うぉっち・ざ・ぼっち!   作:鯖ジャム

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ついにここまで来ましたねぇ!
実質前編です。


#70 ライブ審査だヨ! 全員集合!(一名遅刻)

 

「すぅ~~~~~~~~~~……はぁ~~~~~~~~~~~~……すぅ~~~~~~~~~~……はぁ~~~~~~~~~~~~……すぅ~~~~~~~~~~!」

「……こ、此崎くん、何してるの……?」

「アニマルセラピー」

「……き、緊張してる?」

「ああ!」

 

 ジミヘンさんにお腹を嗅がせていただく朝。良い朝である。

 

 今日は、未確認ライオットのライブ審査当日だ。

 万が一、億が一にも寝坊しないように俺は昨晩後藤家に泊まり、一家全員で起床時間にアラームをセットしたことを確認し合い、床に就いた。

 

 そして朝、俺は見事にアラームが鳴る前に目を覚まし、庭先でジミヘンと一緒にラジオ体操に励んだ。思いつきで変なことしたせいでそのあとずっと心拍が変になっちゃった。マジでやめときゃよかったと思いました。

 

 しかし、そこで活躍するのもやはりジミヘン、ジミヘンさんである。

 心の乱れにアニマルセラピー。ジミヘンさんにはソファに横たわっていただいて、わたくしめは存分に顔を埋めさせていただいている。優しい匂いがするんだ。落ち着くのだ。

 

「……へ、へへっ、こっ此崎くんもそんなに緊張するんだね? わっ私は余裕かな~、今から武者震いが止まんないなぁ~……」

「……おめぇもふたりちゃんに手ぇ離してもらってから言えよ」

 

 後藤も朝から緊張で右足と左足が同時に前に出て謎の挙動してたし、さっきまでずっとトイレ籠ってたじゃねぇか。しかも家の中でもずっとふたりちゃんと手ぇ繋いでよぉ……情けない姉だなぁ!

 

「ねーねーいっくん!」

「ん? なんだふたりちゃん」

「いっくんも手ぇ繋ぐ? ジミヘンライブに連れて行けないよーっておかーさん言ってたよ?」

「……繋がせていただきます」

 

 心の乱れには幼女セラピーも有効であるとされている。

 

 

     ♪ ♪ ♪

 

 

 後藤パパに車を出してもらい、俺たちは下北沢の駅前に降り立つ。

 ライブが行われるのは下北沢ではないのだが、結束バンドみんなで一旦下北に集合してから現地に向かう約束をしていた。

 

 しかし、わざわざ俺たちを送るためだけに車を出してもらったわけではなく、今日は後藤家も家族総出でライブ会場に来て応援してくれるから、俺と後藤だけ途中下車したというだけの話だ。

 

「……ぼっちちゃんも衣久くんも、なんでふたりちゃんと手ぇ繋いでるの?」

「此崎くんとひとりちゃん家族連れみたいだわ! 此ぼなの!? 久々の此ぼなのね!?」

「あっへへ、そっそうですかね……?」

「コノボってなんだよ。あとふたりちゃんと手を繋がせていただいてるのは精神の安寧を保つために全国民に保障されている当然の権利を行使してるだけなんですが」

「うん、なんて?」

「二回言うほどのボケじゃないですすいません……」

 

 虹夏先輩にマジ普通な顔で聞き返されちゃって悲しくなった。

 そして、ろくに質問に答えない俺と後藤の代わりにふたりちゃんが虹夏先輩の疑問に答えてくれる。

 

「いっくんとおねーちゃんねー、きんちょーしちゃうからふたりと手ぇつなぎたいんだって! ねーねー虹夏ちゃんと喜多ちゃんもつなぎたい?」

「えー? じゃあせっかくだから繋がせてもらおっかなぁ?」

「私も私も~」

「あっ……」

「あっあっ……」

 

 ふたりちゃんは容赦なく俺と後藤の手を振り払い、虹夏先輩と喜多さんと手を繋ぎ始めてしまう。

 そして、後藤は一瞬彷徨わせた手で俺の服の裾を摘まんできたので、俺はお返しに後藤の顔面を鷲掴みにしてあげたのだった。

 

「そういやリョウ先輩いませんけど遅刻ですか? こんな大事な日に……」

「うん、アイアンクローされてるのに無抵抗なぼっちちゃんがすごい気になるけど、リョウは寝坊したって。まぁ時間には余裕あるからいいけど、ホントマイペースなんだから……ねぇ喜多ちゃん?」

「はい! そういうところが素敵ですよね!」

「ごめん振る相手間違えた。ねぇ衣久くん?」

「そうですねぇ」

 

 今の虹夏先輩のミスの擁護はできませんね。リョウ先輩に関するネガティブな事柄について喜多さんに賛同を求めるなんてプレミにもほどがあると思います。

 

 ……ただ、そんなプレミしちゃうくらい虹夏先輩もやっぱ結構緊張してんのかな、なんてことも思ったり。こんなことで気が付かされるのってどうなんですかね。俺はひどいと思います。

 

「……あー、まぁとりあえず? リョウ先輩のこと待ってから行く感じですか?」

「ううん、さっき起きたばっかりだって言うから先行くって伝えておいた。だからもう行っちゃおう!」

 

 はい。

 というわけで山田のことは容赦なく捨て置くことにして、一足先に車で会場に向かう後藤一家ともひとまずお別れである。本当は車に乗せてもらえればよかったのだが、機材を運搬せざるを得ない関係でそれは叶わなかった。

 

 そして俺と後藤、虹夏先輩と喜多さんの四人は下北沢駅の構内へ入り、地下のホームへと足を運ぶ。

 

 待つ電車は上り方面だ。

 五分後に到着する快速急行の新宿駅行きで、俺たちが目指すのもまさにその新宿駅である。

 

「それにしても、まさかライブ審査の場所が新宿フォルトだなんてねー」

「そっすね。ライブしたことあるハコで()れるのは本当に大きいですよ、マジで」

 

 そう、本日のライブ審査の会場は、お馴染み新宿フォルトなのであった。

 

 今月の頭に入って未確認ライオットの運営から来たお知らせに新宿フォルトの名前があった時は、そりゃあもう驚いたものだ。

 俺がネット審査の後にシクハックのライブを観に行って、特にその後の打ち上げでは銀ちゃんさんとも話をしたのだが、その時はそんな素振り一切なかった。あの時点で決まってなかった、なんてこともないはずだし。

 もっとも、これはヨヨヨちゃん率いるシデロスですら寝耳に水だったらしいので、よっぽど厳重に口止めされていたのだろう。

 

「廣井さんも全然教えてくれなかったしね~。シクハック、オープニングアクトやるなら知らないはずないもんね?」

「確かにそうですよね! 相変わらずスターリー来てたし未確認ライオットのこともいろいろ話してたと思いますけど……意外と口の硬い人、でしたっけ?」

「いや〜……酔っ払って全部忘れちゃってるだけじゃない?」

「なんてこと言うんですか虹夏先輩! きくりちゃんの名誉毀損にあたりますよ!!!」

「ん? ならこっちも廣井さんの威力業務妨害について話さなくちゃいけなくなるけど……」

「負けました」

 

 サレンダー。しかしこれはきくりちゃんの名誉を守るための勇気の投了である。

 

 まぁともあれ虹夏先輩と喜多さんの言う通り、今日のライブ審査のオープニングアクトをシクハックが務める、ということも俺たちは一切知らなかった。

 つまりそれはきくりちゃんからも奇跡的に情報が漏れたりしていなかったわけで、口止めにはかなり力を入れていたのではないかと俺が思った根拠でもある。……あ、奇跡とか言っちゃった。

 

「……何にしても、俺たちにとってはホントにラッキーですよ。たった一回ですけど、ライブやったことのあるハコで審査に挑めるんですから」

「そうね、私たちただでさえライブ経験少ないし……でも、シデロスは自分たちのホームでできるわけだからもっと有利よね……」

「や、そりゃそうなんだけどさ。ただ、結束バンドは自分たちの100%を出し切れれば、十分勝ちの目はあると思ってるから。だったら、周りがどうこうを気にするよりも、自分たちがいかに良いパフォーマンスを発揮できるかが重要だろ?」

「そうだよ喜多ちゃん! それにほら、シデロスは投票2位だったんだからホームアドバンテージあるのはしょうがないって。あたしたちはどうしたってチャレンジャーなんだから、開き直るしかない!」

 

 むん! と虹夏先輩は拳を握る。

 開き直る。そう、ここまで来たら何においても開き直って、なんでもポジティブに考えていくしかないのだ。

 

 やがて、駅のホームに電車が滑り込んでくる――。

 

 

     ♪ ♪ ♪

 

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 無言。

 ふぅ、と誰かが息を吐く。

 

「……あっつ」

「衣久くん言わないでっ!」

「言っても言わなくても暑いっすよ……」

 

 今日は、初夏にしては暑い日だった。外はカンカン照りで、まぁ雨に降られるよりはマシかもしれないが、重たい機材を持ちながら雑踏をかき分けて歩かされていたらそりゃ文句の一つも言いたくなる。

 

「やっぱり機材車買った方が良くない? 免許は頑張ってあたし取るからさ〜」

「いやぁ、でも金が……今ある活動費の貯金全部回しても足りないような……」

「そこをなんとか〜此崎くん〜」

「あっ……あっ……」

 

 縋るような喜多さんに、動く屍も呻いているが、俺が頑張ってどうにかするとかいう話じゃないのよ。みんなで死ぬほどバイトして今より多く徴収しないといけないって話なのよ。

 

 ……まぁ重いものは今みたいに俺が持てるだけ持てばいいし、それで俺のちょっとした悪態を我慢してもらうのが一番安上がりだと思うんだがな。

 

「――やぁ、グッモーニン」

 

 ……と、そんな新宿フォルトへの道すがら。

 ひーこら言いながら歩く俺たちの横に、ふとスピードを落とした車が付けたかと思うと、後部座席の窓が開いてリョウ先輩が涼しい顔を覗かせてきた。

 

「ひと足先に会場で待ってるから遅刻しないように」

「山田ァ!」

「リョウ先輩ひどいです〜!」

「ァ!」

「ァ……ァ……」

 

 そして、リョウ先輩は颯爽と去っていった。

 寝坊したやつが何故一番に会場へ行こうというのか。

 寝坊したやつが何故一番楽しているのか。

 世界は不平等で不公平だ。

 

「……山田、来年たぶんニートですよね」

「……そうだね、たぶん進学しないね」

「今年の年末くらいからアイツ馬車馬の如く働かせれば春先にはいけそうですね」

「だね」

「リョウ先輩から搾取しようとしないでください!!」

 

 結束バンド首脳陣は山田氏に対して憲法を採用しない旨を決定したので、奴隷的拘束と苦役を課すことを検討していく所存である。

 

 

 

 で、なんやかんや新宿フォルトに到着した。表で待っていた山田は開口一番「遅い」とかほざいたのでコノニジ・ボンバーズで滅殺しておいた。

 

 フォルトの中に入ると、そこには見覚えのある新宿フォルトのスタッフから、おそらくは未確認ライオットの運営スタッフまで、たくさんの大人たちがいた。

 ライブハウスに人が大勢いるのは別に何も珍しくないし、ラフな格好をしているスタッフさんたちが多いのもなんてことはないのだが、その中にスーツを着ている、あまり身近にいないタイプのきっちりしたザ・大人がちらほらいるのが、こう……すごいガチだ。たぶん、主催の企業の人とか、スポンサーとか、音楽レーベルの人とか……?

 

 正直だいぶ居心地が悪いので誰か控え室に案内してくれないかなーとみんなで様子を伺っていると、俺たちの背後、ライブハウスの入り口の方から見知った姿が現れた。

 

「あ、銀ちゃんさん!」

「えっ? あらやだ此崎くんお疲れ様〜! 結束バンドちゃんたち来たのね〜! 久しぶり〜!」

「あっはい! お久しぶりです! 今日はよろしくお願いします!」

 

 虹夏先輩に続いて、よろしくお願いします、と俺たちは声を揃えて頭を下げる。

 

 銀ちゃんさんはそれに対してにこやかに返事をしてくれた……が、だいぶ忙しいらしく、「ごめんね〜! 今ちょっとバタバタしてて! 後でゆっくり話しましょうね〜!」と挨拶もそこそこに走っていってしまった。

 

「銀ちゃんさん、マジで忙しそうだなぁ」

「開催場所の店長さんだもんね……水いっぱい持ってたけど、あんな雑用もやらないといけないほどなんだね」

 

 虹夏先輩と一緒にしみじみ頷き、銀ちゃんさんの背中を目で追う。

 

 そしてその先には……。

 

「きくり〜〜〜!! 水買ってきたわよ〜〜〜!!! 生き返って〜〜〜!!!」

「業務外で死ぬほど足引っ張られてるだけ!!!」

「うわあああああああきくりちゃん死ぬなあああああああああ!!!」

「此崎くんが行ったわ!!!」

 

 行くさ!!! きくりちゃんの命の危機だぞッッッ!!! 

 

「どうしたんだきくりちゃん!! いったい誰にやられたんだ!!! 志麻さんか!? 志麻さんなのか!!??」

「ちがっ……いっ……こっ……」

「……喉をやられたかッ!!」

 

 声がカスッカスじゃッ!

 卑劣なりッ! 喉を潰して証言を封じるとはッ! 

 

「許せねぇ……志麻さん許せねぇよ……!」

「よう此崎、誰が許せないって?」

「あっおはようございます志麻さんお疲れ様ですうおおおおおお後藤許せねぇ!!!」

「!?」

 

 後藤許せねぇ! 後藤ォ!

 

「志麻さんお久しぶりです! 結束バンドです! 今日はよろしくお願いします!」

「あぁ、久しぶり。こちらこそよろしく……で、此崎は何を騒いでたんだ?」

「あー、えっと、廣井さんがどうしてこんな感じなのかなーって」

「本人から聞けばいいじゃないか」

「酒焼けで何喋ってるのかわからないんですけど……」

 

 ……あっこれ酒焼けかぁ! と納得してポンと手を打つ俺。

 そして同時に「じゃあもうどんな理由でもきくりちゃんの自業自得じゃね?」と一人で静かに正解にたどり着いたが、抱き起こしていたきくりちゃんが俺の腕の中で口をパクパクさせ始めた。

 

「どうしたんだきくりちゃん! なになに? ……ふむ、ふむふむ……『まだいくらでもやり直しがきく、未来ある若者たちを想うと呑まずにはいられなかった』……だって!?」

「クズが」

「あんたホントしょーもないわね……」

「これ人選ミスでは?」

「あ、あはは……」

「さすが廣井さん、ロック過ぎる」

「あっあっ、あの、わっ若者全員が未来に希望があるとは限りませんので……へへっ……」

 

 言いたい放題である。

 しかし、虹夏先輩の人選ミスという発言には俺も頷かざるを得なかった。志麻さんたちには申し訳ないけどね。

 

「……さて、あなたたちも早いうちに控室行っちゃいなさい。シデロスとか、他のバンドももう集まってるわよ」

「あっはい、わかりました」

「今日はいろんな人が来てるけれど、気にせずやっちゃいなさい! ちなみにあたしも審査員の一人だけど、身内だからって贔屓はしないわよ? 結束バンドは、そんなことしなくってもお客さんたちを魅了できると思ってるから、ね?」

「……はい! 頑張ります!」

 

 ……と、銀ちゃんさんからの激励をいただいた俺たちは、志麻さんに回収されていくきくりちゃんを敬礼で厳かに見送った後、裏の楽屋へと向かったのだった。

 

 

     ♪ ♪ ♪

 

 

 出演するバンドの控室に入ると、さっそく知り合いの姿があった。

 

「あっ、結束バンドさんおはようございますっす!」

「あ、シデロスのみんな! おはよ~!」

「――あっ!」

 

 目が合って、まるで花が咲いたかのような明るい笑顔と明るい声を上げたのはヨヨヨちゃんであった。

 

 これはヨヨヨちゃんの習性である。

 ヨヨヨちゃんは、歯に衣着せず言ってしまえば、自分を孤高の一匹狼だと思い込んでいる一般寂しがりチワワだ。

 遊びに行くときに待ち合わせをするとだいたい楽しみにしすぎていて死ぬほど早く集合場所に行っちゃうし、大人しく待ってはいられるのだが待ち人がいざ来ると尻尾を振ってしまうのを抑えられないのである。かわいいね。

 

 そしてこの一般寂しがりチワワは、実は繊細な性格をしている。

 いよいよ迫ってきたライブ審査、新宿フォルトというホームであるとは言え見知らぬライバルたちが大勢いる場所できっと不安だったに違いない。

 そこで俺たち結束バンド、すなわち顔見知りが現れたことでついつい頬をほころんでしまったというわけだ。

 

「わかりましたかリョウ先輩」

「うん。さすがぼっちマスター衣久」

「全部聞こえてんのよ!!! 誰がチワワよ誰がっ!!!!」

 

 チワワちゃん落ち着くんだ! あと後藤は後ろでわんわんうるせぇ!

 

「……あ、伊地知先輩、あっちにいるのって」

「ケモノリア、だね。ネット投票でもシデロスと並んで上位だった……ボーカルの人が藝大生なんだっけ? すごいよね……」

 

 噛み付いてきそうなチワワちゃんを俺が頑張って宥めている一方、喜多さんと虹夏先輩が部屋の中にいる顔触れを見てあれこれ言っている。

 

 今日のライブステージに出るバンドのことは当然俺もリサーチしてきた……が、まぁはっきり言って、大半のバンドについてはそんなに大した情報が集まったわけではない。

 調べるのはネット頼りなわけだが、結束バンドと同じように動画サイトにMVとライブ映像があって、あとは各種SNSでのアカウントがあるくらい。エゴサをしても未確認ライオットがらみの話題が多く、目新しい情報はなかなか引っかかってこないのだ。

 

 ……ただ、だからこそ、今日この場にいるバンドの中で、その大半に当てはまらないシデロスとケモノリアはやはり別格と言える。

 

 動画とSNSが主な情報源であることは変わらないが、たとえばその動画の投稿数がとても多いのはそれだけの需要があり、なおかつ彼女たちがそれだけ努力をしてきているということだろうし、SNSでもエゴサしたときに多種多様なポストが目に付く。

 そもそもの話、シデロスもケモノリアも未確認ライオットに挑む以前に若手のアマチュアバンドの特集記事で紹介されていたくらいなのだから、わかりきっていたことを少し違う角度から再確認しただけとも言えるのだが……。

 

「…………」

「……衣久くん?」

「なんですか虹夏先輩」

「随分熱心にケモノリアのこと見てるけどどうしたのかな? ん?」

「いえ別にあのボーカルの人クソ面白そうだなとか思ってません」

「思ってるんだね」

 

 思ってないです。なんだかとてもおもしろそうなライブパフォーマンスをやるやらないで揉めてるのがすごくおもしろそうだなとか思ってないです。

 

 ……ケモノリアのステージはぜひ楽しみにしておくとして、とにもかくにも今回のライブ審査、この新宿フォルトの会場における大本命は彼女たちとシデロスで間違いなかった。

 

「――出演者の皆さん、本日の流れについてご説明します! こちらに集まってください!」

 

 それからしばらくして、控室にスタッフの人がやってきた。

 審査前とは言え各バンドそれぞれ程々にリラックスして過ごしていたところに、いよいよ緊張が走る。

 

 そうしてその緊張感のまま、俺たちは今日のスケジュールや審査方法などについて一通りの説明を受けることになった。

 

 この後、まずはライブの出演順の抽選が行われる。

 全部で七組のバンド、その代表者一人が七つの番号札を箱から取り出すくじ引き制だ。

 その後お昼を少し過ぎたあたりから決定した出演順とは逆順のリハーサル、いわゆる逆リハをおこなって、さらに少しのインターバルを挟んで本番がスタート。

 そして、すべてのバンドがパフォーマンスを終えたら、その場で審査員と観客による投票がおこなわれ、上位2組が最終審査、夏のフェスへの切符を掴む――とのことであった。

 

「……説明は以上になります。それではさっそく出演順を決めるくじ引きを行いたいと思います。代表者の方がくじを引きに来てください!」

 

 各バンド、それぞれリーダーと思しき人が周りの様子を窺ったり窺わなかったりしながらくじ引きの箱を持ったスタッフの人の下に集まっていく。

 

 我ら結束バンドはと言うと、まぁ当然向かうのはリーダー伊地知虹夏である。

 

「伊地知先輩! ぜったいトリ! ぜったいトリ引いてください!!」

「もしくはトップバッター! 虹夏先輩おなしゃす!!!」

「微妙な順番だけはNG」

「……っ! ……っ!」

「まっかせろぉーい! 今日あたし星座占いも血液型占いも一番だったかんね! 今日はもう百回引いても百回トリじゃい! はーっはっはー!」

 

 と、俺たちの声援を一身に受けた虹夏先輩は見事なフラグダ・ファミリアをコンマ100秒で建築して、颯爽とくじ引きの列に並んだ。

 

 

 で、5番引いた。

 7組中、5番である。

 

 

「夏終了」

「終わりだわ!」

「あっばばばっばばばっばばっばばばっばば」

「GGWP」

 

 虹夏先輩はちょっと泣いてた。

 




そろそろ執筆スピード上げていきてぇよなぁ!? 後藤ォ!
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