一方その頃、セフィドではダンデリオンの協力の元でセシルの特訓が続いていた。
ダンデリオンは困惑していた。
セシルが先ほどから口走っている『ヤンク何とか術のゴッポリ』が気になって仕方が無いのである。
セシルの頼みを断れず黙って特訓を続けていたダンデリオンだったが、気になって集中できなかったためそれとなくセシルに尋ねてみた。
セシルの口から語られた誤解、驚愕の事実、クライン達の行動。
セシルはダンデリオンに両手を合わせて『他に相手がいないんだ』と、特訓の相手を頼むとダンデリオンも頼られることがまんざらではないため特訓は続けられたが
『セシルさん、ありもしない技をクラインさんに破られるためにわざわざ開発してるの?』
ダンデリオンの一言でセシルは壁に片手を着き自身の行動について考え込み始めた。
舞台は再びイズレーンに移る。
『うぅ…何で私まで…叩かれたんですか…;;』
勢いで殴り飛ばされ泣き顔のマナをはじめとする4人がお互いに万能薬を使用していた。
なお、全身鎧のカインドは兜が大きく凹んでいた。
唯一殴り飛ばされなかったポーチは母によって屋敷へと連れられていった。
教育上よろしくないと判断されたのかも知れない。
『先ほどの特訓なのだが、少々趣旨がズレていたのではないか』
スレイの言葉にマナとクラインは何度も大きく頷く。
『そうだな。チャックを下ろす事ではなく下りた後が重要なはずだ』
カインドの言葉でマナとクラインは倒れる。
チャックを下ろすのが目的ではない。
敵の目を欺くような攻撃に引っかからないため、自らが同じ行動を経験し学ぶ事で欺かれない精神力を養うのが目的なのだ。
結論は出た。
ポーチがスレイの目を欺いたように、相手はどんな手で敵の目を引くかわからない。
クラインは技を実践し、見られ慣れることで技を克服する必要がある。
スレイが立ち上がるとマナが慌てて横を向きクラインがすぐに身構える。
『ぬ、見られる側は嫌か。ならば』
スレイがベルトに手をかけた所で獄炎槌による強烈な一撃がスレイの顔に炸裂する。
『おい、まだそういう応用技には早いぞ』
『応用して隙を作り上げたわけじゃねぇよ!見るのも見られるのも普通に嫌だから抵抗してんだ!』
『ぬぅ、なんというわがままな男だ。やむおえん、またマナ殿に…』
スレイが言葉を言い終える前にマナが首を振りながら人差し指を斜めにクロスさせて拒否の意思を訴える。
マナの仕草を見て2人はショックを受け後ろに後ずさる。
『バカな…俺の国の英雄であるマナ殿がこの程度もできない胆力の持ち主だったというのか…戦友に対してその程度の友情しか持ち合わせていないのか…俺は階級の上での話しとは言え…こんな少女に負けたのか…』
『落ちつけカインド、マナ殿は奥ゆかしさからわずかに躊躇したに過ぎん。普段は怯えていても窮地に立てば動き出すのがマナ殿ではないか』
『それもそうだ。では窮地に立たせるとしよう』
結論が出されるとすぐにスレイがマナの頭をガッチリ掴むと無理やりに床に座らせる。
付き合い切れずその場を離れようとしたクラインをスレイが一喝する。
『マナ殿がここまでしてくれているというのに貴様はまた逃げ出そうとするのか』
クラインは返す言葉がなかった。
してくれているわけではないが、マナが窮地に陥っているのは事実だったからだ。
自分は目の前にいる少女を救ってやらねばならない。
だがどうすればいい。2人を納得させるのは難しい。
クラインは決心し、マナに小声で提案した。
『…マナちゃん、フリだけだ…見たフリだけでいい。一瞬薄目を開けてすぐに閉じればいい。俺はわずかにタイミングをずらしてズボンしか見せないようにする』
かろうじて出たクラインの妥協案だったがマナは必死の抵抗を続ける。
『…い、嫌です…や、やめてくださいクラインさん…』
『俺だって嫌だよ!!でもここまで妥協してやったんだから早くやってくれよ!!こっちだって恥ずかしいんだから!!』
『2人の特訓の様子は俺がしっかりと記録しておいてやる。存分にやるといい』
カインドはハンディカムのビデオを取り出し早業で解決しようとするクラインと必死で抵抗するマナの様子を撮影し始めた。
マナの頭を掴んで目をこじ開けようとするスレイ。
今まさにチャックを下ろそうとするクライン。
泣いて抵抗するマナ。
その様子を撮影するカインド。
様子見に再び現れたクラインの母。
『あぁもう!さっさと見てくれよ!!こっちは我慢の限界なんだから!!』
『マナ殿、次が控えている!早くやれぃ!!』
『撮影は任せろ!俺から逃げられると思うなよ!』
『い~や~で~す~!!』
母の怒りが大地を揺らし、続いて母の一撃で再度4人の体が宙を舞った。