他の班が基地の建設に従事している中、私たち
班長の植村一志と副班長の白瀬祐樹
料理長兼戦闘要員の森羅シャクルトン
戦闘要員のミハイル・シェルツェバルスキー
医療担当のアンリエッタ・クリステン、ジャック・マーキュリー
エンジニアのアルべルート・フランケンシュタイン、ラン・インファ
見習いのマエリベリー・ハーン
以上九名からなる探検隊で、例の建造物に乗り込むことになる。
仮に今もその文明が健在だとしたら、調査隊は我々が去った後も、残留班がコンタクトを続けていくことになるため、その第一歩となるこの任務は非常に重大かつ危険を伴う。
「準備完了しました」
「それではこれより、プロジェクト『サンタ・マリア』を始動する。要綱は以下の通り、インシデントの際は、緊急回避プロトコルに則り、可及的速やかに報告、対処をすること」
「「ヨーソロー!」」
私たちは二台の車両に乗り込み、最初の目標地点まで移動する。
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ステージ
建造物を目視で確認できるまで接近し、現存する文明の有無の確認、及び事前調査を行う。イベント発生時以外での未確認文明との接触は行わない事。
およそ10
山の中腹辺りの出っ張った高台から、建造物群の様子が確認できる。
碁盤の目状に整理された区画に、所狭しと家屋と思われる木造建築物が立ち並び、所々屋敷のような広い土地をもつ建築物群が存在しているのが確認できる。
中央の通路は非常に広く、宮殿のような広い敷地を持つ建造物群から一直線に向こう側まで伸びており、人の往来がある。
「都市文明の存在を確認。文明レベルはレベル1と推定。これより、プラズマ及び量子機器等の使用は最小限に控えよ」
植村班長はそう言うと、ゴーグルを取り出し都市の様子を観察する。
「生体反応を確認…我々の同類だ。個体群密度は…ざっと20万、やや手前よりに多く分布している」
「おそらく、あの宮殿のような建物が
「人々は…浴衣のようなものを着ているわね。早急に準備に取り掛かるわ」
「各門に門番が二人ずつついているな。まあ、問題ないだろう」
「軍事力も気になるところだが、腹が減っては戦もできん。そろそろ飯とするか」
私たちは、けん引してきたトレーラーの中に入った。
内部は例の謎技術によって外見より広くつくられており、それぞれに個室があり、厨房、食堂、会議室、研究室、医務室…その他諸々の施設が内設されている。
「ここが貴方の部屋よ」
「ありがとう」
インファに案内された自分の部屋に入る。
机とベッドのみの簡素な部屋だけど、外の景色が見える大きな窓がある。
ちなみに、外から見た限りでは窓などついていなかった。
日もだんだんと落ちてきて薄暗くなってきており、この世界での二日目が終わろうとしていた。
「メリー、お風呂入りに行こ―」
「はーい」
インファに誘われて、着替え両手に向かった先は、日本の銭湯を想起させる大浴場。
しかし壁にはマウントフジではなく、なぜか木星が描かれている。
「ジュピター…」
「ああ、この壁、なぜか日によって絵が変わるのよね。原因は解析中よ」
「まさかの怪現象!?」
これだけ空間をいじっていれば、どこかしらに何らかの異常が現れるのも頷ける。
風呂は船の中の部屋と同じ、水を使わないバブル式。
温度は106℉に設定されている。
「はー、気持ちいいい」
「極楽浄土ここにありって感じ」
弾ける泡の感触が病みつきになる。
「ところで、インファが言っていた準備って何のこと?」
「ああ、この格好であそこに行ったら怪しまれるでしょ?だから、同じような着物を用意するの。メリーの分もね」
「明日だっけか。あそこに行くの」
「うん。行ったら数日間は戻ってこれないかも」
元よりこの場所も、この船も私からしてみれば新天地にいるような感覚であるため、今更何も恐れる必要もないわけだけど、ひどく恐ろしいものをあの場所から感じる。
「どうしたの?メリー、顔色悪いよ?」
「え?そ、そんなことないわ。それよりも、あの街にいったら何をするの?」
「貴方の自由にしていいわよ。私がついていくから」
Aランクである私は船内外での活動に制限がかからないことになっているが、あの街の中での行動も、私の自由にしていいとのことだ。
あの街から感じる気味の悪さ、それらの原因を突き止められるかもしれない。
「でも、まだ右も分からぬ私がそんな勝手な行動をしていいものなのか」
「船長は、貴方に期待しています」
「え!?いつの間に…」
さっきまでインファがいたはずのその場所に、なぜかクリステン隊員がいた。
「この場所は空間が引き延ばされて、よじれてねじれて、折り畳まれて、同じ空間がいくつも上に重なっているような状態なのです」
「インファは無事なのですか?どこに行ったのですか?」
「ラン隊員は無事よ。この大浴場の中での事象は、全て大浴場の中に保管される。でも、彼女が今どんな状態にあるのか、それは私にもわかりかねますね」
「いやああああああ!」
「でゃ、インファ!?うっそだろおい!?」
「だから後から入れっていつも言ってんじゃん!」
「いやすまん、てっきり上がった後とばかり…」
「いいから出てけ!バカ森羅!」
「あひん!?」
森羅の作る料理は今までに見たことがない。
和なのか洋なのか、それすらも判別できない。
「これは俺がまだ商人だったころ、あらゆる世界を旅してきた中で三番目においしいと感じだヂュエン・エレという料理さ。使われている食材はヂュエンジという高級魚」
鮮やかな虹色にグラデーションされた魚が、なぜかその色に染まってしまったスープの中に入っている。
「本来毒がある魚なんだけど、決まった調理法に従うとその毒が消えるようになっている。現地の人々はその仕組みをよく理解できていなかったみたいだったけど、そんなのよくあることだ」
この未知の料理をなんの抵抗もなしに頬張るインファを見て、私も勇気を出して、まずはスープから頂く。
「これは、魚というより甲殻類に近いような…」
「メリー、目玉!卵みたいにとろりとけておいしい!」
インファ、その他の隊員が森羅の料理を躊躇いなく口にできるのは、共にした年月の中で培われてきた信頼があるからであろう。
私は正直不安でいっぱいだ。
以前ちゆりたちと行動を共にしたあの場所と同じように、いつ危機迫る瞬間が訪れるか予測できない。
それが未知の世界。
きっと彼らもそれと同じ経験を何度もしてきたのだろう。
それら危険を共に乗り越えた仲として、彼らに築かれる信頼というのは、共に過ごした時間相応のものとは到底思えない。
仲間同士の信頼がなければ、生きて帰る保証がないことを、彼らは深く理解しているから。
よって、仲間を裏切るような行為は、料理の味一つとっても許されない。
現に、森羅の作る料理は、期待以上においしかった。
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「明日はいよいよ都市探索か」
私自身、あの都市に対して何を恐れているのかわからない。
わからないからこそ、更に恐ろしい。
窓の外を見る。
先ほどまで出ていなかった、薄気味悪い靄が外を覆っていた。
外の景色が見えない代わりに、私の顔が窓に映る。
「‥‥。 インファに顔色が悪いと言われるのも無理はないか」