シンデレオン   作:アフロダイB

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黒剣の戦士レオン

『というわけでしばらくお暇な人と場所をお借りします』

 

問題の舞台監督が挨拶に来た。

場所を貸すくらいは問題ない。

変に外を歩き回られるよりはよっぽど都合がいいとも言える。

だが問題は役者だ。

 

『それは今からくじ引きで決めます』

 

…思わず絶句する。

あまりに適当すぎやしないだろうか。

 

『今回は無計画に始めつつトラブルをアドリブで対応していくことでアジを出す作風なのです』

 

アジと来た。

こういうボカした回答をされると初心者としては納得するしかない。

 

『セシル、仮面ライダー2号の誕生もトラブル対応だぞ』

 

知らねーよ。

自分はとにかくこういうのには疎い。

 

『あー…まぁ問題を起こさないようにやってくれ』

 

船のトラブルには対応するが演劇には口出ししない。

そう言い含めて背中を向けようとしたその時、人垣から聞き捨てならない声が飛び込んできた。

 

『ヒロインはレオンだぁー!』

 

セシルは思わず振り返る。

人垣の中心に恵まれた体躯に無数の傷、戦士の相をした寡黙な大男がヒロインと書かれた札を手にしていた。

その男こそがレオンだ。

 

『レ、レオン…?その、大丈夫か?』

 

内容には口出ししないと決めたのについつい駆け寄り声を掛けてしまう。

レオンとは長い付き合いだが他人と大騒ぎしている所など見た事がない。

常在戦場とでも言うべきか、とにかく寡黙で日常に於いても戦士たる風格と立ち振る舞いを貫くタイプなのだ。

とてもじゃないが役者に向いているとは思えない。

 

『…俺が役者か。考えた事もなかったな』

 

しかもヒロインだ。

どんな危険な任務も請け負うレオンだが流石に今回は嫌だろう。

何せ危険の意味が違う。

だがレオンは紙を眺めながら自分に問いかけるようにポツリと呟いた

 

『俺はずっと考えていた。

俺もいつかは剣を振れなくなる。

その時のために戦い以外の経験もしておくべきではないかと』

 

『それはまぁそうかも知れないがヒロイン役だぞ?

とても危険な役目だ。』

 

『喜劇にしかならないだろう。

だが俺が演じることで大勢の人を笑わせられるのならばそれは有意義な事だと思う』

 

予想外の反応だった。

剣と共に生き剣に死ぬタイプだと思っていたが

レオンは己に様々な可能性を見出そうとしていたのだ。

 

『それに劇場側から予算も受け取っているのだろう。

ならばこれは仕事だ。

俺は仕事で手を抜くつもりはない。

俺が必要とされているのなら俺なりにやらせてもらうのみだ』

 

レオンの言葉に周囲から歓声が湧く。

マジかよコイツ全力でやる気かよ。

呆気にとられるセシルを余所にレオンがポチ姫と打ち合わせを始める。

 

『ポチ姫、演目はなんだ?』

 

『シンデレラです』

 

『…なるほどな』

 

『なるほどな、じゃない。子供が泣くぞ。』

 

セシルの的確なツッコミにポーチは拳を上げ熱の籠もった声で返す。

 

『もちろん普通にシンデレラをなぞる気はありません。

これが喜劇となるか恋愛劇となるか、全ては今から決まるのです!

劇とは生き物。この劇はまさに今から我々が生み出すヒューマンドラマなのです!』

 

ポーチは拳を振り上げて高々と宣言しているが背後では地獄のような配役が決まっていた。

 

『なっ、私が母親役だと…』

 

『うぇっ、俺が意地悪な長女役かぁ』

 

『うっ、俺は次女役だと』

 

『くっ、これほど女所帯だと言うのにどうして女役に男ばかりが当たるのだ』

 

『レグレスはタンス役デス、トホホ』

 

セシルは心の中で断言する。

この劇は喜劇にしかならない。

いや、喜劇になればマシな方だろう。

 

かくして残りのくじ引きで全ての配役が決まり、役者達は公演に向けて準備を始めるのだった。

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