レトロスペクティブ京都   作:にわかの底力

2 / 33
夏休み、二人の霊能少女は幻想の世界を往く


第二章 少女秘封倶楽部

秘封倶楽部、私が所属している、大学のオカルトサークル。

周りからは、大して活動をしていない単なる不良サークルと思われているけれど。

メンバーは私含めて二人。

そして今、私はそのもう一人に対して腹を立てている。

置手紙に指定された会議の時間より、1時間40分遅れているのにも関わらず、一向に会議が始まらないためだ。

「メリー、おっはよ~う」

私の事をメリーと呼ぶ彼女に、私は鋭い視線を送る。

「蓮子、何かゆうことは?」

「え~っと・・・、髪型変えた?」

「多分寝癖です。貴方が朝早く急に呼びだしたから」

「あー。もしかしてそれで怒ってる?」

「いいえ。もちろんそれも許しがたいですが、もっと重要なことがありますよね?」

目の前の少女はあからさまに私の視線から逃げる。

「人を呼びだしておいて、1時間40分も遅刻するとはどういうことか、今ここで説明してもらいましょうか」

「いやあ、正確には1時間47分2じゅ・・・・ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」

まったく反省の色を見せない彼女に対し、羽交い絞めをお見舞いする。

「メリーやめて!死ぬ!あなたを殺人犯にしたくない!」

「安心してください。目撃者は居ませんから」

より強く彼女を締め上げる。

「ぐうおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、ギブ!ギブぅ!おゆるしを~!」

「わかりました、私も悪魔じゃありません。ここは一つ、駅前のスイーツで手を打とうではありませんか」

「わかった、わかったから!」

私の手をかなり強めに叩く彼女。

「よろしい。では早速・・・」

「あ、カネないんだった・・ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ悪魔、ヤクザ!悪代官!」

 

ようやく、会議が開かれた。

「集まってもらったのは他でもない、秘封倶楽部の活動方針を決めるのだ」

「もう決まってるじゃなくて?」

せっかく雰囲気を作っているところなんだからと、彼女の抗議は無視して。

先ほどまで羽交い絞めに遭っていた、そして今、ドラマで裁判官からの許可が下りていないのにも関わらず、意味もなく法廷を歩き回り熱弁を繰り広げる弁護士の如く、やけに張り切って司会を進めている彼女が、もう一人の秘封倶楽部のメンバー、秘封倶楽部会長の宇佐美蓮子。私の同級生。

大学進学と同時に東京から京都へ上京してきた。

彼女には一つ、大きな特徴がある。

月や星を見ただけで、今いる場所と時刻が正確に分かるのだ。

それでも遅刻するのだから、彼女にそんな能力を渡した創造主とやらはよほど間抜けに違いない。

それとも東京は時間の進み方が違うのか。

「これを見て欲しい」

蓮子が私の前に差し出してきたのは、いかにも蔵の奥から引っ張りだしてきたと言わんばかりの古い本。

B5程度の大きさで、厚さは5センチメートル程度。

タイトルには『幻想郷縁起』とだけ書かれ、それ以外は特に何も書かれていない。

中身は活版印刷で、何やらイラストと、日本語で文章が書かれてる。

奇妙なのはこのイラストで、人のような見た目のものもあれば、触角が生えていたり、翼が生えていたり、明らかに人間ではないものも紛れている。

書かれている文章は、おそらくこのイラストの説明文。

何かの創作物にも見えなくもないが。

「この本がどうしたの?」

「巻末を見てみて」

蓮子に言われるまま、巻末を見てみる。

 

『わたくし、稗田阿斗は第十代御阿礼の子。稗田家に定期的に現れる御阿礼の子は代々幻想郷縁起の編纂に関わってきた。幻想郷縁起の当初の目的は、妖怪に対抗する手段の乏しい人間に、その手段を講ずる為、妖怪に関する知識を伝播し、後世に伝えることであった。しかし、新たな規則の制定により、妖怪による脅威も薄れつつある今日では、もはやその必要もなくなり、当代で最後となる幻想郷縁起の編纂は、妖怪、人間双方の理解を深めることを目的とする。従って、敢えて妖怪の弱点や退治の方法は載せず、代わりに人妖の紡いできた歴史、幻想郷の歴史、風土等をまとめ、歴史書としての機能を持つ書物に再編纂することとする。

これをもって、阿礼乙女は宿命から脱し、御役目御免となる。自らの目で幻想郷の行く末を見届けることが出来なくなるのは非常に残念なことではあるが、人間と妖怪の間の絶妙な均衡を保ちつつ、これからも幻想郷の歴史が続いていくことを切に願っている。今日に至るまで、幻想郷の成立や維持に関わってこられた者、並びに幻想郷縁起の編纂に携わった歴代阿礼乙女に深い敬意を表する。

 元代  稗田阿礼

 初代  稗田阿一

 二代目 稗田阿爾

 三代目 稗田阿未

 四代目 稗田阿余

 五代目 稗田阿悟

 六代目 稗田阿六

 七代目 稗田阿七

 八代目 稗田阿弥

 九代目 稗田阿求

 

第三百二十季 十代目 稗田阿斗  』

 

「どういうこと?」

ここまで聞くと、一昔前のビデオゲームの攻略本としか思えないような内容。

「ここを読んで大きく三つのことがわかる。一つ、この本は稗田阿斗という人物によって編纂された。二つ、この本は幻想郷という場所で書かれた。三つ、幻想郷という場所は人ならざる者が住んでいる」

「単なる創作物ではなくて?」

「その線はないとみていいわ。これは京都国営資料館からパク・・・拝借してきたものだから」

京都国営資料館は、歴史的書物の研究や保存を目的に設立された国営の資料館。

そこに保管されている資料は、歴史的価値が認められた資料のみ。

つまりこの本は、歴史的に価値のある書物ということになる。

「中身についてはこれから調査をするつもりだけど、一つ引っかかることがあって」

私の経験上、蓮子が顎に手を当てているときは何か考え事をしているとき。

私の経験上、その大半がどうでもいいことだったりする。

「この稗田阿礼って人、古事記を編纂した人物の一人、未だ実在性についても議論されている飛鳥時代の謎の役人の事だという可能性も無きにしも非ず」

それはこの書物が史実に沿った内容を書き表しているとする証拠としてはかなり弱いが、

「つまり蓮子は、この本に書かれている幻想郷という場所は、この世界と何らかの接点があると睨んでいるわけね」

「さっすが我が助手メリー君、飲み込みの速さは少女に祈祷する間も与えないわね」

「それは飲み込みではなく読み込みよ。あとメタい」

おそらく原作勢しか素早く理解できないような冗談で盛り上がっていると、蓮子が持ち上げたその書物の間から、一枚の紙がひらひらと床の上に落ちた。

自分の足元に落ちた紙を拾い上げ、私は言葉を失う。

「どうしたの?メリー」

「こ、これ、私が書いたメモ!?」




言い忘れていましたが、元ネタ的な要素も含んでいますので注意です(手遅れ)。投稿はpixivの方が先になります。同じ名前で投稿しているので、ぜひ遊びに来てくださいね。
もしかしたら他のサイトにも投稿するかもしれません。その時はハーメルンの方を移植します。つまり、移植の移植。その次は移植の移植の移植…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。