SAO RTA any% 75層決闘エンド   作:hukurou

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11月11日、5層開通から2日目の午後。

エルフクエストを終えたミト達はイスケやコタロー、そして情報屋のアルゴと合流し迷宮区に挑むことにした。

5層の迷宮区は北東にあるため、同じく北東エリアに属する枯れ木の森からほど近い。すぐに姿を現した迷宮区を見て、しかしミトは今日中に踏破するのは難しそうだと考えていた。

 

視界の先にある迷宮タワーは1層や2層に比べると細身で、床面積だけならばむしろ小さい。規模的にはこれまでで最も短かった4層のそれと大差なく見える。モンスターとの戦いはあるだろうが、踏破に時間がかかりそうだとは思えない。

 

だから問題は迷宮タワーではなくそこに続くまでの道のりにあった。

 

「一応聞いておくけど、ベータの時の道順を覚えてる人いる?」

 

ミトの眼前にはタワーの直径の数倍もある大きな迷路エリアが広がっていた。迷宮タワーの入り口にたどり着くにはこの迷路エリアの最奥まで進まないといけないのだ。

 

そして残念なことにミトはこの迷路の道順を覚えておらず、忍者達も、さすがのキリトも覚えていなかった。

 

「餅は餅屋。情報は情報屋だろ。アルゴ。この階層のエルフクエの情報と交換でいいか?」

 

「なんだケイ。この迷路のマップデータが欲しいのか?」

 

「持ってるんだろ?」

 

ケイが尋ねるとアルゴは誇らしそうに胸を張った。

 

「当たり前だロ。オイラは情報屋のアルゴだゾ。でも迷路のマップは売れないナ。代わりに、もっといいものを見せてやるヨ」

 

そういってアルゴは首元から大きな金属製のカギを取り出した。

 

「迷路エリアのショートカットアイテムだヨ。この前たくさんアイテムを貰ったから、こいつはタダでいい。出血大サービスってやつだナ」

 

鍵は迷路エリアの入り口反対側、石壁と迷宮タワーの背面が接している場所の近くで使用するらしい。指定の場所まで移動したアルゴが隙間に鍵を差し込むと、即席の梯子が出現した。これを登って外壁の上に登れば迷宮タワーは目と鼻の先で、ご丁寧に中につながる隠し扉まである。

 

「さすがだな」

 

ケイが感嘆の声をあげるとアルゴは胸を張って見せた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

幸いといっていいのか、迷宮区の中はベータテストの時とあまり変わっていなかった。キリト、イスケ、コタロー、ケイ、ミトそしてアルゴ。一人一人は完璧に詳細を覚えているわけではなくとも、6人分の記憶を合わせればそれなりに高い精度でマップを予想できる。

 

特徴的な罠や宝箱の位置、出現モンスターの傾向や中ボスの配置など、記憶通りに進んだ探索は順調といってよかった。さすがにカイサラがいた4層よりは速度が落ちるが、2層の頃よりずっと早くミト達は迷宮区を登り切り、その日の夜には最上階に到達した。

 

記憶違いが起きたのはその時だ。

 

「確か、ここにはボス部屋の扉があったはずなんだが」

 

キリトがにらむ先には5人が横に並んでも余裕がある大きな階段が鎮座していた。これまでも迷宮タワーを登る際に使用した物より明らかに大きく、そして存在感があるそれを前にして一行は一度足を止める。

 

「拙者の記憶でも5層の迷宮タワーにこんな階段はなかったでござる」

 

「同感でござるな」

 

「場所的にはここはタワーの中央ね。この上にボス部屋があるのかしら?」

 

アスナがマップを指さしながら言った。

 

「どう見る?」

 

ケイがミトに尋ねてきた。

 

「確かに、普通に考えるのならこの階段の上がボス部屋ってことなんでしょうけど……」

 

先の見通せない暗闇を見つめながら、ミトは考える。ケイが聞きたいのはそんな当たり前のことではないはずだ。なぜベータの時になかった階段が置かれているのか。単なる意匠の問題というわけではないだろう。4層ボスのヒッポカンプは部屋全体を水没させる特殊攻撃を使ってきたが、あの部屋はこれまでの部屋と比べて特別天井が高く作られていた。となると扉ではなく階段を使うのもボスの特殊能力に関係のある設定なのかもしれない。あるいは……

 

「罠かもしれないナ」

 

ミトの考えていたことをアルゴが口にした。

 

「あの階段を登っちまうと階段がせりあがってふさがれちまうとカ」

 

「あるいは段差が全部引っ込んじゃって滑り台みたいに落とされるのかも」

 

「そんな罠になんの意味があるんダ?」

 

「いや、前にやったゲームにそんな罠があったな、と」

 

突っ込みを入れるアルゴにケイが話しかけた。

 

「アルゴ、さっきの鍵はここのボスクエの報酬なんだよな」

 

「ああ、そうだヨ。でも残念ながらこの階段についての情報はなかったナ。前に説明した通り、ここのボスはベータの時の番人ゴーレムって設定から、古代王国の作った魔導ゴーレムって話に変わってたけど、めぼしい情報はそれだけだナ」

 

「そうか」

 

ケイは黙り込む。

 

「……これ以上ここで話してても仕方ないサ。ちょっくら偵察してくるヨ」

 

「だめですよ。危険すぎます」

 

階段の先に視線を向けたアルゴをアスナが止めた。

 

「心配するナ。この階段が罠だったとしてもオイラならすぐ逃げられル。ここは任せてくれヨ」

 

「だめだ」

 

アルゴの進路はケイによってふさがれた。

 

「言ったろ。餅は餅屋だ。ボス戦はボス戦に慣れてるやつに任せておけ」

 

強い眼力に射すくめられ、アルゴはお手上げとばかりに首を振った。

 

「わかったヨ。じゃあ、任せル」

 

「ああ任せておけ。なんたって、うちには優秀な忍者がいる」

 

「「拙者らでござるか!?」」

 

突然話を振られて驚くイスケとコタローにケイはいたずらっぽく笑って見せた。

 

「忍なら潜入任務はお手の物だろ?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

イスケとコタローと、それから結局ケイも。彼らがボス部屋を偵察している間、階下に残されたアルゴは着慣れていない薄緑色の上着の裾をいじっていた。これも先ほど迷宮区の宝箱から獲得したものだがアルゴ用にと手渡されていた。これだけではない。主武器のクローに始まり、足装備に至るまでアルゴの全身はケイに呼び出されてから一式更新されている。

 

「なあ、あーちゃん。この武器なんだけどサ。このパーティーにクロー使いっているのか?」

 

「いえ、いませんけど」

 

「じゃあ、このブーツは? あーちゃんか、みーちゃんのお下がりカ?」

 

アスナとミトは首を振った。

 

「どうしたんだ? SAOじゃ装備のサイズが合わないなんてこと起きないだろ」

 

キリトが尋ねるとアルゴは形容しがたい表情でうめいた。

 

「ケイの奴、道中手に入れた余ってる装備をくれるって言ったダロ。なのにこれ、きっちり強化済みなんだヨ」

 

「あー……。つまり、そういうことじゃないのか」

 

キリトは頭を掻きながら意味もなく階段の先の様子を伺った。

 

「まったく、ケイの過保護には困ったもんだナ」

 

腰に手を当てて満更でもない表情をするアルゴにアスナは小さく含み笑いを零し、ミトもその相好を崩した。

そして、ふとこれまでの日々を思い出す。

 

あの男が過保護?

普通、過保護な人って1パーティーでフロアボスに挑むものだっけ。

 

ミトが何かに気づきかけたとき階段を駆け下りてきたイスケがその思考を中断させた。

 

「罠はなかったでござる!! それより、ボスが動き出したでござるよ!!」

 

 

 

 

階段の先は直径30メートル、高さ15メートルに及ぶ巨大な空間だった。どうやら階層全体を1つのフロアとしているらしいその部屋には、なぜか床から2本の腕が生えており、さらにミト達の目の前では2本の足が降ってきたところだった。

 

「ここで止まるでござるよ」

 

階段の途中で止まったイスケがミト達にボスの情報を説明する。

 

「床に青白いラインがあるのが見えるでござるか? ここのボスはあれを踏んだプレイヤーを攻撃するようでござる」

 

「一度見せる! それで覚えろ!」

 

ケイが叫びながら走り出した。1歩、2歩、3歩、4歩。床の線を踏むたび、その場所にターゲットサークルが形成され、そこをめがけて腕と足があるいは床から伸び上がり、あるいは空中から振り下ろされた。

 

「攻撃は4回で1セットだ! 次の攻撃までにはわずかに準備時間がある!」

 

言いながらケイとコタローはずぶずぶと再び床に沈んでいく腕にソードスキルを当てた。

ボスのHPが数パーセント削れる。腕が完全に床に沈むと、地面に描かれた青白いラインが高速で動き出し、新しいラインを形成して静止した。

 

今度はケイも線を踏まず、あたりを静寂が覆う。

 

「つまりもぐら叩きみたいなもんだ。簡単そうだろ?」

 

ミト達はケイの指示に従って囮になる係と攻撃する係に分かれ、順調にボスの体力を減らしていった。

 

皆が思った。この攻撃は序盤だけにすぎず、いずれ新モーションが来ると。だが予想に反してボスの攻撃はいつまでも単調なままだった。唯一の変化と言えば、天井に現れたゴーレムの顔がデバフ効果のあるボイス攻撃を加えてくるようになったくらいだが、他のゴーレム系モンスター同様、弱点として設定された額の紋章にダメージを与えると攻撃を中断させることができた。

 

このパーティーには遠距離攻撃武器のチャクラム使いが2人もいる。そんな攻撃が問題になるはずもなかった。

 

「なんか思ったよりも弱いボスね」

 

「それはどうかな?」

 

床でラインが再構成されている間、気の抜けた表情で振り向いたアスナに答えたのはキリトだ。

 

「俺たちは数人しかいないから線を躱せるけど、普通フロアボス戦はもっと大人数でやるもんだ。何十人もいたらみんなが足の踏み場を見つけられるわけじゃないだろうし、混乱してもっとひどい戦いになっているはずさ」

 

「にゃはははっ。空白地帯を巡って椅子取りゲームみたいになりそうだナ」

 

その場面を想像したのかアルゴが楽しそうに笑った。

 

「それにボイス攻撃だって、《投剣》を持っているプレイヤーがいなきゃキャンセルできない。たまたまこのパーティーとものすごく相性がいいボスってだけさ」

 

「へえ。そういうことなの。そんな大人数でのボス戦なんて全然想像できなかったわ。いつかやってみたいわね。レイドボス戦も」

 

「そうか。アスナはやったことがないのか。ベータ時代ではフロアボスといえばレイド戦だったんだけど……」

 

「冷静に考えると、やっぱりおかしいわよね。この状況」

 

キリトとミトは互いに目を合わせた。

 

ボス戦の中盤では、ボスの顔が天井から消え地面から噛みついてくる攻撃パターンも追加された。初めこそ異常な光景に面食らい、逃げた先でうっかり白線を踏んでしまう事態に見舞われたものの、タネさえ割れれば足元に響く振動と地面の盛り上がりで予測できるこの攻撃は、冷静に対処することが可能だった。

 

総じて、ボスの攻撃は有効打にはならなかった。パターンとギミックを理解し、そして何より回避先が確保しやすい少人数であることさえ守れば、ダメージを受ける要因は少なく、そして実際そうなった。

 

「ラスト1本カ。ここまでは順調だったナ」

 

「気を付けていこう! きっと次こそ攻撃モーションが変わるはずだ!」

 

ボスのHPバーが残すところあと一本となったころ、弛緩しかけた空気をしめなおすようにキリトが大声を張った。

 

呼応するようにボスが怒りの声をあげると、手足に続いて顔までもが壁や天井に吸い込まれていく。

 

「な、なにかしら!?」

 

内臓の繊毛運動のように蠢きだした壁からアスナが距離をとる。

ゴーレムは再び足から現れた。ただしこれまでの通り踏みつけ攻撃を行ってきたわけではない。天井から比較的ゆっくりと、両足をそろえて出現したゴーレムには腿があり、腰があり、胴体がついていた。最後にぶら下がるようにくっついていた両掌が離れれば、ズズンと内臓を揺らす重低音が響く。ゴーレムは全長4メートルを超える見上げるほどの巨体となって再びミト達の前に降り立った。

 

「どうやら、ボーナスタイムは終わりらしい。集中していこう」

 

全身にうっすらと蒸気を纏い、身の毛もよだつような雄たけびを上げるゴーレムを前に油断するものなどいなかった。だから、それは単純に地力の差なのだろう。

 

ゴーレムの巨体はゆっくりと動いているように見えた。それが人間なら、1秒以上もかかる振り払いなんて遅すぎる攻撃だろう。だが、その大きさと腕の長さを考えれば。

手のひらは風を切るような速さでミトの眼前を通過した。まるで大型トラックが至近距離を走り抜けて言ったかのような圧力は、原始的な恐怖をもたらし思わず体が硬直する。反撃に用意していたソードスキルは規定外の動きによりその輝きを霧散させた。

 

腕が長いということはそれだけリーチが広いということだ。1メートルや2メートル程度、腕を伸ばせば簡単に届く。ボスの攻撃の追尾性は段違いに改善され、回避動作の難易度は格段に上昇した。

 

ゴーレムが虫でもつぶすかのように地面をたたけば全方位をショックウェーブが襲う。今までは足の踏みつけでしか発生しなかったそれは、経験則で動いたアスナに牙をむきその動きを強制的に停止させた。アルゴの救援が間に合い追撃は免れたが、モーションの変化に対応するまでは迂闊に攻撃できなくなった。

 

足元を動き回るキリトとケイにいら立ちをあらわにしたゴーレムの蹴りは二人をとらえる事こそなかったものの、続くモーションで高々と振りぬいた足から繰り出されたストンピングは比喩ではなく階層全体を揺らし、遠距離攻撃に徹していたイスケにまで転倒を誘発した。

揺れる視界の中、コタローは戻ってくるチャクラムを取り落とし、その隙を待っていたとでもいうようにボイス攻撃が響き渡る。

 

形勢は一気に逆転した。

 

視界の端に映るAGI減少のアイコンはしつこく効力を発揮し続け、たて続けにATK減少、DEF減少のアイコンまで灯る。両腕を自由に振り回すゴーレムはもはや無防備に紋章への攻撃を受け付けず、時に攻撃を叩き落とし、時に首をそらすことでチャクラムによるボイス攻撃のキャンセルに抵抗し続けた。

 

極めつけはビーム攻撃だ。これまでとは一線を画する射程距離を誇るそれは予備動作の少なさも相まって手足の動きのみに注目していたアスナの意識の隙を的確についた。

 

「戦線を離脱しろ! 回復するまでは戻るな!!」

 

ボス戦だけではなく、ゲームの開始より初めてHPが半分を割り込んだアスナにケイが素早く指示を出す。

 

「イスケとコタローはチャクラムで攻撃を続行。防がれてもかまわない!! いざというときに前に出られるように体力を温存しておけ!」

 

「「了解でござる!」」

 

「足元は俺とキリトでかく乱する! 防御の薄いアルゴは近づくな! ミトと一緒に手にカウンターを合わせろ!!」

 

「わかっタ!」

 

「了解!」

 

とは言ったものの、AGI型ビルドのアルゴに比べると大型武器を使うミトの動きは俊敏さに欠ける。何度かの交錯の後、攻めっ気を出しすぎたミトはソードスキル後の硬直時間に振りぬかれた拳をよけきれないと悟る。

 

「くっ!!」

 

とっさに大鎌を盾代わりに構えた。防御は間に合ったというのにミトの体はそのまま数メートルも押し飛ばされ、3割近くもHPを削られた。

 

「回復を」

 

言葉少なにケイは言った。深く集中しているようだった。

SAOではポーションを使ってもHPが瞬時には回復しない。じわじわと伸びる黄色のバーをミトはどこか現実感を伴わずに眺めていた。

 

彼女のHPは半分以上減っていた。アスナと同じくやはりゲーム開始以来初めてのことだった。これと同じだけの攻撃をもう一度食らってしまえば、彼女は死んでいたのだ。いや、ボスの攻撃は防御できていた。そのうえで高すぎるゴーレムのSTRがミトの命を3割も削ったのだ。だから例えばソードスキルの硬直中に無防備に攻撃されていたら。吹き飛ばされた先にビーム攻撃の追撃が来ていたら。

 

その時ミトのHPは残っていたのか?

 

背後に感じた死神の息吹にミトの背筋が凍った。

 

「もう偵察は十分でしょ! いったん帰りましょう!」

 

ミトは叫んだ。今なら間に合う。もっとレベルが上がって、もっと仲間が増えて、もっと安全に倒せるようになるまでこのボスは放っておけばいいではないか。

 

だが、ケイは応じない。

 

「ボスはここで倒す! いつも通りだ!」

 

ミトの予想通りだった。

この男はいつだって偵察すると言いながら、一度だって撤退したことがないのだ。最初からボスを倒す気で挑み、それを実現させている。今回もそのつもりであることは皆がうすうす感づいていた。

 

ケイの意気込みはさておき、現実は予定通りにいかない。

アスナが離脱し、ミトが離脱し、イスケとコタローが遠距離攻撃に徹している今、近距離で戦っているのはケイ、キリト、アルゴの3人だけだ。5人いるときは得られた攻撃チャンスも、攻撃が集中する今となっては存在しない。かわすことで手いっぱいになっている。

 

現状を打開するためだろうか。キリトがやや無理やり攻撃に転じた。煌めくソードスキルは確かにボスの足首を切り裂いたが、続くボスの掌打はしっかりと彼をとらえていた。援護に入ったケイとアルゴがタイミングよくソードスキルを合わせてはじき返さなければ、彼もミトのように吹き飛ばされていただろう。

 

一か所に集中した3人はビーム攻撃を避けながらばらばらに散らばるが、縦横無尽に動き回りながら次々攻撃を行うボスの背後を取るのは容易ではなかった。

 

本来レイドボスは攻撃を引き受けるタンク役とダメージを与えるアタッカーに分かれて行うものだ。だが、このパーティーにはそれがない。今までは各自が臨機応変に対処していたが、その戦術は人数が減ったことで機能しなくなっていた。

 

キリトの動きに明確に焦りが見え始めた時、ケイはリュートを取り出した。弦をかき鳴らし、歌声を響かせる。ミトの視界に立ち並ぶデバフアイコンの横に、新たにバフアイコンがともった。

ボスの動きが明らかに変化する。

 

「俺がヘイトを稼ぐ! キリトとアルゴはDD(ダメージディーラー)だ!」

 

「無茶だヨ! ケイ!」

 

アルゴの叫びなどかまわずケイはボス部屋をぐるぐると円を描くように後退し始めた。ボスの突進も、掌打も、ビームも飛びつきも器用にかわし続けながら絶妙な距離を維持し続ける。

 

回復中のミト達も遠距離攻撃中のイスケ達もケイの動きに合わせながら円形の部屋をぐるぐると回り始める。

 

呼応するように戦況もめまぐるしく変化した。

 

ボスのターゲットから外れたキリトとアルゴは先ほどよりも格段に多い時間を攻撃に費やすようになり、ボスのHPは目に見えて減少し始めた。

 

しかしボスも黙ってやられてばかりではない。決定打になったのはなかなか当たらない手足の攻撃ではなく、広範囲の射程をもつボイス攻撃だ。耳をふさぎたくなるような不協和音が皆の足を止めた。

 

これまでに見たことのない効果、スタンだ。

 

回避の難しいボイスの効果としては強すぎるように思えるこの効果はおそらくDEF、ATK、AGI、LUCのすべてのデバフを受けていると発動するのだろう。

ミトが考えている間にも足を止めたケイは蹴り飛ばされ、アルゴは右手に掴まれた。ゆっくりと彼女を口元に運んだゴーレムはそのままガバリと口を開けたが、この捕食動作は復帰したイスケとコタローがチャクラムでひるませて止めることができた。

 

しかし、つかみ攻撃のスリップダメージだけでもアルゴのHPは警戒域にまで減少した。ケイのHPがぎりぎりグリーンで耐えたのは彼のレベルと装備の質の高さゆえだろう。

 

アルゴが回復のため前線を離れる。

アタッカーの減少はキリトの負担を増加させた。攻撃と反撃は今や一進一退となり、その中には回避不可能な範囲とタイミングのものがある。

 

そのことごとくをガードしているにも関わらず彼のHPはじわじわと削られていった。

 

ふいにゴーレムがコタローに突進した。これまでにない攻撃パターンだ。ケイの《吟唱》にもキリトのソードスキルにも反応を示さずコタローを狙った攻撃を繰り返したゴーレムは、イスケのチャクラムにだけは素早く反応し、苛烈な反撃を行った。ボスの目から放たれたビームの連撃は布装備であるイスケのHPをあっという間に危険域まで落とし込む。

 

「イスケさん! スイッチ!」

 

これ以上の人数の減少は戦線の崩壊につながる。

経験ではなく本能でそう直感したアスナが回復途中のHPで飛び出した。

 

「アスナ!!」

 

追いかけるようにミトも戦場に赴く。

 

隙を見てポーションを使用しているキリトのHPはもうほとんどイエローといってもよかった。

 

「キリトも下がって!」

 

「俺よりもケイがっ……」

 

キリトの表情には余裕がなかった。1人攻撃を引き付け続けたケイのHPはもうすぐ3割を切ろうとしている。

 

短剣を手に前に出たコタローとアスナがボスを引き付けているわずかな空隙の中、ミトはケイに走り寄った。手を伸ばせば届く距離で、しかし彼は未だにリュートを弾き続けている。

 

「ケイ。これ以上は無理。撤退よ」

 

「それはできない。フスクスは今倒しきる」

 

正面からとらえた彼の瞳には恐怖など微塵もなかった。

ゴーレムの攻撃によりミトとケイの会話は中断され、二人はそれぞれ別の方向に飛びずさる。

 

「情報なら十分とったわ! 偵察は十分よ! 序盤は少人数で戦い、人型モードになったら階下にとどめておいた増援を呼んでみんなで仕留める! そうでしょ!?」

 

5層ボスには倒し方がある。ここまで明らかなことをケイが気づいていないはずがなかった。

 

「増援? あてはあるのか?」

 

「時間が経てば他のプレイヤーが追い付いてくるでしょ。その人たちと一緒にまた挑戦すればいいじゃない。いえ、そうすべきだわ。ここで私たちが無理する必要なんてないじゃない!?」

 

演奏を中断したケイはゆるゆると首を振る。

 

「必要なら、ある」

 

彼の瞳にはこれまで見たことのないような感情が透けていた。

 

「今日までいったい何人のプレイヤーが死んだか分かるか?」

 

遠くからアルゴが反応した。

 

「ケイ……それはお前が気に病むことじゃなイ!」

 

「じゃあなぜ、アルゴは圏外にでる? なぜ今日の戦いに参加した?」

 

アルゴは返答しなかった。できなかったというべきかもしれない。

 

「昨日は38人死んだ。一昨日は26人だ。今日もまた、何人も死んだだろう。そして明日も。フルレイドを組むために他のパーティーが到着するのを待つ? それに一体何日かかる。それまでにいったい何人死ぬ?」

 

彼は声を決して荒げなかった。声音はいっそ冷静ですらあった。だが、それはこの男が努めて感情を抑えている結果なのだ。そうでなければ誰かを傷つけてしまいそうな激情を秘めているに違いなかった。

 

ケイは一度顔を手で覆うとリュートをしまった。いつもの片手剣をボスに突きつける。

 

「こんなゲームはたった一日だって長引かせちゃいけない……!」

 

ミトは口をつぐんだ。これ以上は話しても無駄だと思ったからだ。きっと何を言っても動かない。ケイはミトの紡ぐ幾千の言葉より重い決意でこの場に挑んでいるからだ。

 

こんな時まで他人のことかとミトは思った。

彼女の理性は未だに警鐘を鳴らしている。

 

「やりましょう」

 

答えたのはアスナだ。飛び火したように強い意志を宿した目をしている。

 

「俺もまだやれる」

 

キリトはもとより撤退するそぶりを見せていなかった。

 

ミトは頭を振った。パーティーメンバーの意思が乱れていては安全に撤退することなど不可能だ。

つまりやるしかない。

 

いち早くボスに向かったケイが間合いに緩く踏み込んだ。

誘導するように放たれたストンピングの衝撃波をケイは跳んでかわさなかった。

《ソニックリープ》。空中突進技をあわせたのだ。

 

ボスの内腿に長く鋭いダメージラインが刻まれる。だが強力な防御力を誇るゴーレムは、ソードスキル一発では怯まなかった。反撃とばかりに拳を振るう。空中にいるケイにそれを避ける術はない。

 

「危ない!」

 

ミトが叫ぶのと同時にケイの足が光を帯び、バク宙するかのように回転蹴りを放った。体術スキルだ。

ゴーレムの攻撃は物理法則を無視した動きで回転するケイを捕えきれず空振りに終わる。

 

体勢の不安定な空中でのスキル発動。タイミングもシビアだ。

真似してみようとも思えない曲芸だった。

 

着地した後もケイの動きは止まらなかった。右に左に奇妙に体を揺らしたかと思えば、急激な加速と減速でボスを幻惑する。瞬時の判断でボスの攻撃をスルスルと避けては、次々にソードスキルの閃光が煌めく。一人で攻撃も防御もこなす彼の動きはフスクスに対する最適解を常にたたき出しているようだった。

 

ディレイハメした2層ボスでも、カイサラに主役を譲った4層でも見せなかった姿。

 

おそらくケイは今初めて、ミトたちの前で本気で戦っていた。

 

「オイオイ。あいつ一人で倒しちまいそうだゾ……」

 

アルゴが呆然と呟く。

 

普段のふざけた態度を見ていると時々忘れそうになるが、彼は単独でフロアボスを倒した、このゲームで唯一のプレイヤーなのだ。

 

一人でやれるというのは誇張でもなんでもない。

 

いや。

ミトは首を振って楽観的な思考を追い出した。

いくら彼でもこのボスの相手は手に余る。サポートは必要だ。

 

獅子奮迅の働きをするケイは一時的にとはいえボスをひるませ、後退させた。

その姿に触発されたのか、キリトとアスナのパフォーマンスも向上し、普段以上に精緻な連携攻撃が冴えわたる。

 

ミトもここまでくれば腹をくくり地面を強く蹴りだした。

 

休憩中の観察が生きたのか、予想通りのタイミングで攻撃が来る。万全の態勢で待ち受けていたミトはクールタイムを終えた大鎌の突進技ですれ違いざまにボスの腕を切り裂く。

 

「スイッチ!」

 

ミトは叫んだ。コタローが距離を詰めているのは見えている。伸びきった腕に短剣の3連撃が刻まれる。続いてミトは掬い上げるような軌道でゴーレムの膝関節を切り裂いた。ガリガリと砂袋を引き裂くような重い感覚が手に残る。

 

戦闘は長引かなかった。ダメージを受けているのはボスも同じだからだ。半分以下まで減っていたボスのHPがわずか2分でさらにその半分まで減った時、ボスがこれまでと違う動きをみせた。皆は攻撃中止の指示がある前に散開し距離を取っていた。

 

ボスは部屋の中央に陣取り両腕をあげた。地面をやたらめったら乱打し、そのままどぷんっと腕が地面に埋まる。

 

硬い床がスライムか何かに変わったかと思うような、奇妙な光景だった。オマケのハウリング攻撃でミトたちを牽制しながら、ずぶずぶとゴーレムは地面の中に沈んでいった。

 

「上だ」

 

ケイの声に見上げるとボスは天井からミトたちを見下ろしていた。最初と違うのは出現しているのが顔だけでなく、上半身ごと2本の腕も突き出ている事だ。

 

ボスは両掌の間にビームを打った。赤黒い閃光はまるで重力の歪みでもあるかのようにその場で停滞し、ゆっくりと明滅する球体を作成し始める。

 

どう考えても大技の予備動作だ。レッドゾーンのピンチで解禁され、発動に時間を要するこの攻撃の威力が弱いわけがない。正念場の予感がした。

 

ミトは思考を巡らせる。

あの玉を飛ばしてくるのか。

速度は。

モーションは。

衝撃波の拡散範囲は?

 

考えている間にゴーレムがビームの照射を停止した。今やエネルギー球の大きさはボスの手のひらには収まらないほどに肥大化し、バチバチと表面に黒い稲妻が走っている。

 

その威容を前にしてミトは改めて確信する。絶対に受けてはいけない。HPに余裕のあるミトやアスナですら一撃死の危険がある。

 

ましてや誰よりも激しく攻撃を受けていたケイならば。

 

大きな光球は音もなく2つに分かれた。それから4つ。8つと増えていき、ついには64個に分裂すると漏斗のような特徴的な形に変形した。

 

ゴーレムがニタリと笑う。

 

漏斗の先端から攻撃が出るのだろう、とは予想がついた。だがその向きにはまるで統一性がなく、警戒心の強い小動物のように小刻みに首を振っている。

ミトは全神経を注いで動きを注視した。引き伸ばされたような時間の中、必死に攻撃方向を割り出そうと試みたが、無数に増えた全ての漏斗の動きを追い切るのは不可能だった。

 

心音が激しく耳を打つ。緊張の高まりに応じてアバターが感情表現の汗をたらした。

 

「上じゃない! 下を見ろ!!」

 

ケイが叫んだ。

ハッとして見下ろすと、地面を蠢く影がある。それは見慣れた青白い線だった。目立つ光は随分と光量を落としているものの、このボスのギミックとして何度も見たものと相違ない。

 

ミトは直感に従い駆け出した。瞬時に密度の低い場所を見つけ出し飛び込む。

 

見れば皆もそれぞれ安全地帯に退避していたが、ケイだけは例外だった。

 

地面に形成されつつある光線の密度には大きな偏りがあった。後から考えれば、あれはおそらくヘイト量によるものなのだろう。

 

とにかくケイの周りには足の踏み場もないほどの白線が密集していた。とてもラインをよけられる状況ではない。

蠢く線がその速度を落とす。

 

ミトの脳裏に散々繰り返したボスの攻撃パターンが再生される。すぐにでも光線の回路図は効力を発揮し、線を踏んだプレイヤーには攻撃が下されるだろう。

 

ケイから最も近い空白地帯は5メートルも離れている。とても間に合わない。

 

「ケイ!!」

 

叫んだのは誰であったか。あるいは皆の声が聞こえたような気もする。

 

線が止まった。一拍の後、白線はその輝きを増し、空から赤い閃光の雨が降り注いだ。

 

てっきり線を踏んだプレイヤーに殺到すると思っていたボスの攻撃は、ミトの想像を遥かに超えて熾烈なものだった。

 

64個の漏斗から同時に発射された光線は、地面に描かれていた回路図をなぞるように複雑に軌道を変えながら、わずか1秒でこの部屋のあらゆる床を舐め尽くした。単にラインを踏まないだけでは不十分で、線と漏斗の間の空中すらもが攻撃範囲の一部だ。ミトの胴体には斜めにダメージラインが刻まれ、視界の端で仲間のHPバーもそれぞれ減少する。

 

「嘘でしょ……」

 

呆然とつぶやかれたミトの言葉はしかし、ボスの攻撃に対してのものではなかった。赤熱し陽炎のように揺らぐ地面の先に、壁を駆けるケイの姿を見たからだ。彼のHPは全く減少していなかった。

 

ケイが地面に降り立つ。そこはアルゴのすぐ近くだった。

 

「今のはさすがにヒヤッとしたゾ。どうやって躱したんダ?」

 

「単純な話だ。壁には白線がなかった」

 

理屈は分かる。そしてたとえ屁理屈であっても実現して見せるのがこの男だ。

 

「ゴーレムの設計者だって壁を走って逃げる変態は想定してないヨ」

 

アルゴが呆れたようにため息を吐いた。

 

耳をそばだてながら警戒していたミトの前で、ゴーレムがだらりと上半身を脱力させる。エネルギーを使い果たしたようだ。そのままずるずると下半身が天井から露出し始め、ついには轟音をあげて部屋の中央に落ちてきた。

 

「チャンスタイムだ! 仕留めるぞ!」

 

ケイに言われるまでもなく、皆が走り出していた。

緩慢な動きでもがくゴーレムは殺到したソードスキルになすすべがなく、再び立ち上がる前にその身を散らした。

 

 

 

 

その日の夜。

新たに開放された6層主街区で宿を取ったミトは、食事を終え自室に戻っても眠る気になれなかった。

 

「ごめん。アスナ。少し夜風にあたってくるわ。先に寝てて」

 

同室のアスナに声をかけるとミトは装備フィギュアを操作し、いつもの服装に戻った。

 

「待ってミト。私も行くわ」

 

ベッドに腰かけ愛用のレイピアの整備をしていたアスナは、素早く道具をしまうと腰を上げた。

 

2人は静かに部屋を出た。

時刻はもうすぐ12時を迎えようとしている。このゲームではシステム上の設定で、閉鎖されたドアの向こうへ足音や話し声が響くことはないが、それでも宿の中で会話が交わされることはなかった。

 

他のプレイヤーの目を避けるために町はずれに取った宿の周辺は夜の静けさに包まれている。ぽつぽつ並ぶ街灯の他には目につく物もない、まっすぐな通りには人影がなかったが、町の中央、転移門に近づくにつれて徐々に喧騒が近づいてくる。

 

楽隊のNPCが奏でるしっとりとした弦楽器の調べに混ざって、夜だというのに新階層の探索に精を出す少数のプレイヤーの話し声が混じる。それでも1万人のプレイヤーに合わせて大きくとられた転移門広場は閑散としていた。

 

ミトとアスナは転移門の光を浴びると行き先を始まりの町に指定した。

 

明日に疲れを残さないためにもあまり長い時間出歩くことはできないが、ミトの行き先は決まっていた。黒鉄宮だ。今日のボス戦でケイが発した言葉が楔のようにミトの胸に突きささっていた。

 

「あ……」

「おう……」

 

目的の場所には意外な先客がいた。キリトだ。今日も喪服のような黒い服に身を包み、石碑を見上げている。

 

ミトとアスナも彼に並んで同じように石碑を見上げた。

 

ここにはデスゲームに囚われた一万人のプレイヤーの名前が刻まれている。その中にぽつぽつと、書き損じを無かったことにするみたいに横線で消されている名前がある。この世界にはもはや存在しない人たちのものだ。そして茅場晶彦の話が本当ならば、それは永遠に失われてしまった者たちの名前だ。

名前と死因と時刻。こんなちっぽけな一行の記述だけが彼らの墓標なのだ。

 

これまでミトはこの場所に足を運んだことはなかった。

 

それどころかゲーム攻略に奔走される日々の中、他のプレイヤーの動向などぽっかりと頭から抜け落ちていた。

 

「こんなに、いたのね……」

 

「324人だよ。さっき数えた」

 

キリトが感情を感じさせない声で言った。ミトはなんと返答していいものか迷った。

一万人のうちたった数パーセントと思うべきなのか、未曽有の大事件だと胸を痛めるべきなのか。

 

まだ第5層のボスを倒したばかりだ。この石碑に刻まれる横線はこれからまだまだ増えるだろう。100層まで単純計算で20倍ほど。実際はもっと多いかもしれない。序盤の今はゲームの中で一番易しい難易度に違いないからだ。

 

「そう」

 

結局そっけない相槌しか打てない。

 

正直なところ顔も名前も知らない誰かの生死を伝えるこの石碑は、海の向こうの悲劇を伝える新聞のようなものだった。現実感がない。

 

「この人たちも私たちと同じようにボスと戦おうとしていたのかしら……? それともただ町の外に出たかっただけなのかしら……?」

 

アスナがそっと石碑に触れた。

 

「わたしは……」

 

アスナが小さな声で何かを呟こうとして、それきり黙りこくってしまった。

 

ミトは想像する。この中には確実にミトと同じベータテスターもいただろう。あの日始まりの町をでて真っ先にリソースを確保しようとしていたプレイヤーは決して少なくない。彼らがフィールドでモンスターと戦い、そして命を散らしていく姿がミトにはありありと想像できた。

 

ミトはただ運が良かっただけだ。

 

「俺がこのゲームの攻略をしているのはただのエゴなんだ」

 

代わりというわけではないだろうが、キリトが話し出す。

 

「あの日、始まりの町でデスゲームの開始を告げられた時、俺の最大の関心事はいかにして他のプレイヤーを出し抜き、リソースを独占し、良いスタートダッシュを切るかだった」

 

「……そんなの私も同じよ」

 

キリトは首を振った。

 

「フレンドがいたんだ。ほんの数時間の仲だけど、一緒にプレイした初心者がいた。俺はあいつを、クラインを始まりの町において来た。自分のレベルアップを優先して。そのうえ今日初めてあいつの生死を確認して、それでほっとしているんだ。とんだエゴイストだよ。俺は」

 

ミトはアスナを見た。確かに彼女にはアスナがいたが、キリトとミトはなにか違うのだろうか。

 

「違わないわ。何も」

 

あの男がおかしいだけなのだ。子供を集めて。ボスと戦って。見ず知らずの他人の生死まで背負い込んで。

 

「今なら少し分かるかもしれない。ケイが賞賛を受けたがらない理由。重いんだな……攻略組って」

 

キリトの言葉は黒い墓名碑に吸い込まれていった。


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