突然現れて重要なこと言うキャラになろうとしたら失敗した 作:八木小太郎
小道から一歩出ればそこは、人が数え切れないほど往来している大通りだった。明らかに壊れている電波塔に少し面食らったがどうだ。周りを見ればなんとも治安のよさそうなこと。不安なことなど何もないといわんばかりに皆速足ですたすたと歩いている、平和な光景じゃないか。きっとあれだ。電波塔は地震かなにかで倒れたんだろう。心配することなんてなにもないさ・・・いや、あるわ!ありまくるわ!今日の宿どころか自分がいる世界のことすら何一つ知らないのに安心なんてできるか!思わず頭を抱え込んでしまう。周りから奇異の目で見られている気がするが知ったことか。俺は今重要なことを考えているんだ。
状況を整理しよう。リコリス・リコイルが何かはわからないが、ともかく俺は今東京にいる。荷物は何ももっていない。ズボンのポケットの中はどうだろう。そういえば確認してなかった。・・・ダメだ、何も入っていない。財布でもあればひとまず落ち着けたのに。これではジュース一本も買えやしない。
まあいい、次だ。俺は今スタンドを持っている。念写の能力を持つハーミットパープルだ。これが俺が今もっている唯一の武器と言っていいだろう。こいつをどう活用するかで俺がこの先やっていけるかが決まる。となれば今目指すべきはハーミットパープルを活かせる状況だ。砂に念写するのでは得られる情報量が少なすぎる。必要なのはテレビやスマホといった情報媒体だ。それさえあれば音や映像といったより多くの情報を念写できる。まずは家電量販店を探そう。そこでさらなる情報を得るのだ。俺は店を探して辺りをうろついてみることにした。
それから程なくして俺は家電量販店の入り口に立っていた。あたりを探し始めてからしばらくして、自分で探さずとも人に聞けばいいのだと気づいた。それからは優しそうな老婦人に話しかけて彼女は見た目通り優しかったのですんなりと道を教えてくれた。ただスマホを持っていないことを不審がられたのには少し焦ったが。
ともあれ無事、目的地に到着した。中から店のテーマソングがご機嫌に響いてくる。自動ドアが開き俺を迎え入れてくれた。あった。入ってすぐの位置に、一番目立つ場所にテレビの販売コーナーが設置されていた。
さて、それでは早速念写を開始するとしよう。手から紫色の茨をかたどったスタンドのヴィジョンが現れる。するすると蛇の様にうごめきテレビに絡みついた。そこで気づく。何を知ろうか、まだ考えていなかった。今自分に必要な情報はなんだろうか、考えてみるもののなかなか答えがでない。思考しようとするたびにテレビから流れてくる番組の内容が脳内を占拠してくる。鬱陶しいからテレビの電源を落としてしまおうか。いや、テレビの前で唸っているのはどれを買うか悩んでいるように見えるからいいとして、売り物を勝手に操作し始めるのは怪しまれると踏みとどまる。そのままテレビをにらんでいると番組は次の話題へと変わっていった。落ち着いた声の若い男性キャスターが台頭を読む。「アラン機関の謎に迫る!」か。
・・・これだ。これが今必要な情報だ。しばらく番組を見て確信する。アラン機関、才能を支援する謎の団体。もし彼らがスタンドという不思議な力を持つ自分を知ればどうだろうか。まず間違いなく支援の対象になるはずだ。支援が決まってしまえばこちらのものだ。ハーミットパープルを使って好きに生きればいいだけのこと。よし。ならば求める情報は決まった。スタンドに意識を向けて念じる。求めるのはアラン機関の人間の連絡先だ!順調に映像を映していたテレビに突然ノイズが走る。そのノイズはやがて一つの電話番号を形作った。これが俺のハーミットパープルの力だ!