SAO another story   作:シニアリー

14 / 69
遂に、初のボス攻略戦が投稿できました。

それでは、どうぞ!


第1層攻略戦

 

第1層を攻略する為、46人のパーティーが迷宮区を突破していく中、ポップされたモンスターが襲いかかって来たが、心配は無用だった。騎士ディアベルの適切な指示で1人も欠ける事なく順調に進み、遂に集団がボス部屋に辿り着いた。

 

「行くぞ!」

 

ディアベルの重い口調と共に、巨大な扉が左右に開かれた。そして、彼らはボス部屋へと足を踏み入れる。

 

 

部屋はかなり奥行きがあり、とても広かった。一行が入り終えた直後、部屋の明かりが灯ったと思えば、前方から強大な何かが集団の前に着地した。狼を思わせる顎をいっぱいに開き、それは吼えた。

 

「グルルアアアァ!!!」

 

第1層ボス《イルファング・ザ・コボルドロード》の外見は、青灰色の毛皮を纏った2mを軽く超える逞しい体格と血に染まった赤い目。右手には巨大な斧、左手には革を貼り合わせたバックラーを携え、腰の後ろには、1mを超える長さのタルワールが見える。更に、コボルド王が立つ場所から、取り巻きの《ルインコボルド・センチネル》が姿を現した。

 

「攻撃開始!!」

「「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」

 

ディアベルの掛け声で、第1層ボス攻略戦が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

ボス戦は特に問題なかった。ディアベルが各隊に適切な指示を下し、4段あるHPを確実に減らしていた。そんな中、キリトとライト、アスナとユウキは、取り巻きのセンチネルを相手にしていた。

 

「スイッチ!」

 

ライトが片手直剣で、センチネルのソードスキルをキャンセルさせて体勢を崩し、すかさずユウキが飛び込み、ソードスキル《レイジスパイク》を叩き込む。

 

「やああぁぁ!!」

 

彼女のソードスキルは弱点の喉元を貫き、センチネルの体はポリゴンとなって四散した。その光景を見ながら、ライトは内心で舌を巻いた。

 

彼女の剣技は、まさに見事なクオリティを備えていた。一瞬でセンチネルの懐に飛び込み、目に見えぬ速さのソードスキルをクリティカルヒットさせる力量は、初心者なのかと疑わせる。戦闘の不慣れなど、全く感じさせない。

 

そして、もう一方のキリトとアスナのペアも問題はなかった。

 

「スイッチ!」

「3匹目!」

 

キリトがセンチネルの攻撃を跳ね上げ、体勢が崩れた隙に、アスナの細剣ソードスキル《リニアー》が弱点の喉元を貫く。それはユウキのと同じく輝き、目に見えない速さを兼ね備えていた。

 

彼女達の剣技を一言で言い表すなら、《美しい》という言葉しか思い付かなかったライトは、近くに立つキリトに声を掛ける。

 

「キリト、あの2人…」

「あぁ、恐ろしく強いな。速すぎて剣先が見えない!」

 

βテスターのキリトにそう言わしめる程の力量を、彼女達は持っているようだ。キリトとライトが簡単に教えただけで、2人はその技術を自分達の物にしてしまった。

 

これを天性の才能と呼ぶのだろう。彼女達はいずれ、このデスゲームを攻略する上で重要な存在になると、ライトは思った。

 

そんな考えを一旦は頭の片隅に置き、彼は辺りを見渡した。今は、センチネルはポップしていない為、4人は少し休んでいる最中だった。

 

「ユウキ、大丈夫?」

「ボクは大丈夫だよ。アスナは?」

「私もよ!」

 

アスナとユウキが互いに無事を確認し合っている最中、少年達が周囲に目配りしていると、キバオウ率いるE隊メンバーが目に入った。

 

どうやらポップされるセンチネルの相手をしているが、時間が掛かっているようだ。慌ててポーションで回復するプレイヤーをカバーしながら戦闘を続けていると、再びセンチネルが出現した。

 

「アスナ、行くぞ!」

「了解!」

 

キリトはアスナに呼びかけると、2人はセンチネルに向かっていく。遅れを取らないように、ライトもユウキに声を掛ける。

 

「こっちも行くぞ!」

「うん!」

 

手順は先程と同じように、敵のソードスキルを一方がパリィして、もう一方がソードスキルを叩き込む。先程と同じように、ライトがセンチネルのソードスキルをキャンセルさせた。

 

「スイッチ!」

 

ユウキが一気に飛び込み、片手直剣2連撃ソードスキル《ホリゾンタル・アーク》を発動させた。その斬撃は、センチネルが纏っている防具の隙間を的確に斬り裂き、残っていたHPを全損させた。

 

眼前の敵がボリゴンと化し、ライトは素早く辺りに気を配る。どうやら、センチネルはポップしていないようで、自分達の周りには1体も立っていなかった。すると、後ろからキリトの声が届いた。

 

「こっちは終わったぞ!」

「こっちもだ!」

 

軽く返事をするライトは、キリトに近付いて労いの言葉を掛ける。後は何事もなければ、このまま順調にボスは倒される筈だ。そう思った時、キリトの背後から唐突に声が響いた。

 

「アテが外れたやろ? ええ気味や」

「「っ!」」

 

突然、そんな言葉を投げかけられた為、キリトだけでなくライトも、意味が分からずに振り向いた。そこには、E隊を指揮しているリーダーの男、キバオウが立っていた。

 

「どういう意味だ?」

「とぼけんなや!ワイは知ってるんや、ジブンがこのボス戦に潜り込んだ動機っちゅうのをな!」

 

彼の言葉に、2人は眉をひそめた。キバオウの棘のある言い方は兎も角、彼が言った《動機》という言葉が気になったのだ。

 

「何だと? ボスを倒す以外に、何の動機があるって言うんだ?」

「はっ、シラ切る気かいな? ワイは聞いとんのや!ジブンがβ時代、汚い立ち回りで《ボスのLAを取りまくっとった》事をな!」

「「なっ!?」」

「大方、そっちの小僧も、それを知っとって黙っとったんやろ!?」

 

キバオウから発せられた言葉に、キリトだけでなく、ライトも驚愕した。

 

《LA》またの名を、《ラストアタックボーナス》

 

それは、ボスモンスターを最後に倒した者に与えられるレアアイテムで、自分に使えば強力なアイテムとして強化する事が可能な上に、NPCショップで売れば大量のコルが手に入る。

 

ライトはこの情報をキリトから聞いており、その事を知っている。だが、キリトから言いふらさないでくれと頼まれたので、誰にも言っていない。なのに、何故この男がその情報を知っているのか。

 

「キバオウ、あんたにその情報を話した奴は、一体どうやってβ版の情報を掴んだんだ?」

「決まっとるやろ! えらい金を積んで、鼠から買ったんや!」

 

それは絶対に嘘だと、キリトは確信した。情報屋アルゴは、自分のステータスは売っても、βテスターに関する情報は絶対に売らない。そんな時、ライトはキバオウの言い分を思い返していた。

 

「(こいつはキリトがβテスターである事に気付いた。だが、一体どうやって? アルゴは絶対にその情報は売らない……まさか、こいつもβテスター? いや、それはない。もしそうなら、こいつがβテスターを恨む理由も、闘技場で糾弾する必要もない……待てよ、こいつはさっき、聞いたと言った。それはつまり、他の者からだという事だ。その者は、キリトがβテスターであるのと、β時代のキリトの戦闘スタイルを知っている者…つまりは、同じ元βテスター)」

 

キバオウが放った言葉から、ここまでの推測をライトは導き出した。だが、ここでもう1人、ライトと同様の考えに至った者が現れる。それは、取引を持ちかけられた張本人のキリトだ。

 

「(β時代の俺の戦闘スタイルを知っているのは、同じβテスター以外あり得ない。そのプレイヤーXの目的が、俺にラストアタックボーナスを取らせない為に、武器を買い取る事だったとしたら)」

 

キリトの剣を買い取ろうとした交渉人はキバオウだった。だが、彼もまたアルゴと同じように代理人だったのだ。そうすれば、真の交渉人は明かされない。

 

その者は、キリトと同じβテスターだ。彼の剣を買い取ろうとしたのは、ラストアタックボーナスを自分が手に入れる為。そして、今まさにそれを手に入れようとしているのは《彼》しか居なかった。

 

「「(…まさか)」」

 

2人の頭に、プレイヤーXの正体が導き出された。その者は、このフロアボスを倒す為に、他のプレイヤーに指示を出して戦い続けている者。

 

《騎士ディアベル》

 

「(だとしたら、オレの武器を買い取ろうとしなかった事にも、辻褄が合う)」

 

ライトが持つ武器は、キリトの物と大差はない。なのに何故、頑なにキリトの剣を買い取ろうとしたのか。答えは、彼がβ版でラストアタックボーナスを取りまくっていたからだ。それを阻止する為に、このような無駄な交渉を持ちかけた。

 

「グルウアアァァ!!」

「っ!」

 

その時、コボルド王がプレイヤーに向けて威嚇するように吼え、右手に持つ斧で周囲のプレイヤー達を薙ぎ払おうとしたが、彼らはそれを回避し、着々とHPを削り続ける。

 

ライトはその様子を、少し離れた場所から見ていた。そして、誰もHPが激減していない事に安心し、視線を外そうとした

 

 

 

 

ーーーその時

 

 

 

「…っ!」

 

コボルド王が背後のプレイヤー達に攻撃しようと後ろを向いた瞬間、ライトは何か妙な違和感を覚えた。それを感じたのは、奴の腰にある布で巻かれた細長い武器を見た時だ。

 

β版の情報では、コボルド王はこの後、腰の後ろに差している1mは超える《タルワール》と呼ばれる武器を使う筈だ。その情報は、この場に集まる全プレイヤーが、アルゴが作った攻略本から得ている。

 

故に、ボスが次に使うのはタルワールだ。なのだが、ライトはどうしても違和感が拭えないでいた。

 

「ライト、来たよ!」

「っ!」

 

しかし、ユウキの鋭い呼びかけで、思考を中断されたライトは視線を外した。そして、彼女の方に顔を向けると、再びセンチネルがリポップしていた。

 

標的をライトに定めたセンチネルは、得物を振りかぶり、上からの攻撃を与えようとした。しかし、そんな大して速い訳でもない攻撃を弾くのは、ライトにとって造作もない事だった。

 

「しっ! スイッチ!」

 

片手直剣単発ソードスキル《バーチカル》で、振り下ろしの攻撃を跳ね上げさせた。そして、ユウキがその隙に《レイジスパイク》で喉元を貫いた。それを受けたセンチネルは、ポリゴンへ姿を変えた。だが、ライトはそれを確認すると、すぐにボスへ視線を移した。

 

先ほど感じた違和感の正体は一体何なのか。それを突き止める為に、ライトは再び観察しようとしたが、奴はライト達に対して真正面を向いていた為、違和感の正体を掴めない。

 

「グルウアアァァァ!!!」

 

すると、コボルド王の4段あるHPバーの、最後がレッドゾーンに達した。そして、けたたましく吼えると、右手に持つ骨斧、左手の革盾を外して投げ捨てた。そして、腰に装備している武器を抜こうと、右手を柄へ伸ばす。

 

「C体、ボスを取り囲め! ターゲットは俺が取る!」

 

すると、前線で指揮を執っていたディアベルが前に出た。やはり彼は、キリトと同じ元βテスターで、LAを取る為にキリトの剣を買い取り、彼を弱体化させる事が狙いだったのだ。だが、そんな事は今のライトにとってどうでも良かった。

 

今も自分が感じている、違和感の正体を突き止めなければならない。その時、奴の体からはみ出している、布に包まれた武器がライトの目に映った。

 

「おい、キリト」

「っ…どうした、ライト?」

 

ライトはコボルド王から視線を外さずに、キリトに声を掛けた。しかし、キリトはキリトで、彼のその声に訝しさを抱いた。まるで、何か恐ろしいものを見て、混乱しているような声音だったからだ。

 

「…タルワールって、どんな武器だ?」

「へっ? ええと、曲刀だけど、普通のよりも刀身の幅が広い武器だけど」

「っ!?」

 

記憶にある答えが返された直後、ライトの表情が驚愕へと変わった。何故そんな顔をするのか分からないキリトは、視線をボスへ向けた。そして、彼もまた酷く驚いてしまった。

 

2人の目に映ったのは、腰に装備していた武器を抜き放ったコボルド王の姿だった。しかしそれは、βテストで登場したタルワールではなかった。

 

「あの武器は、βテストと違う!!?」

「っ!? ま、待てぇぇ、ディアベルぅぅぅ!!!」

「だ、駄目だ!! 全力で後ろへ跳べぇぇ!!?」

 

あらん限りの声で叫んだ2人の声は、奴が発動させたソードスキルのサウンドエフェクトによって掻き消された。

 

刹那、その巨体が信じられない程の身軽さで高く跳躍し、体を翻して威力を溜め込んだ。そして、落下するのと同時に、光を纏った《細長い刃》を地面に叩きつけた。刃に纏う光は深紅の輝きとなって、全方位に広がった。

 

刀重範囲ソードスキル《旋車》によって、ボスを囲んでいたプレイヤー達は吹き飛ばされ、HPがイエローゾーンにまで低下した。加えて、彼らのアバターを黄色の光が取り巻いている。一時行動不能《スタン》状態を示していた。

 

「くそぉっ!!」

 

誰もが、何が起こったのか分からず動けなかった。しかし、ライトだけは違った。彼がコボルド王を見た時に感じた違和感。それは、奴が持っているタルワールの刀身が細すぎる事だった。

 

何故もっと早く気付けなかったのか。しかし、今はそれを考えている場合ではない。ディアベルを含めた主要メンバーは動けない状態だ。

 

恐らく、先ほど放ったソードスキルは硬直時間が長いと、ライトは判断した。でなければ、コボルド王はとっくに動いている筈だ。ライトは全速力で前線へ走りだす。

 

「グルウアアァァ!!!」

 

しかし、ソードスキルによる硬直時間が切れたのだろう。コボルド王が再び動き出し、1番近くで倒れていたディアベルが狙われた。右手に握られた刀が、地面スレスレからディアベルの体を深く斬り上げた。

 

 

ーーー刀ソードスキル《浮舟》ーーー

 

 

だが、追撃はそれだけで終わらなかった。更に2撃目、3撃目と連続してディアベルの体を斬り付けた。刀3連撃ソードスキル《緋扇》を受けた彼は吹き飛ばされ、柱に叩きつけられた。

 

「ぐははあぁぁ!!?」

「ディアベル!」

 

ライトは方向転換し、急いでディアベルの元へ駆けつけた。あれ程の連撃を受けた為か、彼のHPは止まるところを知らず、レッドゾーンまで達した。ライトは急いでポーションを取り出し、彼に与えようとする。

 

「っ…おい、何故だ!?」

 

だが、ディアベルはそれを手で遮り拒否した。それと同時に、彼のHPは空っぽとなり全損した。すると、最後の力を振り絞るかの如く、静かに口を開いた。

 

「…あ、後は…頼む。ボスを…倒して……くれ」

 

それが、指揮官の最後の言葉となった。彼のアバターは、無数のポリゴンとなって、儚く四散してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああぁぁぁ!!?」

 

 

 

指揮官が死亡した事を漸く認識したのか、どこかのプレイヤーが叫び声を上げた。誰1人として、このような事態になる事を想定していなかった。いや、出来なかったのかもしれない。それ程までに、ディアベルの指揮能力は完璧だったから。

 

次々とボス部屋にプレイヤー達の叫び声が木霊する。ディアベルという1人の指揮官を失っただけで、戦況がここまで混乱状態に陥るとは、誰が予想できたか。

 

ライトはプレイヤー達の叫び声を聞きながら、ボスに目を向けた。β版で使っていたタルワールではなく、全く違う武器を装備している。つまり、奴が使うソードスキルは未知であるという事だ。普通に考えるなら、これ以上の犠牲者を出さない為にも撤退するべきだ。

 

「何でや!? ディアベルはん……リーダーのあんたが、何で先に死ぬんや!?」

 

《ラストアタックボーナス》を手に入れようとしたからだ。しかし、今はそんな事を言っている場合ではない。一刻も早く、この状況を打開する必要がある。

 

それに、もしそんな事を教えれば、彼が元βテスターだと知れ渡る。ライトは立ち上がると、蹲っているキバオウに近付いて肩を掴んだ。

 

「おい、何をしてる!?」

「なっ!?」

 

驚いた表情を浮かべるキバオウに構わず、ライトは早口に伝える。

 

「E隊リーダーのあんたがそんな事をしてたら、仲間がどんどん死んでいくぞ!? それが嫌なら、指揮を続けろ!」

「…ほんならジブンはどうするんや!? その隙に逃げようっちゅう算段かい!?」

「そんな訳ないだろう?……奴を倒して、LAを取るのさ!」

 

ライトは静かに立ち上がって、コボルド王を見据える。すると、そんな彼の左側にキリトが並んで、小さく声を掛けた。

 

「ライト……ディアベルは何て言ったんだ?」

「…『ボスを倒せ』…そう言った」

「……そうか」

 

とんでもなく危険な状況だと分かっているが、指揮官は最後に命令した。『ボスを倒せ』と。もしそれが、このレイドを束ねた指揮官ディアベルが望む意思ならば、その一員として指示に従うと、ライトは決めていた。

 

それを示すかの如く、彼は右手に持つ片手直剣《アニール・ブレード》を握り直した。そして、キリトもまた右手の愛剣を握り締めて声を上げた。

 

「行くぞ!」

「おう!」

 

どうやら彼も、同じ想いだったようだ。このレイドを束ね、ここまでみんなを導いてきたディアベルの意思を、決して無駄にはさせないと。

 

「私も行くわ!」

「ボクも行くよ!」

 

すると、何時の間にかアスナとユウキがそれぞれの隣に並び立ち、小声で協力すると言ってきた。その声には、強い意志が籠っているように感じられた。

 

「「…頼む!」」

 

集まった4人はボスに向けて走り出した。2人よりも4人の方が戦力が上がるし、彼女達の力があれば倒せる。少年達には何故かそう感じられた。すると、アスナとユウキは顔を見合わせると、目深に被っていたフードケープを掴んで、勢い良く脱ぎ捨てた。

 

「「っ!!?」」

 

フードで隠れていた容姿が露わになった時、ライトとキリトは思わず目を剥いてしまった。いや、2人だけではない。混乱状態に陥っていた他のプレイヤー達でさえ、唖然としながら見詰めていた。

 

1人は背中にまで伸びた栗色のロングヘアに榛色の瞳を持ち、もう1人は艶やかな黒紫色のセミロングに赤いバンダナを巻き、同じ色の瞳を持った美しい容姿の美少女達だった。

 

ライトは彼女達の容姿に見惚れてしまったが、すぐ横から飛んできたキリトの指示に、我に帰って反応する。

 

「手順はセンチネルと同じだ!」

「あぁ!」

「うん!」

「分かった!」

 

コボルド王が走って近付く4人に気付くと、右手に持つ新たな武器の刀を左腰に構えた。ソードスキルが来るのだろうと読んだキリトは、それをキャンセルさせる為に、同じくソードスキルを発動させた。

 

「はあぁぁぁ!!」

 

刀突進ソードスキル《辻風》を、キリトは片手直剣突進ソードスキル《レイジスパイク》で跳ね上げさせた。両者とも突進系ソードスキルで、互いに1〜2mほど吹き飛んで仰け反る。

 

「スイッチ!」

 

がら空きになった胴体に向けて、前に出たアスナとユウキが、それぞれのソードスキルを叩き込もうとした。その時、コボルドロードの目が怪しく光った。そして、仰け反った体勢を立て直し、持ち上げられた刀を、勢い良く振り下ろしたのだ。

 

 

ガアァァァン!!

 

 

しかし、それが2人に命中する事はなかった。いち早くそれを察知したライトが瞬時に前に出て、振り下ろされた刀を受け止めたのだ。これがソードスキルなら吹き飛ばされていたかもしれないが、通常攻撃だった為、受け止める事が出来た。

 

「スイッチ!」

 

ライトの声に、アスナとユウキはそれぞれのソードスキル《スラント》と《リニアー》を、その巨体の腹部に叩き込んだ。

 

「やああぁぁ!!」

「せああぁぁ!!」

 

 

「グルアアァァァ!!!」

 

 

 

2人のソードスキルがクリティカルヒットし、バスを後方へ吹き飛ばした。それにより、残っている最後の段のHPバーが減少したが、油断は出来ない。コボルド王が赤く光った目で4人を捉えていた為、ライトが3人に警戒を促した。

 

「次が来るぞ!」

 

そして、奴が体勢を立て直すと、またも4人に襲いかかった。1番前に立つライトが狙われ、通常攻撃の袈裟斬りを放つが、彼はそれを弾くのではなく、接近して斬撃を受け流し、その巨体にソードスキル《ホリゾンタル》を与えた。

 

「グゴゴォォォ!!?」

 

コボルド王が後退した隙に、ユウキがスキルを立ち上げて放つ。更に、そこからアスナも畳み掛ける。しかし、今度は持ちこたえると、スキル硬直で動けない2人に襲いかかった。

 

「てぁ! ふ! く!」

 

だが、2人の前に出たキリトがそれを防いだ。1度では終わらず次も、その次も通常の斬撃もキャンセルさせていく。

 

「(流石の反応速度だな!)」

 

刀系ソードスキルを、次々と弾いて無効化する彼の反射神経を見たライトは、そう思わざるを得なかった。しかし、何時までも保つ訳ではない為、キリトの援護に行く必要がある。

 

「くっ!?」

「っ!」

 

ソードスキルを凌ぐキリトだったが、勢いを殺し切れず、少し体勢を崩してしまった。

 

ライトは全速力で走り出し、彼の脇を抜けて追撃を仕掛けるコボルド王と剣を交える。ほんの僅かに見える攻撃の予兆《起こり》を見逃さず、ライトはただ攻撃を弾くのではなく、回避や受け流しを主体として、ボスの間合いに踏み込むと同時に、左斬り上げを与えて後退させた。

 

すると、コボルド王が刀を上段に振りかぶり、ソードスキルを発動させて迫ってきた。しかし、その攻撃に違和感を覚えた。まるで、《何かを狙っている》ような気がしたのだ。

 

「(上…じゃない!)」

 

赤き光を纏う凶刃がクルりと半円を描いて、強烈な斬撃となって、ライトの身に迫り来る。

 

刀上下フェイントソードスキル《幻月》

 

この技は上下どちらからも放てる上に、技の途中に上下を切り替えられる厄介なスキルだった。故に、本当の一撃がどちらなのか予測しにくい。

 

しかし、ライトはソードスキルが放たれた瞬間、体を横に逸らしながら自身もソードスキルを発動させ、避けた刀に向かって直剣を叩きつけた。

 

「はぁっ!」

 

ガアアァァァン!!

 

それにより、コボルド王の刀は地面に叩きつけられ、動きを封じられた。瞬間、ライトは硬直が解けると、2撃目を与えようとした。2連撃ソードスキル《バーチカル・アーク》が奴の腹部に命中したと思われた。

 

 

ドスゥン!!

 

 

「ぐはぁっ!?」

 

刹那、ライトの体に強烈な衝撃が走った。何が起きたのか分からず、口から呻き声が漏れる。目をやると、刀を封じられた筈のコボルド王が左足で彼の腹部に前蹴りを放ったのだ。それを防げず、2〜3m後方に吹き飛ばされた。

 

「ぐぅぅぅ!!」

「がぁぁ!!」

 

そして、運悪く後ろに立つキリトを巻き添えにしてしまい、2人して床に倒れた。

 

その光景が目に入り、背後を振り返ったアスナとユウキだが、その隙を突こうと、コボルド王が2人に、刀3連撃ソードスキル《緋扇》を叩き込もうとした。

 

「どおおぉりゃああぁぁぁ!!!」

「「っ!?」」

 

しかし、唐突に何者かが重く轟くような声を響かせ、2人の頭上を緑色の光が掠めると、《緋扇》と衝突してコボルド王ごと後退させた。

 

その正体はガングロスキンヘッドの斧使い、エギルだった。両手斧ソードスキル《ワールウインド》を発動させて、彼女達を助けたのだ。その後から、他のプレイヤーが次々と向かっていく。

 

「これ以上ダメージディーラーに、タンクをやらせる訳にはいかねぇ! 俺達が時間を稼ぐぜ!」

「…あんた」

「…助かる!」

 

すると、アスナとユウキが回復ポーションを手渡した。

 

「早くこれを飲んで!」

「ライト、大丈夫?」

「オレはな。すまんキリト、無事か?」

「あぁ、平気だ」

 

キリトの様子を見る限り、まだまだ行けそうだ。ライトは視線をキリトからボスへと移した。自分達を助けてくれたエギルを筆頭に、他のプレイヤー達が周囲を囲んで、奴のソードスキルを盾を使って凌ぎながら戦っていた。

 

しかし、奴はそれらのプレイヤー達を薙ぎ払い、上へジャンプしたかと思えば、右手に持つ刀を肩に担ぎ、ソードスキルを発動させた。

 

「危ない!」

「っ!」

 

それを防ぐ為に、キリトとライトが立ち上がり、片手直剣を肩に担ぐ構えを取った。片手直剣上段突進ソードスキル《ソニック・リープ》は、軌道を空中に向けて放つ事が出来るソードスキルだ。

 

「やらせるかあぁぁ!!」

「届けぇぇぇぇ!!!」

 

2人の斬撃が届かなければ、下に居るエギルや他のプレイヤー達はコボルド王の攻撃を受けてしまう。それだけは、何としてでも避けたかった。必死に叫びながら接近する彼らのソードスキルは

 

 

 

ーーーギリギリで届いた。

 

 

 

「グルアアァァァァ!!!」

 

 

コボルド王は、キリトとライトの《ソニック・リープ》を喰らい、空中で体勢を崩し地面に激突した。HPゲージに目をやると、既に4段目のレッドゾーンにまで達していた。この瞬間に決着を付けるべきだと感じたキリトは、3人に呼びかけた。

 

「ライト、アスナ、ユウキ。最期の攻撃、一緒に頼む!」

「分かった!」

「了解!」

「うん!」

 

HPの残量がほんの数ドットという事は、残り数回も攻撃を与えれば、目の前のボスを倒し、第1層を攻略できる。ここで退く選択肢は、彼らには無かった。

 

「「「「はあああぁぁぁぁぁ!!!!」」」」

 

4人の咆哮がフロア全体に響く中、最期の悪足掻きなのか、コボルド王が雄叫びを上げながら、右手に持つ刀を振るってきた。その初撃を、ライトが《スラント》で弾く。

 

「てああぁぁ!!」

 

がら空きになった胴体に、ユウキが《ホリゾンタル》を喰らわす。

 

「やああぁぁ!!」

 

その次に、アスナの《リニアー》が攻め立てる。

 

「せええぃ!!」

 

そして、次にキリトが奴の体に、ソードスキルを再び叩き込んだ。

 

「はあぁぁ!!」

 

しかし、それだけでは奴のHPを削り切れなかった。僅かな量が残った状態に思われたが、キリトの剣の刀身は光を失っていなかった。

 

更にそこから、ライトが再び剣に青い光を発生させながら飛び込んだ。片手直剣2連撃ソードスキル《バーチカル・アーク》と単発ソードスキル《バーチカル》が、コボルド王の巨体へ迫る。

 

「これでぇぇぇ!!!」

「終わりだぁぁぁぁぁ!!!」

 

少年達の放った斬撃が、2mの巨体を左右にV字上に斬り裂いていった。そして、その体が光り輝いたと思えば、第1層のボス《イルファング・ザ・コボルドロード》は、無数のポリゴンへと姿を変えた。そして、プレイヤー達の前に巨大な文字が出現した。

 

 

 

《Congratulations!!!》

 




原作のプログレッシブで、蹲るキバオウに呼びかけたのはキリトでしたが、今回はオリ主にさせて貰いました。

今回は以上です。それでは、また次回!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。