「…ここがそうなのか、キリト?」
ライトは目の前に映る民家を見ながら、キリトに訊ねた。
はじまりの街から出た2人は、βテスターしか知らない《ホルンカの村》までやって来た。そして、そのまま奥へと入り、目的の民家に辿り着いた。
2人がどうして小さな民家の前に居るかというと、キリトから聞かせれた《クエスト》が関係していた。
「そうだ。ここでクエストの依頼を受けるんだ!」
2人は今、自分達が使っている剣よりも、高性能な武器を手に入れようとしていた。この街にある武器屋で購入する手もあったが、このクエストで手に入る剣は武器屋のよりも性能が高く、3層上の第4層まで使えると聞かされた為、受けに来たのだ。代わりに、2人は防具は購入した。命を懸けた戦闘である以上、簡単な防護服は付けた方が良い。
2人がそのまま民家に入ると、中には1人の女性NPCが椅子に座っており、どこか暗い顔をしていた。
「…いらっしゃいませ。」
彼女はキリトとライトを小さな声で迎え、コップに水を注いで持ってきてくれた。
「旅の剣士様、お疲れでしょうが、今はこれしかお出しする事が出来ません」
女性はそう言うと、キリトとライトの前に持ってきた水を置いた。
「あぁ、構わないよ!」
「…どうも」
2人はお礼を言うと、持ってきてくれた水を一口含む。味はしないが、現実世界で飲む感覚と同じものが伝わる。ライトはコップをテーブルに置くと、民家の内部を見渡した。すると、ある物が目に入った。
「キリト!」
「どうした?」
それが気になり、ライトはキリトに呼びかけた。
「あの鍋、水は入ってるのに、何で沸かそうとしないんだ?」
ライトの目に映ったのは、沸騰していない鍋に入った水だった。鍋の中に水があるという事は、火を点けて沸かす以外に考えられない。その沸かした水を、自分達に出しても良いのにと思った。だが、NPCの女性は一向に火を点ける気配がない。
「良いとこに気が付くな。そこが、このクエストのキモなんだ」
そう言うと、キリトは立ち上がってNPCに近付く。ライトも席を立ち、キリトに付いていく。すると、2人の目の前に1枚のウインドウが現れた。
《森の秘薬》クエストを受けますか?
Yes / No
キリトは迷わず、Yesのボタンを押した。すると、NPCの女性がキリトの方に顔を向けて、悲しげな口調で喋り出した。
「旅の剣士様、実は娘が高熱を出してしまって。今、部屋のベッドで横になっているのですが、生憎薬を切らしているのです。しかし、私では取りに行く事が出来ません。薬はこの近くの森に生息している、花付きのリトルネペントが落とす胚珠です。どうか、娘を助ける為にも、薬を取りに行って下さいませんか?」
すると、幼い女の子が咳をする声が聞こえた。このクエストを受ける為には、まずあの水が入っただけの鍋に気付き、NPCの女性に近付く必要がある。そうしなければ、クエストは一向に発動しない。
「分かった、取ってくる!」
キリトは小さく頷き、嫌な顔もせずに了承した。
「お持ち帰ってくれれば、先祖代々の長剣を差し上げましょう!」
その剣を手に入れる事が2人の目的であり、ゲットするには胚珠を取ってこなければならない。キリトは2つ返事で依頼を引き受けた。
「…成る程、だからか」
ライトは納得した顔を浮かべる。あのNPCの女性は沸かさなかったんじゃなく、沸かせなかったんだ。娘の病気を治す為の薬が、今は手元に無かったから。
「そう言う事。ライトも行ってこい、俺は外に出てる」
「…分かった」
キリトはライトを促すと、先に民家を後にした。それを確認して、ライトもNPCの女性に近付き、先程と同じ会話を済ませて、最後にYesのボタンを押した。そして、民家から出ると、扉の近くにキリトが待っていた。
「終わったぞ!」
キリトは小さく頷くと、森の方へと視線を向けた。だが、すぐにライトに視線を戻し、真剣な口調で声を掛けた。
「ライト、よく聞いてくれ!」
キリトの声に、ライトは改めて彼に向き直り、彼の言葉に耳を傾ける。
「さっきのNPCが言ってたけど、これから行うクエスト、森の秘薬は花付きのリトルネペントが落とす胚珠を持ち帰る事だ」
「あぁ、分かってる!」
先ほど伝えられた内容を、キリトはもう1度ライトに共有する。2回も同じ事を言うのを考えるに、それ程までに重要なのか、あるいは他に何かあるのか。
「それで、お前と俺のスキルスロットには、まだ1つだけ空きがある。そこに《索敵》スキルを入れておいた方が良い。モンスターやプレイヤーの位置を把握できるんだ!」
「索敵スキル…」
《索敵スキル》
ソロプレイヤーには必須のスキルであり、モンスターとプレイヤーを識別する事が出来るスキルで、それらの位置を確認する事が出来る。その逆の《隠蔽》は、姿を隠す事が出来るスキルで、索敵スキルが無ければ見つける事は出来ない。
「分かった。そうする!」
キリトの助言を受け、スキルスロットに索敵を追加した。
「それから、もう1つあるんだ」
話はまだ終わってないようで、ライトは再び続きに耳を傾ける。
「これから狩りに行くリトルネペントには、3つの種類がある。1つは何も付いていないノーマルの奴、もう1つは俺達がこれから探す花付き。最後にもう1つ、《実付き》が居るんだ」
「実付き?」
キリトが最後に話した《実付き》という言葉が、少し大きく聞こえたように、ライトは感じた。キリトは真剣な表情を崩さず、実付きの説明を詳しく話す。
「あぁ。それには十分注意して欲しい。そいつの実を割ってしまうと、強烈な匂いが発生して、周囲に居る他のネペント達を呼び寄せるんだ!」
「っ!?」
死の世界でこの情報を知らずに、クエストの依頼を引き受けて実付きを割ってしまったらと思うと、考えただけで恐ろしい。この世界から生きて帰る為に、情報は重要だと、ライトは改めて思った。
「分かった、ありがとな」
情報を教えてくれたキリトには、感謝しかないと礼を言った。
「それじゃ、行くか!」
「おう!」
こうして2人は、クエストの依頼を達成して、自分達を強化する為に歩き出した。
「…は!」
気合いが籠った声が聞こえ、次の瞬間にはポリゴンが砕ける音が響いた。
2人は依頼を受けた後、森に出現するリトルネペントをひたすら狩っていた。この村に生息するリトルネペントは、体長が1mはある食虫植物型のモンスターで、先端が短剣状のツタで攻撃してくる。更に、口から腐蝕液噴射も出し、それを浴びてしまうと、HPと防具の耐久値が著しく減少し、粘着力によって暫く動けなくなる。
ネペントのレベルは3で、レベル4まで上がった2人にしてみれば、そんなに苦労する事ではなかった。
「出ないな、花付き?」
ライトが少し、がっかりしたように呟く。かれこれ1時間は続けているが、未だに現れる気配すらない。その代わり、ネペントを倒していく過程でレベルがアップするのは良い事なのだが。
「仕方ないさ。なんたって、1%以下の確率なんだから!」
目的のリトルネペントは口の上に花が咲いており、出る確率は途轍もなく低い。諦めて辞めてしまうプレイヤーもかなり居たと、キリトは歩きながらβの情報を教えてくれた。
「地道に行こう、ライト。レベルや経験値も稼げるから、一石二鳥だしな!」
レベル制MMOPRGであるこのゲームは、レベルが上がれば上がるほど強くなる。差が開けば、戦闘の安全性が増していく。
「…そうだな」
ライトは頷くと花付きを探す為、周囲に目配りする。そして、暫く歩き続けていると、ライトの索敵スキルが3つの反応を捉えた。
「こっちに居るな。約3体、か」
「そうだな!」
キリトの索敵スキルにも反応があったようだ。ライトの言葉に頷いて、その場所に向かうが、それでも警戒は怠らない。不意打ちをしてくる可能性も考えられる。森を抜け、小さな広場に出ると、それらは居た。そして、キリトが何かに気付いた。
「ライト、あの真ん中の奴を見てみろ!」
「ん?」
キリトにそう言われ、ライトは3体の内、真ん中のリトルネペントを確認すると、ようやく見つけた。自分達が探していた目的のネペントである花付きを。
「見つけたな!」
「…あぁ!」
キリトは小さく頷いた。だが、目的のネペントの他に、後2体ノーマルが見られた。すると、ライトがキリトに顔を向けた。
「キリト、お前は花付きに集中しろ。オレは残りの2体を片付ける!」
ライトは自分からキリトに譲った。他のプレイヤーの場合、大抵はあのネペントの取り合いになるのだが、そうなる事はなかった。
「いや、でも! 2体を相手にするのは…」
キリトはライトが花付きを譲ってくれ、2体も相手をしてくれる事に驚いた。というより心配だった。確かに、彼の腕はかなり立つが、このゲームは始めて経験する。モンスターがどんな攻撃をするかは教えたが、まだ経験を積んでいない。先程までは、最低1対1で戦闘を行っていた。だが、ライトはこれから2体を相手にしようとしている。
「お前が花付きの相手をしている間に、時間を稼いでおく。それに、あれを見つけたのはお前だしな!」
ライトはそう言うと、背中に背負う片手剣を鞘から引き抜いた。それに続き、キリトも自分の剣を引き抜いた。
「分かった」
2人は同時に花付きに向かって走り出した。彼らの動きに気付いた3体のネペントのうち、1体がツタで攻撃を仕掛けた。2人はそれぞれ左右に飛び退き、攻撃を回避する。
ライトは花付き近くのネペントに接近しようとするが、再びツタで左下から胴体を狙ってきた。ライトはそれを剣で捌き、一気に間合いを詰めて、ネペントの弱点部分を斬りつける。
「シュウウウウ!!」
すると、反撃と言わんばかりに、腐蝕液噴射で攻撃をしてきた。それを紙一重でしゃがんだり、体を反らしたりして避けている
ーーーその時
「っ…ふっ!」
何かが後ろから迫ってくる感覚を覚えた。ライトがその場にしゃがみ込んだ直後、頭上を後ろに居たネペントのツタが通り過ぎた。
「なっ!? (今の動きは!?)」
キリトは花付きのネペントを相手にしながら、ライトの戦闘を横目で見ていた。花付きのネペントを譲ってくれて、かつ2体を相手してくれているので楽だが、ビギナーである彼が少し心配だった。
ここに来る前に、彼の戦闘を見て問題はないと感じたが、それでもこの世界では、それなりに経験を積んで置く必要がある。一瞬の判断ミスが命取りとなるが、キリトはたった今、ありえないものを目撃した。
ライトの背後に立つもう1体のネペントが、ツタで彼の首に目掛けて攻撃してきた。索敵スキルによって、敵の位置は把握できる為、その事は別に驚きはしない。キリトが驚いたのは、後ろを見ずにベストのタイミングでしゃがんで攻撃を避けた事だ。
それは、初心者であるビギナーには、到底できる芸当ではない。βテスターのキリトでさえ、出来るかどうか分からない。
「っ…はぁ!」
ライトが行った芸当に一瞬、呆気に取られてしまったが、すぐに我に帰り、花付きのネペントに集中する。花付きのツタの攻撃や噴射攻撃を躱したり、剣で弾いたりして接近していく。だが、彼のすぐ目の前にツタの攻撃が迫っていた。ネペントがもう1本のツタで攻撃してきたのだ。
「せあぁ!!」
だが、何とキリトはすぐ目の前まで迫ってきていたツタを、ギリギリ剣で切り裂いた。普通なら、間に合わず攻撃を受けてしまうが、キリトは受けてしまう筈だっだ攻撃を捌いてみせた。
「(やるな!)」
横目でキリトの戦闘を見ていたライトも関心してしまう。先程の攻撃、普通のプレイヤーなら当たってしまっていた。だが、キリトは防ぐ事が出来た。それだけで、反応速度が一線を画していると分かる。
「さて、そろそろ終わらせるか」
そう言って、ライトはネペント達のHPゲージを確認する。2体とも、残り2割程しか残っていなかった。ライトであれば、適正レベルに達していなくとも、この程度の相手なら普通に倒す事が出来る。
「「シュウウウウ!!!」」
まるで威嚇するかのように叫び声を上げると、殆ど同時に攻撃を仕掛けてきた。
「っ…」
ライトはその攻撃を正確に、紙一重で避ける。ツタが自身に迫る前に、ほんの僅かだが、攻撃を仕掛ける前兆の《起こり》が見える。ライトは決してそれを見逃さず、ツタの攻撃を掻い潜り接近していく。すると、彼が持つ片手剣の刀身が光り輝いた。
「はぁぁ!!」
片手剣ソードスキル単発水平斬撃技《ホリゾンタル》を、1体のネペントの弱点部分に攻撃した。その後、スキルを発動させた事による硬直が起きた。その隙に、ネペントがツタで攻撃してきた。しかし、ギリギリの所で解除され、その攻撃を防ぐ事が出来た。そして、再び攻撃を掻い潜って接近し、もう1度ソードスキルを発動させようと、一瞬タメを作った。
片手剣単発斜め斬り《スラント》
その一撃で、ネペントはポリゴンと化した。そして、キリトの方に顔を向けると、もう終わっていた。キリトが花付きのネペントに、ソードスキル単発水平斬り《ホリゾンタル》を放ち、ネペントはポリゴンへ姿を変えて消え去った。
「やったな、キリト!」
ライトはキリトに歩み寄りながら、声を掛ける。1時間以上も探して漸く見つけ、狩る事が出来た。これがもっと時間が掛かる場合があると思うと、面倒以外の何者でもない。
「あぁ…悪いな、譲ってくれて」
キリトは地面に落ちていた《リトルネペントの胚珠》を手に取ると、ライトに向かって、どこかバツが悪そうな表情で呟いた。
デスゲームと化したこの世界で、情報を持っていないビギナーはβテスターに比べ、圧倒的に不利だ。故にβテスターには情報やアイテムをビギナーに提供したり、譲ったりする義務があるのかもしれない。
事実、キリトも花付きを見つけた時、ライトが取りたいと言えば、譲るつもりだった。だが、ライトは自分から譲ってくれた。
「言っただろう? 奴を最初に見つけたのはお前だ。そのゲットしたアイテムはお前の物だ!」
ライトは全く気にしていない。そもそも、自分から言いだしたのだから、反論は出来ない。キリトはライトの言葉を聞いて、改めてその容姿を見て思った為、思わず口を開いていた。
「…ライトって、なんか結構大人びてるよな?」
身長はキリトより2〜3cmほど低く、長めに伸びた茶髪、透き通った緋色の瞳、女の子に思えるほど可愛く、幼い顔立ちをしているので、見た目はキリトよりも年下に思えてくる…(キリトもキリトで童顔なのだが)。しかし、口調はキリトが言ったように大人びており、性格も冷静で年不相応に思えてならない。
「可愛げが無くて悪かったな?」
キリトの言葉に機嫌を悪くしたのか、ライトの表情が険しくなった。彼の口調が刺々しくなった事に、キリトは慌てて謝る。
「ご、ごめん! 悪かった!」
キリトの謝罪の言葉を聞くと、ライトの不機嫌な気持ちが少しだけ治り、表情も元に戻った。それを見計らって、改めて彼に声を掛けた。
「さてっ…じゃあ次は、お前の分を探すか?」
「へっ!?」
手に入れた胚珠はまだ1つ、キリトの分だ。後もう1つ、ライトの分を探す必要がある。そうしなければ、彼は目的の長剣を手に入れられない。キリトが次の花付きを探そうと、ライトに声を掛けると、何故か驚いたような反応を示した。
「…?…どうしたんだ?」
その事が気になり、キリトは何故ライトが驚いたのか、理由を訊ねた。
「…一緒に探してくれるのか?」
ライトが呟いた言葉に、キリトは呆気に取られた。さっきの花付きのネペントを倒して、胚珠をゲットする為に、ライトは自分に花付きを譲ってくれて、更に、2体のネペントの相手もしてくれた。
それに今、自分達はパーティーを組んでいる。目の前にいる《相棒》を見捨てるような事はしたくない。《はじまりの街》に置いて行ってしまった、クラインのように。
「当たり前だろう!? あの時みたいに……見捨てたくないんだ!!」
キリトはまだ、罪悪感を感じていた、置いて行ってしまった事に。キリトはβ時代、ソロの攻略が多かった。他人と関わる事が殆ど無く、1人でプレイしていた。だが、クラインやライトとパーティーを組んで、楽しかったと思う自分が居るんだ。
「…優しいな、キリトは」
「へ?」
その小さな呟きが、キリトの耳に届いた。この世界で出来た仲間の1人を見捨てて、ここまで来た自分のどこが優しいのか、今のキリトには分からなかった。その言葉の意味が気になった為、ライトに声を掛けようとした
ーーーその時
パンパン!!
「「っ!?」」
後方からの音に、2人は素早く振り返った。彼らの目に映ったのは、1人の男性プレイヤーだった。少年達の目前に立つ彼は、見た目だけで言えばキリトよりも年上に見え、装備も自分達と殆ど同じだ。
「ご、ごめん。驚かせてしまって」
その男性プレイヤーは、キリトとライトに謝罪する為に、小さく頭を下げた。
「君達、βテスターなのか? こんなに早く、ここに来てるって事は」
デスゲームが始まったのは、今日の夕方だ。それから、まだ数時間しか経っていない。こんなに早く、この村に到着しているという事は、このゲームの経験者であるβテスターの可能性が高いと、彼は推測したのだろう。
「あぁ、そうだ。こいつは違うけどな……そっちもだろ?」
キリトが言うように、彼自身もこの村に到着している。経路を知っていなければ、辿り着く事は不可能だ。他のβテスターが居るのなら話は別だが、1人しか見られない。だから、目の前に立つこの青年も、βテスターなのだろうと、キリトはそう聞き返す。
「うん、そうだよ。僕はコペルって言うんだ!」
男性プレイヤーはコペルと名乗った。そして、2人にある提案を投げかけた。
「あの、良かったら一緒にクエストやらない? これ、胚珠が落ちる確率が結構低いの知ってるからさ。それに、こんな状況なら協力した方が安全だ。勿論、君達が最初にやっていたから、見つけたら君達の物になるっていうのは分かってるよ。その後、一緒に協力してくれたら、ありがたいんだけど」
キリトが持っている胚珠もライトと協力して、数時間も掛けてやっと手に入れた。コペルも自分の分を手に入れる為に、2人に協力を依頼した。
「どうする?」(小声)
ライトは小声で、キリトに問いかける。ここは、このゲームの経験者に聞いた方が良いだろうと思い、そう訊ねたのだ。
「良いんじゃないか? お前の分を見つける為にも、人数は多い方が良いと思う」(小声)
人数が増えれば、胚珠を手に入れるスピードは限りなく上がる。それに断る理由が無いからだ。
「…分かった」(小声)
ライトはキリトの考えに従う事にした。キリトの言う通り、胚珠を手に出来るスピードが上がるなら、その方が断然良い。キリトはコペルに向き直って、声を掛ける。
「あぁ、良いよ、一緒にやろう。俺はキリトだ!」
「…オレは、ライトだ」
2人は自分達のプレイヤーネイムをコペルに教えた。すると、ライトが自己紹介をした時、コペルが不審な顔して、恐る恐る声を掛けた。
「あの、もしかして君…男なの?」
コペルはライトの方に顔を向けて、そう訊ねた。自分の事を言っているのだと分かった彼は肩を落とし、ため息を吐いてしまう。その反応に、キリトは苦笑いを漏らす。
「結構気にしてるんだ、こいつ」
キリトがコペルに、ライトがガッカリした理由を説明する。
「あっ…ご、ごめん」
コペルは慌てて、ライトに謝罪の言葉を掛ける。しかし、間違えてしまうのも仕方ないのかもしれない。女性ですら、可愛いと思うのだから。
「…気にしないでくれ」
コペルにそう伝えるライトの口調は、やはり、どこか沈んでしまっていた。女性と勘違いされるのは昔からあったが、慣れるものではないと、ライトは感じた。
「兎に角、宜しくな。コペル!」
「宜しく。キリト、ライト!」
こうして、3人のパーティーが結成された。
こんな感じでした。