シンデレオン   作:アフロダイB

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おしろのぶとうかい

『で、今回の出来はどうなんだ?』

 

観客席で開演を待ちながらセシルはユーシアに問いかける。

セシルは他のやる事もあったので練習風景をほとんど見ていない。

 

『うーん、俺は好きだな!』

 

ユーシアはわずかに間を置いてから元気よく答える。

 

(楽天的なコイツが間を置くくらいだから相当ダメだな。)

 

だが茶番劇であったとしても船員達の努力の結晶なのだ。

船長として見届けてやろう。

セシルは覚悟を決めて舞台に集中することにした。

 

そして幕が上がると…

 

『おらぁシンデレラ!さっさと家事をやらんかぁ!』

 

観客の目に飛び込んできた光景はごうもん風景だった。

 

『やらぬ!俺は戦士だ!貴様らに屈したりなどしない!』

 

シンデレラと呼ばれた戦士風の男が力強く叫ぶ

自分達は何を見せられているのだろう

我々は演劇を見に来たはずだが目の前ではロープで吊るされた大男が鞭でシバかれる過酷な拷問が繰り広げられている。

観客達は驚きとまどっている。

 

『やれ、殺戮タンス!』

 

『ハイ、ムカ着火ファイアー!』

 

シンデレラがタンスから吐き出された炎に包まれる

 

『ぐぉぉ、この程度の炎では俺の心までは焼き尽くせぬ』

 

『くそぅ、ここまで痛めつけても家事をやらんとは。なんて恐ろしい娘だ…』

 

母親役のウィリアムズが息を切らせながら言う。

 

(だったらもう家事くらい自分でやれよ)

 

セシルは心の中で突っ込んだ。

 

『お母さま、残念ですが今日の拷問はここまでですわ』

 

『今日は王子様のフィアンセを決める大事なぶとうかいですわ。遅れたら大変ですわ』

 

『そうだったわね。

シンデレラ、私達はお城で開催されるぶとうかいに行ってきます。

貴方は家で留守番していなさい』

 

そう言うと意地悪な母と姉達はレオンの元を立ち去っていく。

ここからシンデレラらしくなるのかと観客達は胸を撫でおろした。

が、その思いも空しく母達は金属鎧と武器を装備して外出していった。

そんな気はしていたがやはり舞踏会ではなく武闘会のようだ。

シンデレラがモチーフのシナリオはどうなってしまうのか

観客達は違う意味でハラハラしていた。

 

『くそぅ、戦いの中で生まれ戦いに生きてきたこのシンデレラが…

国中の猛者が集まる武闘会に参加することすらできないとは。

戦士としてこれほどの屈辱はない』

 

その時であった。

突如として巻き起こった小さな土煙と共に舞台上にただものではない風格の大男が現れた。

魔女風の衣装を着たエーレンベルクだ。

 

『怪しい奴め、何者だ』

 

『俺は魔法使いだ』

 

『魔法使いだと?何用だ。

ここには戦場に赴くことすら出来ぬ哀れな戦士しかいない。去れ』

 

『ふっ、その哀れな戦士を見かねて俺は現れたのだがな』

 

『なんだと?』

 

少年漫画のような無駄にかっこいい会話が繰り広げられる。

 

『かぼちゃを持ってこい。この俺が舞踏会にふさわしい装備を整えてやろう』

 

『かぼちゃはない。殺戮タンスでいいか?』

 

『いいだろう』

 

いいのかよ。

ここにきてまたさっきの謎のタンスのお出ましだ。

展開が読めない。

何よりもここまでの登場人物で一番美しいのがタンスだと言うのが観客達を驚かせていた。

 

『我焦がれ、誘うは焦熱への儀式、其に捧げるは炎帝のタンス。

燃え盛りし世界ムスペルヘイムに祈りて、灼熱の抱擁を呼び出さん!』

 

意味ありげな本格的な詠唱が終わるとシンデレラは完全武装しタンスことレグレスは戦車へと姿を変えていた

 

『ふっ、この装備とチャリオッツならばどのような戦場であっても遅れはとるまい』

 

『感謝する。

これでお城の武闘会で戦う事が出来る。

だが何故俺にこれほどまでしてくれるのだ』

 

シンデレラが抱く当然の疑問に魔法使いは静かな笑みを浮かべて答える

 

『ふっ、真の戦士が戦う姿を観たかった。それだけだ。』

 

『お前という男は…』

 

2人の間に友情を感じられる沈黙が流れる

 

『だが忘れるな。俺の魔法は12時までだ。それまでに決着をつけることだ』

 

『よかろう、しかと目に焼き付けるといい。戦士レオン、全力で参る!』

 

シンデレラは戦車に飛び乗ると勇ましく飛び出していく。

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