『デンジ』
聞き慣れた、けれど1度きりしか聞いたことの無い声がした。ふと気づけば、目の前にはいつも見ていたあのつぶらな瞳が俺を覗いている。
「ポチタ……!」
『デンジ、大変なことが起きているみたいだ』
「大変なこと?……超ヤベー悪魔が出たってんなら平気だぜ」
『悪魔より厄介かもしれん。……もう時間が無いな』
ポチタの姿がボヤける。目を凝らしてもポチタの姿は徐々に見えなくなっていた。
「おい、ポチタ時間がねえってなんだよ?」
『デンジ。目が覚めたとき、君は──にいる。そ──では──が起──』
「なんだ?聞こえねぇ、なぁオイ、
──ポチタ!」
伸ばした手は冷たい空気が触れるだけだった。イマイチ回らない頭で周りを見渡せば。ボロボロの壁と崩れ掛けの天井が映る。
「……なんで、こんなとこで俺寝てんだ?」
俺達が住んでたあの家の布団の上では無く、まるであの頃のような場所。だが、昨日こんな場所で寝た記憶は無かった。頭の悪い俺でもそれくらいはわかる。
「まぁ、外、行くか。腹も減ったな」
空腹を感じながら寝て固くなった体を伸ばし、ドアが外れ吹き抜けになった出口へと歩いていく。そうして小屋のような場所出た先は、スラムや路地裏ではなく少し寂れた街のようだった。
「……いや、どこだここ。東京にこんな場所あったっけ」
空を見上げれば巨大な暗雲が太陽を隠し、嵐の前触れかのように稲妻が常に走っている。日が出ていないせいか少し肌寒い。
「天気悪ぃな、昨日の天気予報は晴れるって言ってたのによ……てか今何時だよ!ヤベーな、学校はじまっちまってるか?」
正義の味方チェンソーマンが不良になる訳にもいかない。そうと決まれば、どうにかして学校に向かう方法を探そう。
「まずは人を見つけて道を尋ねる……でもなんか見当たらねぇな……ん?」
ふらふらと道を進んでいると、遠くから人影が近づいてくるのが見えた。どうやら集団でこちらへ来ているらしい、良いタイミングだ。よし。
「スイマセーン!ここどこっすかァー!」
「……見つけたぞ!」
「んぇ?」
目元だけが空いた仮面を着けた変な集団は、こちらを視認すると手に持った刃物を掲げていた。それは一直線にこちらへと振り下ろされていく。
「ウォオ!?ちょっ、なにィ!?」
避けるのは容易だったが、まさか見知らぬ人に出会い頭に殺しにくるとは考えていなかった。まさか、また俺の力を狙いに来た外国の殺し屋なのだろうか。あの件でいい思い出がひとつも無いから、さすがにもうこりごりなんだが。
「この健常者め!楽には、死なせんぞ……!」
「健常者ってなに!お前ら病気なの!?寝てろよならァ!」
「ふざけるなよ!この!!」
殺し屋かと思ったがなんか違うらしい。病人が武器を持って攻撃してきてるだけらしい、いやどういうことだよこの野郎。よし上等だよ、殺しにくるならやってやる。
「しつけぇぞ、風邪引いてんなら!」
「グォ!?」
「絶対!安静だァ!!」
野郎には金的が1番効率がいい。動きが止まった所をぶん殴ってやればすぐに倒せる。股を勢いよく蹴り上げられて、続いて顎を打ち抜かれた男は当然、悲痛な呻き声を出しながら途端に崩れ落ちた。
「クソっ、抵抗するかこのガキ!」
「当たり前だオラァ!!」
倒れた味方を見て、激昂した他の仮面野郎達が同じように武器をこちらへと振り回してくる。
相手は複数人だが、どうやら動きは鈍く単純なようだ。デビルハンターをしているデンジにとってはこのレベルなら、なんの苦にもならない。
攻撃を身を捻って交わし、的確に無力化できる一撃を当てていけば、そのうちに立っていられる仮面の連中はいなくなっていた。襲いかかってきた全員がもれなく股間を抑え倒れ込んでいる。
戦闘を終えたデンジは、ピースサインを天に掲げ勝利を静かに宣言した。
「……よし、みんな大好きチェンソーマンに勝とうなんてのは一生早いぜ?」
「グ、……オぁ……」
これだけ悶絶しているなら、しばらくは起き上がれないだろう。敵ではあるが、質問くらいはできるだろう。
「なあヘンテコ仮面野郎、ここがどこなんだか教えろ」
「グ、この、クズが……」
「言わねェならまた金玉を蹴る」
拷問は非常に、正義のヒーローとして非常にいっぱい心苦しいが質問に答えないのだから仕方が無い。とりあえず一発蹴る。
「がァァァアアア!!!」
デンジの求める答えが満足に聞けるまで、可哀想な名も無きレユニオン兵の苦痛は恐らく彼の人生で1番長く続いただろう。
そうして一人の男の言葉にならない絶叫が街の中を流れていった。
この小説見に来た人はどれくらいなんや
-
アークナイツだけ知ってる
-
チェンソーマンだけ知ってる
-
両方知ってる
-
未来最高!未来最高!
-
まだ休んじゃだめですよ。