SAO another story   作:シニアリー

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前話の続きの調査編です。

木箱の中身を探る中で、思わぬピンチがライトを襲います。


木箱の中身

 

キリトとライトは《アルギロの薄布》を折り畳み、ティルネル号とキズメル号に乗り込んだ。アスナとユウキが乗ったのを確かめると、2人は船尾に立って櫂で漕ぎ始めた。まず、ティルネル号が先頭を進み、トンネルの出口付近に着くと、ホールの様子をキリトとアスナが窺う。暫く経つと、キリトが船尾に戻って呼びかける。

 

「大丈夫だ、行くぞ!」

「了解!」

「うん!」

 

ライトとユウキは頷き、ティルネル号の後を追う為、櫂で漕ぎ始める。トンネルから抜け出すと、迅速にホール中心の桟橋へ向かい、船着き場に停める。

 

すぐにアルギロの布を被せて姿を隠すと、桟橋を渡って先に続く階段を登った。更にその先には、硬く閉ざされた鉄扉が行く手を遮っていた。鍵が掛かっていない事を祈りつつ、キリトが取っ手を握って、ゆっくりと引っ張る。幸い、鍵は掛かっておらず、扉を開く事が出来た。

 

細い隙間から中の様子を窺うと、前方に真っ直ぐ伸びる廊下が見えた。突き当たりは左右に別れており、廊下の中間辺りに見張り役のフォールンが奥の方へ進む。

 

「見回りは1人だけ、か」

「ねぇ、倒していく?」

 

フォールンは完全に背中を向けて油断している。慎重に近付いて背後から一気に4人で責め立てれば、簡単に倒せると思ったユウキが訊ねるが、アスナとキリトが首を横に振った。

 

「万が一、何か起こるかもしれないから、戦闘は避けましょ?」

「あぁ、隠密行動で行こう。こういう見張りは担当範囲が決まってるから、あいつが戻った隙に…」

 

歩いて奥へ進むフォールンエルフが右の曲がり角に向かった瞬間、キリトが鋭い声で合図を送った。

 

「今だ!」

 

4人は長い廊下を早足で歩くと、道が別れている分岐点で立ち止まり、右に曲がったフォールンの後ろ姿を確認する。ライト達には気付いてないようで、そのまま背を向けて歩き続けた。反対の左の通路は、少し先で右に湾曲している。キリトが3人に合図を送ると、頷いて左の道へ向かう。そして、辿り着いた途端、ライト達は目を剥いた。

 

「これはまた随分と…」

「どんだけ部屋があるんだ?」

 

そこには、左右の壁に設けられた無数の扉があった。一体幾つ部屋があるのか数える事すら面倒な作業だと、ライトが思っていると、後方からコツコツと小さな足音が聞こえた。

 

「っ…見張りの番兵が戻って来る!」

「どうするの!?」

 

先程のフォールンエルフが戻って来る事にユウキが気付き、アスナがどうするかと問う。正直、左右にある幾つもの扉に何かの情報が隠されていても不思議はない。しかし、この数の部屋を全て調べるとなれば、どれほど時間が掛かるか分からない。番兵がこちらに来るまでもう時間がない。すると、意を決したように、キリトが言葉を発した。

 

「全部無視して、先に行こう!」

 

恐らく彼は、この部屋の全てが今までと同じく、何もないと考えたのだろう。キリトの言葉に3人は頷き、番兵に見つかる前に先に進もうと走った。数多くの扉を横切ると、下へと降りる階段を見つけた。

 

彼らは音を立てず、ササッと階段を降りると少し凹みがある壁の影に身を潜めた。すると、見回りの番兵の足音が階段付近でパタリと止まった。そして、再び足音が響いたが、それはどんどん遠ざかっていった。

 

「どうにか見つからずに済んだわね?」

「はあぁぁ……降りて来なくて良かった」

 

小さくなっていく足音に、アスナは小さく呟いた。隣では、ユウキが番兵が階段を降りて来なかった事に安堵の息を吐いて呟いた。

 

「…でも、妙だな。見回りをしてるんだから、あのまま階段を降りてきても不思議はなかった。ここには、フォールンの衛兵が1人も居ないのに」

「確かに…つまり、この先に見張る物が何もないか。あるいは…」

 

階段付近まで近付いてきたフォールンエルフが、降りずに踵を返して戻った事が気になったキリトに、ライトが頷く形で答えると、2人は顔を見合わせて立ち上がり先へ進んだ。

 

そんな彼らの背中を少女達が追いかける。階段の先には、広大な倉庫が見えた。4人は出入り口の影に隠れ、中の様子を窺う。そこには、水運ギルドから受け取った大量の木箱が置かれ、正面には1つの大きな扉があった。そして、扉の側には重武装のフォールンエルフが立っていた。

 

「別のフォールンエルフがこの場所を見張っている…って事か」

 

ライトは岩陰に隠れながら2人の衛兵の姿を捉える。階段付近まで近付いてきたフォールンは、降りなかったのではなく、降りる必要がなかったのだ。その事に納得していると、隣でユウキが囁いた。

 

「あの木箱の中身を調べたいけど、そんな事したら衛兵に気付かれるよね?」

 

彼女の言葉に、アスナが小さく首を縦に振った。

 

「そうね。どうにかして、気を逸らせたら良いんだけど…」

 

2人の衛兵は、大きな扉の前に立っている。水運ギルドから受け取った箱の中身を調べようにも、4人が潜んでいる場所は彼らから丸見えだ。出れば、すぐに見つかってしまう。

 

「…戦えば倒せるだろうけど、騒ぎを聞きつけた他のフォールンが来るかもしれないからなぁ」

 

キリトの言う通り、衛兵を倒すのは難しい事ではない。だが、彼らが救援を求めようと大声を上げれば、大軍に囲まれて終わりだ。ライトも戦闘をするのは得策ではないと思い、瞬きで肯定を示した。それを見たキリトは、考える素振りを見せて口を開いた。

 

「…古典的だけど、やってみるか」

 

彼はそう言うと、近くの地面に落ちている小石を拾って木箱に投げつけた。『かたん!』と音が響いた瞬間、衛兵達の視線がその場所に向かった。その隙に、4人は音を立てずに素早く左側の木箱の影に移動した。

 

もし、鎧を装備したプレイヤーが居れば、動いた時の音でバレていたが、全員が軽装だった為、その心配は必要なかった。キリトが木箱の裏から正面を覗き込むと、衛兵は扉の前で仁王立ちしていた。気付かれなかったと安心し、積まれている沢山の木箱に近付いて手を伸ばした。

 

「さぁ〜て、何が入ってるかな?」

 

上に乗っていない木箱に狙いを定め、キリトは蓋を開けた。しかし、4人が中身を覗いた瞬間、彼らは顔を見合わせた。

 

「「「「…………」」」」

 

4人がそんな反応を示すのも無理はない。何故なら、彼らが覗く木箱の中身には何も入っていないからだ。

 

「……何も、入ってない?」

「あんなに大事に抱えてたのに、どうして…」

 

ユウキとアスナが小さな声で呟いた。不審に思ったライトは音を立てずに移動し、上に積まれていない他の木箱に近付き、蓋を開けて中身を見た。だが、中は同じく空っぽだった。

 

明らかにおかしい状況下で、ライトは思考を巡らせる。フォールンは水運ギルドと通じて、これらの箱を受け取った。どのようにして接触したかは不明だが、これは間違いない。しかし、大金を出してまで受け取った箱の中身が空っぽである筈がない。

 

そして、全ての箱の中身を出してしまったとも考えにくい。これだけの量を短時間で箱から出し、別の場所に移動させる事は、如何にフォールンエルフでも無理だ。

 

「あんな大金を払ってたのに、中身が空っぽだと…」

「どういう事だ?」

 

完全に状況を把握しかねている2人は、そう呟くしかなかった。その時、奥から扉の鍵が開く、『カチ!』という音が響いた。恐らく、誰かが扉の鍵を開けたのだろう。

 

今なら奥の様子を確認できると思われたが、数十人が近付いて来る足音が聞こえた。このまま木箱の影に隠れ続けるか、それとも空の木箱の中に入って隠れるか迷っていると、キリトが小さく囁いて言った。

 

「木箱の中に隠れるぞ!」

 

彼はそう言うと、近くに居たアスナの背中を押して、蓋が開いている木箱の中に入った。ライトもユウキを先に木箱の中に入れて、自分も中に飛び込んだ。

 

「ええぇ!?」

「ユウキ、大きな声を出すな!」(小声)

「だ、だってえぇ!」(小声)

 

ライトまで一緒に入ってくるとは思わなかったユウキは、驚いて声を出してしまった。ライトは小声で注意すると、右手で蓋を数cm残して閉めた。すると、足音だけでなく数人の話し声も聞こえてきた。

 

「…来るぞ」(小声)

 

そのタイミングで扉が開かれ、左側から何人かの人影が現れた。集団の先頭に立つのは、体格の良いフォールンエルフだった。両手に革手袋を嵌め、大型のハンマーを携える彼が気になり、ライトは視線をフォーカスした。

 

カラー・カーソルには【Eddhu:Fallen Elven Foreman】と表示されていた。最後の単語の意味は分からないが、恐らくエドゥーと呼ぶのだろう大男は、ライト達が隠れる木箱から5mほど離れた場所で止まり、後ろに立つ者達に呼びかける。

 

「今日の荷揚げで、予定の量は全て揃いました」

 

一体何が揃ったと言うのか、完全に状況を把握しかねているライトは、耳を澄ませて会話の続きを待つ。

 

「うむ。まずはご苦労だった」

 

すると、今度は全く別の氷のように感情が読み取れない声が届いた。ライトがその声の主に目線を向けると、そこには金属と革で出来た複合鎧、2本の角が伸びた黒い覆面を装備し、その下に濃く赤い両眼が瞬くフォールンエルフが立っていた。

 

「だが、組み上げの方は少し遅れているようだな?」

 

そのフォールンエルフは、更に硬さが増した声で大男エドゥーに言葉を掛けた。それを聞いた彼は、跪いて頭を下げた。

 

「申し訳ありません、閣下。遅れは3日後に解消する予定です!」

「ふむ。ならば、計画通り5日後には全て完成するのだな?」

 

彼らが一体何を企んでいるのか分からないが、5日後に何かが完成するのは間違いない。ライトはエドゥーと話すフォールンエルフに視線を移してフォーカスする。

 

途端、彼は鋭く息を呑んだ。いや、彼だけでなく、一緒に隠れているユウキも、ビクッと体を震わせて彼のコートを軽く握った。モンスターのレベルの高さは、カーソルの色が薄いか濃いかで表されている。薄い赤から濃い赤までだが、彼らの瞳に映るフォールンのカーソルは《漆黒》だった。

 

4人の中で最もレベルが高いライトですら、そう見えているのだ。真正面から挑めば、まず勝てないだろう。すると、ライトはカーソルの下部に目を通した。【N,ltzahh:Fallen Elven General】と表示されていた。

 

「はっ、我が命に代えても必ず、ノルツァー閣下」

「良かろう。頼んだぞ、エドゥーよ」

 

フォールンエルフの将軍、ノルツァーはエドゥーの肩を軽く叩くと、身に纏うマントを翻して歩き出した。しかも、その方向は4人が隠れている場所だった。箱の蓋を小さく開けていたライトは、ゆっくり閉めた。

 

ノルツァーが近付く足音がだんだんと大きくなる。すると、唐突にその音が止まり、今度は声が聞こえてきた。

 

「…それにしても、実に滑稽極まる話だな。遙か古の時代に聖大樹の恩寵を断たれた我らが、未だにエルフ族の禁句に縛られているとは」

「は……下らぬ禁句さえなければ、これらの資材を集めるのに、薄汚い人族どもと取り引きなどせずに済んだのですが…」

 

ノルツァーの言葉に応じたのは、甘く鋭さが合わさった女性の声だった。

 

「言っても詮無い事だ、カイサラ。今は金貨など幾らでも払ってやれば良い。我らが全ての秘鍵を手に入れ、聖堂の扉を開いたその暁には、人族に残された最大の魔法さえもが跡形もなく消え去るのだからな」

「っ!?」

 

ノルツァーが言った言葉に、ライトは耳を疑った。そもそもこの世界には、魔法などと呼ばれるスキルは実装されていない。そして、それはモンスターやNPCも同様だ。例外は存在するが、基本的には物理攻撃しかない筈だ。

 

「その通りです、閣下。大願成就の時は、刻一刻と近付いています!」

「うむ。まずは特務隊司令官が取り零した第1の秘鍵を、急ぎ奪還せねばならん。5日後、全ての準備が整い次第、作戦を開始する。諸君らの働きに、大いに期待しているぞ!」

「「「「「はっ!」」」」」

 

ノルツァーの言葉に数十人が力強い声を発すると、足音は段々と遠ざかっていった。大扉が閉まると、ライトは右手で軽く蓋を押し開けて、外の様子を慎重に窺う。周りに誰も居ない事を確認した彼は、再び箱の扉を閉めると考え始めた。

 

「(奴らは予定の量は全て揃ったと言った。だが、ここにあるのは《空の木箱》だけ……一体どういう意味だ? 中身を全て持ち出したとは考えにくい)」

「…ライト」

「(それに、あのノルツァーが言っていた、《人族に残された最大の魔法》とは…何なんだ?)」

「ライト!」

「っ!?」

 

ライトが内心で考え続けていると、ユウキが小さな声で呼びかけている事に気付いた。

 

「ど、どうした?」

「……左手、早くどけてよ」

「はっ?……っ!!?」

 

彼女にそう言われたライトは、訳が分からず視線を左手に向けた。その瞬間、彼は驚きの余り目を見開いた。ライトの左手がユウキが装備する新調したブレストプレートと《柔らかい丘》の間に挟まっていたのだ。

 

完全に思考停止状態に陥ったが、このまま放って置く訳にはいかない。急いで左手を抜こうと動かすが、スペースが狭い為、上手く抜け出す事が出来ない。更に、無理に動かすとムニムニと柔らかい感触がはっきりと伝わるのだ。

 

「ちょっ////……ライト、乱暴に動かさないでよ!」

「す、すまない!」

 

ユウキは顔を真っ赤に染めて言う。ライトは速やかに左手を抜こうと、今度は慎重に試みる。

 

左手を軽く折り畳み、小さな隙間を作って抜け出せたが、雰囲気はかなり気まずい。未だに顔を真っ赤に染めて、軽く睨むユウキの視線を感じながら、ライトは右手で蓋を開けた。辺りにフォールンエルフの姿は見当たらず、ライトは先に木箱の蓋を開けていたキリトに視線を移した。

 

互いに小さく頷くと、彼は蓋を持ち上げたまま、ユウキを最初に外に出した。そして、最後に自分が出て木箱の蓋をゆっくり閉め、キリトとアスナに合流する。すると、キリトをレーザーの如き鋭さで睨んでいたアスナが、途端に真剣な口調で話し出した。

 

「あの人達が言ってた《資材》が何なのか、突き止める必要があるわね? 多分、まだ開けてない他の箱の中に…」

「だよね。これだけ沢山の木箱があるんだから、もう全部を出しちゃったって事はないと思う」

 

彼女に次いで、ユウキも同意した。まだ蓋を開けていない木箱は沢山あるので、そのどれかに中身が入っている筈だ。だが、ライトは別の事を考えていた。

 

衛兵が立つ扉の奥から聞こえる槌音と、ノルツァーがエドゥーと呼んでいた大男に、彼が持っていた金槌についてだ。あの金槌は武器に使えないとは思わないが、どちらかと言えば何かを作る為の道具に思える。すると、今まで黙っていたキリトが小さく呟いた。

 

「なぁ、あのエドゥーっていうオッサンの職の、《フォアマン》って分かるか?」

 

その問いに対して、アスナが平然と答えた。

 

「えぇ。《親方》とか《工場長》とか《職人頭》とか、そんな意味よ」

「アスナ、良く覚えてるね?」

 

心底、感心した声で言うユウキに、アスナは得意げな顔で微笑む。すると、それを聞いたライトは自分の推測が間違っていなかったと確信した。

 

目の前に置かれた大量の木箱、エドゥーという大男が持っていた金槌と《フォアマン》という単語の意味。そして、扉から聞こえ続ける槌音が、彼らが何をしようとしているのかを教えてくれた。

 

「そういう事、か」

「お前も気付いたみたいだな、ライト?」

 

どうやらキリトも、既に察しが付いていたようだ。フォールンエルフは大量の船を造る為に、水運ギルドと取引をして、必要な木材を調達したという事だ。その理由としては、ノルツァーとカイサラという女性が言っていた《全てのエルフは生きている木を切れない》からだろう。

 

しかし、禁句を持たない者なら、木材は幾らでも手に入る。フォールンエルフはそれを利用したのだ。しかし、ここで新たな疑問が沸き起こる。

 

「だが、一体何の為にだ?」

「確かに。ここまで用意する必要があったのか?」

 

フォールンエルフ達が数多くの船を造ろうとしている事は、まず間違いない。問題は一体何の為にと、何故ここまで大量の木箱を要求したかだ。

 

「ちょっと! 2人だけで納得してないで説明しなさいよ!?」

「何か分かったんだよね!?」

 

勝手に話を進めている事に、アスナは不満そうに呟き、ユウキは2人が掴んだ内容を教えるよう頼む。そんな彼女達に、キリトが思考を中断して伝える。

 

「悪い。話が長くなりそうだから、まずはここを出てからにしよう?」

「そうだな。奴らがまた戻って来ないとも限らない!」

 

それを聞いたアスナとユウキは、どこか納得いかない様子で同時に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

一行はもう1回小石を投げて、衛兵の気を逸らすと、元の道へと慎重に戻った。水路ダンジョンの船着き場に辿り着き、耐久値が限界に達していた《アルギロの薄布》を取り払って折り畳み、アイテムストレージに収納すると、見つかる前に急いで出航した。

 

出口を目指す途中で、何度かモンスターとエンカウントしたが、ティルネル号とキズメル号に取り付けた衝角で蹴散らし、脱出に成功した。すると、そのタイミングでクエストログが更新された効果音が鳴り響いた。

 

「クエストログが更新された?」

「あぁ、みたいだな!」

 

少年達は、素早くウインドウを開いて最新の情報をチェックする。そこには【手に入れた情報を、しかるべき相手に伝えろ】となっていた。それぞれの画面を、前方を警戒しながらアスナとユウキが見て口を開いた。

 

「しかるべき相手って、誰の事かな?」

「私達の船を造ってくれた、ロモロさんじゃないかしら?」

 

水路ダンジョンで突き止めた事を誰に報告するかに付いて、アスナがロモロ老人の名前を挙げた。しかし、それに対してキリトが答えた。

 

「でも、今までの指示だと、じっちゃんの事は《船匠》って書いてあったしな」

 

ウインドウには《しかるべき相手》とだけあって、《船匠》とは一言も書かれていない。文面に何かヒントが隠されていないか確認するライトだが、それらしいものは見つけられなかった。

 

「一先ず、《圏内》に戻ろう。話はそれからだ!」

「だな。それじゃ、行きますか」

 

水路ダンジョンから脱出は出来たが、ここはまだ《圏外》だ。時間が経てば、そのうち出現するだろう。落ち着いて話し合う為にも、まずは主街区に戻った方が賢明だ。アスナとユウキも特に反対せず、直後にある提案をしてきた。

 

「そうだ。宿だけど、場所を変えない? また船着き場でトラブルが起きるのはイヤだわ」

「ボクも賛成。あそこじゃ、ボク達の船が目立っちゃうもんね?」

 

転移門近くの宿の船着き場に停めれば、前回のDKBとALSの言い争いと似たトラブルが起きる可能性が非常に高いと思われる。アスナの案に速攻でユウキが賛成し、キリトとライトも反対する事なく首を縦に振った。そして、2人は船尾に立ち、櫂を握って船を漕ぎ始めた。

 

そんな中、後方のギズメル号を漕ぐライトは、ある事を考えていた。新たに追加された《昔日の船匠》クエストの情報を2大ギルドに提供する事は勿論だが、この水路ダンジョンも攻略本に載せるかについてだ。下手にダンジョンに侵入し、漆黒のカーソルを示すノルツァーと遭遇すれば、ギルド自体が全滅する恐れがある。

 

「(…キリトやアルゴと相談するしかないな)」

 

心の奥底で呟いたライトは、ティルネル号の後を追って、キズメル号の櫂を漕ぎ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4人が新たに選んだのは、南西エリアの片隅にある小さな宿だった。近くの船着き場に停泊させると、2つ部屋を借りて今後の相談の為に片方の部屋に集まる事になった。扉を開けて部屋に入ると、アスナとユウキはベッドに倒れ込み、キリトとライトはソファに座り込んだ。

 

長時間に渡って気を張っていた所為もあり、4人ともかなり疲弊している様子だ。そんな時、ライトはフォールンエルフ達の会話について思い返していた。

 

彼らは水運ギルドに取引を持ちかけ、船の材料である木材を金貨と引き換えに受け取った。しかし、何故あんなにも大量に要求したのかが分からない。これからクエストを進める過程で、何か大きな展開が待ち受けているのだろうかと考えられる。

 

「(考えられるとすれば、《エルフ戦争キャンペーン・クエスト》に繋がっている可能性だが、このシナリオ自体がβ版に存在しないと、キリトが言っていたし……完全に情報が不足してるな)」

 

ウインドウを開いて操作し、武器と防具をストレージに収納しながら思考を巡らせたが、やはりヒントが少ない為、何が起きるのか分からない。更に、クエストログに書かれていた《しかるべき相手》も誰なのかを突き止める必要がある。すると、ソファに背中を預けていたキリトが、本題を切り出した。

 

「…それじゃ、例の木箱の件から話し合うか?」

「そうしよう!」

 

隣に座るライトはすぐに頷いたが、横になっているアスナとユウキの反応がない。不思議に思った2人は、立ち上がって様子を確認すると、2人はお互いに向かい合う形で、小さな寝息を立てていた。かなりの疲労が溜まって、それが限界に達したのだろう。そう思ったライトは、キリトに声を掛けた。

 

「ミーティングはまた後にするか?」

「だな!」

 

2人は物音を立てずに立ち上がると、部屋を後にした。

 




オリ主も、ラッキースケベって感じです。

因みに、ユウキさんのバストは原作より少し大きめの設定にしています。

《泡影のバルカローレ》も残すところ、僅かになってきました。残り、4話ぐらいですね。
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