しばらく投稿があいてしまい申し訳ありません。
勢いで小説を書いてしまった自分のせいですが、この計画性の無さには我ながら驚かされます。
ただ完結はさせますので、どうか気長にお待ちください。
「あのさあ、お前何度言えば分かるんだ?」
午前10時。中年の男性の声がオフィスに広がる。
その声は小さいながらも、とても良く響き聞いた人間全ての心身体を震えさせた。
「メールくらい、書き終わったらダブルチェックするのが当たり前だよなあ?」
「……はい」
声は少し大きくなり、更にその威圧感を強めた。
そして、それを間近で聞いてる男は少しチビリそうになった。
この中年の男性の名前は長谷川 男の上司であり、男の中で最も恐れられている人間だ。
男は長谷川に取り引き先に送るメールを見せたのだが、そのメールに誤字、脱字が3つも見つかった事で彼の怒りは頂点に達してしまったのだ。
「お前よお、このメール俺に見せる前にダブルチェックしようって考えなかったのか?」
「申し訳ありません…それに気付く事が出来ませんでした」
「申し訳ないじゃねぇんだよ!てめぇ、そういう情熱ってのないのか?」
ダブルチェックをしていないというのは嘘だ。
実際はメールを長谷川に見せる前に、3回程文章を見直した。その際に誤字、脱字を見つけ直した。
直してコレなのだ。
しかし、それを言うと「やっぱり仕事に対して情熱がないだな」と更に怒られるというのが分かっているので、男は言わない。
「たくっ…いいか、お前のミスは小さいものばかりだが、それが会社にどれだけの損害を与えてるのか考えろよ?
ホントお前には裁判でも起こして、賠償させたいくらいにはムカついてるが…まあ、社員のお前にそんな事言ったてしょうがねぇ。
………次はねぇからな?」
「はい…本当に申し訳ありませんでした!」
こうして長谷川の説教は終わった。ほんの数十秒、程度だったが男にしてみれば数時間みっちり怒鳴られ続けた様な、そんな気分だった。
トイレから出て来た男は「ふう」と一度ため息をつく。長谷川の事は嫌いではないが、この説教はなんとかならないかと思う。
しかしそれは無理だろう。上司という存在はどの場所でも怖いモノだ。
長谷川の様なとにかく仕事に対してとにかく結果を求める人間と、男の様な仕事に対して熱意のない人間では人として、根っこから合わない。
しかし、仕そういう複雑な人間関係とも上手に付き合って行かなればならない。
それが仕事だと男は考えている。
(もっと頑張らないとな)
そう心の中で呟く。頑張ると言っても何を頑張ればいいかなんて分からないが、それでも頑張らなければいけないのだ。
「お疲れ様ですー。先輩また長谷川さんに絞られてましたねー」
ふと後ろを振り返るとネクタイの曲がった青年がニヤニヤと笑いながら立っていた。
「ㇵㇵ、いつもの事だよ。こちらこそお疲れ様。あと千秋さん、またネクタイ曲がってるよ」
そう言いながら男は青年のネクタイを正しく直す。この青年は千秋 男の同い年の後輩だ。
「あーいつありがとうございます。オレなんか毎回気付かないウチにネクタイ曲がっちゃうんすよねー」
千秋はまた笑いながら話し続ける。
「今日は3時から取引先との打ち合わせなんだからね。曲がったネクタイで行ったら笑われちゃうでしょ」
「そうですねーすいません。以降気を付けいたします。」
千秋はヘラヘラとしながら反省の言葉を述べる。
すると前から、レディースーツを着た女性がやって来た。
「ダメでしょ千秋くん。そんな事言って、どうせまた明日には曲がったネクタイぶら下げてくるんでしょ?」
「あー優菜さん、そんな事ないっすよ。」
彼女の名前は優菜 男の勤める会社の経理をしている。
「だって、千秋くんもう入社して半年くらい経つのに毎日先輩にネクタイ直してもらってるじゃん」
「というか、千秋さんよくそれで面接通ったよね。面接の時も曲がってたの?ネクタイ」
男は素朴な疑問をぶつける。
「いやー何て言うんですかね、あの時だけは奇跡的にネクタイがビシッとしてて。もしかして僕、この会社に入る運命だったのかもしれません」
千秋はドヤ顔をしながら答える。
「何よそれ、ワザとやってるんじゃないの?」
「まぁまぁ二人とも、ネクタイが曲がってても人に見られたりしなければ大丈夫だから。
会社の中だったら俺が何度でも直してあげるからね」
「さっすが、先輩は優し___」
「___てめぇら何やってんだよ?」
殺気のこもった声が響く。この声は忘れもしない、先程男を震え上がらせた
「は、長谷川さん、一体なんの御用で?」
「なにってトイレだよ。お前らこそ便所の前でたむろしやがって、ガキじゃねぇんださっさと散れ」
「「「す、すいません」」」
3人はデスクに戻る。毎日の様に長谷川に怒られているが、男はこの職場が好きだ。
前は長谷川と社長しかいない会社だったが、今年になって千秋と優菜が入社して更に楽しくなった。
だが男は同時に不安も抱えている。
今の自分にどれ程の価値があるのか。自分のやっている事がどれくらい人の役にたっているのかと。
現在の仕事は男からしてみれば、余り価値を感じない。別に男が辞めたところでこの会社には特に問題はない。新しい社員を雇えばいいだけの話だ。
そんな仕事に、そんな環境に甘んじている自分でいいのか。夢に近づけるのかと。
男には夢があった。それは独立してお金持ちになる事だ。
誰かに依存するのではなく、自分の力で会社を大きくして、自分を雇ってくれたこの会社や育ててくれた両親に恩返しをしたいという夢がある。
しかしその夢を叶えるために一番必要なモノが男には無かった。『情熱』だ。
長谷川に言われた通り、彼は情熱がない。
今の仕事に対しても、叶えたい夢に対しても。
男は正直言って長谷川の事が羨ましいと思う時がある。自分もあんな風に、仕事に対して熱意を持ちたいと。
だが願った所で実現するわけでもないので、その度に男は自己嫌悪に陥る。
「俺は何のために生きてるんだ」
男のボゾっとした声は壁に吸い取られていった。
今回の登場キャラクターたち
長谷川 聖人 (はせがわ せいじ) 47歳
男が勤める会社の上司。上司ではあるのだが、男が勤める会社の社長とは前の会社との同期であり二人で独立して会社を立ち上げた凄い人。
仕事に対する情熱がパナイ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
千秋 悟 (ちあき さとる) 22歳
男の後輩。男からは千秋さんと呼ばれている。
ちょっとヘラヘラしたところがあるが、それは会社の人間を信用しているからであり外ではそんな態度は一切取らない。
この会社には新卒で入社した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
優菜 蛍 (ゆうな ほたる) 22歳
男の後輩。男の会社の経理として入社した。
経理以外にも暇な時間はオフィスの掃除や、書類の整理等も行っているしっかり者。
男については千秋に対して甘やかし過ぎだと思っている。
千秋同様、新卒で入社した。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
正直言って今超眠いので誤字、脱字があるかもしれません。
その時は教えてもらえると大変助かります。