何とか落ち着いた4人はポーチがホワイトボードを相棒に語る講義の内容をノートに録っていた。
『ヤンクデッゴン術のゴッポリは古くはトマキュウスインゴと呼ばれ、ドンタボ地方のロッカブ…』
『はい、先生!ぜんっぜんわかりません!!』
コボルト族特有の意味不明な単語の羅列に耐えかねたクラインが手を上げて大きな声で発言するとスレイとカインドが哀れんだ目でクラインを見るのだった。
『むぅ、まさかこの程度も知らんとはな』
『この様子ではザッブン術も知らんのだろう。噂に聞こえた蔵院家の若き頭領がこの程度の知識しか持ち合わせていないとはな』
蔑んだ目で見る2人の目をクラインは『俺は実践派なんだよ!!』と否定する。
ならば実践しようとポーチが提案をする。
ポーチの一撃をクラインが頭で受けるという提案だ。
不思議と死にはしないが痛いものは痛いポーチの一撃をクラインが全力で否定するとスレイが立ち上がり自ら実験台に名乗りを上げる。
さすがに心配になったクラインがスレイを引き止めるとスレイは笑顔で答えた。
『ポーチ姫の一撃ならばむしろ本望だ』
マナが防犯ブザーを取り出したのでスレイが慌てて止める。
槌を極めたいだけだ、ポーチ個人に興味があるわけではない。
スレイは必死に否定すればするほどうさんくさく見える泥沼に陥っていた。
やがて距離を開けたポーチが武器を構えると無手のままスレイが待ち構える。
ポーチは大きく助走をつけると横に体を捻り、そのまま高く飛び上がってスレイの頭に強烈な一撃を加える。
『ぬぅぅぅぅん!!』
スレイは気を失う直前にいつもの癖で『報復』行動を取りポーチの頭をげんこつで殴りつける。
大きなコブが出来たポーチは声を上げて泣き出しマナが抱きながら頭をさすってなだめる。
スレイは気を失ったままカインドとクラインに蹴られ続けた。
スレイが目を覚ましポーチが泣き止むとまずは反省会、そしてスレイに何か見えたのかと尋ねた。
『うむ、よくは覚えていないが…そうだ!ペンギンの姿が見えたのをハッキリと覚えている!』
『あ、それ私のパンツなのです』
ポーチが発言するとカインドとクラインから武器によるツッコミがスレイの頭に飛んだ。
『お前本当に槌に興味があるのか!?槌じゃなくてポチなんじゃねぇのか!!?』
『たまたま記憶に残ったのがそれだっただけだ。打ち所の問題だ!』
再び言い争いを始めるスレイとクラインを両手で押さえつけカインドがスレイに問いかける。
『大事なことだから確認しよう。スレイ殿が興味あるのはポチか?』
『槌だ』
『ポチか?』
『槌だ』
『ポチか?』
『槌だ』
『槌か?』
『ポチだ!男に二言は無い!!』
マナがポーチの手を取って走り去ると己の過ちに気付いたスレイが慌てて追いかけた。
男に二言はあった。