月の女神と一匹狼   作:柳芽帆奈

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第二話「おはようのチュルパヤ」

 え〜、前回のあらすじ。

 

 俺、吉野翔悟!金沢から上京したピチピチの高校二年生!

 

 今日から陽葉学園ってとこに通う事になったんだが……

 

「しょ、翔悟……?翔悟なの……?」

 

 そこで出会ったのが天野愛莉。

 

 まあ彼女、実は俺の幼馴染みでねぇ、11年前までは家が隣同士だったんですよ。久しぶりにあったと思ったら、まさかのヤンデレとは……よよよ〜。

 

 閑話休題。

 

「それで……一体金沢で何をしてたのかしら?一体ナニを」

 

「いやニュアンスおかしいって」

 

 え〜、今中庭でオハナシという名の尋問を受けております。尋問官は勿論、天野愛莉。ハイライトもおさらばしてしまい、俺の目の前にあるのは洞洞たる茶色の瞳である。

 

 さっきの出来事のせいでクラスの中は俺と愛莉一色になり、一気に質問の嵐に。愛莉がそこから連れ出してくれた おかげでなんとか抜け出すことは出来たものの、今度は彼女による尋問が始まってしまった。

 

「コッチヲムキナサイ!」

 

「あっはい」

 

 怖いよねえ、水樹奈◯ボイスでヤンデレはマジで怖いからさ……この時だけでいいから中の人変わってくれませんか?え、変えてくれるの?助かった……ちなみに誰っすか?◯坂すみれ?い、嫌だ!お説教が必要な未来しか見えないじゃないか!

 

「てかほんとに何もしてないからさぁ」

 

「ホントね?彼女作ってないのね?手繋いでないのね?キスしてないのね?竿ハメてないのね?中に出s」

 

「やめてやめてR18になるのはまだ早い」

 

「……それもそうね」

 

 あ、ハイライト戻ってきた。何とか切り抜けられたようd

 

「逃がさないわよ♡」

 

「……」

 

 シュダッ(地面を蹴る俺)

 

 ガタタッ,ガシャーン(椅子とテーブルを蹴飛ばす愛莉)

 

 結局この日は一日中、バーサーカーと化した愛莉から逃げ回ることになった。振り切れたのはすっかり日が沈んだ頃になってからだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜数日後の朝〜

 

 チュンチュン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちゅーるっちゅーるちゅるぱーやっぱぁぁぁぁっ!』

 

「うるせぇぇぇぇぇ!」

 

 朝6時。いつものように静かで優雅な朝を迎えるはずが、突如鳴り響く謎の叫び声で見事に打ち砕かれた。うるさい、うるさすぎる!

 

 音の鳴る方を見やると身に覚えのない目覚ましが鎮座していた。成程、こいつが安眠妨害の犯人か……

 

「ええい、だまらっしゃい!」

 

 とにかく音を止めねば、そんな思考に囚われていた俺の脳にスイッチを切るなんていう余裕などなく、壁に投げつけることで何とか目覚ましを止めた。

 

「あー耳痛い……これあれか、録音したのが流れるタイプのやつか」

 

 もはや物言わぬ残骸と化した目覚ましを見ながらそう呟いた。はぁ……朝からなんやいね。こんな時は飯を食って気を紛らわすか……

 

 ガチャッ

 

「あら、おはようダーリン♡朝ご飯出来てるわよ♡」

 

 バタンッ

 

 あれれ〜?おかしいな〜?俺の目が狂ってなきゃ目の前に愛莉がいるのが見えたんだけどな〜?

 

 そうだ、これは幻覚だ。寝ぼけておかしくなっただけなんだ。もう一度開けてみよう。

 

 ガチャッ

 

「むぅ……」プクーッ

 

「……何でいるんすか?」

 

 えー、夢でも何でもありませんでした。目の前にはぷくっと顔を膨らませた愛莉の姿がはっきりと見えますね。しかも制服の上にエプロンという全国の男子高校生諸君が羨むシチュエーションで構えてきたもんだ。

 

 ただ、今の状況では恐怖が勝る。だって愛莉に新居の場所伝えてないんだよ?しかも彼女の家からはまあまあ離れた場所のはずなのに。

 

「てか君どうやって入ったんだい?」

 

「そんなのピッキンg……ゴホンッ、大家さんに合鍵を借りたのよ」

 

「オイコラてめえ」

 

 今ピッキングって言いかけたよな?俺は難聴主人公じゃねえから聞き逃してねえぞ?

 

「そんな事より朝ご飯が冷めちゃうわよ?」

 

「いやその前にピッキn」

 

「あ・さ・ご・は・ん」ギリギリ

 

「分かりました美味しく頂かせてもらいます」

 

「よろしい。さあ、席につきましょう」

 

 愛莉が指差した先には白ご飯に味噌汁、焼き魚といったザ・日本人な食事が並んでいた。う〜わ、すっごい美味しそ……

 

 ……いや待て。今目の前にいるのはヤンデレの天野愛莉だぞ?ヤンデレが用意した食事には髪の毛だの、唾だの、血だの、何かしら入ってるのが定石。これヤンデレの教科書があったら2ページ目に載ってる事項だと思うよ?えっ、1ページ目はって?知るかそんなこと。知りたかったら教科書会社さんに聞いて、どうぞ。

 

「一応聞くけど、変なもの入れてないよね?」

 

「ええ!私の愛のエキスをこめたもの、無害に決まってるじゃない♡」

 

 あーもーやだ、絶対なんか入れたよこれ。でも食べないって言ったら……

 

 ホワンホワンホワ~ン

 

「私の愛が詰まったご飯を食べたくないとでもいうの?」

 

「つまり私の愛情を否定するのね?」

 

「貴方に愛を受け取ってもらえないなら……」

 

「貴方を殺して、私も死ぬ」グサッ

 

 ギャァァァァァァ……

 

 はい、バッドエンド確定ですね。本当にありがとうございました。

 

 てな訳で、自分の命が惜しい私はとっとと飯を食うことにします。んぐんぐ……何これめっちゃうまい、まともな愛のエキスを入れてくれたみたい。

 

(ふふっ、私の『愛のエキ』ス入りのご飯、美味しそうに食べてくれてるわね)

 

 なんか悪寒がする……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜学校〜

 

 あの後、当然の如く愛莉が同伴して学校へと登校。唯一の救いは席順が出席番号順だったことから隣に来なかったことぐらいやろうか……

 

 そこからは特に変わったことはなかったが、放課後に事態が動く。

 

「ねぇ翔悟。ちょっと行ってみたいところがあるの。一緒に見に行かない?」

 

「一緒に?いいよ。どこ行くの?」

 

「ついてきて」

 

 そう言って愛莉は教室を出て行った。後をついていくと、そこは地下のステージ。中はかなり広くて、授業を終えた他の生徒達もここに集まっていた。何かやるんだろうか?

 

「あら、あなた知らなかったの?陽葉学園の一番の特徴を」

 

 一番の特徴?

 

「ええ。今、都内に乱立する高校は少子化で少なくなった高校生(パイ)を奪い合う戦いを繰り広げているの。三年前の共学化もその中で生き残るための一つの方策……そして、この陽葉学園は他校との更なる差別化を図る為にある策を取ることにしたの……」

 

 何かすごい丁寧な説明っすね……あっ、暗転した。

 

「それこそ!」

 

 愛莉が芝居がましく両手を広げた瞬間、ステージが明転する。

 

「DJ活動の推進よ!」

 

 現れたのは四人の女子生徒。スピーカーから大音量の音楽が流れ、オーディエンスは彼女達のパフォーマンスに狂喜する。今、数十人が集うこの空間を支配しているのは彼女達だ。

 

「すげぇ……」

 

 一糸乱れぬ動きで踊るダンサー、バイブスをアゲる曲をぶちかますDJ、彼女達の煌めきを際立たせる演出。

 

 いつしか、俺もその魅了されたオーディエンスの中の一人となっていた。金沢にいた時には見られなかった世界が、そこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとうございました!」

 

『ワァァァァ!』

 

 ……あれ、もう終わったのか?楽しい時間もあっという間だったな……

 

「どうだったかしら?」

 

「……何というか、言葉にはしにくいな。心が震えるようだった」

 

「でしょう?この学校にはこんな風にDJ活動が盛んなの。リミックスコンテストもいつも行われてるのよ」

 

 嬉々とした表情で愛莉が話す。

 

「まあ、私もたまに歌ったりするんだけどね。そしたら周りから『天才歌姫』なんて言われるようになっちゃった。鼻高々よ」

 

 そういや、幼稚園の時も愛莉はよく歌ってたな……あの時から『愛莉ちゃん、お歌上手だね!』なんて先生に言われてたけど、今でも歌を続けてたんだな。

 

「あら、今私のこと考えてたでしょう?嬉しい♡」

 

 何でナチュラルに人の考えを読めるんですかねぇ。せっかく感心してたのにぶち壊しだよ。

 

「せっかくなら歌ってあげるわよ?今ここで」

 

 ちょっ、人の話を聞k

 

 〜〜〜♪

 

 次の瞬間、愛莉の歌声が響き渡る。周囲にいた人は全員こちらに釘付けになった。ちょっ、スマホ向けないで恥ずかしい。えっ、なんだって?愛莉様が見えない?引っ込め?あ〜撮るんすね、邪魔者はひっこm

 

「んだとゴラァ!?誰が翔悟の悪口言ったんや!ツラ出せぇ!」

 

 ダメダメ愛莉!その右手を押さえて!君そんな喧嘩っ早くないでしょう!?

 

 はぁ……何でこんなヤンデレ歌姫になってしまったんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……天野愛莉。彼女がいれば、追いつける」

 

「だね。黒いものがどれだけ黒いかを示すための最適解。それは白い紙の上に置くこと……その対比によって互いが互いを引き立て合う。我ながら良い方法を思いついたものだよ」

 

「いやいや、どこが白いんだ?彼女、目にハイライトがないぞ?明らかに真っ黒な気がするのだが……」

 

「んー、まあ大丈夫でしょ!」

 

「人間は中身が肝心」グッ

 

「いやその中身の事を言ってるのだが」

 

 会場での愛莉の様子を横から見つめる三人の人影。彼女達の存在がこの後の運命を大きく変えることになるとはまだ想像出来なかった……

 




いかがでしたか?愛莉さんがキャラ崩壊しまくってますね、自分で書いてあれやけど。そしていよいよあの人たちの出番も出てきます……どうぞお楽しみに。感想あったらドシドシくれたら嬉しいな。
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