僕の名前はつめきり。
成人済みの雄です。
「あなたの性格を教えて下さい。」
と、暗闇のどこからか声が聞こえます。
声がほっちゃんっぽかったので
「堀江さんですか?ほっちゃんですよね!?」
と話かけたら
「あなたは疲れているようです。」
と、性格判断されました。
変な夢。
で、夢が終わると
「おい起きろ。甲斐性なし。」
お母様の心温まるお声で目が覚めました。
「今日は別に特別な日でもないけど、お前が旅立つ日、アタシは今日までお前を勇者として育ててきたつもりだ。」
とだけ告げられおかんは外に行きました。
嫌な予感はバリバリしますが着いて行かなくてもママンが戻ってきて死亡フラグなので仕方なく階段を降りる。
「さぁ、始発に乗って総理に会ってきなさい。」
今どきの勇者はまず総理に会いに行くようです。
自分ごときが総理に会えるような権利を持っているとも思えないが、とにかくアポなしでギャルズオリンポス状態で官邸に突撃してみたら、黒服さんがヤケに膨れ上がった顔面でビビりながらお迎えしてくれました。
おかん何したん。
総理はテレビの印象よりもずっと優しそうな、ただのおっさんでした。
好感が持てました。
「今世界は魔王バラモンに云々。」
やる気のなかった自分も超一流の政治家の演説にすっかり乗せられてしまい気持ちだけは勇者になりました。
「しかしお前ももういいおっさん。
友達もいなさそうだし一人旅も独り身も辛かろう。
酒場に行って仲間を探すと良い。」
と、心に染みる世話を焼かれた後、ひのきのぼうとこんぼうを頂きましたのでこん棒で頭をぶん殴っておきました。
我ながらかいしんのいちげき。
しかしこんな朝っぱらから酒場に行くのは気が引けます。
仕方がないのでつめきりさんは酒場の横にあるメイド喫茶に行きました。
仕方がないので。
店内に入ると、いるわいるわ。
昼間っからどうしようもねえつめきりさんと同種の仲間がわんさかと。
近くのメイドさんに話を伺ってみると、酒場の二階で登録所なる施設があるそうです。
登録所で相談すればつめきりさんの望み人間が見つかるそうです。
なんだか犯罪の匂いがします。
でもやる。
勇者なんてまともじゃ出来ない。
「巨乳とロリと天然の美少女を下さい。」
と、登録所で頼みそうになりました。
これではいけません。
確かに絶妙にバランスの取れた構成ですが、これでは魔王退治なんて不可能です。
美少女ハーレムを連れて世界を救うなんてのはたいして苦労してもないのに甘ったれている野郎の書く妄想小説だけです。
人間とことん疲れると全てを諦め現実を直視し、そんな妄想にすら浸らなくなるもんです。
話が反れました。
とりあえず現実を直視して巨乳とロリと天然は諦めた。
男の戦士、女の僧侶、魔法使いの女を登録する。
「戦士はとりあえず強い人。
僧侶の名前はもえたん。
魔法使いの名前はるりたん。」
などと登録していると、どこかから悲鳴のような声が聞こえる。
「いやぁあああ!これは生き別れのお母さんがくれた名前なのぉおお!!」
「うるさい!勇者様がご所望なんだ!!あんたは今からもえたんだよ!!」
なんかルイーダさんが叫んでる。
昼間っから飲んでるのかな、うるせえなぁ。
階段を降りると酒場には泣き崩れる女の子二人と、マサイの戦士が増えてました。
マサイのおっさん、つめきりさんを見て無言のまま真顔で跳ねて出迎えてくれました。
多分だけど歓迎されてる、やったぁ。
登録所でみんなの名前をつけたもんだから自己紹介はいりませんでした。
すなわちファーストコンタクトのきっかけが掴めなかったわけで、ギスギスとした旅が始まりました。