今度はカインドとスレイの男2人で万能薬を塗りあう。
マナは拗ねて頬を膨らませながら一人で反対側を向いて万能薬を頭に出来た大きなコブに塗りつけている。
ちなみに全身鎧のカインドは頭部にヒビが入り一部破損していた。
クラインは宙を舞った後、母に引きずられて屋敷の中へ入って行き、ポーチを連れて再び戻ってきたときには真っ白に燃え尽きていた。
『俺はもう何を見ても驚かない…もう何も怖くない…』
何があったのかはわからないがゴッポリを見切る上での特訓の必要はなくなったらしい。
マナが不安げに母の方を向くと母は穏やかな顔をマナに向けた。
『心配する必要はありません、蔵院家の男子は大体こうやって成長していくものです』
クラインにはもっと優しくしてあげよう。3人の心が一つになった。
ともあれこれで特訓は終わったとマナは一安心したのだが、カインドとスレイがまだ納得しなかった。
『ゴッポリを見切れるようになったまではいい。だが、その後に続く攻撃がなければまた決着がつかぬままではないか』
確かに今のままではいつも通りの互角に戻るだけだ。セシルから1本取り返すことは出来ない。
クラインが手を顎に当てて考えていると誰かが服を引っ張ったことに気付き、後ろを振り向くとドヤ顔で胸を張るポーチの姿があった。
『クラインさんには大変お世話になったのです、何かお礼をしなければいけないので考えていたらコボルト族に伝わる秘伝があったのを思い出したので教えてあげるのです』
秘伝という言葉の意味を全く理解していないポーチの提案により、クラインは新たな技を習得すべく再び修行を開始した。
コッボドロの応用技でありガギャミンヅとノトヤンベを足して2で割りジョットラを甘く切なく加えたような技。
スレイの通訳によると「怒りの感情を力に変換し、その時の気分で思いのままに動き相手に襲い掛かる技」ということらしい。
『つまり…クラインさんを怒らせればいいんでしょうか…』
マナが小さく手を上げて恐る恐る質問をするとスレイとカインドが頷く。
『みなでクライン殿を罵倒し、蔑み、見下し、嘲笑う。どんな手段を講じようがどれほど心の傷をえぐろうがかまわん!』
かまうかまわないはクラインの決めることだが、本人がそう告げる暇もなく特訓が始まった。
マナを除く3人が石を投げつけながらそれぞれに罵倒する。
『おらぁ!母上母上と気持ち悪いんだよマザコン!』
『服なしでは清継にあっさり負ける分際で頭領とは笑わせてくれる!!』
『私だってお母さんはとっくに卒業してますよっ』
『イジメかっ!!』
クラインが少し涙目になりながらツッコミを入れる。
どうやら効果は絶大のようだ。
クラインの涙目のツッコミを気にも留めず3人は何もしないマナの方を振り向く。
『やはり…マナ殿の戦友への思いはこの程度だと言うのか…』
『落ち着け、マナ殿は今はまだ最高の罵倒文句を考えているに過ぎん』
『マナさん、ガンバですよっ!』
逃げ場はない。3人のプレッシャーに圧倒されたマナは必死にクラインの悪口を考え、言葉に出した。
『さ、斎藤さんに言ったあの口説き文句は~…リィさんに言えてたとしてもどうせお笑いに繋がったと思いますっ…むしろ斎藤さんでよかったと思いますよっ!』
実に良い切り口だ。
マナの言葉に続いて小石をぶつけながら罵倒を始めた。
『貴様とリィ殿など全然釣り合わないぞ!鏡を見て来い若造が!!』
『貴様など斎藤で十分だ!!斎藤と達者で暮らせ!!』
『母上とは結婚できないのですよっ!ちゃんとわかってるのですかっ!?』
『どうせ毎回面白いオチが着くから…クラインさんには当分彼女なんか出来ませんっ…!』
マナの最後の言葉で辺りが一気に静まり返る。
マナが冷や汗をかきながらゆっくりと横を振り向くと3人が『うわ、言っちゃった』という目でマナを見ていた。
ゆっくりと放物線を描きと飛んでいった小石がクラインの頭にコツンと当たり
クラインの怒りが爆発した。