんとリョウ! おはよー! 二人同時って珍しいね〜」

 

 あっあっ、喜多ちゃんとリョウさん来たから私の、私の発言ターンがスキップされちゃ……あぁぁ……。

 

「すぐそこでリョウ先輩が道端にしゃがみ込んで雑草食べてて……通り道でさすがに恥ずかしかったので連れてきました! あ、此崎さんとひとりちゃんもおはよう!」

「ん、おはよ。そんで喜多さんナイス。リョウ先輩は恥を知ってください」

「衣久……そう思うなら追加の融資を……」

「却下」

 

 ……あ、その辺は呼び方変わらないんだ……でも、うん、なんとなくわかるな。たぶん、そうなる。強いて言うならくーちゃんと喜多ちゃんが名前で呼び合ったりしても……いやでも喜多ちゃんって虹夏ちゃんのことをいまだに名字で呼んでるしな。……というかだったら私はなぜ名前で……?

 

「……で、ひとり?」

「あっはい!」

「さっきなんか言いかけてたけど、何?」

「あっうん、えっと……あっ、くーちゃん虹夏ちゃんより背低いよね……!」

「よし、そんなにわたしと喧嘩したいか。買った」

「ちょいちょいくーちゃんどした!? というかぼっちちゃんもなんで急に煽ったの!?」

 

 あっいやそんなつもりじゃ……ただ目に付いた事実を述べただけでして……。

 

 うん、よく見るとくーちゃん背が低い。すごい今更だ。スターリーまで並んで歩いてきたのに。

 身長はたぶん……140センチ台? さすがに後半だと思うけど、すごく小柄だ。なんだろう、此崎くんが男子にしては低いから、そういうことかな……? ……此崎くん?

 

「あー、えっとぉ〜……そ、そうだ! 此崎さんこれ見て!」

「何、喜多さん……あぁ、新宿FOLTのオーチューブ?」

「そう! 昨日たまたま見つけて……って、もしかして知ってた?」

「うん、ヨヨヨちゃんときくりちゃんが教えてくれてね。ヨヨヨちゃんの弾いてみた動画鬼リピしてるしメントスコーラの動画も100回以上再生して楽しんでるしきくりちゃんの生配信にスパチャもしたわ」

「スパチャもしたの!? ……い、いえちょっと待って、それよりヨヨヨちゃんさんのあのメントスコーラ動画そんなに見てるの!? あれを!?」

「あれを」

「狂ってるわ!!! 此崎さん狂ってるわ!!!」

「狂ってないよ失礼な」

 

 ……くーちゃんは相変わらずヨヨヨちゃんさんと廣井お姉さんのことが好きらしい。

 

 ちなみに喜多ちゃんに見せてもらったヨヨヨちゃんさんのメントスコーラの動画、再生数が200回も行ってなかったのでくーちゃん一人で8割くらいを占めてるっぽい。

 それに、内容もヨヨヨちゃんさんがコーラにメントス入れて溢れるのも無言で見てるだけの不気味なもので、正直私の幼馴染は狂ってると思う。

 

「そ、それにしても日替わりでいろんなコーナーの動画があっておもしろいね〜。あたしこれ、楓子ちゃんのお料理の動画が良いな! お菓子のレシピ結構参考になるよ!」

「あ、わかります〜! あと店長の銀ちゃんさんのメイクの動画すごいんですよ!」

「それね。割とマジで勉強になるからびっくりする。さすが銀ちゃんさんだわ」

「私は水曜の霊視コーナーすき。おもしろい。あとゲーム実況も見てる」

 

 ……あ、リョウさんも結構ちゃんと新宿FOLTのオーチューブの動画見てるんだ……私くーちゃんにおすすめされたのしか見てない……。

 

 話を振られると非常に困るので特にくーちゃんには見つからないように気配を消していると、喜多ちゃんが不意に「そうだ、スターリーでも公式オーチューブチャンネルみたいなのやったらどうですか!」と恐ろしいことを言い出した。

 

「えー、スターリーで? なんか後追いみたいでイヤじゃない?」

「でも虹夏先輩、うちにはひとりっていう最強のコンテンツがありますよ。一日中カメラ回してるだけでいつの間にかバズると思います」

「なるほどペット系オーチューバー路線」

「そうです」

「……ぴぎゃっ!」

 

 ほら恐ろしい!!!

 

「そうじゃないでしょう此崎さん!? リョウ先輩も変な結論出さないでください!!」

「そうだよまったく! ……っと?」

 

 私の命運を握る2対2の舌戦が繰り広げられたりられなかったりするかと思いきや、ライブハウスの入り口から人が入ってくる音がして虹夏ちゃんの意識がそっちに行った。

 それに釣られてみんな揃って視線を向けると、店長さんとPAさんの姿があった。

 

「おぉ、なんだお前ら……」

「驚かせちゃいましたかね……?」

「あっ、ううん違います違います! お姉ちゃんPAさんおかえりなさーい」

 

 虹夏ちゃんが慌てて弁明して店長さんたちにおかえりなさいを言って、私たちもそれに続く。

 そして、そのまま虹夏ちゃんと喜多ちゃんとくーちゃんの三人で、店長さんたちにオーチューブの話をした。

 

 すると店長さんは微妙に面倒臭そうな、PAさんの方は意外と興味がありそうな反応を示したのだった。

 

「でも、実際にやるとしても何をやるかが問題ですよねぇ。何かアイデアとかあるんですか?」

「今のところ、ひとりの生態観察って第一候補で採用間近です」

「……ほう?」

「お姉ちゃん一転して興味を示さないでー。それもう却下済みだからねー」

 

 ひぃ、どっどうして店長さんこっち見てくるのぉ……!? と、私がガタガタブルブルとマナーモード設定で震えていたら虹夏ちゃんから両肩に手を置かれた。

 私を安心させるために優しく……とかではなくて椅子に押し付けて物理的に振動を止めようとしてる。されてる。

 

「……あ、良いこと思い付いた」

「え、リョウ先輩なんですか!? リョウ先輩のアイデアなら絶対間違いないです!!」

「喜多ちゃんさすがに学習しよう? さっきリョウはくーちゃんのいつものアレに同調してたんだよ? そういう奴なんだよ?」

「虹夏先輩それは私に対して非常に失礼では?」

 

 って言ってるくーちゃんはリョウさんに失礼では? あと全編通して私にも。

 ……でも、どちらかと言えば私もちょっと……ね?

 

 まぁこのくらいのことなら日頃から言われ慣れているリョウさんはさほど気にした様子もなく、そのアイデアとやらをあきらかにした。

 

「コスプレ。店長が持ってるやつで。おもしろくない?」

「……いやコスプレして何すんだよ」

「中身はなんでも釣れるでしょ。サムネが重要」

「オーチューブ舐めんなっ! あとスターリーの風評に差し障りがあるわっ!」

 

 スパーン! と虹夏ちゃんがどこかから取り出したハリセンでリョウさんの頭をしばいた。古典的だ。

 

 派手な音の割には痛くなかったのかリョウさんはしばかれた頭をさすりつつも表情を変えず、視線を……なぜか、くーちゃんだけに向けた。

 

「……え、なんで私見るんですか?」

「それはもちろん衣久がコスプレするから」

「なんでやねん」

「結束バンドのコスプレ大臣でしょ」

「初めて聞いたわ!! メイド服とセーラー服着ただけでしょ!!」

「くーちゃんMV撮影の時もサブカル風なコスプレしてたじゃん」

「あれはわたしの場合は普通に衣装着ただけでしょうがぁ! 女装ならともかく!!」

「此崎さん、リョウ先輩がこう言ってる以上コスプレ大臣としての責任があるわ。勤めを果たしてちょうだいね」

「やっぱりわたしよりも喜多さんの方が絶対に狂ってるって! 目がおかしいもん!! 目が!! ――ひとりぃ! あんたもなんとか言ってって! 幼馴染が辱めを受けようとしてんのよ!?」

「……さ、散々私のこと辱めようとしてるのに、私に助けを求めるの……?」

「…………」

 

 ……あ、くーちゃんが口をぱくぱくし始めちゃった。

 

「すごい、珍しくひとりちゃんのカウンターがクリティカルヒットしてるわ……」

「で、でも事実なので……」

「うん、ぼっちちゃんは何も間違ってないよ。さ、くーちゃん観念しよう? いつもの流れだよ」

「嫌じゃ……コスプレなどしとうない……こんな美人だらけの職場でなぜよりによってワシがコスプレせにゃならんのじゃ……需要がないのじゃ……」

 

 くーちゃんがのじゃロリになってしまった。

 テーブルに突っ伏してイヤイヤと首を振っているが、ニコニコと笑う虹夏ちゃんと喜多ちゃんに両サイドから手を置かれている。哀れだ……。

 

「――衣久」

「……りょ、リョウ先輩……?」

 

 ――しかし、手は差し伸べられた。

 

 リョウさんは、顔を上げたくーちゃんと視線を交わし、それから柔らかく微笑んで見せた。

 

 そして――。

 

「衣久がコスプレしてオーチューバ―デビューしたらおもしろいのに。絶対おもしろいのに、やりたくないんだ? 残念……素人でも気軽におもしろいことを発信できる時代なのにね。衣久はその流れに乗らないんだ。まるで時代の敗北者……」

「……ハァ……ハァ……()()()……?」

「?」

「取り消せよ……!!! 今の言葉……!!!」

 

 乗るなくーちゃん! 戻れ!

 

 

     ♪ ♪ ♪

 

 

「はい、というわけで始まりました此崎衣久さんのコスプレショーでございます。実況はわたくし山田リョウ、解説には後藤ひとりさんをお呼びしております。ぼっち、よろしく」

「あっはい」

「さて、さっそくですがまずは此崎衣久さんのプロフィールからご紹介しましょう。ぼっち、これよろしく」

「あっはい。えっと、かっ神奈川県横浜生まれ、誕生日は3月19日で、じゅっ16歳の高校二年生で、身長は149cm、体重はリンゴ140個分……な、何キロですかこれ……?」

「さぁ?」

「……あっえっと、あとは黒髪で、普段はポニーテールにしてて、吊り目がちだけどタレ眉気味で、丸顔で、むっ胸は……に、虹夏ちゃん以上、リョウさん未満……なっなんですかこれ、この情報?」

「ぼっち、必要なんだよ。必要なんだ。とりあえずありがとう……さてそれではさっそく一着目の衣装と共に、ステージの上に登場していただきましょう。どうぞー」

「うぅ、リョウさんがいつになく饒舌で違和感が……」

 

 

Entry No.1

〜スモック〜

 

「…………」

「…………」

「……初手でこれ? 飛ばし過ぎじゃない?」

「で、でも、くーちゃん小柄だからちょっと似合って」

「おいひとりぃ!! お前あとで覚えとけよお前ぇ!!」

「被告人は静粛に。……気を取り直してスモック姿の此崎衣久ちゃんについて見てまいりましょう。これは非常にオーソドックスなスタイルですね。まさしく幼稚園児と言った具合で、女の子らしく薄桃色のスモック、胸元にはワッペンが付いて、黄色の帽子や肩掛けのカバンといった小物も完備です」

「……あっあの、これ、店長さんが持ってたんですか……?」

「ぼっち、それは触れてはいけない。……さて、では審査員の方々に講評をいただきましょう。よろしくお願いします」

 

 

審査員Nさん(スタイリスト兼任)

「60点。コスプレ感が強すぎるかなーって。でもぼっちちゃんも言ってたみたいに小柄でかわいいのは間違いないよね。あとちょっと関係ないかもだけど身内がこんな衣装持ってるの本当に嫌」

 

審査員Kさん(スタイリスト兼任)

「70点! 私もさすがにスモックはやりすぎだと思いますけど、かわいいかどうかで言ったら絶対かわいいですよね! 抱っこしてあげたいです!」

 

審査員PAさん(カメラマン兼任)

「うーん、私も70点くらいですかね〜? 衣装自体はともかく恥ずかしがってる此崎さんがかわいいですね? ふふふ……」

 

審査員Sさん(衣装提供)

「100点。鼻血出た」

 

 

Entry No.2

〜ゴスロリ〜

 

「続いての衣装はこちらゴシック&ロリータ、いわゆるゴスロリ衣装です。黒を基調に白いフリルなどの装飾でコントラストが非常映えています」

「あっ普通にかわいいですね……」

「……スモックに比べれば全然マシでまったく抵抗ないわ。街中散歩できる。……そう言えばシデロスの幽々ちゃんが普段からこんな格好だよね。なんか一緒にお出かけとかしたいかも」

「どうやら本人的にも満足のご様子。ではさっそく審査員の方々からお話伺いましょう」

 

 

審査員Nさん(スタイリスト兼任)

「90点! これはかわいい! ただ個人的にはもう少しシンプルなデザイン、というかカッコいい系のゴスロリファッションも見てみたいかも」

 

審査員Kさん(スタイリスト兼任)

「私も90点で! メイクも頑張りました! お人形みたいで本当にかわいいですけど、確かに伊地知先輩の意見もわかります! パンク系のゴスロリ姿も見てみたい!」

 

審査員PAさん(カメラマン兼任)

「私も90点ですね~。この格好でそのまま働いてほしいと思うくらいです。そうしませんか?」

 

審査員Sさん(衣装提供)

「期待を込めて98点。もっと恥じらいを見せてもらえれば文句はなかった。打順が悪かったか。しかし此崎のバイト用制服として採用するという案については前向きに検討したいと思う」

 

 

Entry No.3

〜巫女服〜

 

「続いての衣装はこちら、巫女服でございます。今度は一転して”和”、そして清楚な雰囲気を醸し出しております……が、何よりの注目ポイントは……」

「……ね、猫耳? あっいや、狐の耳……と、しっぽも付いてる……」

「白い小袖に赤色の袴、足袋に草履と引き続きオーソドックスな装いながらも、ここで一つ外してきたようです。しかし狐の耳としっぽはいわゆるキツネ色。黒髪とはミスマッチのようですがこれはどうでしょう」

「こっコスプレだから、いいのでは……?」

「なるほど。ではそろそろ審査員の講評……の前にせっかくだからいろいろポーズ取ってもらって写真撮ろう。衣久、キツネのポーズして」

「雑だなぁ! なんで急にポーズなんてやらせるんですかぁ! 嫌ですよ私がノリノリみたいじゃないですか!」

「普通にノリノリじゃない?」

 

 

審査員Nさん(スタイリスト兼任)

「ノリノリだよね。あ、ちなみに70点で。清楚な感じでいいけどどうしてもインパクトは弱いかなぁ」

 

審査員Kさん(スタイリスト兼任)

「ノリノリですよねー。えっと、私も70点、ですかね? ライブハウスだとちょっと浮いちゃってますけど、神社とかで写真撮ったら映えそうですよね! 此崎さん後で撮りに行かないかしら?」

 

審査員PAさん(カメラマン兼任)

「ノリノリですねぇ。あと私は60点ということにしておきますね。やっぱり狐耳としっぽは此崎さんの髪色と揃えて欲しいなって思いました。でも、とってもかわいいとは思いますよ~」

 

審査員Sさん(衣装提供)

「ノリノリでありがとう。97点。今夜抱き枕にしていいか? まぁ耳としっぽの色に関してはこちらの落ち度なので次回までに新調しておくのでよろしく頼む」

 

 

Entry No.4

〜後藤〜

 

「……み、身ぐるみ剥がされた……」

「ひとりのジャージとかサイズ合わないって……あとホント防虫剤臭くてイヤなんだけど。臭い移る……」

「はい、というわけでお次のコスプレはぼっち。いつものジャージをぼっちから剥ぎ取って衣久に着せて、ぼっちには店長の持ってた黒いジャージ着せた。衣装交換でペアルック的なコンセプトとのこと」

「りょ、リョウさん口調は……」

「もうめんどくさくなってきた。じゃ、講評よろしく」

 

 

審査員Nさん(スタイリスト兼任)

「うーんと……70点? や、これコスプレなのかわかんないけど……でもダボダボでちょっとかわいいって思っちゃった。二人でイメージカラー交換してるのがいいねー」

 

審査員Kさん(スタイリスト兼任)

「90点。此ぼはここにありました。ひとりちゃん早くステージに上がってくれるかしら? 撮るから」

 

審査員PAさん(カメラマン兼任)

「私は80点ですねー。袖余り同盟〜みたいな? 後藤さんとのペアルックもなんだかいいですしね〜」

 

審査員Sさん(衣装提供)

「100点。今夜はぼっちちゃんも一緒に三人で寝よう。いや虹夏も一緒で4人で寝よう」

「嫌」

 

 

Entry No.5

〜バニー〜

 

「……マジか」

「く、くーちゃん……」

「……だ、だからイヤだって言ったのに!! そういう反応されるからイヤだって! こういうのはそれこそそこの実況解説共みたいなスタイル良い人間が着るものでしょぉ!!? わたしみたいなちんちくりんが着てどうすんだよ!!! うおおおおおおおおおおどこに需要があるんだあああああああああああああああ!!!!!」

「……えー、まぁバニー、バニーガールだね。バニーの日ってあったよね」

「あっはいつい最近……あっあと今年卯年……」

「あー。……ここでこの露出の多さ、網タイツだし……衣久、本当に攻めたね」

「あっはい、普段からスポーティというか動きやすそうな格好してますけどあそこまでは……」

「うわああああああああああああああああああああああああ殺してくれえええええええええええええええええええ!」

 

 

審査員Nさん(スタイリスト兼任)

「その覚悟に100点! なんだかんだ言って着てるからね! それにしてもさすがくーちゃんは空気が読める! オモシロイッ!」

 

審査員Kさん(スタイリスト兼任)

「私も100点です! 大丈夫よ此崎さん! 需要はあるわきっと! 背は低くても健康的な身体つきなんだから全然似合ってるわー!」

 

審査員PAさん(カメラマン兼任)

「これは100点差し上げる流れですね? や、でもやぶさかではないですよ。小柄な子のバニー姿からしか摂取できない栄養ありますからねー」

 

審査員Sさん(衣装提供)

「100万点。今夜は寝かさない。いや、寝かせてもらえない……カナ!?」

 

 

     ♪ ♪ ♪

 

 

 ……くーちゃんのコスプレ大会は、当初のオーチューブがどうこうという話を完全に置き去りにしていた。

 

 その後もチャイナ服やナース服といったコスプレの定番から、着ぐるみ、アニメやゲームのキャラクターの衣装などなどが次々に用意され、くーちゃんはその全てに袖を通してポーズを決めたり茶番をしたりとますますやけっぱちになっていた。

 

 そして。

 

 どれだけ時間が経ったのかはわからないけど、とにかくスク水を着たくーちゃんがオンステージだったその時に、背後で扉が開く音が聞こえた。外へとつながっている扉だ。

 

「――うえぇぇぇ〜〜〜いいせんぱぁああ〜〜いやってるぅぅ〜〜〜???」

 

 ほんの一瞬、部外者が入ってきてしまったのかと思ったけど、振り向き終わる前に聞こえた声とセリフですぐに知ってる顔が思い浮かんで、ほっとした私は慌てることなく入り口の方を見た。

 

「……え?」

 

 お酒の瓶を持って、手すりに寄りかかってるお姉さん。

 これは、予想通り。

 

 しかし、だ。

 

「おはざーっす。皆さん何してんですか?」

「……えっあっ? あっえっ――」

「あ、()()()()おはよー! また廣井さん拾ってきたの? ちゃんと元いたところに返してきて!」

()()()()おはよう! 今ね、此崎さんの着せ替えショーしてたの! 写真もたくさん撮ったのよ! 見る!?」

()()、実況変わって。喋るの疲れた」

「あら()()()()、おはようございます。せっかくだから一緒にコスプレしたらどうですか?」

()()、お前の分もあるぞ。遠慮せず、な?」

 

 ……いや、いやいや、いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!!!!!

 

「――あっ、ねぇねぇ見て見ていっくん! くーちゃんスク水なんて着てるよぉあははははは~えっちだえっちー!! あははははははは!!!」

「ホントだ……そういうプレイか?」

「そこうるさい!! えっちでもないしプレイでもないわ!!!」

 

 えっあっ普通に会話してる?

 えっなんでみんな平然としてるの?

 

 あっえっ……えっ?

 

 ……と、私が一人で困惑しているうちに、入り口の辺りにいた()()()()も、ステージの上に立ってたくーちゃんもそれぞれフロアに降りてくる。

 

 混乱の極致にいる私は椅子に座ったまま二人の顔をきょろきょろと見比べて、それからおずおずと口を開いた。

 

「……えっ、と。……く、くーちゃん?」

「何よ、ひとり」

 

 スク水姿のくーちゃんが、不機嫌そうに返事をする。

 

「……い、いっくん?」

「なんだよ後藤」

 

 私服姿のいっくんが、つっけんどんに返事をする。

 

「……ふ、二人は……えっと、あの……?」

 

 私が顔色を伺いながら語尾を上げると、いっくんとくーちゃんはきょとんとした表情で顔を見合わせた。

 

「まぁ、あれだな」

「うん、あれね」

 

 そして、二人で悪戯っぽくニヤリと笑い、私のことを見下ろしながら言った。

 

「「こういうことも、ある」」

 

 

 

 ……あ、悪夢だっ……!!!

 

 

 

     ♪ ♪ ♪

 

 

「――ふんぎゃろ!」

「うわどうした急に」

 

 ……あっ夢?

 

 周りを見回すと、見慣れたスターリーの中。

 私は……どうやらフロアに置いてあるテーブルに突っ伏して寝ていた、らしい。

 

「……な、長くて、恐ろしい夢……だった……」

「どんだけ熟睡してたんだよ」

 

 テーブルを挟んだ向かいには、マイ・男性幼馴染のいっくんがスマホを片手に呆れた顔で座っていた。

 

 …………。

 

「……ね、ねぇいっくん?」

「何」

「いっくんてさ……男の子、だよね?」

「喧嘩売ってんのか?」

 

 ううう売ってない……!

 




次回は本編進むぜーバリバリー
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