じゃあ俺の価値は一体何なんだ?
午前10時、男は一人目を覚ました。
起きて直ぐに時計を見た彼の頭の中を絶望が支配した。
「遅刻確定じゃないか!どうすればいい…先ずは会社に謝るべきか?いや謝ったところで遅刻である事に変わりは無いんだし、もう全て夢だと思ってふて寝するか?」
我ながらどうしようもないなと考えた時に男は重大な事を思い出した。
今日は日曜日、休日である。仕事が無いのだから朝早くに起きる必用もない。
「なーんだ。焦ってそんしたよ」
男は冷や汗をパジャマの袖で拭きながら二度寝しようかとも考えたが、先程の絶望のせいで完全に目を覚ましてしまった。
汗もかいた事だし男はシャワーを浴びる事にした。
築38年。家賃月に5万のボロいワンルームに男は住んでいる。玄関のドアを開けたら目の前には男が寝る布団が敷いてあり、寝床以外には風呂とトイレしかない。
私物は小さな洗濯機と、冷蔵庫に小型の電子レンジを除けば平べったい布団と硬い枕。衣服はパジャマやスーツくらいの部屋だか彼にとってはこの部屋で充分だ。
友達がいないのではないが家に呼ぶ程親しくも無く、同棲もしてないのだから彼がそれでいいと思えばそれが全てなのだ。
シャワーを浴びて身体を拭いた男はせっかく休日だから久しぶりに散歩に行く事にした。
数少ない私服に着替え財布もスマホも布団の上に置き、部屋の鍵をかけて外にでる。一日ぶりに見る太陽はとても眩しく、男の荒んだ心もどこか晴れてくる様なそんな天気の朝だ。
「何だか気持ちいな~それにしてもこうして散歩するって久しぶりだよ」
男は元々散歩という行為が余り好きではない。理由は一つ、無価値だからだ。
何も考えずにタダぼーと歩き景色を眺めながら息を吸うだけの時間、この時間とにかく人生を無駄に消費している感じがしてイヤなのだ。
しかし、いざ外に出てしまえば青い空ので足を出しながら手を左右に振り続けるだけなのだが、男の気分は少し良くなっていった。
だが楽しい時間とは長くは続かない。
彼は道の小石に躓いて転んでしまった。
「あっ痛てっクソ!バカな事しやがって!」
情けない事を呟きながら立ち上がった男はふとあたりを見渡す。この恥ずかしい光景を誰かに見られていないだろうか?
もし誰かに見られていたら、全速力でこの場から立ち去らければいけないなと。
数秒あたりをキョロキョロを周りを確認したが誰もいなかったので、彼は「ふう」とため息をしながらまた歩きだした。
歩きながら男は考える。なぜ今の小石が存在するのか。科学的な話ではない、どちらかと言えば哲学と言えるだろう。
転んだのは自分のせいだが、それでもあの小石が無ければ転ぶ事も無かった。
ならばあの小石は自分も転ばせる為だけに存在していた『価値の無い物』と言えるのではないだろうか。
男は人が生きるにおいて一番重要なのは『価値がある事』だと考えている。価値とはいうのは彼の中では人の役に立つ事。誰かの役に立てるというのはそれだけで計り知れない程の価値を産むのだ。
たった一つだけの特別な。
故に、価値の無い物には存在する意味は無い。
極端に言えば誰の役にも立てないモノなど消えてしまえと彼は考えている。
だからこそ彼は価値を追求し続ける。
自分が存在しこの世に生き続けても許される理由を作る為に。
「やっぱりあの小石には価値なんか無いよな。あんなモノ消えちまえばいいんだ…まだ痛いな…」
彼は足を引きずりながらそう言った。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
初めてですがオリジナルの短編の小説を執筆してみる事にします。
時間はかかるでしょうが必ず完成させます。
一応今回も合わせて全8話の予定です。
今回の登場人物
男
本作の主人公
名前は無い(その方が感情移入しやすいと考えたので)
常に自分やそれ以外のモノが存在する価値を考えている。