死屍累々。
怒りの感情を武器に変えたクラインの新技は形容しがたい不思議な動きで4人に襲い掛かった。
正面から大の字で壁に埋もれた体勢のスレイが『見事…』と言いながら壁から体を剥がした。
続いて地面に垂直に突き刺さっていたカインド、木の枝に引っかかっていたポーチ、壁に頭から突っ込んで腰まで貫通していたマナもスレイに足を引っ張られて元に戻る。
クラインは心に傷を負ったが特訓に犠牲はつきもの。クラインの特訓は成功したのだ。
5人がお互いに顔を見合わせて笑いあう。
5人とも心が達成感で満たされ清々しい気分だった。
『さて、先ほどの新技の名前を決めなければならないな』
カインドの提案を4人が肯定する。
『技術そのものはコボルトの、編み出したのはクライン、そして一番心の傷をえぐったのはマナ殿だ。マナ殿がコボルトのようなイメージの名前をつけるべきだろう』
『そうだな、今のは蔵院家に伝わる奥義書の火の章第128項に加えさせてもらうから「蔵院流槌術火の章第128項奥義」が前置きの名前かな。後はマナちゃんに任せたぜ』
いきなり重大な役目に抜擢され、うろたえながら断ろうとしたマナだったが、4人がマナを優しい眼差しで見ていたためマナは何も言い返せなくなる。
(コボルトって言われても…コボルトってそもそもどんな生き物なのかな…犬っぽいのはわかるんだけど…犬…犬…犬~…)
マナが悩み続けているのをスレイは振りと勘違いし、ハードルを高く上げた。
『では聞かせてもらおう!マナ殿!かの奥義の名を!!』
スレイにハードルを上げられ、時間もなくされたマナは目を回し完全にパニックに陥り、とにかく思いついたコボルトのイメージを小声で呟いた。
『わ…わんわん…』
5人の間に沈黙が流れる。
もう一度聞きなおすクラインにマナが上目使いで4人を見上げながらもう一度小声で『わ…わんわん…です…』と呟く。
『萌!!』
5人の間に流れる微妙な空気を読んだスレイが珍しく気を使ってマナを褒めようとした。
『む、スレイ殿。何だそれは?』
突如叫びだしたスレイにクラインはどん引きし、カインドは興味を示しながら質問をなげかける。
『聞いた事がある。今のマナ殿のように少女の愛らしい仕草を褒める時に使う言葉らしい』
『ほう、今のマナ殿がその「萌」というのものなのか』
『如何にも!』
『なるほど、これが「萌」か、覚えておこう』
『うむ、「萌」だ!』
『復唱しておこう、今のが「萌」だ』
『うむ、萌え萌えである!』
『今のマナ殿は「萌」なのだな』
『マナ殿は「萌」だ!』
『やばいやばいやばい!マナちゃんがやばい!!』
小さく震えながら顔を赤らめ恥ずかしさで泣き出しそうなマナに気付いてクラインが慌てて2人を制止する。
泣きそうなマナに気付いて2人は「女心は難しい」と頭をうならせた。