リアルが忙しかったので、なかなか投稿できませんでした。
では、どうぞ!
「理不尽な要請なのは理解している。だが、どうかそちらも理解してほしい。トッププレイヤーがこのように分断されてしまった今、我々はギルドの友好関係を維持し、協力してゲーム攻略を行う必要があるのだと。」
藍色の長髪を後ろで束ねたシミター使い、ギルド《ドラゴンナイツ・ブリゲード》初代リーダーの言葉に、ライトは内心で呟いた。
「(この男は何を言ってるだ?)」
そして、隣に立つキリトも同じような顔をしていた。彼らの正面には、硬さを含んだ視線を向けるリンドが演壇上に立ち、その横で《アインクラッド解放隊》のリーダー、キバオウが椅子に座っていた。
約5時間と少し前、昼休憩を終えた4人は借りた部屋を後にし、食料やポーションを購入すると、主街区《ズムフト》にある単発クエストを次々と受けて、フィールドに出た。デスゲームとなった世界で戦闘を経験していくと、プレイヤー自身の戦闘スキルが磨かれていき、数値だけで強さは決まらなくなる。
4人は効率の良い狩り場を見つけ、そこで集中的にモンスターを狩り、全部で7つのクエストをクリアした。その過程で、キリトはレベル15、アスナとユウキは14、そして、ライトは16となった。彼らがここまでクエストを受ける理由は、フロアボスの情報が掴める可能性があるからだ。
事実、第2層の新たなボス《アステリオス・ザ・トーラスキング》の情報も、アルゴが受けたあるクエストの報酬として存在した。その教訓を得て、4人はクエストを片っ端から受けたのだ。
その後、4人は掲示板に告知されている攻略会議に出席しようと足を運んだ。そこには、4人より早く来ているプレイヤーが大勢いた。勿論、斧戦士のエギルも居た為、軽く挨拶してから互いの状況を話し合ったり、少女達とパーティーを組んだままを冷やかされたりしているうちに、5時の鐘が鳴り響いた。夕暮れの訪れのメロディーが聞こえる中、リンドとキバオウがステージに現れた。
「当たり前か」(小声)
「っ…何がだ?」(小声)
隣に座るライトからの囁き声に、キリトが声のボリュームを抑えて問い掛けた。
「…《レジェンド・ブレイブス》さ」(小声)
「ああぁ…」(小声)
その言葉で、キリトは納得した。2層で強化詐欺を働いていたネズハが所属する《レジェンド・ブレイブス》がここに居ないのは当然だ。レベルが低い彼らは、奪った武器をコルに変えて鎧を強化し、攻略に参戦できたが、それらは全て賠償金となった。今頃、1層のフィールドでレベルリングをしているのかと考えていると、何時の間にか、リンドとキバオウの挨拶が終わっており、攻略会議が開始された。
最初は攻略の主力を担っていた青グループと緑グループが、正式なギルドを立ち上げた報告だった。厄介なクエストを連続で何回かクリアする必要がある筈だが、どうやら1日でクリアしたようだ。
2つ目の議題は、両ギルドのアルファベッド3文字の略称が発表され、現時点での所属プレイヤーの紹介、最後にギルドメンバーの募集が呼びかけられた。だが、この場に集まるプレイヤー42人で、ギルドに入っていないのはエギルと仲間の3人。そして、ライト達の計8人。誰も入りたいと手を挙げなかったので、この話は終わりだと思ったが、その予想は裏切られた。
「ギルメンを募集するにあたっては、可能な限り門戸を開きたい。当面の参加要件は、レベル10に達している事だ」
「うちはレベル9や!」
リンドの説明中に、キバオウが椅子から立ち上がって声を上げると、すぐに座った。途端、リンドの額に一瞬青筋が見えたが、すぐに落ち着きを取り戻して話を続ける。
「この会議に参加していて、どちらのギルドにも入っていない人達は、その条件を満たしていると思っている。なので、手さえ挙げてくれれば喜んで迎え入れたい。だが……たった1つだけ、特定の人達に関しては条件を加えさせて貰いたい。これは、キバオウさんとも話し合って決めた事だ」
リンドがそれを言い終えた直後、今度はキバオウの眉間に縦シワが浮かんだ。
「(はぁぁぁ……どれだけ毛嫌いしてるんだ)」
そんな様子に、ライトはため息を吐きたくなった。彼の言葉通り、キバオウがリンドの事を気に入ってないのは明白だ。しかし、今はそれよりもリンドが言った《特定の人物達》とは誰だと考えていると、演壇上に立つリンドが視線を送った。
「…キリトさん、ライトさん」
唐突に名前を呼ばれ驚いたのか、キリトは少し動揺した様子を見せたが、すぐに平常状態に戻り、ライトは特に慌てた様子はなかった。
「…あぁ、分かってる」
キリトは適当に返事を返し、ライトは無言のままだった。特定の人物達とは、自分達の事かと納得したライトだったが、リンドは視線を横にスライドさせると、アスナとユウキに声を掛けた。
「そして、アスナさん、ユウキさん」
まさか名前を呼ばれるとは思っていなかった2人は僅かに反応する。リンドは4人を見据えると、咳払いしてから口を開いた。
「君達のギルド加入を認めるには、レベルの他にもう1つ要件がある。それは、DKBとALSに、均等に2人ずつ加入して貰うという事だ」
「…均等に」
「2人ずつ…」
キリトとライトが小さく囁き、訝しむ視線を向けると、リンドは大きく咳払いしてから続きを話す。
「昨日のボス攻略戦を見ても明らかなように、君達の実力は、我々トップレイヤーの中でも突出している。何せ、2層のボスのLAも全て持っていったからね。勿論、それを攻めている訳じゃないさ。ただ、今後の事を考えると、現時点で一応対等と言って良いギルドのパワーバランス維持の為、片方のギルドに多く別れると、力の差が開いてしまう為、望ましくないんだ」
早口で説明したリンドの傍で、椅子に座るキバオウの額に青筋が浮かんでいた。恐らく、『一応対等』という言葉が引っかかったのだろう。キリトとライト、アスナとユウキは黙って説明を聞き続けた。
「これが理不尽な要請である事は理解している。しかし、どうか理解して貰いたい」
『一体どういうつもりだ?』と、ライトは真っ先に考えた。リンドは『もしギルドに入りたければ、2人ずつ入れ』と言ってきたが、この話し合いに意味は無いのだ。何故なら、4人はギルドに入るつもりは無く、ALSのキバオウは反βテスター主義を掲げるギルドのリーダー。故に、βテスターであるキリトと、そのふりをしているライトを受け入れる訳がない。
もしギルドに加入するなら、DKBにキリトとライト、ALSにアスナとユウキ、このパターンしかない。だが、DKBもライトとキリトを受け入れるとは思えない。事実、青隊の面子も困惑した顔をしている。恐らく、この話には何か思惑があると、ライトは瞬時に判断した。すると、横に座っていたキリトが口を開いた。
「…突出した実力があると言って貰って悪いけど、俺達はどちらかのギルドに入るつもりはないよ……って答えは、あんた達も予想してたんじゃないのか?」
キリトもリンドの真意を探る為、聞き返したのだろう。すると、キバオウは派手に鼻を鳴らし、リンドは少し苦笑したようだが、すぐに固い表情へ戻して続けた。
「了解した。因みに、この状況で敢えてギルドに入らない決断の理由を聞いてもいいか?」
今度は理由を訊ねた。この無駄な話し合いを長引かせるのに、一体何のメリットがあるのか。
「…決断なんて大した理由じゃないよ。単に性に合わないって事だ!」
「まぁ、似たような答えだ」
「ふむ……それではキリトさん、ライトさん。あんた達は、当面ギルドに加わるつもりも、率いるつもりもないと、そう言う事で良いか?」
その言葉で漸く理解できたライトは、あからさまな苦笑を零した。そして、キリトも同様の顔を浮かべていた。
「そう言う事で良いよ。ちゃんとしたリーダーになれる気もしてないし」
「そうだな。ギルドリーダーなんて言う、責任が重すぎるものは、背負いたくない!」
それを聞いたリンドは、深く頷いてから最終確認をするように問い掛けた。
「あんた達はギルドに関わるつもりはない。それで良いか?」
その言葉に、少年達は揃って首を縦に振った。
「了解した。こちらが聞きたい事は以上だ」
リンドはそう言うと、視線を2人から外した。すると、ライトは胸に溜まった空気を吐き出し、小さく囁いた。
「…回りくどい真似を」(小声)
「全くだ」(小声)
その言葉に、キリトが同意する。結局、リンドは先程の言葉を、キリトとライトから引き出したかったのだ。
《自分達はギルドを作るつもりはない》という言葉を。
リンドは…(恐らくはキバオウも)…キリトとライトが自分達のギルドを作る可能性を考慮したから、それを潰しておこうと考えたのだ。自分達のリーダーシップを確立する目的で。その為に、この場で無駄な話し合いを持ちかけた。
「多分、藪蛇状態になるのを危惧したんだろうな。会議の前に俺達を捕まえて、『お前達はギルドを作るな!』って言おうと思ったんだろうけど、逆にそれで俺達がギルドを作ったら本末転倒。だから、ここまで慎重に、且つさりげなく言ってきたんだろう」(小声)
「慎重と言うか、入念と言うか」(小声)
だが確かに、キリトの言う事にも一理ある。確実に、相手に真意を悟られないこの行動は、2人に初代攻略リーダーの今は亡き《ディアベル》を思い出させた。彼は、自分の代わりにキバオウを代理交渉人にして、キリトの剣を40,000コルで買い取ろうとした。目的はキリトの戦力を削ぎ、LAを手に入れる為だ。
今回のリンドが思案した2人のギルド設立阻止は内容こそ違うが、どことなく手口が似ている。その要因は恐らく、彼がディアベルに憧れていたからか、それとも追い越そうと思ったからか。そんな事を考えていて、ライトはやっと気付いた。自分達がアスナとユウキの意思を無視して話を終わらせてしまった事に。
右隣に座るキリトも同じ様子だった。2人は顔を見合わせると、後ろに座るフードで隠れた彼女達の表情を伺おうと声を掛けた。
「…えっと……っ!?」
だが、ライトの言葉は続かなかった。何故なら、フードから覗かせる黒紫色の瞳が、怒りの炎で燃えていたからだ。そして、その視線は演壇上のリンドに向けられている。アスナに目をやると、全く同じような視線だった。彼女達は今までにない程、空前絶後に激怒していた。
「それでは、次の議題に入ろう。ここからは、進行役をキバオウさんに頼みたい!」
その言葉で、キバオウが立ち上がった。しかし、今のライトに彼の演説を聴く余裕はなかった。
「ええか、3層の目標クリア時間は1週間や! 後4日で迷宮区に行って、2日でフロアボスを倒す! その為に必要なんは最前線組みの頭数や! 何時までも40人ぐらいだけやったらラチがアカン! ワイらと一緒にこんクソゲームと戦おうっちゅうプレイヤーを増やしていかなアカンのや!!」
長々とした主張を言い終えると、所かしこから「そうだそうだ!」という声が湧く。しかし、ライトは今それどころではない。未だに怒りの籠もった視線をリンドから外さないユウキを、どうにかする必要がある。もし放っておけば、会議が終わった直後に、彼に向かって行くに違いない。
「そうや。この層から、最初にボス部屋を見つけたギルドが攻略レイドを指揮するっちゅう事になったんや! 他に質問は…無さそうやな。なら、3層1回目の攻略会議はこれで終了や。最後に、全員で気合い入れんで!」
すると、ユウキとアスナが状態を少し前に傾け、リンドに向けて突進を仕掛ける。
「1週間でボスを倒すで!!」
「「「「「「おう!!!」」」」」」
野太い声が会議場に重く轟いた。そして、それと同時に立ち上がって、リンドに向かって行こうとしたユウキの腕を、ライトが掴んだ。
「待て、ユウキ!」
「何で止めるのさ!?」
ユウキはフードの奥から覗かせる目を細めて、ライトに問いかけた。
「一先ず落ち着け。下手に行動すれば、どうなるか分からないぞ?」
「だから何? 自分の意志だけ正しいと思って、それを他人に押し付けようとする人に、何を言われても黙ってろって言うの? その人の心にしか無い信じるものだってあるんだよ。あの人は、それを全然分かってない! 自分の考え方が中心で、的を得てるって勘違いしてるんだ!」
その辛辣な物言いに、ライトは言葉を詰まらせた。リンドの考えは、単にギルド設立の阻止だと思っていたが、ユウキにとっては違っていたようだ。しかし、例えそうでも行かせる訳にはいかない。
「冷静になれ。そんな事をすれば、どうなるか目に見えてるだろ?」
「あんな事言われて、『はい。分かりました』って素直に言える程、ボクは優しくなんかないよ……ぶつからなきゃ何も伝わらない!」
ユウキは鋭い瞳で言った。1層のボス戦から行動を共にしてきたが、ここまで真剣な目を見るのは初めてだった。剣呑な雰囲気が漂う中、ライトは考えた。このまま行かせれば間違いなく、DKBのメンバー達から反感を買う。そして、集団から疎まれる可能性が出てくる。そうなれば、生存率は格段に落ちる。
ゲームである以上、トラップが仕掛けられている可能性は高い。そして、βの情報があれど、通用するのは10層までだ。彼女が持つ才能は、今後の攻略を進める上で重要だ。だからこそ、今は行かせる訳にはいかない。しかし、何と言えば良いか分からない。それでも、何かを伝える必要があった。
「……確かに、その通りかもしれない」
「っ!?」
不意に囁かれた声に、ユウキは声の主であるライトに目をやる。
「それでも、今は我慢するんだ。自分の気持ちをぶつけるのが悪い事なんかじゃないのは分かってる……だけど、その所為で君が危険な目に遭うのは、嫌なんだ」
「っ!!?」
その言葉に、ユウキは目を見開いた。だが、最も驚いているのはライト自身だった。最後の言葉は彼にとって、無意識に出た言葉だったからだ。暫くの沈黙の後、ユウキは胸に溜まった空気を吐き出して呟いた。
「……分かった」
何とか抑えてくれたようだ。しかし、ライトは自分で言った言葉に、繰り返し疑問を抱いていた。どうして無意識に、あんな言葉が出てきたのだろうと。
「(2層のボス戦と言い、この会議と言い、何なんだ?……何でオレは、あんな事を言ったんだ?)」
この少女を守ろうとする理由が、一体どこにあるのか。それこそ、命懸けで守ろうとする理由が。暫く考え続けたが、見つかりそうにないと判断して中断した
ーーーその時
ーーーそうだ、ライト。伝えたい事は、言葉にした方が良いーーー
ーーーそれは、何時でも出来る事ではないのだ!ーーー
「っ!?」
この場に居る筈がない、黒エルフである仲間の騎士の声が聞こえたと思われる方向に顔を向けた。しかし、そこには何も無かった。
「(幻聴?……いや、でも)」
ライトは先程、自分が聞いた声がどうしても幻聴だとは思えなかった。声が聞こえた場所に視線を向けたままでいると、その景色が僅かに揺らいだような気がした。
その後、4人はエギルと仲間達に挨拶して、観客席の後ろから会議場を出た。メインストリートを進み、圏外を示すゲートを潜ると、《ズムフト》から100mほど離れた森で少年達が足を止めた。そんな2人を、アスナとユウキは不思議そうに眺める。すると、その沈黙を破るようにキリトとライトが口を開いた。
「居るんだろ、キズメル?」
「出てきても良いんじゃないか?」
「「えっ…」」
少年達の言葉に、アスナとユウキは目を見開き、辺りを見渡す。その時、後方からぱさりと布がはためく音が聞こえ、直後に笑いを含んだ声が聞こえてきた。
「気付かれてしまったか」
振り返れば、黒いマントと鎧を身に纏ったキズメルが立っていた。やはり、ライトが聞いた声は、幻聴でも何でも無かった。マントの能力《隠れ身のまじない》で姿を消し、ライト達のすぐ近くまで来ていたのだ。
「…き、キズメル……何時から、そばに?」
アスナから動揺を隠しきれない声が出される。もし、キズメルが最初から《隠れ身のまじない》を発動させて4人を追っていたのなら、あの森エルフとの交戦を見ている筈だ。
「…もしかして、宿の部屋から一緒だった?」
今度はユウキの声だった。すると、騎士はそっとかぶりを振った。
「いや、そなたらを見つけたのは、あの街の集会場でだよ。転移のまじないで、野営地から近くの森まで飛んだのが夕刻になってからだったな…」
どうやら、最初からずっと一緒に居た訳ではないようだ。しかし、ライトは疑問に思っていた。野営地で待っている筈の彼女が何故、人族の街にまで来ているのかと。
「…どうして、この街に?」
ライトがそう訊ねると、彼女は微かにはにかむような表情になったが、すぐに真顔に戻って告げた。
「任務だからな」
「任務?」
聞き返したキリトに頷くと、キズメルは説明してくれた。
「うむ。私が今、司令官から与えられている任務は、そなたらの世話と護衛だ。今朝、野営地を出たそなたらが中々戻ってこなかったので、少しばかり様子を見に行こうと思ったまでの事さ」
「は、はぁ…までの事ですか。でも、あんな街の奥まで入ったりして大丈夫か? もしハイド、じゃなくて《隠れ身のまじない》が解けたりしたら…」
騎士がここまで来た理由に納得したキリトだが、エルフの彼女が人族の街に姿を隠したまま入って大丈夫かと思ったが、彼女は自慢げな顔でマントの光沢に手を当てた。
「この《朧夜の外套》のまじないは、陽と月の光が入れ替わる夕刻と夜明け前に最も効力が発揮されるのだ。ちょっとやそっと体に触られても破れはしないさ!」
誇らしげな説明を受け、ライトはエルフも便利なまじないを持っていると思った。すると、何故かキリトは右手を見ながら答えに頷いていた。更に、アスナが眉間に皺を寄せながら呟いた。
「……触れられた?」
「うむ。キリトもこう見えて中々「中々のものだな。そのマントも」…」
キズメルの言葉を遮るキリトの様子は、明らかに慌てていた。そんな彼に、ライトは近付いて耳打ちした。
「お前、何したんだ?」(小声)
「…え〜っと、あんま答えたくないんだけど」(小声)
「……なら聞かない」(小声)
どうにも歯切れが悪い様子に、無理に聞く必要もないと判断して、ライトは追及を止めた。しかし、アスナはそうはいかない様子で、冷ややかな目でキリトを見ていた。そんな彼女に、ユウキが苦笑を零す。茜色に染まる空を見渡すライトが、キリトに向き直って声を掛ける。
「どうする、野営地に戻るか?」
「…そうだな。折角キズメルが迎えに来てくれたし。2人もそれで良いか?」
「それで良いわ。私も同じ事考えてたから!」
「うん、ボクも賛成!」
異論は無いと決まった所で、早速向かおうとしたが、アスナがまだ何か言いたげな様子だった。そして、3人に向けて1つの提案をした。
「あのね、いっその事、ボス戦までずっと野営地を拠点にしたらどうかと思って…」
「えっ? ま、まぁ。攻略の進み具合はエギルやアルゴから情報が入るだろうし、問題は無い、か」
キリトがライトとユウキに顔を向けると、2人ともに反論せず頷いた。恐らく、アスナとユウキはリンド達と距離を置きたいのだろう。キリトはキズメルの方に向き直って話す。
「キズメル、今夜から…多分1週間くらいだけど、天幕に泊めて貰っても良いかな?」
「構わないさ」
騎士はさらりと首を縦に振って答えた。そして、慈愛に満ちた笑顔を浮かべて言った。
「自分の家だと思ってくれれば、私も嬉しい。共に暮らそう、それぞれの務めを果たす時まで」
彼女の言葉や表情を見ると、ライトはこの黒エルフ騎士は、本当にNPCなのかと改めて思ってしまう。だが、そんな分からない事を考えても、答えは見つからない。
家に帰ろうとする5人の頭上には、太陽の光で照らされた茜色の空が広がっていた。
次回は、いよいよ《あの男》の片鱗が浮き彫りとなります。
正直、自分はこの章であの戦いが1番好きですので、気合を入れて書こうと思っています。
それでは、また次回!