SAO another story   作:シニアリー

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今回で、第1層攻略会議が開始されます。

では、どうぞ。


攻略会議と2人の少女

 

ゲームマスター、茅場 晶彦によってデスゲームに変貌した《ソードアート・オンライン》が開始されて、約1ヶ月が経過した。この世界にログインしているプレイヤーは10,000人だが、既に約2割、2,000人がこの世界からも、現実世界からも永久に《LOGOUT》してしまった。しかし、未だ誰も第1層のボス部屋にすら、辿り着けていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(このデスゲームが始まって1ヶ月。死者は2,000人、か。まさか、ここまで増えるなんて)」

 

難しい表情をしながら内心で呟くのは、元βテスターのキリトと行動を共にしている、フードを被ったライトだった。何故フードを被っているかというと、下心満載で女と勘違いするライトに言い寄ってくる男性プレイヤーが多数いるからだ。

 

その防衛の為、仕方なく購入したライトが、フードの中で死亡者の数を考えていると、すぐ隣から聴き馴染んだ声が飛んできた。

 

「ライト、どうしたんだ?」

 

隣を歩くキリトが、フードの中で難しい顔をしているライトの顔を覗き込み、そう訊ねてきた。

 

「…いや、何でもない。それより、漸く第1層の《ボス部屋》が見つかったな?」

 

適当に答えると、ライトは話題を変えた。

 

今日まで1ヶ月も掛かったが、漸くどこかのパーティーが第1層を突破する為のボス部屋を発見したのだ。今日はその会議が行われる筈な為、2人はこの街《トールバーナー》に足を踏み入れていた。街には既に、何人かのプレイヤーが歩いており、その殆どがボス戦に参加すると考えられる。

 

β版なら、1ヶ月で5層は突破できた筈だが、正式版では1層のボス部屋にすら辿り着けていなかった。2人はここまで時間が掛かるとは思っていなかった。

 

「結構時間が掛かったがな。」

 

予想外の事態だったが、それでも少しずつクリアの為に前に進んでいる感覚はあると、キリトは感じていた。これから行われる攻略会議が、その第1歩となる筈だ。

 

「確か会議は、午後4時からだったか?」

 

トールバーナーの街の建物に背を預けるライトが、隣に立つキリトに訊ねた。

 

「そうだと思う。そろそろ始まるな、行こう!」

「あぁ。」

 

視界の端に見える時刻を確認すると、午後15時55分だった。2人は会議が行われる近くの噴水広場に向かった。そこには、42人のプレイヤーが集まっており、人数を確認したキリトが不意に呟いた。

 

「ちょっと少ないな。」

 

普通、これだけ集まっていれば多いなと思う筈だが、キリトは全く逆の言葉を呟いた。このSAOでは、1パーティーの人数が最大で6人。それを8つまで束ねると、合計48人の大規模なパーティーを作る事が出来る。

 

「これでも少ないのか?」

 

この場に集まる人数を数えたキリトに、ライトがそう訊く。ビギナーなら、この人数は多いと思う者が殆どだろう。キリトはフードの奥から向けられる視線に、目を合わせて頷いた。

 

「あぁ、1パーティーで最大6人。それを8つ束ねたら合計で48人。俺達を入れても、4人不足してるんだ。まぁでも、これだけ集まれば上出来かな」

 

今のところ、4人足りないというのが現状だが、それなら何とかカバーし合えると、キリトは思った。

 

そろそろ会議が始まる時間なので、2人も含めた他のプレイヤーは噴水広場から少し離れた場所、コロシアムのような所に移動した。そこは扇形の階段が造られ、既に座っているプレイヤーも何人か見られる。キリトとライトも、他のプレイヤーと同じように段差に腰掛ける。

 

 

パン、パン!

 

 

すると、前方から手を叩く音が響き渡った。その音に誰もが闘技場の中心に目をやると、そこには鮮やかな青に染められた長髪のイケメンな好青年が立っており、階段に座るプレイヤーに聞こえるように大きな声で話し始めた。

 

「はーい!! それじゃ、そろそろ始めさせてもらいます! みんな、もうちょっと前に」

 

堂々たる口調で話すその声は、よく通っていた。階段付近に座るプレイヤー達は、彼の言う通りに中心へ近付く。すると、青髪の青年は右手で拳を作り、胸に当てて自己紹介をした。

 

「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。俺の名は《ディアベル》…職業は、気持ち的に《ナイト》やってます!」

 

騎士ディアベルがそう言うと、近くの一団がどっと沸き、拍手や口笛が混ざった声が聞こえてきた。

 

「《ジョブシステム》なんてないだろ?」

「ほんとは《勇者》って言いたいんだろ?」

 

SAOでは、スキルスロットに入れる事が出来るのは、戦闘用のスキルだけではない。生産系や交易系スキルをメインに取っているプレイヤー達は《鍛冶屋》や《料理人》といった者達が殆どだ。

 

対して、彼が言った《騎士》や《勇者》という職は存在しない。騎士ディアベルは、笑い声に包まれる会議場を両手で押さえると、途端に真剣な表情に切り替わり、低い声で話し始めた。

 

「…今日、俺達のパーティーが、あの塔の最上階でボスの部屋を発見した!」

 

その瞬間、プレイヤー達に漂う空気が一変し、周囲から微かに小さな囁きが漏れる。周囲に視線を走らせたライトは、動揺と驚愕が混じった顔をするプレイヤー達に目をやった。

 

1ヶ月間も探し続け、漸く第2層に通じる部屋を見つける事が出来たのだ。はじまりの街に残っているプレイヤーが多いとはいえ、βを経験しているプレイヤーが居るなら、1〜2週間もあれば辿り着けると予想していたのだ。なのに、これ程までに時間が掛かるとは思わないだろう。

 

そんな考えがビギナー達の中で渦巻いている筈だと、ライトはフードの奥から周囲のプレイヤー達の反応でそう考えた。すると、そんな空気の中で、ディアベルは堂々たる口調で演説を続ける。

 

「ここまで、1ヶ月も掛かったけど、それでも俺達は、第1層のボスを倒して第2層に到着して、このデスゲームもいつかきっとクリア出来る事を、はじまりの街で待ってるみんなに示さなきゃならない。それが、この場に居る俺達の義務なんだ! そうだろう、みんな!?」

 

《リーダー》と言う人間は正に、このような人物を言うのだろう。騎士ディアベルは、デスゲームに変わった残酷な世界で、自分の事ではなく、はじまりの街で解放を待つ他人の為に戦おうとしている。相当な覚悟と勇気が無ければ、到底務まる器ではない。

 

「(デスゲームへと変貌した世界で、あんな考え方が出来るとは…凄いとしか言いようがないな)」

 

ライトは内心で、そう呟きながら舌を巻いた。そして、それは彼に限った事ではなく、この場に集まる他のプレイヤー達も同じ様子だった。

 

《死の世界で自分より他人》

 

そんな考えが出来る人間がこの世界に、居るかもしれないが、限りなく少ない筈だ。だからこそ、この場に集まるプレイヤー達は、騎士ディアベルに拍手喝采を起こしていた。キリトとライトも拍手を送ろうと、自然と手を叩いていた。

 

「オッケー!それじゃ早速だけど、これから攻略会議を始めたいと思う。まずは、6人のパーティーを組んでみてくれ!」

「「っ!?」」

 

彼の言葉に、キリトとライトは動揺を隠せなかった。現在、2人はパーティーで《コンビ》を組んでいる。しかし、他のプレイヤーを誘った事は皆無。この1ヶ月間、殆ど2人だけで行動し、mobと戦ってきた。

 

「キリト、どうする?」

 

周りを見てみると、もう殆ど6人組のパーティーが出来上がっていた。最悪、2人だけという手もありだが、そうなると恐らく、どこかのパーティーの援護ポジションに回る事になるだろう。

 

安全性を考えるなら、その方が利口かもしれないが、はじまりの街から飛び出し、ここまで戦ってきて、他のパーティーの援護ポジションは、少し思うところがあった。最悪の場合、集団から外されてボス戦に参加させて貰えない可能性もある。

 

「ライト、あそこ!」

「ん?」

 

すると、キリトが自分達が座っている反対側を指差した。ライトが目をやると、そこには厚手のケープを被った2人組が座っていた。あの2人の周囲に、他のプレイヤーの姿は見当たらない。それを確認すると、2人はケープを着たプレイヤー達に近付き、恐る恐る声を掛けた。

 

「…あんた達も、あぶれたのか?」

 

小声でそう訊ねると、ケープを被っている2人のうちの1人が、ボソッと返事をした。

 

「…あぶれてない。周りがみんな、お仲間同士だったみたいだから、遠慮しただけ」

 

キリトの問いにそう返すのは、細長い剣を腰に収めたプレイヤーだった。すると、横に座っていた片手直剣を携えたプレイヤーが、フードの奥から小さく呟いた。

 

「それをあぶれたって言うと思うんだけど…」

 

2人の声を聞いたキリトとライトは、内心で驚いていた。何故なら、声を聞く限り、どちらもSAOには数少ない《女性プレイヤー》だったからだ。アバターを女性に設定する事は出来るが、茅場 晶彦によって今は現実の姿がアバターとなっている。アバターを女性に設定していた男性プレイヤーが数多く居たので、女性プレイヤーは希少なのだろう。

 

「なら、俺達と組まないか? ボスは1人じゃ倒せない、今回だけの暫定だ!」

 

キリトがケープの2人組に、パーティーの誘いを持ちかけた。2人同士なので合計で4人。それなら、何とか立ち回れると思ったのだ。流石に4人パーティーなら、ボス戦から外される事もない筈だ。

 

「あなた達から申請するなら、受けてあげないでもないわ。」

「ボクもそれで良いよ!」

「決まりだな」

 

細剣使いと片手剣使いの2人は、キリトの提案を受け入れた。そして、キリトが細剣使いにパーティー申請を送る。彼女は表示された画面に視線を移し、《Yes》のボタンをタップした。すると、少年達の視界左端に、2本のHPバーが追加された。そこには、2つのプレイヤーネイムが表示されていた。

 

 

ーAsunaー

 

ーYuukiー

 




こんな感じでした。

それでは、また次回
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