SAO another story   作:シニアリー

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遂に迎えました、儚き剣のロンド最終回です!

明らかになるネズハの罪、深刻な状況と化す攻略組

その結末を、どうぞ!




罪の告白

 

 

真のフロアボス《アステリオス・ザ・トーラスキング》がポリゴンとなって爆散すると同時に、地面に着地した4人だったが、戦闘での疲労が一気に押し寄せたのか、ライトとキリトは地面に膝を付き、アスナとユウキは座り込んでしまった。

 

「Congratulations!!」

 

そんな4人の後ろから、流暢な英語で祝福を送る声が聞こえた。後ろには巨漢の両手斧使い、エギルと友人が立っていた。笑みを浮かべてサムズアップする彼に、4人も頷いて答えた。すると、エギルは遠くの方に視線を向けた。

 

「1層に続き、見事な剣技だったが、今回のMVPはあんたらじゃなく、彼のものだな?」

 

視界の先には、強化詐欺を実行していた元鍛冶屋のネズハが映っていた。ライトは頷くと、ネズハに顔を向けた。

 

「あぁ……彼が来てくれなかったら、まず間違いなく、オレ逹は死んでいた」

 

あの状況は絶体絶命の大ピンチだった。ライトの言う通り、彼が来なければ、確実に死んでいただろう。そのネズハは、コロシアムの天井付近を見上げていた。

 

彼に近付いて、労いの言葉を掛けようとすると、遠方から大きな歓声が届いた。そこでは攻略集団を中心に、青隊リーダーのリンドと、緑隊リーダーのキバオウが右腕を絡ませていた。そして、周りのプレイヤー達がそれぞれ拍手を送っている。

 

「何だ、案外仲良いじゃないか!」

「どうせ、次の層まででしょうけどね?」

「まぁまぁアスナ…」

 

キリトの呟きに、辛辣な返答をするアスナをユウキが宥め、ライトはやれやれという仕草を見せた。

 

何とか無事に生還できたが、今後のボス攻略において、βの情報を当てにしすぎてはいけないと思った。今回のように新しいボスが追加、あるいは、ボス自体が変わっている可能性も想像できる。

 

10層から上は、キリトも知らない未知の世界だ。次のボス戦も気を引き締めて挑むべきだと、ライトは胸中で決心すると、立ち上がった3人と共に、ネズハの所へ向かった。彼はライト達に気付くと、ぺこりと頭を下げた。

 

「お疲れ様でした。キリトさん、ライトさん、アスナさん、ユウキさん。最後の空中ソードスキル、凄かったです!」

「いや…あれは……」

 

ネズハの称賛に歯切れが悪いキリト。まさか、ブレイブスに《ラストアタックボーナス》を取らせない為に、放った技だと言える筈もなく、代わりにアスナとユウキが話しかけた。

 

「ボク達よりも凄いのはネズハだよ、手に入れたばっかりの武器を、あんなに使いこなすなんてさ!」

「えぇ…練習、凄く大変だったんでしょ?」

 

彼女達の問い掛けに、ネズハは首を左右に振った。

 

「大変だなんて思いませんでした! だって、なりたいと思った者に、やっとなれたんですから……ライトさん、皆さん、本当にありがとうございました! これで、もう…」

 

ネズハは最後の言葉を濁すと、顔を俯かせた。暫くして顔を上げると、部屋の中央に視線を向ける。彼の視線を辿ると、そこに5人のプレイヤーが立っていた。

 

《レジェンド・ブレイブス》のリーダー、オルランドがリンドと、ベオウルフがキバオウと、他の3人が幹部達と握手を交わしていた。今後は恐らく、彼らが主力になってゲーム攻略を進めていくだろう。

 

「ネズハ、君もあそこに居て良いんじゃないか?」

 

キリトがそう言うが、ネズハは首を横に振って拒否した。

 

「いえ、良いんです……僕にはもう1つ、やらなきゃならない事がありますから」

「えっ…何を…」

 

そこで、何かを察したようにキリトの言葉が止まった。

 

ネズハは険しい顔をするライト、キリト、眉をひそめるアスナ、ユウキを順に見ると、ライトが渡したチャクラムを、左手でソッと撫でて歩き始めた。すると、こちらに歩み寄る3人のプレイヤーが見えた。ブレストプレートの下にリンド隊のダブレットを着た者に、4人は見覚えがあった。

 

5日前、ネズハに強化詐欺で武器を騙し取られたシヴァタだ。その隣に立つプレイヤーも、リンド隊の象徴である青服を着ている。もう1人は、キバオウ隊の緑服を着たプレイヤーだった。

 

「あんた、何日か前まで、ウルバスやタランの街で鍛冶屋やってたよな?」

「…はい」

 

シヴァタの質問に、ネズハは頷いて肯定した。

 

「何でいきなり戦闘職に転向したんだ? それに、そんなレア武器まで……鍛冶屋でそんなに儲かったのか?」

 

彼らがネズハを疑うのは当然だ。ライトが譲り渡した投擲武器のチャクラムは、NPC店で売られている武器よりもレアだ。生産職だった彼が儲かったとしても、そんな武器を持っているのは妙だ。

 

歓喜に沸いていた雰囲気が、静かな空気と化していた。この場に居合わせる、全員の表情が強張っていた。特に、オルランド達ブレイブスのメンバーが。

 

事情を知っている4人は、どうすれば良いか分からない顔をしていた。彼を庇ったら、この事件は解決するのかと。そんな中、ネズハが地に膝をつけ、地面に伏した。

 

「…僕がシヴァタさんと、そちらのお2人の剣を、強化直前にエンド品とすり替えて騙し取りました」

 

その言葉で、シヴァタを始めとした3人のプレイヤー達が憤怒の表情を浮かべる。だが、ギリギリで自分を抑えている。静まり返った空気を破るように、またもシヴァタが口を開いた。

 

「騙し取った武器は、まだ持っているのか?」

「…いえ……もうお金に変えてしまいました!」

 

地に付けた頭を左右に振りながら、シヴァタの質問に答える。彼の返答を聞いたシヴァタは両目を強く瞑った。だが、まるで溜まっている怒りを吐き出すかの如く、息を吐いて口を開いた。

 

「そうか。なら、金での弁償なら出来るか?」

 

ネズハは、すぐに答えなかった。彼らが強化詐欺を働いた期間は10日間。今ここで、騙し取った武器の被害額を払う方法は、現状では1つしかない。

 

《レジェンド・ブレイブス》が装備している鎧や武器を、NPC店でコルに変換する事だ。しかし、彼らがネズハの仲間だと名乗り出るか分からない。

 

ライトがオルランド達に視線を向けると、5人は何かを話し合っている。だが、離れた位置な為、会話は全く聞こえない。

 

「それも無理です…お金は全部、高級レストランや高級宿泊で使い果たしました」

「「「「っ!!?」」」

 

ネズハの答えにライト、キリト、アスナ、ユウキは目を見開いて、息を呑んだ。《高級レストラン》《高級宿泊》という言葉は嘘だ。彼はブレイブスのメンバーを庇い、自分1人で罪を被ろうとしている。シヴァタの隣に立つ青隊のプレイヤーが我慢の限界を超えたのか、ネズハに詰め寄る。

 

「お前…お前ぇぇ!!! 分かってるのか!? 俺達が大切に育てた剣を壊されて!! どんだけ苦しい思いをしたか!? 俺の剣を売った金でうまいもん食っただぁ!? 高い部屋に寝泊まりしただぁ!? その上、レア武器買ってボス戦に割り込んで、ヒーロー気取りかよ!?」

 

怒りで顔を歪めるそのプレイヤーは、ネズハの胸ぐらを掴んで、怒号を浴びせる。更に、そこから緑隊のプレイヤーも続く。

 

「俺だって剣がなくなって、もう最前線で戦えねぇって思って…そしてら、仲間がカンパしてくれて、素材集めも手伝ってくれたんだぞ!! お前は、俺達だけじゃねぇ。攻略プレイヤー全員を裏切ったんだぞ!!こんな事言っちゃいけねぇけどよ、俺はテメェをぶった斬りたくて仕方ねぇんだ!!」

 

2人の言葉が引き金となり、四方八方から1層の時以上の罵詈雑言の嵐が飛ぶ。それを経験しているライトは、唇を噛み締めた。この場を治める方法があるとすれば、オルランド達が仲間だと名乗り出る以外に方法はない。

 

 

いや、或いは彼自身の命ならば。

 

 

「皆さんのどんな裁きも受けます。お好きなように」

 

ネズハが、小さく呟いた。その言葉が意味するのは『ここで死んでも構わない』という事だ。その言葉を仕切りに、緑隊のプレイヤーが剣の柄を握り締め、今にも引き抜こうとする。

 

その時、後方から複数の足音が聞こえた。目を向けると、ブレイブスのメンバー全員が、ネズハに歩み寄っていく。その光景に、ライトは顔を顰めた。

 

「……まさか…」(小声)

 

彼の脳裏に、最悪の可能性が蘇った。キリト、アスナ、ユウキに視線を移せば、3人とも青白い表情を浮かべている。どうやら、彼らも最悪の可能性に思い至ったのだろう。

 

ネズハに歩み寄ってきた一行のリーダー、オルランドが剣を引き抜いた。同時に、アスナとユウキがダッシュの姿勢を取るが、ライトがそれを止めた。

 

「動くな!」(小声)

「何言ってるの!?」(小声)

「黙って見てろって言うつもり!?」(小声)

 

ライトの言葉に、納得できない様子のアスナとユウキだったが、彼は有無を言わさない声で言った。

 

「それは、オレの役目だ!」(小声)

「違う、俺達のだ!」(小声)

「っ…キリト、その言葉の意味が分かってるのか? 攻略集団に楯突いたら、もう攻略には参加できないぞ!」(小声)

 

ライトは鋭い目付きで、キリトに問いかける。もし、この場で鍛冶屋ネズハを庇えば、自分達は間違いなく攻略には参加できない。それを分かっていて、キリトは言い切っているのだ。

 

「他の連中からは俺も疎まれてるんだ。それが1つ増えたところで、問題ないさ」(小声)

 

キリトは頬を持ち上げて笑った。恐らく、止めても着いて来るだろう。ライトは諦めたように息を吐くと、視線を前方に向けた。そして、足で地面を蹴ろうとした時、聞こえる筈がない声が、彼の耳に届いた。

 

「…ごめんな……ほんとにごめんな、ネズオ」

 

すると、聖騎士は引き抜いた剣をゆっくりと地に置くと、ネズハ同様に攻略集団に向かって手と足を地面に付け、頭を下げた。それが合図となり、残りのメンバーも続く。全員が彼らに向かって土下座すると、オルランドがはっきりとした口調で言った。

 

「こいつは、俺達の仲間です…強化詐欺をやらせていたのは、俺達です」

 

彼らは名乗り出た。自分達がネズハの仲間で、強化詐欺をさせていた事を。続いて、5人は装備していた防具を全て取り外した。

 

「これらのアイテムを全てコルに換金すれば、詐欺の被害額を上回るコルになる筈。それで、被害に遭ったプレイヤー全員に、迷惑料として賠償をお願いしたい。それでもお金が残れば、次回ボス攻略用のポーション代として拠出したい」

 

この場に居る全員が、唖然としていた。

 

彼らの言う通り、限界まで強化された武器や防具を、NPCショップで換金すれば、莫大なコルが手に入り、詐欺被害による賠償金の目処が立つ。

 

彼らは、ネズハを見捨てようなど考えていなかった。確かに、お荷物になっていたかもしれない。しかし、彼1人が全ての罪を背負う事は間違っていると分かっていた。

 

それを理解した途端、ライトは肩の力が抜け、静かに息を吐いて安堵の表情を浮かべた。他のプレイヤー達も、賠償が出来ると分かると、剣の柄から手を離そうとした

 

 

 

ーーーその時

 

 

 

「そんなんで許される訳ないだろう!? そいつらの言う通り、強化しまくったご立派な装備で、金銭的な弁償は出来るだろうよ!! でもな!! 死んだ人間は帰ってこねぇんだよ!!」

 

 

「「「「「「っ!?!?」」」」」」

 

 

 

突如として叫んだ、キバオウ隊を表す緑色の服を着たプレイヤーの一言により、攻略集団の間に雷のような衝撃が走った。

 

「俺は知ってんだ!! そいつに武器を騙し取られたプレイヤーが、店売りの安い武器でフィールドに出て、今まで倒せてたMobに殺されちまったんだ!!?」

「…人が死んだ」

「……なんてこった…それじゃまるで…間接的な《PK》」

 

《PK》正式名はプレイヤーキル。

 

その名の通り、プレイヤーがプレイヤーを殺す行為だ。今のSAOには許されないその行為が、執行されようとしている。キバオウ隊のプレイヤーによって、ライト達が危惧していた、ネズハが攻略集団に処刑される事が現実になってしまう。

 

それを示すかの如く、周りから大勢のプレイヤーの声が響く。

 

「クソ鍛冶屋を殺せ!!」

「人殺しがぁ!!」

「命で償えよ!!」

 

誰もが悍ましい言葉を口にすると同時に、再び剣の柄に手を伸ばす。武器を騙し取った挙句、人を殺したとなれば、それは最早、取り返しのつかない犯罪だ。その裁きを下す方法はどこにもない。そう、プレイヤーがプレイヤーに死を与える以外には。

 

SAOには、裁判官の権利を持つプレイヤーもNPCも存在しない。それは逆に言えば、誰もが裁きを下せるという事だ。そして、他のプレイヤーがそれに賛同すれば、もう誰にも止められないかもしれない。

 

しかし、万が一にも、それを止められる者が現れたとしたら。

 

「へぇ〜、初耳だな。その情報は」

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

不意にその声がボス部屋に響いた事で、声の主たる人物に注目が集まる。黒寄りの茶髪に紺色のロングコートを羽織り、最大の特徴たる緋色の瞳を宿したプレイヤー、ライトが立っていた。

 

彼は静かに歩き始めると、ブレイブスの近くで足を止めた。

 

「…なら聞くが、武器を騙し取られてモンスターに殺されたプレイヤーはどこの誰だ? こいつらは誰彼構わず武器を騙し取っていた訳じゃない。入手しにくい、レア武器を持つプレイヤーをターゲットにしていた。それなら、オレ達が知っているプレイヤーの筈だ!」

 

彼の言葉で、全員の視線がキバオウ隊のプレイヤーに集まった。調査を行っていたライト達は、レア武器を装備したプレイヤーが、主なターゲットだと既に知っていた。

 

ブレイブスを糾弾し始めたそのプレイヤーは、何故か歯軋りしていた。何か答えようとしたが、それより早くライトが答えた。

 

「答えられないなら、オレが教えてやるよ。武器を壊された所為で自棄になって、フィールドに出てモンスターに殺されたプレイヤーは…存在しない!!」

「「「「「「っ!!?」」」」」」

 

この場に集まる全てのプレイヤーに聞こえる声で、そう言い切ったライトに、声を掛ける者が現れた。

 

「それは本当なのか?」

 

振り向いた先に立つのは、《ドラゴンナイツ》リーダーのリンドだった。隣には、《アインクラッド解放隊》リーダー、キバオウも立っていた。リンドの問いに、ライトはしっかりと頷いた。

 

「あぁ、情報屋の鼠に頼んだからな。それに、オレ自身も少し調べてみたんだ」

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

情報屋、鼠のアルゴの知名度は有名だ。この場で、その名を知らないプレイヤーは居ないだろう。その名前を聞いた瞬間、攻略組はデマ情報でブレイブスを殺そうとしたプレイヤーに目を向けた。すると、ライトがその彼に近付いて口を開いた。

 

「出鱈目な情報を流すな。彼らは危うく、殺されそうになったんだからな!」

 

そのプレイヤーはフードの奥で歯を噛み締め、憎々しくライトを睨みつけていた。それに構わず、ライトは振り返ると、攻略部隊に向かって鋭い口調で話し始めた。

 

「お前らもお前らだ。目先の情報に囚われて、それで足元を掬われたらどうするつもりだ? その情報は、本当に正しいのか?……確かめもせずに納得するのは、おかしいと思うがな?」

 

彼の言葉は正論だった。攻略集団は完全に頭に血が上って、ブレイブス全員を殺そうとしていた。その事実に気付いた彼らは、慌てて握っていた剣の柄を離した。

 

「まぁ信じられないなら、自分達で調べてみるんだな!」

 

ライトはそれだけ言うと、キリト達の元へ戻った。すると、リンドとキバオウが、何やら話し合う様子を見せた。それが数分も続き、攻略部隊全員に聞こえる声で、話の内容を伝えた。

 

「この件は、俺達に預からせて貰う! ライトさん達4人は先に行って、攻略成功の内容を新聞屋に伝えてくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く…何で私達が使いぱっしりみたいな事しないといけないの?」

「別にボク達に頼らなくても、終わってから報せれば良いのに!」

 

不満爆発と言った様子のアスナに続いて、後ろのユウキも少し納得いかない顔をしていた。そんな2人に、前方を歩くキリトが顔を向けると、肩をすくめながら答えた。

 

「仕方ないだろう、オミソなんだから」

「違うわよ、4人組のパーティーなんだから!」

 

現在、彼らは第3層に続く螺旋階段を登っていた。ブレイブスの死刑執行がライトによって防がれた為、後はどうのようにして、武器を騙し取られたプレイヤー達に、コルを分配するかの議論が行われている。

 

「これから、ネズハとブレイブスのみんなはどうなるのかな?」

 

賠償金の目処がたったとは言え、彼らが犯罪行為をしていたのは事実だ。彼らの今後が気になったユウキが、足音を響かせながら呟いた。

 

「彼ら次第だな。強化詐欺をしていた事は前線組にすぐ届くだろう。はじまりの街に戻るか、第1層に戻って最初からやり直すか……どちらにせよ、決めるのはあいつらだ!」

 

1番先頭を登るライトが答えた。彼らは強化した防具で、自分達のレベルの差を埋めていた。そのアドバンテージが無くなった今、初めからやり直すのは大変だが、今後はもう、ネズハが足手纏いになる事はない。

 

「…ライト!」

「何だ?」

 

突然、後ろから真剣味の篭ったキリトの声に、ライトは立ち止まると、振り返って要件を問う。

 

「…お前は、ああなる事が分かってて、アルゴにあの依頼を頼んだのか?」

 

それは、4人がNPCの酒場でアルゴに幾つかの依頼を頼んだ時の事だった。あの時、彼がアルゴに頼んだ依頼の内容は、『武器を壊されたプレイヤーの中に、死亡した者はいるか?』というものだった。

 

「そんな訳ないだろ……あれはオレにとっても予想外だった。まさか、あんなデマ情報を流すとはな」

 

苦い表情を浮かべ、端的に答えるライトの言葉は本心だった。同時に、ブレイブスを殺させようとしたプレイヤーに、彼は覚えがあった。第1層のビーター誕生の原因を作った声の主。正しく、そのプレイヤーの声だった。

 

「ねぇ、ライト。もし、ブレイブスの強化詐欺が原因で死んだ人が居たら、どうするつもりだったの?」

「その時点で、オレはネズハにあの武器を渡さなかっただろうな。更に言えば、《レジェンド・ブレイブス》を捕まえて証拠を目の前に突き出し、全員を黒鉄宮送りにしていた!」

 

アルゴがネズハに関する情報を送ってきた時、ライトの元にも『死亡者はいなイ!』と、依頼の報告が届いたのだ。それから彼は、自身でも少し調べてみようと、他のプレイヤーに聞き込みしていた。

 

「そうか……まぁ、誰も犠牲者は出なかったし、後の事は、あの2人がどうにかしてくれるだろう!」

 

キリトは、彼の答えに納得して頷いた。あの場はもう、処刑が開始される雰囲気ではなかった為、心配しなくても大丈夫だろう。アスナとユウキもキリトの言葉に頷くと、何かを思い出したように口を開いた。

 

「ところであなた達、アステリオス・ザ・トーラスキングのLA、何がドロップしたの?」

「あっ、そうだよ。ねぇ、どっちに手に入ったの?」

 

少女達の質問に、ライトはキリトに視線を移す。つまり、今回はキリトが手に入れたという事だ。

 

「え〜っと……」

「考えてみれば、キリト君はナト大佐に加えて、バラン将軍のLAも入手したわよね?」

「ねぇ、何がドロップしたの!?」

 

アスナとユウキは、前方の2人に詰め寄る。

 

「…あっ、あれ扉じゃないか? 行こうぜ、ライト!」

「お、おい!」

 

適当にはぐらかしたキリトは、第3層に続く扉を目指して走り出す。彼を追いかけようと、ライトも走って階段を登り出す。

 

「ちょっと、何誤魔化してるのよ!?」

「教えてよ!!」

 

アスナとユウキも2人に追いつく為、足を踏み出す。そんな4人の前には、片方は白の肌、もう片方は黒の肌を持った、剣を交差する2人の剣士が描かれた扉が見えた。

 

「次の層も気を引き締めないとな。SAOの本番は、ここから何だからな!」

 

そう呟いたキリトは、第3層に続く扉を凝視していた。

 

 




儚き剣のロンド、やっと完成しました。

酒場でライトが依頼した情報は、これだったのです!

次回は3層の物語、《黒白のコンチェルト》で、美しいエルフ騎士が登場します!

お気に入り登録をして下さった皆様、ありがとうございます。

では、また次回!
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