【悲報】個性が通報案件だった(涙)   作:サイコロさん

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プロローグ 無個性よりも没個性の方が辛いよねってこと

 5月23日。

 

 

 それは俺が遂に4歳を迎える誕生日、そしてこの後の人生に影響が及ぶボーダーラインだ……!

 何故ならば! この日は『個性』を確認する為に病院へとお袋と共に向かっているぜ!

 

 

 俺が目指している『真のヒーロー』へと成るには、やはり無個性より個性が有った方がかなり有利になるのは一目瞭然だ。

 

 

 故に、この日が俺にとっての桶狭間なのだッ!!!

 

 

 すると髭を生やした丸眼鏡の医者が、パソコンを開きながら此方を向く。

 

 

「お子さんは個性を持っていますね」

 

 

 スゥッ────来ましたわ。勝ち確定ktkr!

 

 

「先生。でもうちの子どもは個性らしき力を扱っている様子を見ていませんが……」

 

 

 お袋が頬に手をやりながら心配そうに医者へ尋ねる。

 オイオイお袋~。折角の勝ち確を無下にするんじゃねぇよ~。

 

 

「それはそうですよ。お子さんの個性には()()()()()があり、まだその条件を()()()()()()()()から」

 

 

 成程な。

 つまり俺の個性が【マグマの中をスイスイ泳げる】だったらマグマに浸かない限り発覚しないように、特定の環境下じゃなきゃ本領が発揮できないタイプなのか。

 確かに条件はアレだが、逆を言えばその条件下ならば無類の強さを誇る、というのは目に見えている!

 

 

 ……それに個性は何でもいい。個性とはその人自身の唯一無二の特徴。

 強い、とか弱い、とか関係ない。とにかく俺は個性が欲しい!

 

 

 個性なんて何でもいいだろうッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……だが数分後の俺はこの言葉を後悔するだろう。

 

 

 ……まさか()()()()()だったとは……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 とある路地裏、落ち行く太陽に照らされた路地裏入り口壁にはペンキで描かれたアートや文字で溢れ、人気がなくゴミ袋が置いてある何処にでもありそうな路地裏に複数の人影がいた。

 

 

 その数は四人。その内一人は今にも泣きそうな顔をしていた。

 

 

 一人は赤と白で構成されたセーラー服を身に付けたの女子中学生。新品なことからおそらく入学したばかりだろう。

 他の三人はまさにチンピラみたいな服装をしており、ニタニタと意地悪そうな笑みを浮かべてその女性を見ていた。

 その内一人は女子高校生の足が地面につけれないよう、手から肌色の鎖らしき何かを出していた。

 

 

「は、離して………!」

 

 

 女子中学生は苦しそうながらも、精一杯の声を出して懇願した。

 しかしそれは裏目に出て、三人は余計にニタニタと意地悪そうな笑みをさらに浮かべて、女子高校生の体つきを舐め回すようにじっくりと見た。

 

 

「ぎゃはは! なぁに心配すんなっ!」

 

 

「ただ楽しいことをしよーぜ~!」

 

 

「ねえ、この子のスタイル俺好みだわ。先にやっていい?」

 

 

 しかも女子中学生の意思は無視しながら、誰が先にいたぶるのか、話し合っていた。

 

 

 女子中学生は泣きじゃくった。

 それは喉を掴まれているために叫べず、だからといって個性で逃げきるには力が足りず、荒事は慣れていない。

 もう諦めの領域に入っていた。それは民衆の希望、ヒーローが全然来ないことが大きく関係している。

 

 

 しかしヒーローだって人間だ。

 『ヒーローは遅れてやってくる』という言葉が生まれてしまうように、ヒーローが完璧な存在じゃない。 

 そして今日は女子中学生の厄日なのか。

 その日はとある大物(ヴィラン)が暴れに暴れており、現場周辺のヒーローが緊急出動しているのだ。

 

 

 今すぐに助けてくれるヒーローは、たった今窮地に陥っている女子中学生を助けるヒーローは誰もいない。

 

 

 偶然にもこの光景を目にした人々は、"きっとヒーローがなんとかしてくれる"と厄介事をヒーローへ押し付けその場から早歩きで去っていた。

 

 

 無理もない。人間は誰だって責任から逃れたいのだから。

 

 

 しかしそれが女子中学生をさらに追い詰める。

 なんなら既にチンピラが個性を使って、女子中学生の個性を封じ込めているのだから。

 

 

「オレの個性……【爪鎖(ネイルチェーン)】は誰だって何だって縛り縛り縛りあげるッ! お前のそのバツグンスタイルだって難なく縛りあげれるぜェ!」

 

 

「なあ。そろそろヤっていい?」

 

 

「お~い。ナッチャンは気が(はえ)ーな」

 

 

「ッ!!?」

 

 

 すると縛りあげているチンピラ以外の二人の内一人が、なんと普通に女子中学生の胸をガシッと触った。

 そして"うひょー"と歓喜するチンピラ。胸にやった手は離さずそのまま柔らかさを堪能していた。

 女子中学生は静かに悲鳴をあげていた。

 

 

「おいぃ。このおっぱい良いぜぇ!」

 

 

「やっべ。ムラムラする」

 

 

「なあやっちゃおうぜ! 我慢できねぇ!」

 

 

 女子中学生は予想していた最悪が現実になろうとしていることに耐えきれず、思わず目を瞑った。

 それはこれが悪夢だと、悪い夢だと思いたかった……と現実から逃げたかった。

 

 

「よっしゃァ! いただきまーすゥッ!」

 

 

 現実は残酷だ。

 女子中学生は無理やり縛りあげられ、そしてセーラー服を乱暴に脱がされていることで、これが現実だと理解しなくてはならなくなった。

 

 

 女子中学生は涙目からさらに大粒の涙を流した。

喉を縛りあげられている為に、声があげれなかったからこそ、涙で表現した。

 嫌だ、そんなことをしたくないという本音を、何もできない無力感を、止めて欲しいという純粋な懇願を、たった今にも流れ落ちる涙で表していた。

 

 

 チンピラ共には全く関係ないように、自分のベルトを外そうとしていた。

 

 

(誰か……助けて……)

 

 

 女子中学生が一滴の涙を最後に流した時に、誰にも聞こえもしない心で助けを願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時だった。

 

 

「ゴフッ!!!?!?」

 

 

 女子中学生の胸を触っていたチンピラが空へと飛んだ。

 すると触っていた時にはなかった、腹辺りに拳で殴られたような窪みがあった。

 

 

「「あっちゃん!!?」」

 

 

 胸を触っていたチンピラの場所には、謎の男が佇んでいた。

 

 

 男はロボットスーツみたいに全身が謎の機械がついたゴテゴテな格好で、首から上は顔を覆うほどの両目の穴しか空いていない白仮面を身に付け、黒マントをつけていた。

 

 

「な、なんだテメーは!?」

 

 

「俺がこんなことをする理由はたった三つ」

 

 

 驚きを隠せないチンピラと女子中学生に反して、白仮面の男は落ち着きながら誰にも聞こえるように話し始めた。

 

 

「一つ、個性を持て余しているからって悪行に身を落としたこと。二つ、個性云々関係なく誰かを泣かすこと。そして三つ目は──────────」

 

 

 白仮面の男は驚きを隠せない男に向かって、上段蹴りを放ち、そしてチンピラの顎が外れた。

 

 

「────女の子を泣かすクソヤローなぞ、この俺がブッ飛ばすッ!!!」

 

 

「な、クソッ!!」

 

 

 女子中学生を縛りあげていたチンピラは、片方の手で女子中学生を縛りあげている同じ鎖らしき何かを、白仮面の首もとへ目掛ける。

 白仮面の男は、すかさず顎が外れたチンピラを肉壁とする。

 

 

「ッ! なにッ!?」

 

 

 鎖らしき何かは顎を外れたチンピラの喉を絞める。

 すると顎が外れているのに関わらず、言葉にならない嗚咽に近い悲鳴をあげなから気を失う。

 

 

「個性頼りだな」

 

 

 白仮面の男はがら空きになったチンピラの腹を殴る。

 

 

「ぐふぅ!? お、お前……!!?」

 

 

 そして気絶しかけたチンピラの頭を掴み取り、そして────────

 

 

「………ん゛ん゛!?!?!?」

 

 

 ────唇を合わせた。

 

 

 それは俗に言われる『ディープキス』を、白仮面の男はやっていた。

 初対面、男、クズ。それが関係ないかのように白仮面の男は舌を出して、【爪鎖(ネイルチェーン)】という個性の男の口内に舌で、ペンキを塗るように舐めていた。

 

 

 これはさすがの女子中学生も絶句。

 だって助けに来た人が、性犯罪者だったら誰だって感謝を言う前にハテナマークで頭を埋め尽くされるだろう。

 

 

「…………そのの貴女、大丈夫か」

 

 

「んんッ!?!?!?」

 

 

 しかも何もなかったように振る舞う白仮面の男に、女子中学生はツッコミをいれたくなった。

 しかし助かったのは事実。女子中学生はこくりと頷いて答えた。

 

 

「そうか……。ところで……」

 

 

「ん?」

 

 

「先程の接吻行為は俺自身の『個性』によるモノであって、俺自身が好きでやっている訳ではない。そもそもこの個性が欲しいと言う人に変わってあげたいぐらいに真面目な話通報案件並みの変態個性であり、しかもたまに俺自身が望んでいないのにキスしてしまう、いわば二重人格みたいな俺の預かり知らずにキスするヤバい個性なんだ。こっちだって見知らぬ野郎とディープキスするなんて俺の唇を切り落としたい気持ちで満載だよ。あとこの個性のせいで女子からも遠ざけられているから本っ当にいい迷惑なんだ。他にも……」

 

 白仮面の男は女子中学生に向けて、弁明するかのように、早口でまくしたてた。

 

 

「ん……」

 

 

 女子中学生は察してしまった。

 それはこの白仮面の男は、自分の意思関係なくキスしてしまう恐ろしい個性を持っていることに。

 女子中学生は憐れみの視線を向けてしまった。

 

 

「ハハハ……。まあこんなことは置いといて……」

 

 

 白仮面の男は自分の黒マントを、女子中学生を包んであげた。

 

 

「無事で良かった」

 

 

 女子中学生はほんの少し頬を染めた。

 それは自分の肌が露となった羞恥心からなのか、そうだと思った。

 しかし女子中学生は明らかに別の感情から、自分の頬が染まっていたと確信していた。

 

 

 今すぐに助けてくれるヒーローは、たった今窮地に陥っている女子中学生を助けるヒーローは誰もいない。

 

 

 でも。

 

 

 人前では見せれない、あまりにもヒーロー向きではない個性を持った愚者は助け来た。

 メディアにバレたらネットで叩かれるのは目に見えているし、何よりも個性を使っていること以前法律違反をしている。

 

 

 それでも助けに来てくれた。

 

 

 ……ああ。私ってこんなにちょろい女の子だったかな。

 

 

「それじゃあ……家まで送って行こう。貴方みたいな美人さんをこんな遅い時間に一人きりにはできないからね」

 

 

 女子中学生は耳まで赤くなった。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 その後、女子中学生の名前が『小大(こだい)(ゆい)』だと分かったところでバイバイ。

 

 

 俺は原産地の茶葉で淹れたお茶を一杯ゆっくり飲む……あつにが。

 お茶を飲みながら心身落ち着かせていると、瞼の裏に映し出されるのは昔の思い出。

 

 

 

 

『お子さんの個性の条件。それは"性行為をすること"です』

 

 

『それは、()()()()()()()()()()ならば何でもOKです』

 

 

『お子さんの個性を名づけるならば、それは──────』

 

 

 

 

 

 

 

 

『──────【遺伝子操作】です』

 

 

 ……【悲報】俺の個性が通報案件でした。

 

 




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