「ジリリリリリ」
原始的な音が脳内に響き渡る。
今日は、目が覚めた時には既に意識ははっきりしていた。
ふと、左手に何か薄い物を掴んでいる様な感覚がある。
「やっぱり…」
その手には、しっかりとレコードが握られていた。
いつもの身支度を終え、レコード片手に早速『秘封倶楽部』の部室へと向かった。
部室の前まで来た。
なんか、中から音がするのですが。
空き巣?
いや、もしかしたら—
—前科百犯、遅刻魔宇佐見蓮子が私より先に部室に来ているではありませんか!
こうも非現実的な事が続くと、異世界に転生してしまったのではと疑いたくなる。
転生してもメリーだった件。
「メリー、おっはよ〜」
ああ、よかった。
「ごきげんよう」とか言われたら清水の舞台から飛び降りてやろうかと思った。
しかし、一体どういう風の吹き回しか?
「ってかあんた、もしかして昨日からここにいる⁉︎」
「ええ、少しでも調査を進めようと思って」
ああ、成程。
蓮子は自分に興味がある事だけは一生懸命だから。
「それで、どうだった?」
「………」
「………………」
「…わかりましぇ〜ん」
「…、はぁ~」
今の溜めは何だったのよ!
「だって何よ月の姫って!聞いた事ないんですけど!」
「月にも文明があるって事じゃなくて?」
「月面ツアーで観光しようかしら」
蓬莱山輝夜
ー永遠亭の主。
元々月の姫であり、何かしらの罪を犯して月から追放され、地上に流されたらしい。
「やっぱ創作じゃない?」
「メリーさん、今までの努力全て無駄にするような発言しましたよ貴方」
机にくたーと項垂れる蓮子。
しかし、蓮子の頭に光る電球が浮かぶのを、私は見逃さなかった。
「創作?そうさく…、創作!」
「なに?何か閃いた?」
「メリー、日本で一番古い創作って何?」
「…竹取物語?…あ!」
「月から地上に来た姫、かぐや姫。名前も一致してるわ」
「とりあえずその線で調査してみましょう!次は調査の方法だけど…と、そうだった」
危うくここに来た本来の目的を忘れるところだった。
「蓮子、これなんだけど…」
左手に持っている円盤、夢の中からのお土産だ。
見せた途端、蓮子は目を丸くした。
「レコードなんて初めて見たわ!どうしたの⁉︎」
「昨晩見た夢の中から持ってきた。蓄音機って機械から出す音楽を記憶させておくものだと聞いたけど」
「エドゥアールが発明した音を再生する機械。このレコードの表面にある凹凸を針でなぞって、その振動を振動板に伝えて音を出す仕組みになっているわ」
私たちの世界にも、似た様な機会があるらしい。
「しかもこれ二百年前のブリテンの伝説のバンド、『ビートルズ』よ!問題は夢の中でメリーはどこに行って、どのようにしてこれを入手したかなんだけど」
レコードもこちらの世界のものだった。
ビートルズは、私も聞いた事はある。
何でも、史上最も人気のあるバンドとして有名なようだ。
私は今でも鮮明に覚えている夢の中での出来事を、蓮子に伝えた。
「ふむ、謎の男『森近霖之助』か…」
「ええ、話を聞く限り、彼は人間ではないような気がするわ」
「いえ、気がするではなくて、その通りよ」
「え?」
自信満々に言う蓮子。
一体何を根拠に…
「『森近霖之助 妖怪と人間のハーフ』」
私の前に突きつけられたページ、そこには、確かに霖之助そっくりな写真が貼られている。
「それじゃああの場所…」
「そうね、幻想郷の可能性が高いわ」
霖之助が『外の世界』と言っていた時点で何となく察しはついていたが。
「私たちの世界の物が向こうにも存在しているっていう事は、こちらの世界と繋がりがあるのは確かだしね」
でも一つ、違和感が。
「なんでこのタイミングで都合良く幻想郷なんかに」
出来過ぎてる。
蓮子が偶然手に取った、存在しないはずの資料『幻想郷縁起』、それを調査している時に、都合よく私の異能が発現して、それがよりにもよって幻想郷へ繋がるなんて。
まるで何かに、操られているみたい。
「メリーの能力は日に日に強さを増している。メリーの意思が、ついに能力に反映されるようになったって事かもしれないわ」
「成程、今までこの能力に振り回されていただけだったけど」
「今夜、それを確かめるわよ」
「…え?」
Twitter始めました。同じあかうんと名です。とくに何もしていないので行かなくて
結構です。