数週間後、イズレーンに所を構える部門の名家『蔵院家』の庭にクライン、ポーチ、カインド、スレイ、マナの姿があった。
『な、何でお前らがうちにいるんだよ!』
『…ご、ごめんなさい…だって…ポチちゃんが知らない所に行くって言うから…私…付き添いで…;;』
いきなり怒鳴られて即効で泣きそうになるマナをクラインが慌ててなだめる。
『俺達はクライン殿の母君に頼まれたのだ。ゴッポリを打ち破る特訓に俺も付き合ってやろう』
『うむ、確かに特訓にマナ殿は不要であるが致し方なし!とはいえ、我々は魔物の技術を文献でしか知らぬ。やはり特訓の鍵となるのはポーチ姫であろう』
クラインは心の中で思った。一番歓迎してねぇのはお前ら2人だ。
続いてカインドとスレイの期待に満ちた2人の熱い視線を受け止めポーチはドヤ顔で胸を張るポーチを見てクラインは一層不安になるのであった。
これもうダメだろ。
ふと、そこでクラインはある疑問に辿り着く。
セフィドの傭兵であるカインドはともかくヴァルトリエ帝国の軍人であるはずのスレイが何故あの場にいたのか。
クラインが興味本位でスレイに事情を尋ねてみると
『うむ、武術を極めるにはポーチ殿のポチ術が必要不可欠と判断した!ゆえに俺はここ数週間、おはようからおやすみまでポーチ殿の生活を全て監視していた!ポチ術の極意がどこに隠されているかもわからぬゆえ…』
『お、おまわりさ~ん!ここです~!!』
『待てぇぇいい!マナ殿!!きゃつらは人の話を聞かんのだ!!!俺にそのような性癖はない!!』
スレイの口から驚愕の事実が語られるにつれ徐々に顔を青ざめていったマナがポーチの手を掴み国家権力に助けを求めるとスレイは慌ててマナの肩を掴んで引き止めた。
よほどお世話になっているのか、スレイは必死の顔であった。
怯えたマナがとっさに刀を抜きスレイに泣きながら連続攻撃で切りかかるとスレイもまた腰の武器を抜き去り攻撃を受け流しながら間合いを詰めていった。
『バカ!余計にびびらせんな!!』
『貴様!大人しく斬られろとでも言うのか!!』
今度はクラインの獄炎槌を使った強烈なツッコミとスレイの斬神刀の激しい攻防が始まる。
そんな様子を見てカインドは小さなため息をつくとゆっくりとした足取りでマナに歩み寄った。
『マナ殿。スレイ殿の性癖がどうかは知らんが俺を信じてくれないか。俺の目標とも言えるクライン殿の更なる強化にはポーチの力がどうしても必要なんだ。スレイ殿が何かした時は俺が2人を守ってやる』
いつの間にか自分の誤解が確定されている。スレイは武器を構えながら驚愕の表情でカインドとマナを見ていた。
マナはスレイを不安げな表情で見た後に鎧の奥に光っているであろうカインドの目を見て無言のまま小さく頷く。
『俺の事なら心配するな。友や仲間達に誓おう。確かにマナ殿やポーチは愛らしいと思うが俺とはつりあわないな。俺ほどになるともっと大人の…そうだな、例えばクライン殿の母君のような大人の魅力をまとった女性に惹かれてしまうのさ』
カインドが言い終えた途端にクラインの獄炎槌がカインドを襲った。
『てめぇぇぇぇええ!!母上が狙いかぁぁぁあああっ!!』
『おぉぉぉぉ!!落ち着けこのマザコン!!』
寸前のところで獄炎槌を受け止め2人は鍔競り合いの体制となる。
『みんなアホばっかりです…;;』
『マナ殿!誤解だぁぁーーーー!!俺はアホでも変態でもない!!』
ポーチの手を取って泣きながら走り去るマナを姿勢の良い走法でスレイが追いかけていった。