SAO another story   作:シニアリー

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お久しぶりです。

投稿しようと思っていたのですが、ずるずると先送りしてしまいました。

予告していた通り、PK集団の思惑を阻止しようと、ライト達はDKBとALSの彼らに近付く為、行動を開始します。




接触

 

青空のような次層の底、緑に染まった芝生に、それらを揺らす優しい微風。そんな場所に腰掛ける少年が居た。紺色のロングコートを羽織り、長い茶髪と緋色の瞳を宿した少年、ライトだ。

 

のどかな風景を眺める彼の隣から、不意に囁き声が聞こえた。

 

「大晦日、か」

「っ…どうかしたか?」

 

少し離れた場所で寝ている黒髪の少年、キリトの囁きが聞こえ、どうしたかと声を掛ける。

 

「いや、向こうでの事を思い出してな」

「…現実世界の事か?」

「あぁ。毎年この時期にやる事があったから、つい思い出してな」

 

それを聞いたライトだが、現実世界の事は余り考えたくなかった。思い出しても、良い思い出なんてない。家族と過ごす時間だけが、彼にとって唯一の安心できる時間だった。そして、それ以外の事は正直、どうでも良いとさえ考えていた。だからこそ、この仮想世界という場所は彼にとって、《理想の世界》だった。

 

ゲームマスター茅場 晶彦によって、デスゲームに変貌されてしまった今、彼の心に帰りたい気持ちがない訳ではない。だが、この世界で強くなって生きる事に、彼は魅了されていた。《剣士ライト》として、この浮遊城を冒険していくのだと。

 

キリトと共に、はじまりの街から出た理由の幾つかには、そんな想いが含まれていた。しかし、《それら》だけが戦う理由でない事を、ライトは既に理解していた。

 

 

 

 

 

2日前、アルゴにメッセージが届かなかった事に不信を抱いた彼は、キリトと共に彼女の捜索を開始した。日中では足を踏み入れなかった地下2階を進み、最下層へ降りて歩き始めた直後だった。突然、アスナのHPバーが少量だけ減少したのだ。そして、その数秒後、今度はユウキのHPバーが減少した。

 

《ブリンク&ブリンク》の部屋で眠っていると思っていた為、キリトとライトの間に動揺が走った。そこから、キリトの推測でアスナは地下墓地で唯一のトラップに嵌ったと教えられた。

 

勿論、ユウキも落とし穴に落ちたと考えたが、彼女のHPバーの減少は、アスナに起こってから僅かにタイムラグがあった。そこから、ユウキは落とし穴に落ちたのではなく、その部屋から出現したレイスに攻撃されたと仮定した。

 

2人は即座に行動に移し、アスナの方にはキリトが向かい、ライトは2階に続く階段を駆け上がって、地下2階のどこかに居るかもしれないユウキを探した。落とし穴がある部屋の位置は知っていた為、そこまで全速力で戻った。道中にポップするmobを斬り伏せ、トラップ部屋の近くに来た時、甲高い金属音が届いた。

 

それと同時に、ユウキのHPが再び減少を始めた。自分でも驚く程に焦りを覚えたライトは、発生源へ急いだ。そして、薄暗い通路の奥から目にした光景に、無意識に剣を肩に担ぎ《ソニック・リープ》を発動させた。

 

2人組のプレイヤーが剣を振りかぶり、倒れているユウキを斬ろうとしていたからだ。

 

彼女を殺そうとした男は、かつて3層の森で自分を殺そうと企んでいた《ローテム》だった。そして、奴の隣に立つ左利きの片手剣使いもPK集団の一味だと分かった。殺されそうになったユウキは、とても戦える様子ではなかったが、2人がかりでも問題ないと考えていた。

 

そして、斬りかかろうとした刹那、通路の奥から幾つもの足音が響いた。思わず目を向けると、多数のモンスターを引き連れて走るPK集団の一味《モルテ》の姿が見えた。

 

対峙するローテムと片手剣使いが、そちらに意識が向いている事に遅まきながら気付き、ユウキを抱えて一目散に立ち去った。流石にモンスターに追われている状況では、こちらの追跡は出来なかったのだろう。そのままローテム達は姿を消した。

 

全ての危険が去り、ユウキを抱き締めるライトの心には、ただただ安堵感だけが残っていた。自分がこの世界で戦う理由は、強くなり生き残る事だけな筈だった。

 

 

だが、それだけでは無かった。

 

 

これまでも、自分の命よりユウキのを優先させた事は何度かあった。1番に思い出すのは、第2層で現れた真のボス《アステリオス・ザ・トーラスキング》が放ったブレスから身を呈して守った時の事だ。正しくあれは自殺行為だが、それでも躊躇なくユウキの元へ走った。

 

ライトはユウキに、死んで欲しくなかったのだ。そして、彼はそれを既に自覚していた。そんな事を考えていると、後方から聞き慣れた声が届いた。

 

「ライト、キリト!」

「「っ!」」

 

振り向くと、シヤーヤ村の丘を登るユウキとアスナが見えた。2人はキリトとライトの間に入ってちょこんと座る。お風呂に入っていた為、2人の髪は少し濡れていたが、この世界ではすぐに乾くので気にする必要はない。

 

「アルゴはどうした?」

 

一緒に入っていたアルゴの姿が見えず、気になったライトが訊ねた。

 

「一旦、マナナレナの村に戻るって言ってたよ。キー坊とラー坊によろしくって」

 

ユウキが答えて少し経った後、視界左端にあったアルゴのHPバーが消滅した。彼女が村を後にして、パーティーから離脱したのだ。

 

「随分と長風呂だったけど、どんな話をしてたんだ? 所謂、ガールズトーク的なやつだったりして?」

「お、女の子同士の話を知りたがるもんじゃないわよ!」

 

キリトからの質問に、アスナは顔を赤くして早口に答えた。そして、膝を抱えて思い出すような口調で、少年達に伝えた。

 

「ちょっと、アルゴさんとデュエルをしてたの」

「……へ?」「……は?」

 

予想外な返答が飛び出し、少年達は意味が分からず声を上げる。ライトは一緒に入っていたユウキに目を向けたが、彼女が頷いた事から本当だと分かった。まだ戸惑っている様子のキリトは、おずおずと訊ねた。

 

「…お、お風呂で?」

「うん!」

「…ノ、ノー装備で?」

「水着で……って、そんな事は良いのよ!後、変な妄想しないでね!」

「はい…」

 

アスナのジトッとした目付きと言葉に、キリトは素直に頷いた。そんなやり取りを横目に、ライトはお風呂でのデュエルが少し気になり、ユウキに声を掛けた。

 

「…ユウキもデュエルをしたのか?」

「うん、アスナの次にやったよ!」

「そうか……それで、どうだった?」

「とっても良い経験になったよ! まぁ、デュエル申請した訳じゃないから、お風呂に浮かんでたハーブの束やバナナを武器の代わりに使ったチャンバラだったね」

 

最後の方は、苦笑を浮かべて答えた。本物の武器ではなく、ハーブの束とバナナを代わりに使ったなら、実戦とは言えないだろう。それでも、彼女が良い経験になったと言うなら、それは事実だ。すると、ウインドウを開いて、時刻を確認していたユウキが口を開いた。

 

「ライトとキリトはお風呂どうする? 入るなら、待ってるけど」

「…いや、今日はもう良い」

「俺もまた今度にするよ……それに、そろそろ動かないとな」

 

キリトの言葉に、アスナとユウキは同時に頷く。そして、4人の視線は3km離れた場所に建つ、次層まで続く迷宮区タワーに向けられる。

 

「そうだね。でも……本気なのかな、ALSだけでボス戦をやろうだなんて」

「おいおい、アスナが掴んできた情報だろ?」

「それはそうだけど…」

 

何とも歯切れが悪いが、その気持ちも理解できる。2日前の夜、落とし穴に落ちてユウキと逸れたアスナは、アルゴも掴んでいない重大情報を得ていた。

 

現在の2大ギルド、キバオウが率いるALSとリンドが率いるDKBは、年越しイベントにマナナレナで、合同開催の《カウントダウン・パーティー》を行う予定なのだ。だが、ALSはそのパーティーに参加せず、抜け駆けで第5層フロアボスを攻略しようとしていた。何故そんな事態になったかは不明だが、黙って見過ごせない。アスナの話から察するに、ALSは暗躍するPK集団に扇動されたと考えられる。

 

「(目的は攻略組の壊滅だと思うが、何故ALSはそんな無茶な作戦を決行するんだ?)」

 

ライトが胸中に秘める疑問を口にする。今までのボス戦を思い返すと、容易に倒せた事は一切ない。2つのギルドがいがみ合いながらも協力し、どうにか倒す事が出来た。それを、ALSだけで倒せるとは思えない。ライトがそんな事を考えていると、アスナが唐突に話し出した。

 

「キズメルが居てくれればね」

「えっ…それは何故?」

「決まってるじゃない。私達とキズメルで、先にフロアボスを倒しちゃうのよ。それなら、ALSが抜け駆けする必要もないでしょ?」

「アスナ、それナイスアイデア!」

 

アスナが披露する案にユウキがナイスと言うが、ライトは余りにも無茶な作戦に絶句してしまった。例え、エリートクラスのギズメルが共にボスと戦っていても、5人だけなら負けていた筈だ。そして、その考えを肯定するように、キリトが声のボリュームを上げて言う。

 

「いやいや、幾らギズメルが強くてもそりゃ無理だよ! 4層のヒッポカンプだって、キズメルとヨフィリス子爵が加勢してくれたから勝てたし、5層は区切りのフロアだから、ちょっと強いボスが出てくると思うんだ」

「β時代のボスの姿や特殊攻撃は?」

「古代遺跡の番人っていう設定の超でかいゴーレムだ。特殊攻撃は特に無くて、両手のパンチと両足のストンプだったかな。でも、エリアボスもβと変わってたから、フロアボスもそうなってる可能性が高い!」

 

つまり、β時代よりも強いボスが、この層で待ち構えているかもしれない。それが本当なら、尚更ALSの作戦を見て見ぬ振りは出来ない。下手をすれば全滅の恐れがある上に、成功してもDKBとの間に深い亀裂が走る。

 

「それにしても、ALSはボスクエもやってないのに、アルゴの攻略本なしでフロアボスに挑むなんて…その自信はどこにあるのさ?」

「…オレに聞くなよ」

 

ライトに顔を近付けながら訊ねるユウキだが、当人はそう答えるしか出来ない。彼女がそう思うのも当然で、フロアボスの種類や能力、弱点などのヒントを得られる連続クエストを受ければ、犠牲者を出さずにボスを倒す事も可能だ。だが、ALSはそれに頼らず、ぶっつけ本番で臨むつもりだ。

 

「何故、無謀な作戦を決行するのか……その理由を聞きたいが…」

「…教えてくれるかな?」

 

ユウキが不安そうに囁いた。下手にALSにその事を問いただしても、キバオウや幹部連中が答えるとは思えない。更に、抜け駆け作戦は彼らにとって機密事項の筈な為、迂闊には聞けない。

 

「可能性は低いわね。情報やリソースを均等に分かち合う主義のALSは、真逆の思想を持つDKBの考えに反発したから出来上がった。問題は、私達4人もALSからはDKBよりだって思われてるみたい」

「ええっ!? 俺達がDKBよりって、そんなまさか…」

「…あり得なくはないか」

 

アスナが口にした言葉に、信じられない様子のキリトだが、ライトはその考えに頷いていた。

 

「DKBみたいに、主力のプレイヤーはレア装備で身を固めて、情報もお前からβの知識を得ているしな……そう思われても仕方ない」

 

確かに、4人が纏う装備は殆どがレア物だ。NPCで店売りでもすれば、かなりのコルに換金できる代物だ。ALSから見れば、一部のプレイヤーにリソースを集中させているDKBと似たような存在と思われても仕方ない。

 

「そう…だよね。ALSがそう考えてるなら、内部情報をボク達に教えてくれる訳ない……あっ、ちょっと待って!」

 

ユウキはそこで何かに気付き、再び話し始めた。

 

「今夜のカウントダウン・パーティーって、企画したのDKBの人達だけじゃないよね?」

「…確か、DKBのシヴァタ達が主導してる話だったが、目的が2大ギルドの親睦なら、ALS側に協力者が居ても不思議はないか」

「じゃあ、その人達なら話を聞かせてくれるんじゃないかな?」

 

突然の言葉に、思わず首を傾げる3人だったが、納得した様子でアスナがポンと手を叩いた。

 

「そういう事ね、ユウキ。抜け駆け作戦で共同開催パーティーが中止になろうとしてるなら、同じギルドでも実行してる人達が良く思ってる筈がない。その人達なら、話を聞かせてくれるかもしれないって考えたのね?」

「うん!」

 

アスナの言う通り、企画した当人達にとって、パーティーが開催中止になるのは決して良い気分ではない。それならば、接触して話を聞き出せる可能性は高い。

 

「…確かに、抜け駆け作戦が強硬派のごり押しで決まったなら、穏健派のパーティー企画者は意見を封殺された形で色々言いたい筈…だけど…」

「「だけど何?」」

 

アスナとユウキが訝しそうな顔で続きを求める。ライトもまた、キリトが一体何を思っているのか、視線で先を促す。

 

「考えすぎかもしれないけど、パーティーも作戦の一部だって可能性もあり得るぞ? 共同開催を持ち掛けて主街区に足止めさせておけば、成功する確率は確実に上がる。その場合、逆に警戒されて何も話してくれないだろう」

 

考えられると、ライトは思った。理由は分からないが、ALSが抜け駆けでフロアボス討伐に拘っているなら、確実な方法でDKBを足止めさせておくだろう。もしそうなら、カウントダウン・パーティーもその為の罠だと言える。すると、少しの沈黙の後、少女達の透き通った声が響いた。

 

「私は、ALSがそこまでするとは考えたくない。地下墓地でモルテと会ってた黒マントは、間違いなくPK集団の一味だわ。例え、あいつの扇動を受けたとしても、DKBとの融和を考えてるプレイヤーは居る筈よ!」

「ボクも、アスナと同じように信じたい。ALSの中にもきっと、抜け駆け作戦に反対してて、どうにかしようって考えてるプレイヤーが居るんだって!」

 

最終的な問題は、その人に善意があるかどうかだ。結局のところ、3人が抱いた思想はどれもあり得るのだ。そして、その真実は確かめてみなければ、本当なのか嘘なのかも分からない。

 

「(そして、ここで答えの出ない疑念を考えていても…仕方ない、か)」

 

共同開催パーティーがALSが仕組んだ罠なのか、それとも融和を考える穏健派のイベントなのか。ここに留まっていても、答えは永遠に出ないと悟ったライトは、静かに立ち上がった。

 

「話を聞きに行くぞ、2つのギルドの主催者に……このままここで考え続けても、答えは見つからない。DKBに潜り込もうとしてるPK集団のスパイが介入して来たら、更に厄介な事になる。それに…」

 

ユウキの話から、PK集団はDKBにも潜入しようと企んでいる。今はまだ大丈夫でも、それも時間の問題だ。ライトがそこで話を区切ると、3人は軽く首を傾げる。そんな中、彼の頭にかつての《リーダー》の顔が蘇った。《彼》ならば、こんな場所で油を売ってる暇があるなら、問題解決の為に動くのではと思えてしまう。

 

「このまま何もしなかったら、ディアベルに怒られる」

「…ふっ、そうだな」

「うん!」

「えぇ!」

 

ライトの答えに、3人は笑みを浮かべて立ち上がった。しかし、ALS側の主催者に接触する方法がまだ見つかってない。ユウキが芝生から立ち上がり、スカートに付いた草を払って訊ねた。

 

「でも、どうやってALSの協力者を特定するの?」

「アルゴはフロアボスのクエストに取りかかってるからな……直接聞くしかない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルフの村《シヤーヤ》は自然豊かだったのに対し、マナナレナは古代の鉱石山に築かれた人工的な村という印象だ。ライト達は地面を掘って出来た村の1番大きいレストランを目指していた。

 

階段を下って進むと、賑やかな音楽と香ばしい匂いがしてきた。レストランの窓から中を窺うと、予想通りDKBのプレイヤー達が見えた。恐らくALSは、もっと深い場所のレストランを陣取っていると思われる。

 

「あんなに笑ってるリンドさん、初めて見たかも」

 

ポツリとアスナが呟いた。窓から見ても分かるように、藍色の長髪を束ねたDKBリーダーは、楽しそうに明るく笑っている。

 

「笑い続ける呪いにでもかかったのかな?」

「下らない事言ってる場合じゃないでしょ?」

「へーい…」

 

そんな中、ライトは目的の人物を見つけた。カウントダウン・パーティーの主催者兼DKBの幹部メンバー、シヴァタの姿が店内にあった。

 

「ライト!」

「あぁ。」

 

ユウキも彼の姿を見つけ、ライトに呼びかけた。仲間達から離れて注文している今がチャンスだと思い、ライトはウインドウを開き、インスタント・メッセージを作成して送る。シヴァタはすぐに反応を見せ、手許のメッセージに注目し、さり気なく窓を見やった。4人を一瞥すると、仲間達に声を掛けて外に出る。

 

「…付いて来い」

 

ライト達を視認したシヴァタは、すれ違い様に声を掛けた。4人は少し距離を取って、彼の背中を追う。坂道を少し登ると、とある1つの空き家に入った。念の為、周囲に視線を走らせたライトが、問題はないと判断して中に入り、扉を閉めた

 

 

 

ーーーその時

 

 

「何が目的だ!?」

 

明らかに苛立ちを含んだ声が飛んできた。目をやれば、腕を胸の前で組み、眉毛を吊り上げているシヴァタの姿が見えた。

 

「おい、どんなメッセ送ったんだよ?」

「今夜のカウントダウン・パーティーを企画しているALSのメンバーを教えてくれ……それだけだ」

「それだけであんなに怒るかな?」

「何か碌でもない事書いてない?」

「なら、メッセージの内容を見せようか?」

 

キリトの質問に簡潔に答えるライトだが、ユウキとアスナが小さく囁く。その会話が耳に入り、シヴァタが少し困惑しながら声を掛けた。

 

「…お前達、俺と《あいつ》の事を知ってて接触してきたんじゃないのか?」

 

今度は、ライト達が困惑する番だった。

 

「何の事だ? オレ達が知ってるのは、今夜のパーティーがALSと共同開催という事だけだ」

「っ!?」

 

すると、シヴァタは急にしまったという顔になり、何度か咳払いを繰り返す。ライトが不審に思っていると、アスナはピンっと来た様子で、被っているフードを外した。

 

「大丈夫よシヴァタさん。私達はただ、パーティーが企画された経緯を知りたいの。それ以外は一切詮索しないし、ここで話してくれた事は誰にも漏らさないわ」

「…そんな口約束をどうして信じられる?」

 

シヴァタの警戒を含んだ口調に、アスナは顎に手を置きながら続けた。

 

「私達もパーティーが無事に開催されて欲しいと思ってるし……これは推量だけど、ALSの人から芳しくないメッセージが来てるんじゃない?」

「ど、どうしてそれを!?」

 

シヴァタは目を見開き、驚いた反応を示す。すると、アスナが1歩近付いて、にこやかに話す。

 

「問題解決に協力したいの。だから、話を聞かせてくれない? 出来れば、ALSの人と一緒に!」

 

かなり踏み込むなと、ライトは内心で驚いた。シヴァタはまだ躊躇っている様子だが、低い声で念押しした。

 

「…本当に秘密は守ってもらえるんだろうな?」

「剣に誓うわ!」

 

その一言に、シヴァタの警戒が和らいだと思えば、ウインドウを開いて操作を始めた。だが、先程のやり取りが何なのか、ライトはいまいち分からない。それはキリトも同じで、アスナに助けを求める。

 

「何がどうなってるんだ?」

「…すぐに分かるわよ」

 

しかし、アスナは薄ら笑いを作って、そう答えるだけだった。ライトはユウキはどうなのかと思い、彼女へ顔を向けると、薄々勘付いてる様子だ。

 

それから数分後、唐突にドアからノック音が響いた。シヴァタが入室を許可すると、入ってきたのは全身を鋼の鎧で包み、頭に兜を被った小柄なALSプレイヤーだった。武器は背中にあるロングメイスだが、兜のバイザーから顔は見えない。

 

ライトはキリトの推測を頭の片隅に置きつつ、そのプレイヤーを警戒していた。すると、ALSのプレイヤーはシヴァタに向き直った。

 

「シバ、これはどういう事だ?」

 

その問いに、彼は短髪をガシガシと掻く。

 

「無理に呼び出して悪かった。でも、この4人がパーティーに協力してくれるらしいんだ。それに……フェンサーの方は、気付いてるみたいだ」

 

すると、ALSのプレイヤーはアスナに向き直り、しげしげと眺めた。

 

「本当か? 何で気付いた?」

 

そう問われた彼女は、余裕たっぷりな微笑みを浮かべた。

 

「シヴァタさんの態度を見れば、見え見えだもの!」

 

一体何が見え見えなのかと思わざるを得ないが、沈黙していたALSプレイヤーが、鎧の音を鳴らしてシヴァタに近付く。

 

「だから、シバは顔に出すぎるって言っただろ?」

「ナーヴギアが表情を読み取って変えるんだ、仕方ないだろう?」

「ならお前も密閉ヘルメを被れ!」

「む、無茶言うなよ…」

 

シヴァタとALSプレイヤーのやり取りを、ライトが訝しそうに眺めていると、隣からユウキの納得した囁き声が聞こえてきた。

 

「なるほどねー、アスナってこういう事にほんっと鋭いよね?」

「忘れたの、ユウキ? 私が心理戦のプロだって事を」

 

アスナが不敵な笑みを浮かべて答える。どうやら、少女達は完全に彼らの関係に察しが付いた様子だが、少年達は見当も付かない。今もやり取りを続けるシヴァタとフルプレに、今度はユウキがフードを外して声を掛けた。

 

「2人とも、ボク達は本当に、ただ話を聞きたいだけなんだ。今夜のパーティーもすっごく楽しみにしてるから、ALSで問題が起こってるなら、解決するのに協力したい!」

 

彼女に続く形で、アスナが深く頷いた。フルプレは少女達の真っ直ぐな眼差しに小さく頷き、右手でウインドウを開いて操作を始めた。装備フィギュアを指でフリックすると、鋼色のパーティクルを散らして兜が消えた。途端、キリトだけでなく、ライトも目を見開いた。

 

兜を被っていたのは、オレンジ色がかったロングヘアを後ろで束ね、髪を眉の上で切り揃えた、中々に可愛らしい女性プレイヤーだった。彼女は笑みを浮かべて、声を発した。

 

「信じます。私、アスナさんとユウキさんの事は、尊敬してるから。それに、シバと一生懸命準備したパーティー、絶対に成功させたいし」

 

すると、険しい表情をしていたシヴァタの顔が嘘のように緩んだ。そんな光景を目にしながら、ライトは協力者が女性プレイヤーだった事に内心で驚いていると、横からキリトの叫び声が届いた。

 

「……何でや!?」

 

 




今回はここまでです。

相変わらず、恋愛事情に鋭いアスナさんには見え見えでした。そして、そんな彼女と一緒に過ごしてきたユウキも、その手の話は気になるようです。

では、次回はDKBとALSの2人を交えての《話し合い》です。

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