SAO another story   作:シニアリー

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お久しぶりです。予定が詰まって、全く書く余裕がありませんでした。

タイトル通り、水上での戦となります。

カレオス・オーの猛攻を、リュースラの騎士とライト達は退けられるか!?


湖上での戦い

 

「ライト、右から来たよ!」

「くっ!」

 

ユウキからの指示に、ライトはキズメル号を操舵し、スピードを加速させて右側から迫り来る森エルフのゴンドラを躱した。そして、櫂を操舵してターンに成功すると、森エルフの背後から全力で漕ぎ進める。

 

背後を取られた敵のゴンドラは、旋回して逆に背後を取ろうとする。しかし、キズメル号は小舟で小回りが利く為、ライトは己の筋力値をフル活用し、旋回しようとした奴らのゴンドラに、真横から突っ込んだ。

 

「ユウキ、突っ込むぞ!」

「オッケー!」

 

 

ズバアァァン!!

 

 

キズメル号に取り付けた衝角が、ゴンドラの腹の部分を捉え、見事撃沈に成功した。敵の船が半壊した事で、大量の水飛沫が舞い上がる。しかし、装備が濡れようとも即座に乾くので、ライトは引き続き船を操舵する。

 

ライト達の予想通り、森エルフの軍勢は大量の船を造り、第1と第2の秘鍵が保管されている《ヨフェル城》に攻め込んできた。だが、敵船の数は10人乗りが16隻に対して、黒エルフの船の数はたったの9隻。まさか、2倍近くの数で攻め込んでくるとは、ライトは油断してしまった事に内心で舌打ちをした。

 

「ライト、左前の船が背中を向けてるよ!」

「分かった、行くぞ!」

 

船首から戦場の状況を見極めるユウキから、的確な指示が届く事でライトが操舵を開始する。離れた場所では、ティルネル号に乗るキリト、アスナ、キズメルが戦っている。だが、味方のゴンドラの数が少ない為、目算だけで見れば、森エルフが12〜13隻、黒エルフが6〜7隻だろうか。

 

「(迷うな。今は敵の船の数を削ぐ事が重要だ!)」

 

己にそう言い聞かせたライトは、左前の敵船にスピードを上げて突っ込む。勿論、ただ単に近付いただけでは、普通に見つかってしまう。そこで、キズメル号とティルネル号は水路ダンジョンで入手した《アルギロの薄布》を被る事で、姿を隠して奇襲を仕掛けているのだ。

 

「ユウキ、捕まれ!」

「うん!」

 

そのタイミングで、キズメル号は油断していた森エルフのゴンドラの背後から突撃した。不意を突き、撃沈に成功したのを確認したライトは、すぐに周囲を警戒した。狩りを終えて油断した獲物は、1番に狩りやすい獲物と言われる。すると案の定、やはり背後から森エルフが奇襲を狙っていた。

 

「ちっ!」

 

ライトは急いで櫂を操舵し、キズメル号を旋回させる。しかし、背後を取るなど容易に許してくれる筈もなく、敵船も先回りしようとする

 

 

 

ーーーその時

 

 

「おおおっ!!」

 

後方から聞き覚える声が届いた。それと同時に、船が何かに激突した轟音が響いた。そちらに目を向けると、キリトとアスナ、キズメルが乗るティルネル号が視界に入った。

 

「ユウキ、ライト君、大丈夫?」

「ありがとう。アスナ、キズメル、キリト!」

「助かった。生き残ってる船は何隻だ?」

「味方が6隻、敵が12隻だ!」

 

ライトの質問にキズメルが即座に答える。その返答に、ライトはまたも舌打ちをしたい衝動に駆られた。敵船の数も減っているが、同時に味方である黒エルフのゴンドラも減っている。少なくとも、キズメル号とティルネル号で2隻は撃沈させる必要がある。

 

更に、キズメルが恐れていた事に、黒エルフ達の練度や士気が森エルフより劣っているのだ。併走で白兵戦となっている船も存在するが、黒エルフの方が斬られている人数が多い。

 

「カレオス・オーの勇敢なる兵士達よ!」

 

すると、湖全体に響き渡る怒号が届いた。敵の旗艦の中央に立つ指揮官らしき大柄な森エルフの騎士が、右手に持つ剣を掲げて、あらん限りの声で再び叫んだ。

 

「卑劣なダークエルフどもを、海の藻屑と変えてやれ! 奴らは人族と手を組んで、我らの城を落とす為の船を造っていたのだ。幸い、その企みは敗れ、船は我らの物となった。この機を逃してはならぬ!」

 

その言葉に、ライトは引っかかりを覚えた。そもそも、森エルフ達が攻め込んでくると知ったのは、3日前のライト達からの情報のお陰だ。それまで、黒エルフは何も知らなかった事になる。その出鱈目な情報は一体どこから耳にしたのだと、ライトは深い思考に陥りそうになったが、今はそんな事を考えている場合ではない。

 

「兎に角、敵船の数を削ぐ。キリト、アスナ、キズメル、右斜め前の船を頼む。オレ達は左だ!」

「「「「了解!」」」」

 

正面は黒エルフと森エルフの船が白兵戦を繰り広げているが、敵の方が数が多い為、迂回して城を目指そうとしている。ライトが下した指示に4人は即座に頷くと、別れて向かった。しかし、奇襲を仕掛けようにも、敵軍の数は圧倒的に多い為、常に四方を仲間がカバーしている。

 

そして、直撃を防ぐ為に櫂を操舵し、左右に旋回しようとする。ライトはその中の、右に曲がった2隻のうちの1つに狙いを定め、何秒後に敵の船が来ると思われる場所を先読みする。

 

「ここだ!」

 

そのタイミングで、ライトはキズメル号を急旋回させて、森エルフのゴンドラに突撃した。敵船に乗る森エルフが槍で攻撃を放つが、ユウキがそれを許さず、2連撃ソードスキル《ホリゾンタル・アーク》でなぎ払った。そして、そのタイミングでキズメル号の衝角が、敵船の後方部を貫いた。

 

「うわあぁぁ!!?」

「ユウキ、大丈夫か?」

「うん、全然大丈夫だよ!」

 

衝撃で前のめりに倒れてしまったユウキに、ライトが急いで声を掛ける。バランスは崩したが、キズメル号の船に捕まる事で海に落ちずに済んだようだ。残りの右に旋回した1隻の船に狙いを定めようとした

 

 

 

 

ーーーその時だった。

 

 

 

「あの小舟を挟んで、動きを封じろ!」

 

左に旋回した1隻の船に乗る部隊司令官らしき男がそう指示し、キズメル号を挟もうと2隻の船が至近距離まで迫って来た。

 

挟まれれば不味いと判断し、ライトは櫂を操舵して行動を開始した。しかし、敵も見逃してくれる筈がなく、両側から挟もうと接近してくる。同時に、船に乗る兵士達もそれぞれの武器を構えて、乗り移ろうとしているのが分かる。

 

「ライト、右の船をお願い。ボクは左を!」

「頼むぞ!」

 

乗り移られるのは避けたいと思っていたユウキが、愛剣である《リュナイト・ソード》を構えながら櫂を握るライトに言う。彼は応答すると、一先ず櫂を船尾に置いて、背中に吊るす《アニール・ブレード》を引き抜いた。そして、ジャンプで飛ぶ移れる距離に敵船が達すると、2人は同時に左右の船に飛び乗った。

 

「ダークエルフと協力した浅ましい人族めぇ!!」

 

飛び移ろうとするライトに目掛けて、長槍を持った森エルフが突きを放つ。しかし、ライトはその攻撃を横薙ぎで弾いて上段から斬りかかる。

 

「クッ!」

 

その斬撃を森エルフは何とか受け止めたが、次の瞬間には腹部を強烈な衝撃が襲っていた。ライトが右足の前蹴りを鳩尾に炸裂させたのだ。

 

「グハァッ!?」

 

それを受けた森エルフは蹴り飛ばされ、湖に落ちてしまった。ライトはその後も、向かってくる敵の攻撃を避けたと同時にカウンターを与える攻防一体の剣技を放つ。今は少しでも早く、敵の数を削ぐ事が重要な為、リスクを承知で攻撃を仕掛ける。

 

「ふん!」

「ガアァァ!!?」

 

拳や蹴りで、間合いに入ってきた敵の主に武器を持つ腕を攻撃し、怯んだ隙に斬撃を放つ。そして、全員を湖に叩き落したのを確認すると、ライトは急いでキズメル号に戻る。すると、ユウキもタイミング良く戻ってきた。

 

「大丈夫だな?」

「うん。速く次に行こう!」

 

ライトは頷くと、櫂を握りしめて再び操舵を開始する。すると、黒エルフ船体の中央に位置する指揮官が、2人に向けてシミターを振りかざし怒鳴った。

 

「おい、そこの小舟! ぐずぐずしてないで、敵の別働隊を止めろ!」

「な、何だよその言い方!?」

 

ユウキが怒りを見せるのも当然だ。戦闘前から散々嫌味を言ってきた指揮官が、この後に及んで『宛にしていない!』と言っていた自分達に指示を出すとは、実に滑稽極まる事だが、今はどうでもいい事だ。

 

まずは迂回して、城に侵入しようとする敵船を止める事が重要だ。戦況を見渡せば、敵船がかなり減少していた。これなら、どうにか城に侵入させずに、秘鍵を守り切る事が出来る筈だ。

 

「ユウキ、敵の指揮官の船を叩く。オレ達の姿は見ない筈だからな!」

「そうだね、この布の効果なら出来るよ!」

 

彼の言葉にユウキは即座に頷いた。それを確認し、ライトは慎重に櫂を操舵して敵船の旗艦を狙い定める。《アルギロの薄布》のHPも残り少ない状態な為、もたもたしている場合ではない。ライトが櫂を漕ぎ始めて、暫くした

 

 

 

ーーーその時

 

 

「っ…ライト!?」

「まさか、気付かれたか!?」

 

森エルフの指揮官が右手に持つロングソードを高々と掲げたのだ。気付かれたと思った2人は体を強張らせるが、森エルフの指揮官は潜伏するキズメル号とは、全く違う方向に剣を振り下ろした。

 

「今だ、1号船、2号船、突撃開始! 5号船、6号船、道を開けろ!!」

「っ…くそっ!!」

 

その指揮を聞いたライトは、思わず悪態をついた。急いで櫂を操舵するが、白兵戦を演じていた湖の中央の敵船が左右に別れた。現れたのは無防備な横腹を晒す黒エルフのゴンドラだった。そして、そこに向かって敵船2隻が突撃を開始した。

 

「ライト、ヤバイよ!!!」

「ちっ!」

 

ライトは櫂を漕ぐが、距離が離れすぎている余りにも離れすぎている。そして、森エルフの旗艦に搭載されている衝角が、黒エルフの旗艦の横腹を轟音を上げて貫いた。次いで、2号船も別の黒エルフの旗艦を貫き、沈没させられてしまった。

 

「おのれえぇぇぇ!!?」

 

黒エルフの指揮官が怨嗟の声が上げながら湖に呑まれていった。2隻の船を貫いた森エルフの旗艦を阻む物は、既に何も無くなってしまった。桟橋に上げてしまうのも時間の問題だと判断したライトは旋回して、敵が比較的少ない場所から城の桟橋を目指した。

 

「ユウキ、桟橋に行くぞ! このクエストは、まだ終わってない!」

「オッケー!!」

 

このままでは、まず間違いなく森エルフを桟橋上陸を許してしまう。その時点で、クエストは失敗してしまったと思っていたが、後方では黒エルフ達が森エルフの侵入を懸命に防いでいる。つまり、まだ何かこの状況を打開する鍵が残されている可能性が高い。

 

それを胸の内に、ライトは全力で櫂を漕いでヨフェル城の桟橋を目指す。すると、敵の旗艦が突き破った間隙を、ギリギリのタイミングで抜けて桟橋を目指すティルネル号が見えた。ライトは前進しながらティルネル号に近付く。

 

「アスナ、キズメル、キリト!」

「ユウキ、無事で良かった。ライト君も!」

「すまない、敵の突破を許してしまった!」

「悔やむのは後だ。急いで桟橋に向かうぞ!」

「そうだ。もたもたしてる時間はない!」

 

アスナは2人の安否を確認してホッとし、キズメルは敵艦の突破を許してしまった事を悔やんでいた。そんな彼女にライトとキリトが激励を飛ばす。キズメルもそれは分かっているようで、しっかりと頷いた。ティルネル号とキズメル号は並行して、桟橋へと向かう。敵船は既に桟橋に到着し、20名程が船から降りて立っている。

 

「ライト、アスナ、ユウキ、キズメル、森エルフ達の前に割り込むぞ!」

「分かってる!」

「了解!」

「任して!」

「お前に任せる!」

 

2つのゴンドラは前進中の森エルフを追い抜き、左右に停泊させると飛び乗るように、5人が桟橋に立った。

 




本当はこの回で完結させる予定でしたが、そうするとかなり長くなると判断して、2回に分けました。

次回は、いよいよ最終回です。泡影のバルカローレも長かったです。そして、やっと《冥き夕闇のスケルツォ》に辿り着けます。

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