夜、2階建ての部屋から小さな光が漏れていた。どの他の家も、もう明かりは点いておらず、その部屋だけが僅かな明かりを灯していた。部屋には、1人の少年がパソコンと見詰め合っていた。
「やっぱり、このゲームは凄そうだな」
彼はパソコンに映る画面を見ながらそう呟いた。彼がこんな夜遅くまで起きているのはあまり珍しい事ではない。大抵は本を読んだり、ゲームをしたりといった感じだ。そんな彼だが、今は本を読んだりゲームをしている訳でもなかった。
少年はある《ゲーム》について書かれた、紹介文を読んでいた。それは《1人の男》が完成させた、従来のネットゲームとは大きく異なる物だった。
「…母さんには本当に感謝だな」
そう言うと、彼の視線は部屋の片隅に置かれたベッドの上にある、大きなヘッドギアに向けられた。それは、少年の頭と比べると、少し大きめのサイズであり、大人でも被れる程だった。少年は再び、パソコンに視線を戻す。
「ゲームが開始されるまで後3日。…待ちきれない!」
興奮を隠せない様子で、独り言のように話す少年。すると、彼の部屋のドアからノックの音が聞こえた。
コン!コン!
こんな夜遅くの時間に、少年の部屋に入ってくる人物はほぼ決まっている。少年は椅子に座ったまま、ノック音の主に声を掛けた。
「どうぞ!」
少年が入室を許可すると、ゆっくりとドアが開かれた。入ってきたのは女性だった。少年は椅子を回して、入ってきた女性に顔を向ける。
「まだ起きていたの?…早く寝なさい!」
女性は少年を叱り付けた。入ってきて早々、叱りつけるのはどうかと思うが、それは彼女が少年と深い繋がりがあるからだ。少年は少し怒っている女性に話し始める。
「ちょっと調べたいものがあったんだ。母さん」
その女性は、少年の母親だった。母親は少年が一体何について調べているのか、すぐに見当が付くと、彼に向き直った。
「兎に角、今日はもう寝なさい!」
「分かったよ」
少年は母親の言葉に従うと、パソコンの電源を落とし、ヘッドギアが置いてあるベッドに入った。それを確認した母親は、部屋を出ようとドアを開いた。すると、少年に呼び止められた。
「母さん」
「っ…何?」
母親は振り返り、ベッドで横になっている少年に用件を訊ねる。少年には眠たそうにしながらも、小さく呟いた。
「ありがとう、おやすみ」
そう言うと少年には目を閉じ、眠りについた。
「……おやすみなさい」
母親は少年に微笑みながら優しく言葉を投げかけ、部屋を出て行った。だが、母親は気付く事が出来なかった。何故自分は愛する息子にこんな物を渡してしまったのだろうと。そして少年も、あのような恐ろしい《事件》に巻き込まれるとは思ってもいなかった。
こんな感じでした。不定期ですが、更新したいと思っています。