幻想郷
元は人里離れた辺境の地だった。1000年以上前、人間の勢力が増し、その地に住まう妖怪と人間とのバランスが崩れることを恐れた妖怪の賢者は、妖怪拡張計画を立案、幻と実体の境界によって存在を失われつつある妖怪たちを幻想郷へと集めた。明治初期、科学の急速な発達に伴い、賢者は人間から存在を否定された妖怪を保護するため常識と非常識の結界である博麗の大結界を張り、常識の性質を持つ物や者、非常識の性質を持つ物や者を隔てた。幻想郷のものは外には出れず、外の世界から直接幻想郷と接触するのは困難となり、幻想郷は隔離された空間となった。現在の幻想郷は、数多の妖怪と、ほんの僅かな人間、神や妖精、その他多数の種族の楽園である。
「これが幻想郷のざっくりとした概要なわけだけれど」
この書物には幻想郷の成り立ち、主な地名、住民の特徴、伝承など、幻想郷に関する様々なことが記載されていた。
「これだけ具体的な情報が載っているにも関わらず、こっちの世界では何の手がかりもないなんて」
広辞苑最新版、アカシックレコード改訂版、スペースネットワーク等、あらゆる百科事典、記事を漁ってみたものの、幻想郷に関連する記事、記載が一切見られない。
「やっぱり方針を変えましょう。書物の中身からこちらの手がかりがないかを見つけないと」
こっちの世界に幻想郷の記述がなければ、幻想郷にはこちらの記述があるかもしれない。
「ところでだけど、メリーがこの手紙を書いたというのはいつ?」
「蓮子に夢から持ち帰った筍をあげたときがあったでしょ。あの時夢の中で竹林に居たときよ」
「それってつまり・・・」
そう、私は既に幻想郷へ行っている可能性がある。
それも、夢の中で。
「その時の様子、改めて詳しく聞かせてくれない?」
「あの時は確か・・・」
あの時私は、竹林の中を彷徨っていた。
土地勘がない場所とはいえ、辿ってきた道すらわからなくなるほど、迷いやすい竹林だったのは覚えている。
「ここに気になる記載を見つけたんだけど」
蓮子が開いたページ、そこには『迷いの竹林』という場所についての記載と夜の竹林のイラストがあった。
「この竹林であってる?」
「写真?だけ見ても、竹林はどこの竹林も大体同じ景色だから断言できないけど、そうね、雰囲気はそっくりだわ」
ちなみに、この手紙が挟まっていたと思われる巻末には、未解決資料と書かれており、『数百年前に竹林で発見したもの』『意味不明の単語が並べられている』『外の世界の住民の所有物と思われる』『手紙の中に書かれている「夢の世界」という単語に興味がある』等の事が記されていた。
改めて、このメモ用紙を見返してみる。
夜の竹林ってこんなに迷う物だったかしら?
携帯電話も繋がる気配は無いし、GPSも効かないし、
珍しい天然の筍も手に入ったし、
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さて、そろそろまた彷徨い始めようかな。
私の新説が伝わるかはさておき、この書物の著者が現代人であれば、GPSや携帯電話などの単語は伝わるはず。
『意味不明な単語』がこれらを指すのだったら、著者は大昔の人物、若しくはそれらの概念が無い別の世界の人物ということになる。
『数百年前に発見された』ということは、私はこのメモを落とした時、つまり夢の中で時間移動タイム・リープしていたということなのか。
それとも、私たちとは異なる時間軸の世界なのか。
そして、著者が『夢の世界』に興味を示した理由、それは、この本の著者は、あの場所は私の夢の中ではなく、現実として認識しているということなのか。
「マエリベリー・ハーン!」
蓮子の叫びで、急に現実に引き戻された。
「こちら宇佐美局より、メリーの魂は無事帰還しましたどうぞ」
「はいはいメリーよりただいま帰還しました。それよりどうしましたか?」
くだらない茶番が繰り広げられる中、蓮子はいきなり真剣な顔になる。
「どうやらこの竹林、大昔は私たちの世界にあったみたい!」
「・・・なるほど、根拠となるものは?」
蓮子は目に留まらぬ速さでページを繰る。
「ここ見て!昔は外の世界にあって、大昔に大津波に遭って幻想郷に流れ着いたとあるわ」
蓮子の開くページ、『迷いの竹林』には、確かに『かつて外の世界に存在した』と書いてあるけど、
「『外の世界』についても一応調べてみる必要はありそうね」
幻想郷の生い立ちを見るに、私たちの世界を指す言葉であることは間違いなさそうだが、
「それについてもここに記載があるわ」
次に蓮子が開いたページは、『外の世界』について書かれたページ。
「『結界の外側、幻想郷よりも遥かに発達した科学力を持ち、幻想郷から直接干渉はできないものの、流れ込んでくる物や外来人によってその存在が確認できる』」
どうやら『外の世界』からは何かが流れ込んでくるようだ。
「『種族説明』の『外来人』の項目、『外の世界から幻想郷に迷い込んだ人間。訛りがあり、服装も私たちと異なるものの、幻想郷の人間との区別はない』」
「重要なのはここからよ。『外来人は始めは混乱しており、スマートフォンなるものをしきりにいじくりまわし、ケンガイという言葉を発し続けているが、じきに落ち着きを取り戻し・・・』」
成程、スマートフォン、それは一昔前の主な連絡手段であり、『外の世界』が私たちの世界であることを示す証拠として十分な役割を果たす。
「それはつまり、私たちの世界から幻想郷に接触している人間は既に存在していると」
「そういうことになるわね」
しかしこちらの世界で幻想郷の名は今までに聞いたことも無ければ、検索にもかからない。
幻想郷に流れ着いた人間はこちらの世界に帰ってこられないのか、あるいは・・・。
「とは言っても、竹林なんて昔から日本にはゴマンとあるわ。これだけだと情報は少ないような気はするけど」
「この本の中に他に手がかりは・・・」
あった。
「ここに永遠亭の住民についての記載があるわ」
竹林と永遠亭ー竹林の中に存在するといわれている屋敷と本に記載されているーには主に四人の住民が暮らしているらしく、それぞれの人物について詳しい記載があった。
「まずはこの『因幡てゐ』から当たっていきましょうか」
読んでいただきありがとうございます。投稿は不定期に行っています。今のところ活動報告はこちらのサイトでしか行っておりません。こちらのサイトでも行うかわかりません。行ってきます。
序章、第二章、第三章と僅か30分の間に連続で投稿していますが、もちろんそんな短時間でこの話を書いているわけではなく、pixivの方に投稿していたものをこちらに移植しただけになります。どうぞpixivの方にも遊びに来てください。
流石にくどいのでもう言いません。