舞台が城内から翌朝の街中に変更される。
兵士たちが町娘達を集め次々に黒剣リベレイターを握らせている。
『この黒剣リベレイターの真の力を開放できる女戦士を探している!』
花嫁を探しているとは到底思えないが花嫁を探しているのだ。
町娘たちは我こそはと次々に挑戦するが誰も黒剣リベレイターの真の力を開放するどころか持ち上げる事すら出来ない。
こんなものを容易く振り回せる時点である意味で女ではないのだ。
やがてシンデレラの番となり、シンデレラが人々の見守る中で黒剣リベレイターを高々と天に掲げる。
ドレス姿でなければ勇ましく美しい光景だったに違いない。
『間違いない、彼女こそ昨晩私と戦った女性に違いない』
王子が高らかに声を挙げると兵士達が盛大に祝福の声を挙げる。
(やれやれ、どうにか本来の終わり方に繋げた)
イズクレイが安堵の溜め息をついた。
観客席にいたセシルは思う。
今回最も苦労したのはイズクレイだったであろうと。
彼には同情を禁じ得ない。
優しくしてやろうと思う。
だが続くレオンのセリフがここまでの努力を全否定する。
『よし、第2ラウンドだな』
『またやんの!?』
『俺は戦士だ。俺の身はタダではくれてやらん。
俺が欲しければ権力ではなく己が武技を示すことだ』
(やめてくれ。
正直ボクはもう今すぐにでも壇上から飛び降りたいんだぞ?)
ようやく終わったのにレオンが独自の戦士理論で混ぜ返す。
『イイ加減にしなサイ』
だが監督がそれを許さない。
監督の指示でタンスが火を吹き2人を炎に包む。
燃える主役2人をよそに
全ての役者達が壇上に現れ客先に頭を下げる。
そして、幕がゆっくりと降りはじめる。
長い長いアドリブだらけの公演はようやく終わったのである。
色々と凄まじい舞台だったがこれで終わりのようだ。
観客達は盛大な拍手で舞台成功を称えた。
胸に沸いた独特かつ複雑な感情を胸に秘めながら…
それから数日はポーチ監督による舞台が街で話題となった。
あれは面白かった?うん、だよな?
斬新な芸術とみるべきかタダの投げやりとみるべきか
そもそもあれは演劇というカテゴリでいいのか
反応は様々であるが、何はともあれ社会の常識に一石を投じたポーチの名声は再び高まり次の公演が期待されていたが…
『次はセシルさんを主演にした赤ずきんちゃんを』
『ダメだ』
セシルは即答した。
主演レオン、軽傷と火傷
王子役イズクレイ、火傷、全治3日
タンスレグレス、心に若干の傷と不信感
ポーチ監督が再びメガホンを手にする日は遠そうである。