ソードアート・オンライン フェイタルバレット 聖騎士の懐刀   作:立冬

1 / 6
プロローグ 聖騎士が死んだ日

「チャンスをあげよう」

「チャンス?」

「今この場で私と一対一で戦うチャンスだ、無論不死属性は解除する。私に勝てばゲームはクリアされ全プレイヤーはこの世界からログアウトできる。どうかな?」

「ダメよキリトくん、今は、今は退いて」

 胸の中の伴侶の言葉は案の定彼には届いていないらしい。

 あの背中は葛藤している背中だ、間違いない。何度も同じ背中を見てきた。私にはわかる。

 

「……いいだろう、決着をつけよう」

「キリトくん……」

 

「ダメだ退け! これは命令だ!」

「キリト、やめろ!」

「キリトォー!」

 もう二、三言言葉を交わしてから副団長を横たえ、剣を抜き、団長へと歩んでいく黒い後ろ姿を見て私は確信した。

 

 ああ、ここが彼の死に場所か。

 

 道理だった。はなから伴侶や友人だけでは彼を現世に繋ぎ止めておくには不十分なのだ。

 

 だって彼は英雄になる男だから。

 

 

 彼を見たときから、彼を初めてkiritoと認識した時からわかっていたことだ。

 一層ボス討伐直後に怨嗟の声を浴びながら去って行ったあの時から。

 

 彼は絶対に逃げたりはしない、なぜなら英雄だから。

 死神が待っていようと、誰かの為に先へ進む。決して退かないし、退けないのだろう。

 

 彼はもう英雄として生きるしかない、英雄として死ぬしかないんだ。

 

 そんな彼がずっと頼もしく、憎たらしく、羨ましく、妬ましく、大好きで、大嫌いだ。

 

「ディリオスさん」

 振り返って呼びかけてくるキリトくん。

 

「待て! 戻ってこい! 私の命令が聞けないか!」

 彼が何を言いたいかは言わずと知れた事。

 

「アンタとは相容れない事が多かったけどさ、でもアンタが思ってるほど俺はアンタが嫌いじゃないし、アンタが思ってるよりアンタはいい人だよ。後のこと、色々とよろしくな」

 察してくれとでも言いたげに、困り顔に寂しさを滲ませながら優しく微笑みかけてくる。

 

「ひ、卑怯者ぉ……」

 これ以上何も言えないじゃないか。そんな顔されたら。

 

 

 やっぱりそうなんだ。その時が来ても私は彼を此岸につなぎ止められなどしない。

 

 今私にできる事は、彼の最期を見届け、その後の対応を検討することだけだ。

 

 

 キリトくん、君は私にどうしろと言うんだ。

 君のいない世界で副団長がどうなるかに考えが及ばない君じゃないだろう? 

 

 君さえ、君さえ生きていればまだ上手く回せるんだ。

 裏切りの聖騎士ヒースクリフの正体を看破した黒の剣士キリトと、ヒースクリフに次ぐ地位にありながらかねてより不信感を抱いていた閃光のアスナ、何にも代え難い絆で結ばれた英雄二人が、新たなる血盟騎士団を、新たなる攻略組を率いていく。

 残り25層、どうにかなりそうな気がするじゃないか。

 

 それがだ。

 聖騎士が裏切り、閃光も何もできなくなり、黒の剣士は死んだ、そんな血盟騎士団で何ができる! そんな攻略組で何ができる! 

 

 まさか俺が血盟騎士団を継げるとでも思ったのか? 

 俺と団長では求心力が違う。団長の代わりが務まるのは副団長だけだ。

 

 Kobのプレゼンスが失墜した以上、当然聖龍連合が幅をきかせてくる。

 リンドの野郎に攻略組を託せってか? 

 奴にやらせるくらいなら俺の方が幾分マシだ! 早晩内部統制に失敗する! ALSとDKBが露骨にいがみ合ってた時代に逆行する羽目になるぞ! 

 

 やはりクラインを顔役として擁立するのが最善手か。

 聖龍連合との折り合いが悪いのは気にかかるがそれはKoBだって同じこと。

 風林火山は地盤として弱すぎるが、それ故に私がしゃしゃり出るよりは警戒されないはず。だがもし万が一があればバックにKoBがいようとだいぶ旗色が悪くなる。

 

 

「なあキリトくん、俺ぁいったいどうすりゃいいんだ。なんとか言えよキリトくん」

 いつの間にやら団長と切り結んでいたキリトくんに、俺はそう語りかけていた。

 

 ああ、彼の太刀筋は本当に綺麗だ。

 基本迷いなく振り抜かれてるが時折激情を帯びる太刀筋。

 

 やはり今日は後者だ。

 普段よりもパフォーマンスは落ちるが、俺はこっちの方が好きだ。キリトくんらしくて。

 やっぱりキリトくんは一人気ままに剣を振るうより、彼自身の思いにしろ、誰かから託された思いにしろ、感情のままに剣を振るう方が似合う。

 

 一方の団長は常に冷静沈着、剣に感情をのせる事はない。

 でも今日の団長は違う、心なしか楽しそうだ。なんと言うか興がのっている。

 あの人はきっと剣に感情が入ると逆に強くなる人なんだろう。それくらいのメンタリティじゃなきゃ何かをなせたりはしないんだろう。やる事の善悪は置いておいて。

 

 俺がそうあれたらな。

 

 

 ん? いや馬鹿な、なぜ。

 

 唐突に団長の動きが鈍った。今の今まであれほど調子が良さそうだったと言うのに。

 

 俺が考えを巡らせる間もなく、団長をキリトくんの剣が捉えた。

 

 無敵の聖騎士ヒースクリフは、瞬いて消えた。

 

「キリトくん!」

 私がようやく我にかえったのは、立ち上がった副団長がキリトくんに飛びついてからだった。




発売日なので新連載です。
にも関わらずSAOではなくGGOの話ですがそこは気にしない方向で。
まあちょくちょくSAOの回想話を挟む予定ですが。

あとタグにも書きましたし、中身読めば片鱗が垣間見えると思いますがオリ主はヤバい奴です。
例えるなら光属性のPoHです。一応光属性なのでこっすい対立煽りをしたりはしませんがキリトくんへの愛は確かなものです。
あとついでに中身はアラフィフのおっさんです。

こんなんですがお楽しみいただければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。